子宮外妊娠(異所性妊娠)と診断されたら、とても不安な時間を過ごすことでしょう。妊娠はとてもデリケートで、さまざまなリスクがあります。まずは、知っておいてほしい基礎知識と、重要になるその後の処置について、丁寧に解説していきます。
子宮外妊娠と診断された方の状態によって、治療法が変わってきます。今後の母体への影響を考えて、早めの対処が必要になるケースもあります。まずは、ドクターの指示通りに、こまめに診察を受けて、しっかり治療の方針を話し合い、分からないことは、納得いくまで質問することが大切ですね。
子宮外妊娠と診断された方、親しい間柄の人が診断されたのでネットで調べている方が、この記事を読んでいらっしゃるのでしょう。「子宮外妊娠という言葉は聞いたことがあるけど、具体的なことは何も知らない」「子宮外妊娠(異所性妊娠)という言葉自体知らなかった」という方がほとんどだと思います。そして、今一番不安に感じておられるはず。少しでも不安やリスクを取り除けるよう、必要な情報をお伝えしていきます。
さて、「子宮外妊娠(しきゅうがいにんしん)」とは、どのような病気なのでしょうか。本来は子宮内膜に着床するはずの受精卵が、子宮以外の部分に着床してしまうことを指します。
しかし、子宮内に受精卵があっても、正しい位置ではなく、成長できない腹膜や卵巣、卵管、子宮頚管などで着床することもまれにあり、これを総じて「異所性妊娠(いしょせいにんしん・Ectopic pregnancy)」と呼んでいます。
つまり、「子宮外妊娠」と「異所性妊娠」はほぼ同義。医療現場では、異所性妊娠を正式名称としており、変更されつつありますが、どちらの名称でも、ネットで検索できる現状です。ここでは分かりやすくするため、一般的に知られている子宮外妊娠で、統一して表記していきます。
胎児が成長するためには、子宮内膜で着床されなければなりません。子宮外妊娠は、妊娠という言葉がついているので、「医学的な処置で出産が可能になるのでは」と思っている方もいらっしゃいます。ですが、とても残念なことですが、子宮外妊娠の場合は、妊娠の継続や出産はできません。
気落ちされるかもしれませんが、今、大切なのは「母体の安全」。そして、また落ち着いたころに次の妊娠を考えられるように、適切な治療をキチンと受けておきましょう。
個人差がありますが、子宮外妊娠であっても、妊娠している状態なので、つわりはあるようです。ただ、比較的、軽いつわりで済むとされています。
つわりは、妊娠2カ月頃から始まって、3~4カ月頃にピークを迎えます。そして5カ月を過ぎれば、徐々に落ち着いてくるのが一般的。ピークを迎える3~4カ月頃は、週で数えると8週目から12週目。子宮外妊娠の処置は、たいてい8週目で行います。
つまり、ピークを迎える前に、子宮外妊娠は処置をするので、ひどいつわりを経験しないことが多く、軽いつわりですむとされています。
妊娠検査で陽性反応が出るように、基礎体温も妊娠時の状態である高温期のまま。着床した箇所が適切でないだけで、妊娠しているので、胎児が成長しつづけている限り、高温期が継続します。
子宮外妊娠は全妊娠の約1%~2%の確率で発症するとされています。対象とする人種、国によって発生する確率は異なりますが、日本や欧米ではこの範囲に数値が収まっています。
市販の妊娠検査薬で陽性と判定されても、正しい位置に着床したかどうかは判断できません。4週目くらいまでは胎嚢が小さく、診察での判断がつきにくいためです。一般的に妊娠6週目になると、エコー検査で子宮に胎嚢(たいのう)が出来ているかどうかを確認でき、正常妊娠かどうかの診断をしてもらえます。
ここで注意していただきたいのは、子宮外妊娠の可能性があると伝えられた方です。あまり重く受け取らず、忙しさにかまけて、次回以降の診察を遅らせてしまうのは、とても危険。診察の結果次第では、速やかにキチンと処置をする必要があるからです。
そのままにしておくと、場合によっては、卵管などの破裂による大量出血で命にかかわる可能性もあります。実は、子宮外妊娠は母体にとってもリスクが高いもの。ドクターの指示に従って、産婦人科を受診し、経過をみてもらいましょう。
