「妊娠すると体温が上がるって本当?」「基礎体温を測ったほうがいいの?」など、妊活をしている女性にはいろいろな疑問があるでしょう。ここでは、基礎体温でわかる着床後の身体の変化や、それ以外でわかる妊娠初期症状などをみていきましょう。
妊娠を希望している人は、妊娠時にみられるさまざまな体の変化に、敏感になっていることでしょう。たとえば、着床をしたときには体温が上がるというけれど、事実なのかどうか疑問に思っている人もいるかもしれませんね。
そこで、この記事では着床と基礎体温の関係性や、着床したら基礎体温はどのように変化していくのかなどについて、くわしくお伝えしていきたいと思います。基礎体温の測定を習慣づけて正しく理解し、いち早く妊娠に気づけるとよいですね。
着床していない場合と、着床した場合の基礎体温と身体の変化は、どのように変わるのでしょう。
健康な女性で、妊娠していない普段の状態の基礎体温は、約1カ月のサイクルで大きく変化します。月経開始から2週間程度は「低温期」であり、そして次の月経までの期間が「高温期」と呼ばれ、基礎体温グラフもきれいな2層にわかれます。
この低温期と高温期は、排卵日をさかいにわかれています。排卵日は体温が一気に低くなり、排卵日を過ぎると、体温は上昇していきます。そして妊娠をしていない場合は、排卵日から約2週間後に月経が始まり、体温は下降していきます。
妊娠していないのであれば、高温期は次の月経開始日から低温期に戻ります。しかし妊娠している場合は、黄体ホルモンであるプロゲステロンを分泌しつづけて、受精卵の発育を促したり、子宮内膜の環境を整え続けます。
黄体ホルモンには、体温を上昇させる作用があるため、妊娠している場合には、この高温期が14日以上続きます。これは基礎体温のグラフから判断できる、妊娠初期の最大の特徴といえるでしょう。
基礎体温は、黄体ホルモンであるプロゲステロンの作用で上昇します。黄体ホルモンは、体温をつかさどっている脳の体温中枢に作用し、体温を上昇させるのです。この作用は、黄体が存続している間、ずっと続きます。通常、妊娠していない時期は、約2週間続きます。
排卵のあとに受精し、妊娠が成立した場合、そのまま黄体ホルモンを出し続けるので、ずっと高温期が継続します。2週間以上高温期が続くと、妊娠の可能性があるといわれることも、こういった根拠からなのでしょう。
妊活において、基礎体温を記録することはさまざまなメリットがあります。ここでは、そのメリットについてみていきましょう。
基礎体温のグラフを2~3カ月つけていると、自分自身の基礎体温サイクルを知ることができます。健康な女性の身体は、月経周期に合わせて「低温期」と「高温期」を繰り返しています。低温期から高温期になる前には、一気に体温が下がる時期があります。
一般的には、最低体温になる前日から、高温期になる約4日間が排卵期と呼ばれ、その時期に排卵するといわれています。その時期に性交を行うと、妊娠しやすいとされているため、基礎体温をとることは妊活において重要なポイントとなるでしょう。
基礎体温をつけていると、体温が下がって月経になるはずの時期に、高温期が続くなどの体温の変化が確認できるため、妊娠の可能性に気がつくことができます。
市販の妊娠検査薬は、生理予定日の1週間後からの判定になっているものが多いです。そのため、基礎体温のほうが妊娠検査薬よりも、いち早く妊娠に気がつけるというメリットがあります。
着床したあとの基礎体温は、どのように変化していくのでしょう。
妊娠すると、基礎体温は「高温期」のまま下がりません。「排卵日」前後に妊娠した場合、高温期が14日以上続きます。基礎体温はそれぞれで違っているため、一概にはいえないのですが、一般的にはいつもの高温期の日数にプラスして、2日以上高温期が続いたら妊娠の兆候といえるでしょう。
また、病院では「高温期が18日以上続いたら、妊娠の可能性が高い」とされているようです。
妊娠をしている場合、黄体ホルモンであるプロゲステロンの影響で、体温を高くする働きがあります。そのため、高温期の時期に、さらにもう一段体温が上がる現象が起こることがあります。これは二段階上がりと呼ばれていて、原因は受精卵が着床するとき、着床しやすいように黄体ホルモンの分泌量や、働きが活発になるためだといわれています。
二段階の体温上昇があった場合は、着床時期に入っている可能性が考えられ、妊娠しているかどうかを見分けるための目安ともいえるでしょう。
あまり日本ではなじみがないのですが、高温期のあとに体温が下がり、再び上昇することがあります。これは、アメリカでは広く知れわたっている現象で「インプランテーションディップ」と呼ばれます。
卵子が着床する高温期の時期に、わずかな期間だけ一度基礎体温が下がり、再び高温期に戻る現象で、妊娠の兆候の一つといわれています。
日本ではあまり聞かない「インプランテーションディップ」とはどのような現象なのでしょう。ここでは、インプランテーションディップについて、妊娠との関係性やいつ起こるのか、着床時に基礎体温が下がる仕組みなどをみていきましょう。
インプラテーションディップは、英語でimplantation(着床)dip(低下)という意味です。その名のとおり、受精卵が「着床」する際に、急激なホルモンバランスの変化が起きるため、体温が「低下」するということなのでしょう。妊娠した人の約2割程度に見られる妊娠の兆候とされていて、アメリカではメジャーなようですが、日本ではまだあまり知られていません。
