女性の体は繊細で、生理周期に伴って、生理痛や排卵痛など、さまざまな理由で腹部に痛みを発症することがあります。はたして受精をした際に、痛みを伴うことはあるのでしょうか?生理痛との見分け方なども含め、着床痛について、ひもといていきましょう。
生理周期に伴って、女性が感じる腹痛といえば、生理痛や排卵痛といった、生理が起こるサイクルのなかの節目のタイミングで発症するイメージが強いですね。しかし、受精の際にも痛みを発症することがあるのですが、どのような痛みなのか気になりませんか。
これ痛みを「着床痛」と呼びますが、受精した人全員に起こるわけではありません。着床痛とはどのような痛みであるのか、そして生理痛との違いや、着床痛が起こったときの対処法などについて、知っておきましょう。
「着床痛」とは、具体的にどのようなものを指すのでしょうか?
妊娠に至るまでには、必ず「着床」というプロセスを経ることになります。着床は、受精卵が子宮に到達して、子宮内膜に入り込むことを指します。この着床の際に、絨毛が子宮内膜を傷つけたりすることで、着床痛や着床出血が起こると考えられていて、これが下腹部の痛みにつながります。
着床が完了するには数日かかるため、タイミングを正しく知ることは難しいとされています。着床痛も、着床のプロセスのどこかで感じる可能性がありますが、必ず絨毛が子宮内膜を傷つけるというわけでもありません。また、着床痛が長く続いたり、ひどい痛みであることはほとんどないようです。
着床痛は、実際には感じたことのない人のほうが多いとされていて、着床出血にいたっては、50人に一人くらいの割合とされています。また、着床痛だと思い込んでいたら、実際には排卵痛であったり、妊娠初期のお腹の違和感であったりするケースも多く、痛みの質としても、排卵痛と区別することは難しいようです。
ちなみに排卵痛は、排卵日前後に起こる痛みです。排卵は、生理予定日の約2週間前のタイミングで起こるので、排卵日の3日前から3日後くらいの間に痛みがあるとされています。
生理が順調であれば、排卵日の1週間後から10日後とされている、着床のタイミングとは重ならない計算になります。しかし、排卵日が遅れた場合などは、着床痛のタイミングで起こっているのが、排卵痛ということもあり得るのです。
排卵痛や妊娠初期の子宮の違和感には、医学的根拠があるのですが、着床痛には現時点で医学的根拠はありません。どのようなメカニズムで発生する痛みなのかは、解明されていない部分も多いようです。
したがって、自分でこの痛みは着床痛だと、勝手に判断してしまわないほうがよさそうですね。
着床痛は1日で終わる人から、数日あるいはそれ以上の期間、痛みを感じる人まで、期間や症状には個人差があるとされています。具体的には、どのような痛みを感じるのでしょうか。
下腹部が重く、ズーンとした鈍痛があるケースや、生理痛や排卵痛のように、チクチクした痛みが走る場合もあり、感じ方には個人差があります。しかし、こういった痛みをまったく感じない人もいます。
着床したときに、腰痛を感じる人もいます。腰全体にどんよりと、長く続く重い痛みを感じるといったケースがよく聞かれます。全体的な痛みではなく、骨盤まわりの激痛として現れる人もいて、個人差があるようです。
腰痛の原因としては、ホルモンの影響が考えられます。妊娠の準備として、骨盤の関節を緩める働きをするホルモンが、卵巣から分泌されることにより、腰全体が痛いような症状を感じるようです。
着床する際に、まれに出血を伴うことがあります。これを「着床出血」といいます。これは受精卵が、子宮内膜に根を下ろそうとするときに、子宮壁を傷つけて溶かしてしまうことで、子宮内膜の血管も少し溶かされ、出血が起こります。
この着床時の出血を、生理と勘違いしてしまうこともあるので、慎重に見極めましょう。
同じ腹部の痛みでも、着床痛と生理痛はどのように見分ければよいのでしょうか。
妊娠を望んでいる方にとっては、「この痛みは着床痛では?」と期待したくなることもあるかもしれませんね。妊娠の判断を間違えないようにするためにも、今感じている痛みが着床痛なのか生理痛なのか、その違いについて見分けることが大切です。
痛みの感じ方で見分けられるか、ということについては、痛みそのものは個人差があるため、着床痛と生理痛の違いを判断することは難しいとされています。また、痛みの感じ方についての医学的根拠もありません。
着床痛かどうかを、痛み方で見分けることは難しいですが、対して発症時期で見分けることは、比較的簡単な方法とされています。排卵日から着床痛を感じるまでに、少なくとも6日はかかるとされているので、排卵日から約1週間以降、生理開始日から約3週間以降に感じるのが、着床痛といえそうです。
これに対して生理痛は、生理開始日から3日目あたりがもっとも感じやすい時期であり、着床痛とは時期が異なります。とはいえ、人によっては生理の1週間前から鈍痛を感じる場合もありますし、生理が終わってからも痛む場合もあります。
また、そもそも生理周期が不純な場合は、より判断しにくくなります。というわけで、大まかな判断はできても、完璧に見分けるということは難しいようです。
着床痛をはじめとした、生理期間以外の下腹部の痛みや、出血が起こってしまったら、どのように対処すればよいのでしょうか。
腹痛などがある場合は、体を温めることを積極的にしていきましょう。特に、カイロや湯たんぽなどを、下腹部付近にあてると効果的です。夏でも冷房などがきいた部屋では、症状が悪化することがあります。よって、季節を問わずに腹巻やひざかけ、ストールなどを使用することもオススメです。
下腹部を温めることで、子宮まわりの血液の流れがよくなり、痛みが和らぎます。冷えが原因で痛みが発生して、悪化することもあります。冷え対策として、夏でもお風呂は湯船につかる、腹巻をして寝るなどの生活習慣や、ショウガや緑黄色野菜など、体を温める食べ物をメニューに取り入れるなどの工夫をしたほうがよさそうです。
痛みがあった場合は、かなり体に負担がかかっています。痛みそのものは、我慢できるレベルであったとしても、体を横にして休む時間を多くしましょう。深呼吸をして、安静に過ごすことで、痛みが和らぐこともあります。
また、ストレスをため込むことで心身の負担が増し、ホルモンバランスの崩れにもつながります。症状を悪化させないためにも、リラックスタイムをもつようにして、ストレスをうまく解放していきましょう。
さらに、ホルモンバランスの乱れによる心身の症状を、緩和する漢方薬などもあります。日頃から、漢方薬を上手に取り入れていくこともよいかもしれません。
受精して間もない時期に起こる着床痛。まさに、妊娠が判明するかどうかの繊細なタイミングで起こる痛みなんですね。妊娠したことを知らせるかのような痛みや体の違和感は、痛みの期間や症状もさまざま、感じる人もいれば感じない人もいて、医学的に説明ができるものでもないようです。
着床痛であるかないか、ということはすぐに明確にならないとしても、「痛み」があるというのは、健常な状態ではないことが多いものです。繊細な女性の子宮や卵巣に痛みがある場合は、我慢をしないで、どのような種類の痛みなのかを知り、早めに緩和することを心がけたいものですね。