体外受精と顕微授精は、双子や三つ子など多胎妊娠の可能性が高いといわれています。
それは、受精卵を複数子宮内に入れることができるためです。
一方、多胎妊娠による母体や胎児へのリスクが高まることへの不安を抱いている方も多いでしょう。
双子が生まれる確率、多胎妊娠になりやすい理由、母体や胎児への影響などを、予め理解しておくことが、安心して不妊治療を受けるためには大切なことです。
自然妊娠の場合、一卵性双胎の確率はおよそ0.3~0.4%、二卵性双胎の確率は約0.2~0.3%といわれています。
体外受精や顕微授精で双子を妊娠する確率は、以前は約15〜20%でした。
多胎妊娠となりやすい理由は、妊娠率を高めるために赤ちゃんの元となる受精卵(胚)を2個以上、子宮へ移植する二段階胚移植法が行われていたため、2つ以上の受精卵が着床することが多かったからです。
多胎妊娠には、母体や胎児へのリスクも少なからずあることから、2008年に日本産婦人科医学会が体外受精・顕微授精で移植する受精卵は原則1つと決めました。
その結果、現在では二卵性の双子を妊娠する確率は約4%まで減少しています。
多胎妊娠の確率が4%に下がったといっても、自然妊娠に比べて双子が生まれやすいことには変わりありません。
2012年の統計では、1年間で体外受精や顕微授精で生まれた赤ちゃんのうち25人に1人が双子で、3000人に1人が三つ子でした。
体外受精や顕微授精に限らず、多胎妊娠では脳性麻痺や精神発育障害、未熟児網膜症といった神経学的後遺症のリスクが高くなるといわれています。
2008年に日本産科婦人科学会が出した報告書では、1人だけの妊娠に比べ、多胎妊娠のリスクは数倍にまで高まるとされています。
一卵性双生児の場合でみてみると、胎盤一つを共有した状態の時が、胎児にとって最もリスクが高くなるようです。
母体からの血液の循環が、双方の胎児でアンバランスになってしまうため、羊水の量にもムラができ、心不全や発育障害の原因になると指摘されています。
また多胎児の場合、2,500グラム以下の未熟児になることも多く、脳性麻痺や奇形などのリスクについても懸念されています。
多胎妊娠では、早産、流産のリスクが高くなるとされています。
それは体外受精や顕微授精を受ける方が30~40代が多く、高齢出産の割合が高いことが早産や流産のリスクを高めている要因でもあります。
妊娠初期であれば、流産の可能性は単胎妊娠の時の倍ほどになりますが、母体への負担は2倍になるのに、赤ちゃんへの栄養補給は半分になるからです。
障害を持って生まれてくる可能性、出産後すぐにNICUで管理入院となる可能性なども、決して少ないとは言い切れません。
どんなに頑張っても、赤ちゃんが授からない夫婦が、最後の手段として選択するとされているのが、体外受精や顕微授精です。
双子を望む夫婦が、双子を授かれると、喜びはひとしおでしょう。
でも、喜んでばかりいられないのが、多胎妊娠による母体や胎児へのリスクです。
リスクを敬遠して赤ちゃんを諦めるか、それでも赤ちゃんを求めるか、まさに究極の選択を迫られるわけですが、なぜ双子の可能性が高いのか、リスクにはどのようなものがあるか、リスクに対応する方法は…などを、予め理解しておくことで、少なくとも精神的なリスクは取り除かれるはずです。
パートナー間はもちろん、お互いの両親や家族とも十分に話し合いましょう。
そして、納得のいくまで担当医とも相談しましょう。
その先に、きっとあなたが求める答えがあるに違いありません。