妊娠の初期に、腹部に痛みを感じる人もいます。
「着床痛」とも呼ばれ、医学的根拠はほとんどないのですが、経験しているお母さんも多いのが現状です。
その起こりやすい時期、原因として考えられること、痛みを感じた場合の注意点を理解し、いざという時に対処しましょう。
実際に妊娠した人の中には、妊娠の超初期に「着床痛」という下腹部の痛みを感じる人もいます。
痛みと聞くと、妊娠の証とはいえどんな痛みなのか、いつ起こるのか、つい気になってしまう人も多いのではないでしょうか。
特に「妊娠したかも」と思うと、体調の変化には敏感になってしまうものです。
ただしこの痛みは、妊娠初期に感じたと話す人が多く、体験談でいわれているだけであって、その理由などはまだ医学的な根拠がありません。
着床によって痛みは感じないとする専門家もいます。
そうした点を踏まえつつ、今回はそんな着床痛の特徴や原因とされる内容、起きた場合の注意点を参考にしながら、体調の変化に備えていきましょう。
どのくらいの時期にある現象なのか、着床痛の特徴は以下の通りです。
着床痛は、その原因やメカニズムがはっきりと分かっておらず、医学的な証拠がない体調変化です。
しかし、多くの妊娠を経験したお母さん達の話によると、その痛みが起きる時期は生理の1週間くらい前といわれています。?また、それより少し前に感じたという方も。
人によって痛みの感じ方や時期は個人差が大きいのですが、それでも比較的早期に起きる体調変化であることが分かります。
排卵日と生理予定日の間隔は、およそ14日。
そして排卵が起きてから着床まではおよそ10日間かかるといわれているので、この2つの期間から考えた時期が、1つの目安になるかもしれません。
生理痛のように痛みが何日も続くとしたら、憂鬱なものですね。
しかし、着床痛は長くても数日、およそ2~3日程度で終わってしまうといわれています。
もし反対に、あまりにも長続きするようであれば、他の病気を考える必要性があります。自分で安易に痛みを判断しないことが大切です。
時期も期間も個人差がある着床痛ですが、痛みの感じ方にも個人差が大きく出ます。
チクチクとした痛みを感じる人もいれば、生理時の痛みのようにずーんと重い鈍痛を覚える人、なかには立っていられなくなるほど激しい痛みを感じる人もいます。
病院を受診する際は、どのような痛みなのか具体的に説明できるとよいでしょう。
痛みを感じる場所は、子宮の周辺、下腹部であることが多いようです。
そこから痛みが足へと広がる人もいれば、お腹がずーんと重くなるような感覚を覚える人もいます。
「足の付け根が痛くなった」という人も多くいます。
この範囲も人によって個人差が大きいので、一概に「この範囲が着床痛を感じる場所である」とはいい切れません。
着床痛の特徴でもあるのですが、痛みをまったく感じない人もいます。それもあって、着床があったかどうかの目安として、着床痛はあまり指標にならないとされています。
またこの痛みがあったからといって、妊娠したとすぐには確認できません。
着床してから1週間は経過しないと、妊娠検査薬にも反応が見られないためです。
なので「着床痛がなかった」と、過度に心配しなくても大丈夫です。
受精卵が着床する時期に痛みが起こるのはなぜなのでしょうか。
実は着床するというできごとだけでなく、全く違う理由や、胃腸など子宮以外が原因であることも考えられます。
着床期に痛みが起きる原因の1つは、受精卵が子宮に到達して7日目に、繊毛が根を張っていく過程にあると考えられています。
この時、小さいとはいえ、血が出るような傷ができるので、痛みが起きる原因とされているのです。
この傷ができたときに起きる現象が「着床出血」。
子宮内膜に傷ができ、そこから出血をする体調変化です。もし少量の出血がいつもの生理より短い期間あり、高温期が21日以上続いているなら、妊娠の可能性が高いとされています。
しかし一方で、受精卵は非常に小さく、この痛みを体が感知することはないともされています。
妊娠したかもと早合点するのではなく、まずはその痛みがどこからきているのか、専門家に判断を仰ぐことが大切です。
卵管など、子宮以外の場所に着床してしまうことを「子宮外妊娠」といいます。
