不妊の約半数は、男性側に原因があるといわれています。
しかし、具体的な症状や検査方法・治療法については、まだ広く知られていないことが多い男性不妊。
妊活をより効果的・効率的に進めていくために、考えられる原因と正しい対処を学んでいきましょう。
女性側の治療に比べ、男性の不妊治療は低コストなのが特徴とされます。
症状によってはサプリメントの摂取や生活習慣の見直しなどで改善できることも多く、金銭的、時間的、また精神的にも負担が少ない傾向があります。
検査や治療など具体的な行動に移る前に、男性の不妊についてまずは知りましょう。
男性の不妊にはいくつかの要因があり、症状や程度によって対処法が変わってきます。
精液中の精子の数が少ない、運動率が低い、奇形率が高いなど、精子の異常によるもの。
EDと称される勃起機能の低下。
生まれつき精管がないなど先天的要因。
早漏、遅漏などの射精障害も不妊の原因になり得ます。
不妊治療を行うにあたり、早い段階で適切な検査を受けて要因を突き止めることが重要です。
男性不妊の9割が、造精機能障害=精子を作る機能の障害だといわれます。
先天的な要因が大きいとされますが、毎日の生活習慣も造精機能に影響を与えます。
バランスの悪い食事、睡眠不足、ストレスの蓄積、運動不足、不規則な生活など、不健康な日々の積み重ねが精子の形成に悪影響を与えるのです。
精子は酸化に弱いため、体内における活性酸素の発生を極力抑える努力が必要です。
活性酸素は、身体に害となるものが発生する、あるいは入ってくると増加します。
栄養バランスのとれた食事、禁煙や禁酒のほか、ストレスをためない生活、禁欲期間短縮の心がけなどが大切とされます。
造精機能障害のうち最も多いといわれるのが乏精子症(ぼうせいししょう)です。
精液中の精子の数が著しく少ない状態です。
世界保健機関WHOでは精液検査の基準値を定めていて、濃度に関しては「精液1ml中に精子1,500万以上」を提唱しています。
多くのクリニックでこの基準が採用されていて、数値が下回ると不妊と診断されることもあります。
治療は程度によって、生活習慣の改善や薬物療法などが選択されます。
体外受精、人工授精、顕微授精の対象にもなります。
男性不妊のうち最も重症とされるのが、無精子症。
文字通り精液中に精子がいない状態のことを指しますが、その原因によって2つに分類されます。
通り道に問題があり、精巣で精子は作られているのに出てこられない「閉塞性無精子症」と、精巣の機能に問題があって精子が全く作られていない、またはほぼ作られていない「非閉塞性無精子症」です。
精子を採取するには手術が必要です。
精子が1匹でも存在すれば、あくまで理論上は、顕微授精などを駆使したうえでの妊娠が可能ということになります。
無精子症は100人に1人の割合でいるとされます。
自然妊娠するためには精子の運動率は40%以上が必要とされ、それより低いと不妊の可能性があります。
運動率とは「精液中に動いている精子がどれだけの割合いるか」を表します。
健常な運動率は60~80%です。
ただ、妊孕制(にんようせい)=妊娠する能力は、精液量と濃度も考慮に入れた総運動精子数、つまり実際に存在する動いている精子の数を算出してから判断します。
運動率が低いだけでは、必ずしも不妊とはいえません。
健康な精子を採取し、体外受精などを行うことになります。
乏精子症と合併している場合が多い症状です。
勃起不全の定義は「勃起が不十分なため、通常性交の75%以上で性交が行えない状態」です。
つまり、性行為12回中9回で十分に勃起せず性交が失敗したなら勃起不全です。
勃たない、途中で萎えてしまうなど性交自体ができない場合や、以前と比べ硬さが弱くなってきたなど満足に性交できないと感じる場合に、薬による治療が選択可能です。
精子の異常や勃起不全以外にも、男性不妊にはさまざまな症状があります。
精液が出ない「無精液症」、精液が膀胱に逆流する「逆行性射精」、正常な射精ができない「射精障害」、精巣の血流異常が起こる「精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)」、精管がない「先天性精管欠損」、前立腺などの炎症により精液中の白血球が増加して精子の運動性に問題が出る「膿精液症」などがあります。
症状は単独であったり合併していたりすることもあるのです。
専門の泌尿器科や不妊外来で、まずは精液精子検査を行います。
精液を採取し、精液量や精子の運動率、奇形数などを調べます。
ここで異常が認められれば診察に移り、問診と触診が行われます。
さらに症状に応じて、超音波検査で精索静脈瘤の有無を、内分泌検査でホルモンの状態を、血管内皮機能検査で血管年齢を調べ、精子形成に悪影響がないかを判断します。
血液・尿の両方で性感染症の検査も行います。
無精子症では染色体・遺伝子検査が勧められることもあります。
病院に行かず、スマートフォンのアプリで気軽に精液を調べる方法もあります。
Seem(シーム)は、アプリのインストールと専用キットの購入で精子をセルフチェックできる新しいツールです。
キットは精液採取用カップやスマホに取り付ける顕微鏡レンズがセットになっていて、スマホで精液を撮影するとアプリが精子の状態を解析・測定してくれます。
使い方や購入方法は公式サイトに紹介されています。
多くの男性にとってハードルが高い受診のきっかけ作りにも活用できます。
亜鉛は、ホルモンの分泌に働きかける栄養素で、健康な精子形成に不可欠とされています。
体内で作られないため、食事などから摂取する必要があります。
成人男性の亜鉛の推奨摂取量は10mg/1日です。
アルコール分解時に消費されるので、飲酒の習慣がある場合は不足が心配されます。
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精子の数が少ない場合に有効といわれているのが葉酸です。
継続摂取により正常な精子の数が増加するとされます。
葉酸の1日の推奨摂取量は240マイクログラムです。
飲酒の習慣がある、貧血気味、野菜や果物が嫌い、肌荒れがある、このような場合は、食事による摂取量が足りていない可能性があります。
精子の運動率に問題があるなら、アミノ酸。
精子の数や運動性を上げるとして有名なのが、アルギニンというアミノ酸です。
精子合成の主要成分でもあります。
アルギニンはEDの改善や疲労回復にも効果があるとされ、免疫機能の向上にもつながるといわれます。
体内では合成されない必須アミノ酸です。
闇雲に治療法を探るのではなく、まずは不妊症について理解を深め、次に何が問題なのかをしっかりと把握することから始めてください。
症状によっては、簡易的な方法で改善を目指せるかもしれません。
安易には扱いにくい話題ですが、デリケートな問題だからこそ、夫婦で正確な知識を共有していきましょう。