治療費が高額になりがちな不妊治療は、申請すれば助成金が受け取れることもありますが、所得制限が設けられていることが多いのが現状。
所得の計算方法など、助成金の申請に必要なさまざまな知識を深め、受け取れる助成金の確認に役立てましょう。
不妊治療を始めたはいいけれど、助成金を申請する際の所得制限や、所得の算出方法がわからないと悩んでいる方も多いはず。
所得制限や所得の算出方法など、決まりや計算方法が難しいのが現状です。
知っておきたい不妊治療の助成金や所得制限について理解していきましょう。
不妊治療の費用はとても高額です。ですが、経済的な理由で子どもを諦めたくありません。
そんな方たちのために、不妊治療の中でも特に高額な体外受精と顕微授精に助成金を支払う「不妊に悩む方への特定治療支援事業制度」が設けられています。
この助成金の制度には所得制限が設けられています。夫婦合算の所得が730万円以上の方は助成金を受け取ることができません。
ただし、この所得というのは、収入のことではありませんので注意してください。
また、助成金を受けられない場合でも、医療費控除や高額医療用制度を使って費用を抑えることができます。
助成金の種類でまずあげられるのは、特定不妊治療助成事業です。
対象となる治療方法ですが、「特定不妊治療」と呼ばれる「体外受精」と「顕微授精」になります。
この助成金は国から支給されるもので、自治体の指定を受けた医療機関で体外受精もしくは、顕微授精の治療を受けた場合に助成金が支給されます。
自治体の指定を受けている医療機関につきましては、厚生労働省のホームページにあるリンクより調べられます。
助成の対象者は、
「特定不妊治療以外の治療法(タイミング法や人工授精)では、妊娠の見込みがないか、または極めて少ないと医師に診断された、法律上の婚姻をしている夫婦」
とあります。
つまり、事実婚のカップルは助成の対象外になります。
また「治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満である夫婦」と、されています。
助成の限度額についてですが、1回の体外受精もしくは顕微授精につき初回のみ30万円、2回目以降は15万円となっています。
ただし、治療が途中で終了した場合や、凍結胚移植(採卵を伴わないもの)については、1回の助成金が7.5万円までになってしまいます。
通算助成回数については、初めて助成を受けたときの治療期間の初日における妻の年齢が40歳未満であるときは6回、40歳以上であるときは通算3回までとなっています。
平成27年度以前に初めて助成を受け、助成を受けるときの治療期間の初日における妻の年齢が40歳以上43歳未満の夫婦の場合、今後も助成を受けることができますが、27年度以前に治療を受けた回数もカウントされているので注意が必要です。
また、この助成金制度とは別に、お住まいの市区町村によっては、不妊治療に助成金がでる場合があります。ただし、お住まいの地域によって制度はバラバラなので、一度ご確認していただくことをおすすめします。
男性の不妊治療の助成金ですが、平成27年までは1回しか受けられませんでしたが、現在はすべて特定不妊治療と同時申請の場合、計6回受けられるようです。
(上限回数は特定不妊治療助成も含めて6回。ただし、妻の初回助成対象治療時の年齢が40歳以上の場合は3回になる。)
金額については、初回のみ30万円、それ以降は1回につき最大で15万円となっています。
参考:市町村区ごとの助成金検索
この助成金制度ですが、年間所得が大きいと受けることができません。
年間所得が730万円未満ならば受けられます。
ただし夫婦共働きの場合は、年間所得が合算されるので注意が必要です。
「夫婦共働きでバリバリ仕事しているから、助成金制度の対象外かもしれない…。」
と思われている方もいることでしょう。
お住まいの自治体によっては、所得制限がなかったり、所得制限を撤廃しているところがあります。
東京23区内でも、区がちがえば助成制度もちがいます。
世田谷区では1回につき5万円または10万円の金額上乗せがあります。
杉並区でも金額の上乗せがあるのですが、1回につき2.5万円または5万円と少し少ないです。
また港区では、区独自の助成制度には所得制限がないので、所得制限に引っかかってしまう夫婦には魅力的でしょう。
1年度に30万円まで助成してもらえます。一度お住まいの自治体のホームページを確認しておきましょう。
参考:港区(所得制限がない)
参考:神戸市(所得制限撤廃)
参考:茨木市(所得制限がない)
「所得の計算ってどうしたらいいの?」
とお困りの方は多いことでしょう。
所得とは、「収入から経費(給与所得控除)を引いたもの」になります。
ですが、特定不妊治療に係る所得の算出方法は、「所得額算出表」を使って計算します。
この所得額算出表をもとに計算式を出すと会社員の場合、
「総所得額ー児童手当法施行令第3条第1項の控除額(80,000円)ーその他の控除額=夫婦それぞれの所得額」
になります。
自営業者の方ですと、
「総収入ー必要経費ー児童手当施行令第3条第1項の控除額(80,000円)ーその他の控除額=夫婦それぞれの所得額」
になります。
そして、夫婦それぞれの所得額を足したものが、所得になります。
総所得額は源泉徴収票で言いますと「給与所得後の控除金額」を使います。
その他の控除額というのは、雑損控除額(実際に控除された額)、医療費控除額(実際に控除された額)、小規模企業共済等掛金控除額(控除額)、障害者控除額(該当者人数×27万円)、障害者控除額{特別}(該当者人数×40万円)、勤労学生控除額(該当する場合27万円)となっています。
参考:所得額算出表
申請に必要な書類ですが、たくさんありますので忘れずに準備しましょう。
お住まいの地域によって準備する書類が多少違うので、市区町村のホームページは必ず確認しましょう。
必要な書類:特定不妊治療費助成事業受信等証明書、治療費の領収書と明細、住民票、所得証明書、各自治体が指定する書類等
申請についてですが、夫婦の住民票のある自治体で行います。
申請方法については、政令指定都市や中核市に住んでいる人は市役所、それ以外の方はだいたい都道府県庁に窓口が設置されているので、そこで受付をします。
お住まいの地域によっては、郵送のみでの申請と限定されている場合もあるようです。
郵送の場合、届くまでに時間を要することもありますので、余裕を持って早めの提出を心がけましょう。
期限は各年度の1月から3月が目安です。
ちなみに、2月から3月は大変混み合うので、不妊治療後なるべく早く提出するのがよいでしょう。
お住まいの市区町村によっては、3月中に書類が提出できない場合でも、条件を満たしていれば期限を伸ばしてくれるところがあるようです。
不妊治療の助成金と所得制限については、お住まいの市区町村によって助成金の制度や、提出する書類が違うので、しっかり確認することが大切です。
所得を算出するのは、かなり大変なことかもしれませんが、治療費の援助が受けられるのは、治療に専念できるチャンスでもあります。
所得を算出して受け取れる助成金をきちんと確認しましょう。