子宮以外の場所は赤ちゃんが成長する機能を持っていないため、お母さんにとっても非常にリスクがある病気です。
卵管など、非常に細いところで赤ちゃんが育ってしまえば、お母さんの体内で大量出血が起きてしまい、最悪命にかかわります。
この子宮外妊娠の症状の1つに、腹痛があてはまります。
生理中のような腹痛を感じる人もいれば、お腹が冷えたときのようなちょっとした痛みを感じる人もいて、痛みの感じ方は人によってまちまちです。
万が一卵管破裂が起きた場合は激痛が走り、最悪の場合は死に至ります。
もし強烈な痛みを感じたり、次第に痛みが強くなっていくようであれば、早めに専門医にかかりましょう。
子宮以外の場所で子宮内膜と似た組織が増殖します。
卵巣や卵管など、子宮近辺の臓器だけでなく、時には肺の内部などでも組織が増殖する場合も。
これらは生理のときのように増殖と剥離を繰り返すため、腹痛など痛みが症状として現れます。
成人女性の4~5人に1人がかかる病気とされており、良性の腫瘍が子宮にできてしまうものです。
経血量の増加が主な症状ですが、合わせて腹痛が起きることもあります。
基本的には良性の腫瘍なので経過をみることが多い子宮筋腫ですが、あまりに症状が進むと不妊の原因になる場合も。
こうした子宮に関わる病気が潜んでいることもあるので、妊娠したかもしれない時期の腹痛には、特に注意が必要です。
妊娠していない場合にも、体の中は生理などによってホルモンの変化が常に起きています。
生理前になると「便秘になりやすい」「腹痛が起きやすい」という人も多いのではないでしょうか。
実は、子宮の痛みと腹痛は、ほとんど感じ方が変わらないこともあり、専門家でなければ見分けがつかないことがほとんどです。
単純に便秘による腹痛が起きている可能性もあるので、妊娠していないはずなのに生理前に腹痛が起きたからといって、着床痛だと早合点してはなりません。
心配であれば、早めに婦人科へ相談することが大切です。
胃腸の痛みは、便秘によるものとは限りません。
ウイルス感染による胃腸炎や、食中毒という可能性もあります。
先ほどもあげたように、腹痛と子宮の痛みは区別がつかないことが多いのです。
ウイルス感染による胃腸の痛みの場合、下痢や嘔吐を伴うこともあります。
実は、下痢や嘔吐は妊娠初期に起こる症状でもあるので、見分けがつきにくいことも。
もし妊娠に心当たりがあるようなら、早めに受診して経過を落ち着いてみていくことが大切です。
妊娠によるさまざまな変化が体に起きていきます。妊娠しているかも、と心当たりがあったときに、一緒にチェックしておきたい症状を見ていきましょう。
妊娠初期には骨盤まわりのじん帯、恥骨結合、仙骨関節などの骨盤回りの関節を緩める「リラキシン」というホルモンが分泌されます。
このホルモンが分泌されることによって、妊娠を継続させやすくなり、またなるべく出産しやすい体になるようにという変化が起きてくるのです。
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その結果、骨盤が緩んで開いてしまったような状態になり、腰への負担が増えて腰痛が起きてしまいます。
排卵後から分泌が始まるホルモンなので、生理前に腰痛が起きてしまうという人も同様の理由である可能性があります。
妊娠初期に起こりやすいのが、着床出血。受精卵が着床してから、しっかりと子宮に根を張る過程で子宮内部に傷ができてしまい、少量ですが出血にいたります。
生理予定日の1週間から数日前におき、色はピンクや茶色など人によってまちまちです。
ただし生理よりずっと早く終わる傾向にあり、ほんの2~3日で出血が止まってしまいます。
基本的に、生理がくると女性の体温はいっきに下がりますが、もし高体温を維持しているようなら妊娠の可能性が高まります。
この違いを見分けるためにも、日頃から基礎体温を測定しておくことが大切です。
着床痛が起きる時期には、おりものシートや、ショーツに付着したおりものがいつもと様子が違うことがあります。
妊娠すると女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンが増えるため、おりものの量が増えていくためです。