また近年、子宮外妊娠のリスクは増えています。理由としてあげられるのが、晩婚化が進んだことや、不妊治療が広く浸透し、体外受精を受ける方が増えたからだと、いわれています。体外受精で子宮内に受精卵を置いても、自然現象で卵管に戻ってしまうことがあり、その場合は子宮外妊娠になることを知っておきましょう。
さて、子宮外妊娠の原因は、いったい何でしょうか。子宮外妊娠のメカニズムが全て解明されたわけではありませんが、大きな原因として卵管の異常があげられます。また、既往歴や手術歴によっては、子宮外妊娠が発症しやすい女性がいます。具体的にみていきましょう。
受精卵は、卵管内の「繊毛」が動くことによって、子宮内膜へと運ばれ着床。しかし毛の動きが悪い場合は、卵管内でとどまり、着床してしまうことに。また、病気による炎症で卵管自体が狭くなっていると受精卵が移動できず、やはり、卵管内で着床してしまいます。
なんと子宮外妊娠の症例の約90%以上が、このような卵管内での異常で引き起こされています。
子宮外妊娠の原因として考えられる、医療行為が、いくつかあります。ただ、下記のような医療行為を受けた場合、必ずしも100%子宮外妊娠になるというわけではありません。
腹部手術が妊娠と関係あるの?と思う方もいらっしゃるかもしれません。これは、開腹手術(帝王切開、虫垂炎など)を受けると、内臓が少なからず空気にふれることになります。そうすると、内臓同士が癒着しやすい状態に。このとき、卵管と癒着していれば、子宮外妊娠を起こしやすくなってしまうのです。
ある特定の病歴については、子宮外妊娠になりやすい傾向があります。例えば、卵管の病気や子宮内膜症など。子宮内膜症の多くは自覚症状がないため診断されず、妊娠して初めて本人に知らされることが多いので注意が必要です。
生理が重く辛い方は、子宮内膜症を疑って、一度婦人科を受診しておきましょう。ほかにも、子宮外妊娠の既往歴がある方は、再発する可能性が約10%~15%くらいあるといわれています。
クラミジアや淋病などの性感染症や大腸菌、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌などの感染症にかかったことがある方は、子宮外妊娠のリスクが高まります。とくに、クラミジア感染症は、卵管炎に進行すると不妊症の原因になる可能性もあるため注意が必要で、卵巣に炎症がある状態では、子宮外妊娠になるリスクが20%程度あるとされています。
クラミジアの治療は、薬物による治療。現在、内服タイプの抗生物質「ジスロマック」 が一番代表的で、多くのドクターによって処方されています。服用は1回飲むだけで治療は完了。必ず、パートナーと一緒に、しっかり治療を受け完治しましょう。
クラミジアの再発検査を投薬の3~4週間後に行います。その検査で陰性であれば、「完治した」とみなされます。 クラミジアを完治させるには、ジスロマックを飲んだ日から数えて、おおよそ1カ月程度の期間が必要になることも覚えておいてください。
二回目以降の妊娠、つまり経産婦の方は子宮外妊娠になる確率が高くなる傾向が。とくに、前回の妊娠との間隔が長い(5年以上)の場合、子宮外妊娠のリスクが高まります。
また、40歳以上の妊婦は、子宮外妊娠の発生率が10代に比べて、3倍以上になるというデータが出ています。
タバコを吸う人はタバコを吸わない人に比べて、子宮外妊娠になる可能性が倍以上になるとされています。タバコの煙を吸うことで影響をあたえるのです。周囲の人が吸う場合もリスクは同じです。子宮外妊娠が引き起こされる確率が2~4倍になるという研究結果も発表されています。
子宮外妊娠の診断はどのように行われるのでしょうか。正常妊娠であれば、妊娠5週目位から、子宮内に胎児を包む袋のような胎嚢(たいのう)が確認できます。しかし、子宮外妊娠が疑われる場合は、尿検査で陽性反応が出ているにもかかわらず、妊娠6週目になっても、胎嚢が確認できません。
ドクターが子宮外妊娠の確定診断を下すには、内診や血液検査、エコー検査(超音波検査)、ダグラス窩穿刺、子宮内容除去術、腹腔鏡など、いくつかの方法で総合的に判断する必要があります。診断を受けるタイミングは妊娠後6週目以降がベストでしょう。