インプランテーションディップは、基礎体温の変化から知ることができます。したがって、インプランテーションディップの兆候を見つけるためには、毎日基礎体温を測り、自分の月経周期や排卵のタイミングを。把握しておくことが重要となってきます。
月経開始日から排卵後数日あたりまでを低温期、排卵日数日後から次の月経開始日までを高温期といいます。インプランテーションディップが起きるタイミングは、受精卵が子宮内膜に着床する頃です。
そのため、高温期の途中約7日目頃で、約14日間続く高温期の真ん中くらいの時期に起こるといわれています。
インプランテーションディップで基礎体温が低下するのは、1~2日程度といわれています。高温期に3日以上基礎体温が下がっているようなら、低温期に入ったと考えられます。
「インプランテーションディップの現象」と判断するのは、短い期間だけ基礎体温が低下している場合に限られます。
すべての妊娠した人が、インプランテーションディップを経験するわけではなく、妊娠していない人にインプランテーションディップが現れることもあります。インプランテーションディップは、実際に妊娠した人のほうが起こりやすい兆候で、よく見られている現象です。
しかし、なぜ基礎体温が高温期に下降するのかは、はっきりとしたことはわかっていない現状です。本当に着床が、基礎体温に影響を与えているかどうかもわかっていないのです。したがって、インプランテーションディップが見られたから妊娠をしているとはいえないようです。
インプランテーションディップは、あくまでも妊娠の可能性の目安にして、妊娠検査薬の検査結果もしくは、産婦人科で受診するようにしましょう。
インプランテーションディップとは別に、高温期が続かずに、10日以下で低温期になってしまった場合には、黄体機能不全などの病気の可能性もあるので注意しましょう。
このように、低温期に入ることが早い状態が数周期続いたら、基礎体温グラフを持って、婦人科で受診したほうがよいでしょう。
ここでは、基礎体温以外の着床時の初期症状には、どのようなものがあるのかをみていきましょう。
着床をした場合、まずおりものの変化が見られます。着床時のおりものは、量が増えたり、茶色がかった色に変わったり、においがなくなったり、状態がさらさらになったりなどの特徴があります。個人差はありますが、多くの人にはこういったおりものの変化があるようです。
排卵から14日後は、このようなおりものの変化がないかをチェックすることで、いち早く妊娠に気がつくことができるでしょう。
受精卵が着床するときに、子宮の壁を傷つけてしまい、軽い出血をともなう着床出血が起こる人もいます。少し茶色がかった、どろっとしたおりもの状のものが出たり、薄いピンク色の出血が数日続いたり、真っ赤な出血が続いたりなど個人差があり、出血が起こる人もいれば、全く出血しない人もいるようです。
ほとんどの人の出血は、微量だといわれていますが、中には生理のような量の出血がある人もいるようです。
着床出血と同時期に現れる痛みのことを「着床痛」といいます。これにも個人差があり、痛みが起こる人もいれば、全く痛みをともなわない人もいるようです。
足の付け根や腹部にチクチクとした痛みや、違和感が出ることが多いといわれています。なお、着床痛については、医学的にははっきりとわかっていないようです。
着床すると、下痢や吐き気が起こる人も少なくありません。下痢や吐き気の原因の一つは、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの分泌による、自律神経の乱れから起こるといわれています。妊娠すると、自律神経の乱れが胃腸の機能を低下させ、便秘や下痢を起こさせます。
また、自律神経の乱れが体温調節の乱れにつながり、下痢を起こしやすくなります。このようなことから、自律神経の乱れや体温低下を起こさないように、普段から身体を冷やさないようにしたり、規則正しい生活習慣を心がけるようにしたりして、気をつけましょう。
着床すると同時に、だるさや眠気、鼻水や寒気、下痢といった風邪のような症状がみられる人もいます。排卵期から高温期に移って、体温が上昇することにより、こういった症状が起きやすくなるようです。
高温期は、排卵してから胎盤が完成する4カ月頃(12~15週)まで続きます。17日以上高温が続いた場合は、妊娠の可能性があるので、安易に風邪薬や下痢止めなどは、飲まないようにしたほうがよいでしょう。
しかし、基礎体温が38℃を超える場合は、風邪やインフルエンザの可能性も考えられます。そういったことをふまえると、やはり普段から基礎体温をつけることはおすすめといえます。基礎体温を記録することで、体調の変化がわかり、妊娠なのか病気なのか、見分けがつきやすくなるからです。
妊娠すると、おりものや体温の変化、着床痛や着床出血、下痢や吐き気、風邪のような症状など、ホルモンバランスの変化によりさまざまな症状が起こります。その際、妊娠による体温の上昇なのか、病気によるものなのかは、基礎体温の測定を習慣化することによって自分の身体のリズムを知ることができ、見分けがつきやすくなります。
また、基礎体温をとることで、インプランテーションディップの現象により体温が急に低下したら「妊娠かもしれない」と妊娠の可能性にいち早く気づくことができるのです。お腹に赤ちゃんができたらすぐに気がつけるように、日頃から基礎体温グラフをつけて、かわいい赤ちゃんを無事に迎えられるようにしておきましょう。