水のように、さらさらとしているのが特徴です。
ただし個人差があるので、さらさらしたものになるかもしれない、程度に考えておきましょう。
一方で、変なにおいがしたり、色が黄色や緑など変化している場合もあります。
そうしたおりものは妊娠の兆候ではなく、感染症にかかっているという可能性を示しています。
● 普段と違うにおいがする
● 黄色や緑色をしている
● 白くてぽろぽろとしたものが出てくる
以上のような特徴をもつおりものが出てきたら、早めに婦人科へ相談することが大切です。
ホルモンバランスの変化により、気分がイライラとしやすくなるのもこの時期の特徴です。
プロゲステロンというホルモンのバランスが、妊娠前より崩れることが関係しています。
妊娠を望んでいる人でも、そうでなかったとしても、自分の体の変化に気持ちが追い付いていかず、なにが情緒不安定になっている原因かが分からない状況は不安になるものです。
情緒不安定になった結果、イライラしやすくなってしまうこともあります。
気になるようであれば、親しい人には「ホルモンの関係でイライラしやすくなるみたい、ごめんね」と、一言断っておくと自分自身も気分が楽になります。
お腹の痛みが特に注意すべきものではなく、病気の可能性もないと分かったら、なるべく痛みを和らげる過ごし方をすることが大切です。
着床痛があるときの注意点は以下の通りです。
1日の中で、あなたはどのくらいカフェインが含まれるものを食べたり飲んだりしているでしょうか?
代表的なものとしては、コーヒーや紅茶があります。
日本茶も、カフェインを含む飲料の1つです。
朝すっきりと目を覚まさせるために、習慣になっている人に多い飲み物ともいえるでしょう。
カフェインには血管を収縮させる作用があり、血行不良の原因にもなります。血行不良は体に冷えをもたらすだけでなく、老廃物が体に溜まってしまったりと、むくみの原因にもなります。
また、カルシウムを尿と一緒に排出させたり、鉄分の吸収を妨げる効果もあります。カルシウムも鉄分も、妊娠にとっては欠かせない栄養素の1つです。
頭痛などを解消してくれる効果や、リラックス効果もあるカフェインですが、妊娠が疑われる時期からカフェイン摂取は控えたほうがいいでしょう。
具体的には、1日に100mg前後に留めるのがベストです。
レギュラーコーヒー(ドリップ)もインスタントコーヒーも、どちらも100mlあたり60mgのカフェインが含まれています。
カフェインレスコーヒーに切り替えたり、カフェインが含まれない飲み物にして、自然にカフェイン摂取量を減らすことが大切です。
耐えられないほどの腹痛があったとしても、まずは薬が本当に飲んでもよいものか確かめることが大切です。
妊娠初期はまだ赤ちゃんへの影響は少ないのですが、それでも万が一があります。
妊娠が疑われる状況で、あまりにも腹痛が辛いとき、体調が思わしくない時は、無理せずに医療機関を受診しましょう。
妊娠すると、いままで使えていた薬が使えなくなることもあります。
妊娠したらかかりつけ医には必ず相談し、薬を続けて内服してもいいか、使ってもいいのか確認することが大切です。
お酒にはもちろんアルコールが含まれています。
このアルコールが原因で、赤ちゃんに先天的な奇形が生じることがあります。
着床痛が起きるような時期はまだまだ妊娠初期にも入っていないころですが、それでも用心するにこしたことはありません。
また、たばこは手術前にもやめるようにいわれる嗜好品の1つです。
なぜなら血流を悪くしてしまい、栄養や酸素を体に十分にいきわたらせることができず、手術後の回復を遅くしてしまうからです。
小さいとはいえ、着床時には傷ができるとされています。
その回復を早め、体調を整えるためにも、たばこは控えたほうがよいものの1つです。
もう1つ、たばこを控えた方ががよいといわれるのは、流産や早産の危険性をもつからです。
そのリスクは、たばこを吸わない人と比べると2~3倍近くあるといわれています。
大切な注意点ですが、痛みが激しい時は無理をせずに病院へいきましょう。
もしかするとただの腹痛ではなく、何か重大な病気を知らせるサインの可能性があります。