前述の通り、診断が可能なのは妊娠6週目以降。エコー検査で胎嚢を確認できるのが、だいたい妊娠6週目以降だからです。さらに、エコー検査と合わせて検査するのが、hCG血液検査。採血してhCGホルモンの数値を測定します。正常な妊娠ならばhCG値は10週目くらいまで倍々に急増していきます。ところが、減少傾向であったり、横ばい傾向ならば、子宮外妊娠や流産が疑われます。
このように、子宮外妊娠の半数はエコー検査とhCG検査で診断が可能です。しかし、残りの半数は診断がつきにくく、さらに経過観察と、確定診断を下すための検査を受けることになります。
経膣超音波はエコー検査(超音波検査)より、さらに精密な検査が可能に。経膣超音波では映像で子宮や卵巣の中の様子を確認できます。プローブという棒状の細い器具を膣内に入れて行き、身体の中で超音波を発信させ、跳ね返ってくるエコー映像をモニターに映し出して、子宮外妊娠かどうかを診断します。
内診では手が届かない、触れられない部分も確認することができます。妊娠初期の、小さな胎嚢を見つけやすいことや、子宮外妊娠の場合は、着床個所を、より正確に把握します。
超音波で子宮の周囲を観察しながら、膣のつきあたりに長い針を刺し、子宮の後部の腹腔まで刺し入れます。腹腔内に出血が溜まっているかどうか、吸引することで判断。出血が溜まっているなら、子宮外妊娠がほぼ確定します。ただ最近は、経腟超音波が開発され、この目的だけで本検査が行われることは少なくなっています。
上記の検査でも判断がつかない場合に、行われる検査・処置です。ただ、正常妊娠の可能性が全くないことを確認したうえで行う必要があります。
子宮内容除去術によって、子宮内に絨毛組織を確認できれば、子宮外妊娠は否定できます。脱落膜のみの場合は、さらに確定診断のため腹腔鏡が用いられることもあります。腹腔鏡は確定診断に引き続き、治療を進められるメリットがあります。
ご本人が妊娠に気づいていない場合もあります。医療現場では、妊娠可能な女性が不正出血、下腹部の腹痛、腰痛、失神、ショック状態の症状を訴えている場合は、「まず、子宮外妊娠を疑え」といわれているほどです。
子宮外妊娠はリスクが大きくいったん、重症化すると急激に悪化します。このような場合は、妊娠検査を行います。さらに診断の確定に必要であれば、腹腔鏡で直接患部を観察することも。
子宮外妊娠の症状は妊娠6週頃までは出ないことが多いです。しかし、妊娠週数が進み、受精卵が成長するにつれて、下腹部痛や腰痛、不正出血の症状がみられるようになります。ただし、生理や正常妊娠のときの症状と似ているため、自分では子宮外妊娠かどうか判断できません。すぐに産婦人科を受診しましょう。
さらに妊娠7?8週頃になると、受精卵が大きくなりすぎて卵管破裂を起こす危険性もあります。卵管破裂によって腹腔内に大出血が起こると生命にかかわるので注意しましょう。
【子宮外妊娠の主な症状】
妊娠に気づかず、子宮外妊娠による「不正出血」を、「生理出血」と勘違いして、発覚が遅れてしまうことが多々あります。勘違いをしてしまう理由は、不正出血と生理出血がどちらも似ていて区別が難しいから。
不正出血の量や期間も、個人差があって、少量で1日~3日ほどの方もいれば、大量で10日以上続く方もいます。妊娠が可能な女性であれば、いつもの生理と様子が違っていて、「不正出血かな」と思ったら、必ず婦人科を受診するようにしてください。
では、子宮外妊娠と確定診断された後は、どうのような処置や治療がおこなわれるのでしょうか。大きく分けて、細やかな経過観察をする場合、外科手術を行い処置する場合、薬物による治療をする場合の3つです。この章では、まず経過観察を選択する場合についてみていきましょう。
着床したものの子宮外妊娠で、胎児が育たずに自然に流産したり、腹腔内に着床した胎児が周りの組織に吸収されるのを見込めるようだとドクターが判断できる場合は、選択肢の一つとして、経過観察を選択。経過観察は、手術せずに検査の数値や母体の状態を、細かく経過観察し自然な流産を待ちます。
この場合、妊娠時に分泌されるホルモンに反応するhCG値が判断材料になります。hCG血液検査を行って、血中のhCG数値が次第に減少してきていること、受精卵の大きさが小さく破裂する可能性が少ないこと、母体の健康状態がよいことのすべての条件が揃えば、経過観察で様子をみます。ただ、明確な基準は決まっていないので、ドクターの判断によるところが大きいです。
