子宮以外の場所に受精卵が着床してしまうことを、子宮外妊娠といいます。聞いたことがある方もいるかと思いますが、実は、誰にでも起こりうることなのです。もし子宮外妊娠をしてしまった場合、「つわり」で判断できるのかについてみていきましょう。
妊娠をして、まず自分で感じる症状としてはつわりがあります。子宮外妊娠の場合でも、正常妊娠と同じようにつわりの症状が出る場合があります。しかし、つわりが軽いと少し不安になりますよね。
今回は子宮外妊娠の場合のつわりや、そのつわりの軽さなどで判断ができるのかを、詳しく解説していきたいと思います。
子宮外妊娠の場合でも、つわりの症状が出ることがあります。なぜなら、正常妊娠と同じように、ホルモンバランスが変化するためです。それによって生理が止まり、基礎体温が高くなります。また、吐き気があったり、においや味などに敏感になるようなつわりの症状が出るのです。
子宮外妊娠をした場合も、通常妊娠と同じような症状のつわりが出ることがあります。子宮外妊娠とは、通常は、子宮内膜に着床するはずの卵子が、子宮内膜に到達する前に、別の場所に着床してしまうことをいいます。
全妊娠数の、約1?2%といわれています。子宮内膜に着床しなくても、妊娠には変わりがないので、ホルモンバランスは変化し、これによって通常妊娠のようなつわりの症状は起きるのです。
通常の場合と同様に、子宮外妊娠の場合でも身体は妊娠という状態になるので、子宮内膜以外に着床しても、すぐにつわりが起こることがあります。子宮外妊娠の場合、6週目くらいから不正出血や下腹部の痛み、腰痛などの症状があらわれます。
しかし、自然に卵管流産してしまう人が多いことや、卵管破裂などの危険があるため、早期発見、早期処置が大切です。これにより、通常妊娠の場合、つわりのピークは8週目ごろからといわれていますが、子宮外妊娠の場合は、軽いつわりを経験して終わることが多いようです。
通常妊娠でも、つわりの重さや症状は人それぞれ違いますよね。子宮外妊娠の場合でも、身体は妊娠している状態になります。すぐにつわりの症状が出る人もいれば、まったくないという人もいます。
そのため、つわりが軽い、重い、またはまったくないという症状だけで、通常妊娠なのか、子宮外妊娠なのかを判断することは難しいといえるでしょう。
子宮外妊娠の場合、つわりだけでなく、ほかにも症状があらわれます。不規則な基礎体温の上下、不正出血、だんだんと強くなっていく腹痛などがあげられます。なるべく早期に発見できるように、どういった症状が出るのか詳しくみていきましょう。
妊娠を希望している女性は、ご自身の基礎体温をつけているという方も多いと思います。これは、子宮外妊娠をしているかどうかの判断の、ひとつの大きな鍵になります。
正常妊娠をした場合、12週目ごろまで基礎体温は高温期になります。また、排卵しても、受精せずに妊娠しなかった場合には、生理が始まり基礎体温は低温期になります。しかし、子宮外妊娠の場合には、どちらにも当てはまることがないため、基礎体温が不規則に上下することがあります。
通常妊娠の場合、妊娠初期に少量の不正出血をすることがあります。子宮外妊娠の場合でも、妊娠の早い段階から出血をする場合があり、通常妊娠と違い、ダラダラと続くことが多いようです。そして、だんだんと量が多くなっていくという特徴があります。
妊娠検査薬で陽性が出ているにも関わらず、出血が止まらない、量が増えている、という場合には、子宮外妊娠を疑う必要がでてきます。
子宮外妊娠を経験した約9割の方が、下腹部もしくは脇腹に痛みを感じたといわれています。また、これを長期間放置した場合、卵管が破裂し、耐えられないほどの激しい痛みになってしまいます。
さらに、痛みが日に日に増して強くなっていくという特徴もあります。
妊娠したかな、と思ったらまず妊娠検査薬を使用してチェックしましょう。子宮外妊娠の場合でも検査薬には陽性が出ます。しかし、これだけでは通常妊娠なのかそうではないのか判断することはできません。陽性反応が出たらすぐに病院へ行き、医師の診断を受けましょう。