どんどん痛みが激しくなる、立っていられないほどつらいなど、日常生活に支障をきたすような腹痛であれば、無理せず婦人科など医療機関へ相談することが大切です。
一人暮らしであれば、救急車を呼ぶのも1つの方法です。
もし救急車を呼ぶのがためらわれたら「#7119」へ相談することをおすすめします。
最寄りの市町村が開いている救急相談窓口で、救急車を呼ぶような症状かどうか、相談に乗ってくれます。
病院でもとくに心配はないといわれても、それでも痛みはつらいものです。
少しでも和らげる方法は以下の4つです。
体が温まり、血の巡りがよくなると、それにともなって不安感が和らぎリラックスできるメリットがあります。
緊張感もほぐれるので、イライラが少なくなりやすいのもポイントです。
また女性は体が冷えやすいともいわれています。シャワーだけにせず、お風呂にゆっくりと入浴したり、腹巻きを使うなど、日頃から体を温めるようにするのも大切です。
妊娠前から妊娠中も使えるリラックス方法に、アロマオイルがあります。
心地よい香りに包まれると、ほっとして心も安らぐものです。使う時は匂いを楽しむ「芳香浴」のみにしておき、肌へ塗ったりすることは避けましょう。
肌が敏感になりやすいので、いつもは大丈夫だったオイルで肌荒れしてしまう可能性があります。
妊娠の可能性がある場合、避けた方がよいアロマオイルもあります。
たとえば血圧を上昇させてしまうペパーミントは、少し香りを楽しむくらいなら大丈夫ですが、あまり長時間使うことはおすすめできません。
ジャスミンには子宮を収縮させてしまう効果があるので、避けた方がいいといわれています。
ホルモンバランスを整える効果がある、とされるセージなどのアロマオイルも、反対にホルモンバランスを崩す危険性があります。
こうしたアロマオイルを避けて、柑橘系のアロマオイルや、ジンジャーやセロリという吐き気を抑えてくれるアロマオイルがおすすめです。
生理痛に効くツボも、痛みを和らげてくれるとされます。
ツボを押すときは、痛すぎない程度で、気持ちよいと感じる範囲で押します。
頭から真っすぐ、体の中心線を辿ります。
おへその位置から、指2本分下の部分にあるツボです。寝たままでも押せるので、横になった状態で動けない人も試してみましょう。
便秘への効果もあるようです。
こちらは膝にあるツボです。
お腹にある「気海」に比べると座ったままでも押しやすいのがポイントです。
膝の内側のお皿の上から、指2本と半分上の位置にあります。
左右どちらも同じ位置なので、左足、右足、押しやすい方を試してみましょう。
手の親指と人差し指の骨同士が交わるところより、少しだけ人差し指に近い「合谷(ごうこく)」というツボも、生理痛や頭痛、肩こりなどにも効果があるとされています。
こちらも押しやすい位置なので、痛いけど気持ちいいと感じる程度の強さで押すのがおすすめです。
筋肉の緊張をほぐし、体をリラックスさせてくれるストレッチは、血行を促す効果もあります。
ただし無理は禁物なので、食後2~3時間たったころに、無理せず行いましょう。
立ったままできるものとしては、腰をゆっくりと円を描くように回す腰回しがあげられます。
まず足を肩幅に開いて、足や上半身は動かさないように、腰だけをゆっくりと動かします。左右5回ずつ回し、1日3セットが目安です。
座ったままなら、足首のストレッチもおすすめです。
足裏を床にぴたっとつけて、椅子に深く腰掛けます。
つま先をゆっくりと持ち上げ、5秒間キープし、ゆっくりとつま先を下したら、今度はかかとを持ち上げてこちらも5秒間キープしましょう。
背筋を伸ばしたまま、5~10回行うのがポイントです。
痛みがあまりにも酷い場合は、ストレッチは無理して行わなくてもかまいません。
突然の腹痛は、誰でも驚いてしまいます。妊娠の可能性がある時は、なおさらです。
だからこそ、慌てることなくいつも通り過ごすことが、ストレスを高めたり、イライラしたりすることを防ぐ一番の方法です。
しかし、自分の体調を一番分かっているのは、自分自身です。
あまりにも腹痛が続くようであれば無理せず病院へ行き、専門家の判断を受けるようにしましょう。