それでは、経過観察の処置のメリット・デメリットをみていきましょう。
経過観察のメリットは、とにかく母体への負担が、最も少ないという点にあります。自然にまかせるので、負担がない分、次の妊娠への体力や妊娠力の温存がしやすいです。
ただ、デメリットもあります。経過観察の中でhCG値が減少がみられず、妊娠の継続がみられたり、受精卵の大きさが増大した場合は、母体のリスクを考え、開腹手術が必要になる可能性があります。そのことを常に念頭に置いて、ドクターの指示通り診察を受けて、急変した際に迅速に対応できるようにしましょう。
経過観察のために外来で通院する診察費用が必要。また、緊急に手術が必要になった場合は、ケースバイケースで、一般的な費用算出はできません。所得や病状など個人差がありますが、治療レポートの体験談によれば、10万~20万とかなり幅があります。
経過観察は、hCG値の推移をみるために、受診のたびに、血液検査などがあります。7週目以降は卵管などの破裂の可能性が高くなるので、ドクターと相談しながら、安静に過ごしましょう。
前の章で説明した、経過観察で自然治癒できるのは、約18%。残りは、やはり外科手術へ移行して、治療することになります。また、産婦人科診療ガイドラインでも、母体の安全を考えて、最も推奨度が高い治療法となっています。
外科手術には、主に3種類あります。現在、最も一般的なのは、腹腔鏡手術です。卵管破裂などの危険が高い場合や卵管峡部妊娠の場合、胎児心拍が保たれている場合などは、開腹手術を行います。
手術の種類や症状によって、またご本人の体力によって、社会復帰できるまでの期間には、個人差があります。目安として一般的に、症状が軽い場合は、腹腔鏡手術で入院が5日程度で退院後、術後の経過が良ければ、1週間の療養ですみます。
ただ、症状が悪化し開腹手術をした場合などは、入院に10~14日かかります。退院後も自宅療養が1カ月ほどかかります。心もカラダも疲れているので、無理をせず、ゆっくり療養しておきましょう。
どちらの場合も、軽い運動であれば、ウォーキングなど無理のない範囲で、行ってよいとされています。社会復帰までの間、気分転換に毎日、外でウォーキングしてみましょう。
前述の通り、腹腔鏡下卵管圧出術は、子宮外妊娠の外科手術で最も多く、選択されている手術方法です。卵管に着床している胎嚢を、鉗子(かんし)などで、絞り出すように排出する方法。胎嚢がもっとも小さい段階で行う手技とされていますが、卵管切除に移行すべき大きさについての基準はいまだ決められておらず、ドクターの経験と判断によるところが大きいです。
つぎに、腹腔鏡下卵管圧出術のメリット・デメリットについてみていきましょう。
胎嚢が比較的小さい場合は、卵管の保存が見込める、この手術方法を選択します。卵管をそのまま残せるので、母体の負担が比較的少なく、術後の妊娠の可能性も高まります。
温存した卵管が手術後に癒着を起こしてしまうことがあります。癒着を起こしてしまった卵管だと、次の妊娠の際、また子宮外妊娠を再発してしまうリスクが高くなります。
また、受精卵の絨毛組織が残ってしまうリスクや、圧出時に出血をともなうこともしばしば。そのため、手術方法についてドクターからよく説明してもらう必要があります。ドクターとしっかり相談しましょう。
胎嚢がある程度大きくなっていた場合は、卵管を残存できず、再度、別の手術をする可能性があります。
この手術方法だと、母体への負担が最小限に抑えられるので、個人差はありますが、全体の80%~90%は2日以内に退院できます。
普通の正常妊娠による出産の場合は、健康保険の適用外ですが、子宮外妊娠の外科的治療の場合は、健康保険の対象となり保険を使えます。治療レポートの体験談によれば、医療機関や入院期間によって差はあるものの、約13~20万円の3割負担が一般的です。
卵管を長軸方向に切開し、卵管に着床している胎嚢を吸引した後、切開部分を塞ぐ手術方法です。卵管圧出術では除去できない大きさでも、まだ出血がない場合は、腹腔鏡を使用するのが一般的。患者ご本人に、今後の妊娠希望がある場合で、下記の条件が揃えば、この手術方法が適応されます。
【腹腔鏡下卵管線状切開術の条件】
腹腔鏡下卵管線状切開術のメリット・デメリットをみていきましょう。