妊娠をしたかどうかを、一番手軽に判断できるものとして、妊娠検査薬というものがあります。妊娠検査薬は、一般に市販されているので、薬局などで購入できます。
尿の中の、hCGホルモンの濃度によって陽性、または陰性の結果が出ます。hCGホルモンとは、ヒト絨毛性ゴナドトロピンホルモンのことで、受精卵が着床すると分泌量が増えます。一般的な市販の妊娠検査薬では、尿の中のhCG値が50mlU/mL以上になると陽性が出ます。
子宮外妊娠の場合でも、妊娠検査薬では通常妊娠と同じように陽性反応が出ます。これは、通常妊娠と同じようにhCGホルモンの分泌量が増えるためです。しかし、通常妊娠でも子宮外妊娠でも、検査する時期が早過ぎると陰性反応が出てしまいます。
hCGホルモン濃度は、排卵後10日前後から上昇するといわれていますが、これにも個人差があります。市販の妊娠検査薬は、一般的に生理予定日の1週間後以降の使用がすすめられています。
妊娠検査薬は、妊娠の陰性または陽性の判断をするものですので、この結果で通常妊娠なのか、子宮外妊娠なのかを判断できるものではありません。陽性の場合、判定線が浮き出てくるタイプのものが多いと思います。
これが薄いから、子宮外妊娠の疑いがあるといった情報がありますが、これには医学的根拠はありません。逆に、判定線が濃いから、子宮外妊娠の疑いが低くなるといったこともありません。
妊娠検査薬を使用して陽性反応が出たら、まずは病院へ行って医師の診察を受けましょう。子宮外妊娠の場合でも、妊娠検査薬では陽性反応が出ます。しかし、子宮外妊娠を放置すると、受精卵が大きくなりすぎてしまい、卵管が破裂してしまう、といった場合もあり得るのです。
早期発見、早期処置が大切になりますので、陽性反応が出たらすぐに診察を受けましょう。
子宮外妊娠は、エコー検査によって妊娠6週ごろには判明します。正常妊娠の場合、妊娠5?6週ごろから、赤ちゃんを包んでいる胎嚢というものが確認できます。この胎嚢が確認できなければ、子宮外妊娠を疑う必要があります。
しかし、排卵日の周期がずれていたりすることもあるので、これだけでは判断できません。hCG値や基礎体温など、総合的に判断する必要があります。
子宮外妊娠は、正常の妊娠と違い、子宮内膜に受精卵が着床していません。したがって、妊娠をそのまま継続することはできません。そのまま放置すると、最悪の場合、母体が危険にさらされることもあるのです。子宮外妊娠が判明したら、すぐに処置や治療をすることが大切です。
子宮外妊娠の多くは、子宮につながっている卵管という部分に妊娠してしまいます。そのまま放置してしまうと、卵管の中で受精卵が大きく成長してしまい、卵管が破裂してしますケースもあるのです。
その結果、体内で出血し、最悪の場合出血多量で命を落としてしまったという実例もあります。
重い症状や最悪のケースにならないために、子宮外妊娠が判明したら、早急な処置や治療が必要となります。治療には、手術が必要な場合と、そうではない場合があります。
自然の流産を待つ方法や、受精卵を取り除く方法、細胞の増殖を抑える方法が主な治療です。それでは詳しくみていきましょう。
子宮外妊娠をしてしまった場合、自然に流産するのを待つ待機療法があります。この場合、特に手術をする必要はありません。
胎嚢などは、自然に体内に吸収されることが多いようです。その後は、医師の検査でhCG値などを見ながら経過を観察します。
自然流産ができない場合は、卵管破裂を起こす前に受精卵を取り除く手術をしなければなりません。子宮外妊娠の外科的手術は、ニつの選択肢があります。一つは根治療法といい、卵管そのものを取り除く方法です。しかし、卵管を取り除いてしまうとその後、妊娠しにくくなってしまう場合もあります。
そしてもう一つは、保存療法です。こちらは卵管を開き、妊娠している組織だけを取り除く方法です。妊娠を希望している方には、保存療法のほうが適しているといえるでしょう。
