人工授精には、精子の提供者によって二種類あり、配偶者が提供する精子を利用するのが「配偶者間人工授精(AIH=Artificial Insemination by Husband)」、第三者の精子を利用するものを「非配偶者間人工授精(AID=Artificial Insemination by Donor)」と呼びます。
ここでは、第三者の精子を利用する「非配偶者間人工授精(AID=Artificial Insemination by Donor)」の方法や問題点について考えてみましょう。
配偶者ではなく、第三者から精子の提供を受けて人工授精に臨む不妊治療を、非配偶者間人工授精(AID)と呼びます。
人工授精の治療は、軽度の男性不妊などに適した治療法ですが、配偶者である男性の無精子症などの原因で、配偶者間では赤ちゃんを授かることが不可能な場合に選択される方法です。
精子の提供者が配偶者か第三者かの違いだけで、治療の方法、処置の方法、また妊娠率に関しても、配偶者間人工授精(AIH)と、まったく変わりがありません。
配偶者以外の第三者から精子の提供を受け行う人工授精は、認知度も低く、まだ一般的ではありません。
日本の医療機関では、夫婦関係にある男性パートナーが不妊症である場合のみ、非配偶者間人工授精を行うために精子バンクを利用することができます。
女性の体で子供を生む機能が働いていても、精液中に精子が全くない無精子症などの不妊症の原因が男性側にあれば、2人の間に子供を作ることは不可能です。
無精子症とは精液中に精子が全く無い状態をいい、男性の100人に1人は無精子症であるといわれています。
精子バンクによる精子提供を受けなければ子供を授かれないということがはっきりしている場合に、最後の手段として非配偶者間人工授精が行われることがあります。
精子バンクや精子提供を利用する際の費用は、団体や提供者によって大きく異なり、無料ということもあれば、1回の精子提供が数万円ということあります。
ですから、夫婦間での話し合いはもちろん、お互いのご両親、家族とも十分に理解しあう必要があります。
非配偶者間人工授精に受けるにあたって、夫婦間、家族間で十分に話し合いを重ねたうえでの決断だったと思いますが、心理的な問題がどうしても残ってしまうものです。
もし、妊娠し、待望の赤ちゃんを授かったとしても、その赤ちゃんは配偶者の実子ではありません。
心のどこかで、そのことを考えてしまうことがないとは言い切れません。
また、非配偶者間人工授精に生まれたことを、将来告知するか、告知のタイミングはいつがいいかなど、いろいろと考えなければならないこともあります。
そういった問題があることを十分に理解・納得した上でなければ、非配偶者間人工授精に踏み切ることはできないのではないでしょうか。
非配偶者間人工授精の妊娠確率は、精子の提供者が配偶者か第三者かの違いだけで、治療の方法も妊娠確率も、配偶者間人工授精と、まったく変わりがありません。
あるとすれば、第三者の精子の提供を受けるというストレスや心理的不安が、少なからず影響するということではないでしょうか。
赤ちゃんの誕生を強く望んでいる夫婦にとって、身体的な理由で授かることができないというのは本当につらく悲しいものです。
男性側が無精子症であれば、どんなに望んでいても、赤ちゃんを手にすることはできません。
それでも赤ちゃんを望む場合の、いわば最終手段が非配偶者間人工授精です。
ただし、大変悩ましい問題があります。
とくに男性の側は、自分と子どもの血がつながっていないという思いが、少なからず心に残ってしまうことでしょう。
夫婦間はもちろん、ご両親や家族ともよく話し合い、十分に納得したうえでなければ、非配偶者間人工授精に踏み切ることはできません。
どうしても、第三者からの精子提供を受け入れることができなければ、養子を迎えることの検討や、または夫婦二人での生活をエンジョイするという選択肢もあります。
日本ではまだまだ認知されていないこともあり、精子提供を受けることは簡単に決められるものではありません。
パートナーときちんと話し合って決断することが大切です。