胎嚢が比較的小さい場合は、卵管を切除せずに、卵管の保存が見込める手術です。次回の妊娠の可能性が高まります。
腹腔鏡に熟練したドクターがいない場合には、手術を受けられない可能性もあります。また、次回の妊娠の際、手術による癒着が原因で、子宮外妊娠を再発する可能性が約15%あります。
個人差はありますが、こちらも全体の80%~90%は2日以内に退院できます。
こちらの子宮外妊娠の手術についても、健康保険の対象。治療レポートの体験談によると、医療機関や入院期間によって差はあるものの、約13~20万円の3割負担が一般的とされています。
卵管切除術は、開腹して胎嚢部分を、卵管ごと切除する手術方法です。3つの手術の中で、最も確実な手術方法で、根治手術とも呼ばれています。
卵管切除術のメリット・デメリットをみていきましょう。
もっとも経験則の積まれた手術で、開腹、腹腔鏡下、どちらでも行うことができ、安全な手術です。卵管などが破裂した場合は、この手術方法を選択します。
開腹の場合は、入院期間が長期になる可能性も。また、片側の切除の場合は、次回の自然妊娠の確率が低下したり、両側の場合は、自然妊娠が望めなくなります。ただ現在は、体外受精が一般的に広まり、妊娠するための方法は残されています。
子宮外妊娠の手術は、腹腔鏡で行う場合と開腹手術を行う場合で、入院期間に、ずいぶん違いがでてきます。
個人差があり一概にはいえませんが、腹腔鏡下手術の場合は最低3?5日、開腹手術の場合はもっと長期間で最低でも10日~14日ほどみておきましょう。
こちらの子宮外妊娠の手術についても、健康保険の対象となります。治療レポートの体験談によると、医療機関や入院期間によって差はあるものの、約13~20万円の3割負担が一般的のようです。
経腟超音波でとく問題がなく、腹痛などの自覚症状もない子宮外妊娠や、子宮外妊娠の部位が特定できない場合などに、胎嚢組織を消失させる目的で薬物を使用します。日本産婦人科学会のガイドラインでは、手術を行うのが困難なケースなどに有効だとしています。
ただし、薬物による治療効果がみられないこともあり、その場合は、手術に移行する場合も。そのため、経過を細かく見守る必要があります。
薬物による治療は、主にメトトレキセート(MTX)という抗がん剤を使用しています。欧米ではメトトレキセート(MTX)の使用がかなり増えてきていますが、日本ではまだ、子宮外妊娠に対する使用は保険適応外となっているので、100%自己負担になるため、普及していない現状です。
それでは、メトトレキセート(MTX)による薬物療法のメリット・デメリットをみていきましょう。
基本的に手術は行わず、外来で処方可能なため、入院の必要がありません。民間企業の医療保険などのオプションによっては、外科手術より負担する費用が安くなる場合があります。
また、胎嚢が超音波で発見できない場合でも、選択可能な治療法です。卵管を切除しないため、次回の妊娠の可能性があります。
保険外なので費用が高くかかります。医療機関によって違いはありますが、1クールで約5万円ほど、費用がかかります。効果は個人差があり、1クールで胎嚢が全て消失し、治癒するとは限りません。必要であれば薬物療法を続け、それでも効果がなければ、前述の通り、手術へ移行することも。
メトトレキセート(MTX)を投与した後は、半年間は妊娠できません。高齢での妊娠を希望している方には、時間のリスクが大きい治療法なので、ドクターと相談・検討する必要があります。
また、使用されるメトトレキセート(MTX)は抗がん剤なので、下記のような副作用があります。ただし、すべての方に、全ての症状がでるわけではなく個人差があります。
【副作用】
薬物療法の場合、使われる薬剤への保険適用がなく、100%自己負担になるので注意が必要。個人で民間企業の医療保険に入っており、保険のオプションで対象になる場合もあります。ご自分の保険内容を、詳しくチェックして、加入している保険会社にも、問い合わせてみましょう。
「妊娠かも」と喜んでいたのも、つかの間、聞き慣れない「子宮外妊娠」と向き合うのは、とても辛いことだと、お察します。ですが、まずは母体の治療に専念してください。貴女を大切に思っている家族や友人たちがあなたの回復を待っているはず。次の妊娠は治癒した元気な心とカラダになってから考えていきましょう。