子宮外妊娠の場所が特定できない場合や、手術をすることが難しい場所の場合などは、薬物療法があります。これは、抗かん剤であるメトトレキサートを用い、妊娠している組織を消失させます。
デメリットとしては、保険適用外であることと、投与したあとの半年間は、妊娠できないということです。できるだけ早い妊娠を希望している方には、あまり向いていないかもしれません。
子宮外妊娠は、全妊娠数の約1?2%といわれています。全妊娠数とは、初めて妊娠をした人と、妊娠が2回目以降の人を合わせた全体の数です。しかし、調査によって2回目以降の妊婦さんのほうが、子宮外妊娠の確率は高いことがわかっています。また、体外受精で妊娠した場合でも確率が高く、リスクが高いといえます。
子宮外妊娠の確率は、全妊娠数の約1?2%です。しかし、そのうちの8割が妊娠が2回目以降の方であり、初産で子宮外妊娠をする確率は約0.02%と低いことがわかります。ところが医学上、この理由はわかっていません。
自然妊娠よりも体外受精で妊娠した場合のほうが、子宮外妊娠のリスクは高まります。不妊治療などで体外受精や人工授精が広く認知されていますが、体外受精の場合の子宮外妊娠は約5%といわれています。
確率の高さなどはもちろんありますが、子宮外妊娠は誰にでも起こりうることです。決してご自身の身体のせい、身体が悪いなどということではありません。
しかし、原因となりやすい事象などを知っておくことは大切ですね。
子宮外妊娠を経験したあと、気になるのはその後の妊娠が可能かどうかですよね。もちろん、通常妊娠は可能です。しかし、子宮外妊娠を繰り返す方もいます。体内のことなので、完全に予防することは難しいことですが、できるだけ予防するために、必要なことを把握しておきましょう。
子宮外妊娠を経験しても、その後通常妊娠をすることは可能です。また子宮外妊娠をしてしまったら…と不安になることもあるでしょう。
しかし、約90%の方が通常妊娠に至っていますので、妊娠に消極的になる必要はありません。
子宮外妊娠をした方の約10%は、再度繰り返してしまうというデータが出ています。これは、年々増加しているといわれています。
前回の原因であった卵管を残す処置をしていたり、子宮外妊娠による出血で卵管が癒着してしまっていたり、そもそもの原因がわかっていなかったりと、その理由はさまざまです。
現状では、子宮外妊娠を完全に予防する方法はありません。しかし、子宮外妊娠をしてしまった原因がわかっているのであれば、改善し確率を下げることはできます。
癒着による詰まりを取り除いたり、卵管の通過性を良くしたりすることです。
人によっては、卵管が狭い体質の方もいます。受精卵が子宮内膜までたどり着くことができず、卵管で止まってしまいます。そういった場合、子宮卵管造影や腹腔鏡などで卵管の通過性を良くし、改善することができます。
また、右側の卵管で子宮外妊娠が起こった場合、左側の卵管も癒着してしまうといったケースも多いようなので、両側の卵管の通過性を高めることも大切です。
子宮外妊娠の確率が上がる原因の一つとして、クラミジア感染症もあげられます。クラミジア感染症によって引き起こされる、卵管炎や卵管周囲炎などの後遺症が影響すると考えられています。妊娠を希望する場合は、一度クラミジア感染症の検査をしてみるとよいでしょう。
子宮外妊娠を経験したあと、処置や手術のあと約1カ月程度は、性交渉を控えたほうがよいといわれています。しかしこれは、医師によって意見が異なるようです。
次の生理が来ればもう大丈夫、という医師もいれば、生理を2回は見送ったほうがよいという意見もあります。
妊娠検査薬で陽性が出たら、自己判断をせずにまずは病院へ行き医師の診察を受けましょう。子宮外妊娠の場合は、早期発見と早期処置が大切です。放置してしまって妊娠しづらくなってしまったり、取り返しのつかない事態にならないために予め予備知識を付け、いざという時に対応できるようにしましょう。