不妊治療の検査には、血液検査や超音波検査、卵管造影検査など、さまざまな検査があります。
今回は、その中でも一般的な血液検査についてクローズアップします。
血液検査の時期や検査に要する期間、検査結果の数値でわかることを詳しく説明していきます。
不妊は病気ではなく「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交しているにもかかわらず、一年間妊娠しない」状態のことをいいます。
不妊の原因は多岐にわたり、男女ともに可能性があります。
つまり、不妊の原因を突き止めるのは至難の業なのです。
妊活のスタートラインは、体質を知るために検査をすることです。
不妊治療の検査の流れとして、まずは一般的な血液検査や超音波検査などで健康状態を調べます。
血液検査の数値に異常がなく、超音波検査などにも問題ない。
それでも不妊の原因がわからない場合は、精密検査へ進むことになります。
初診では、主に問診や血液検査、超音波検査をすることになります。
その際、基礎体温表をつけておくと月経周期を正確に把握でき、スムーズに次の検査へうつることができます。
ですから、少し面倒ですが、女性の方は自分の健康管理のためにも、基礎体温表を毎日つけることをオススメします。
血液検査では、それぞれのホルモンの数値でホルモンバランスや卵巣の予備能力がわかります。
さらに、多嚢胞性卵巣症候群、高プロラクチン血症、黄体機能不全、排卵障害といった症状であるかどうかを判断する材料となります。
しかし、検査結果の数値の見方は専門家でも難しいのです。あくまでも基準値でしかありません。
検査の異常が即、不妊の原因とは限りません。数値でわからないことがあれば、ため込まずにドクターや病院スタッフにドンドン質問しましょう。
FSHとは、脳下垂体から分泌される卵巣刺激ホルモンです。
排卵ができるように、卵胞を発育させる働きをしてくれます。
卵胞とは卵子を包む袋のこと。
卵巣に運ばれたFSHが卵胞を刺激してエストロゲンの分泌を促していく仕組みで、卵胞を発育させます。
LHは、FSHと同じく性腺刺激ホルモンで黄体化ホルモンとも呼ばれています。
卵胞の成長を補助的に助けたり、排卵を促すホルモンです。さらに、排卵後は卵胞に働きかけて黄体化を促します。
LHが低いと排卵できなかったり、無排卵になることがあります。
E2は、女性ホルモンの代表的ホルモンであるエストロゲンの一種で卵巣から分泌されます。
E2には卵子の成長を促したり、頸管粘液を分泌させて精子を受け入れやすくしたり、子宮内膜の増殖を助けて着床の準備をする働きがあります。
妊娠には欠かせない重要なホルモンです。
FT3、FT4は二種類の甲状腺ホルモンです。
近年、甲状腺ホルモンが不妊と深く関わっていることがわかってきています。
まだあまり知られていないことが多く、検査を行わない病院もあります。
しかし、甲状腺機能異常は、排卵障害や不育症の原因になります。
TSHは、妊娠初期に特に多く必要となる、甲状腺刺激ホルモン(甲状腺ホルモンを分泌させるホルモン)です。
数値が高くても低くても妊娠しにくいといわれるホルモンです。
TSHの数値と合わせてみることで甲状腺疾患の有無を判断できます。
黄体ホルモンで、子宮内膜を受精卵が着床しやすい状態にするホルモンです。
妊娠の維持に不可欠なホルモンです。
乳汁分泌ホルモンとも呼ばれ、普段は抑制されていますが、妊娠すると母乳や出産後の子宮収縮や排卵を抑制する働きがあります。
妊娠中や出産後に活躍するホルモンです。
卵胞の発育過程に分泌されるホルモンです。
卵巣の予備能力(卵巣の中に残っている卵子の数の目安)を知ることができます。
この検査は月経周期に関係なく、いつでも検査できます。
一般的に、男性ホルモンと呼ばれるホルモンです。
女性でも副腎や卵巣から男性ホルモンが分泌されています。
月経周期によって変動はしません。いつでも測定が可能です。
女性のテストステロンの数値が高いと多嚢胞性卵巣症候群の診断材料となります。
不妊検査はいつからでも始められます。生理中でも始められます。
血液採取なら、それほど時間もかかりません。
ただし、全ての検査をすぐに受けられるわけではありません。
特に、血液検査(ホルモン検査)は、月経の周期に合わせて検査項目が違ってきます。
前述のとおり、血液検査は一回で全ての項目を調べることはできません。
検査日程の指標となるのが、月経周期です。
月経が終わって、体温が上がるまでの期間です。
卵巣内で卵胞が成熟し、卵胞ホルモンが分泌されるため、卵胞期とも呼ばれています。
一般的にFSH、LH、E2など基礎ホルモン検査をします。
低温から高温への移行期に排卵が起こります。
卵胞ホルモンの分泌がピークになり、黄体ホルモンが分泌され、卵胞から卵子が排卵されます。
この時期は排卵日予測もします。一般的にLH、E2、Pなどの検査をします。
赤ちゃんが子宮にくっつく着床が起こります。
子宮内膜が、ある程度厚くないと着床できません。
そのため、血液検査では一般的にE2、Pの検査を行います。
妊娠しないと不要になった子宮内膜がはがれおち、体外へ排出されます。
この時期にホルモンの基礎値や甲状腺機能検査のためFT3、FT4、TSHの血液検査を行います。
まだ、妊娠のつもりはないというカップルも、将来お子さんを持つ予定があれば、早めの検査をおすすめします。
場合によっては、妊活は時間との闘いになるからです。
不妊と診断され、原因がすぐに判明すれば治療もすぐ始められますが、原因が複合的であればあるほど原因を探るのは困難で時間もかかります。
ホルモン検査は保険適応されます。
しかし、AMHなどは適応外となるので、注意が必要です。
また、病院によって料金に差があるので、問い合わせしてみるとよいでしょう。
基本的な血液検査の場合、保険適応がされます。
検査1項目あたり1,000円前後です。
ただし、病院やドクターによって検査項目が違うので、きちんと説明を聞きましょう。
一部検査は自費となるので、注意が必要です。
不妊治療にかかる金額は、治療期間によって違ってきます。
治療を始めてすぐに改善する人もいれば、なかなか原因がつかめず長期間に及ぶこともあります。
期間が長ければ長いほど、費用がかかることを念頭にいれておかなければなりません。
妊娠は現代女性にとって、タイミングが大切かつ難しい問題となっています。
そして、妊娠は簡単なものではありません。
健康体なのに、不妊に悩む女性は大勢います。
それは、一つでもホルモンの働きが悪ければ、全体のホルモンバランスが崩れてしまうデリケートなものだからです。
妊活、不妊治療を進めるには、心身ともに健康でなければなりません。
あまり検査結果の数値に気負いすぎず、食事などにも注意しながら、リラックスして自分の体質と向き合ってみましょう。