通常、性交によって流産など妊娠継続率を下げる期間があることはあまり知られていません。着床時期の性交は流産のリスクがあります。ここでは受精から着床までの妊娠のメカニズムや、妊娠中の性交の注意点、着床時期の見極め方などを取り上げていきます。
人はどのように妊娠するのか、そのメカニズムを正しく理解していますか?妊活中のカップル、または子供が欲しいと意識し始めたカップルにとって、精子と卵子が出会って受精し、受精卵が着床・妊娠成立したら、とても嬉しいもの。
妊娠の確率を高めるために、最善の性生活を考える人も多いと思います。しかし、妊娠しやすい性交のタイミング(排卵日など)のことは入念に調べても、せっかく着床した受精卵の成長を妨げる性交の期間があることはあまり詳しくないのではないでしょうか?受精卵が着床した直後を見極めるのは市販の検査薬でも病院でも難しいようです。では着床後の性交はいつから行うのが安心なのでしょうか?
これまで、着床後の性交については医師によって意見はさまざまでしたが、近年わかった研究結果があります。妊娠のこと、妊娠におけるパートナーとの向き合い方について考えてみましょう。
ノースカロライナ大学の研究チームは、受精卵の着床時期の性交は「妊娠率の低下」を引き起こす恐れがあると発表しました。
上記の研究結果を踏まえると、排卵日前・直後の性交は妊娠しやすいタイミングとなりますが、排卵後5日目以降4日間程度の時期・つまり着床期間に行う性交はせっかく出来た受精卵をダメにしてしまうリスクがあるのです。性交による子宮収縮は着床をさまたげる可能性があると言われています。
着床時期、女性の体からは何かしらのサインが出ています。例えば、眠気や熱っぽさ・胸の張り…など。しかしどのサインもとても些細なもので、風邪や生理などと思って見過ごす人も多いようです。受精卵が着床すると出血や痛みを伴う場合もありますが個人差があり、同様にこの症状も生理などと勘違いする人もいるようです。
したがって、せっかくの受精卵の着床つまり妊娠に気づかず、性交を行ってしまう人も多いのです。市販の妊娠検査薬で妊娠の反応が出ても、着床した受精卵が踏ん張り切れず、超初期流産に至ってしまう可能性もあるのです。
もし妊娠を望む場合は、排卵後5日目から9日目の着床期間は性交を避け、心も体も無理をしないリラックスした時間を持つといいでしょう。
ある研究で、自然妊娠を望む30~44歳の女性564人を対象に、「性交の時期と回数」、そしてそれに伴う「妊娠率」の関係を調査しました。対象の女性達の月経や性交、排卵日、妊娠までを記録。その結果、排卵後5日目から9日目に性交を行った場合、自然妊娠率が低下していることがわかりました。
この「排卵後5日目から9日目」とは、受精卵の着床時期にあたります。排卵日前後の性交によって受精卵が出来た場合、その受精卵が子宮内膜に根付くのが「排卵後5日目から9日目」、つまり「着床」期間にあたるのです。
研究では、この着床期間での「性交と妊娠率」の関係を調べると、全く性交しなかった場合と比べて、1回の性交では98%妊娠率が低下、2回では76%、3回では52%まで妊娠率が低下することがわかりました
それでは、妊娠中に性交は出来るのでしょうか?妊娠中の性交については世界でさまざまな研究がなされ、性交によって悪影響が出たという報告もあれば関連性はないという報告もあります。医療機関では基本的には、妊婦と胎児の状態が正常であれば、性交は問題ないとしてアドバイスをしています。ただし、それ以外にも注意すべき点はいくつかあります。
ノースカロライナ大学の研究結果でも分かるように、受精卵が着床した可能性のある「着床直後」は性交を避けましょう。着床直後かどうかの判断はとても分かりにくいため、排卵日5日目から9日目を目安とするといいでしょう。
妊娠中に性交をして一番不安になるのは流産しないかということではないでしょうか?流産にいたる原因の多くは、染色体異常など胎児によるものだと考えられています。つまり着床した受精卵がすでに正常ではない要素を持っていれば流産のリスクがあり、性交とは関連性がないのです。ですので、妊娠初期から後期にかけての性交は可能とされているのです。
ただし、性交時の男女に分泌される「ホルモン」が流産や早産に影響を及ぼすという指摘もあります。男性の精液の中にあるプロスタグランジンというホルモンや、女性が多幸感を得た時に出されるオキシトシンというホルモンが、子宮の収縮を引き起こしてしまうのです。子宮への強い刺激は胎児にも女性の体にも負担をかけます。
基本的には問題なしとされている妊娠中の性交ですが、妊娠過程ごとに気をつけなければならない意識や行為があります。
流産と性交の関連性は低いとはいうものの、胎児や妊婦に負担をかけないことは大前提です。妊娠初期であろうと中期・後期であろうと、激しく疲れる性交はいいとはいえません。流産という意識を常に忘れずに、決して無理をしないことが大切です。
前述のように、性交による多幸感ホルモン・オキシトシンは子宮の収縮を促します。刺激が強いほど分泌量も増えるので、お腹の張りや痛みを伴いやすくなります。短時間に何度も強い刺激は体に負担をかけます。胎児と母体の状態を気遣いながら愛情のある性交を心がけましょう。
ここでは受精から着床するまでの、妊娠のメカニズムについて見ていきましょう。
性交によって卵子と精子が出会い結合するのが受精。それによって誕生したのが受精卵です。射精された精子は数億個あるといいますが、卵管に向って進む途中ですでに約99%が死に、生き残った精子が卵子と結合できる確率は一般的に10~20%と言われています。
そうして生まれた奇跡の受精卵は、たった1個の細胞から細胞分裂を繰り返しながら子宮に向かい、子宮腔内の子宮内膜に入り込みます。これが着床です。排卵日に性交したとしてそれが受精に至っていたら、約7日間前後で着床します。
着床にいたるまでの過程は、生命の神秘でありドラマチック、そして実にシステマチックでもあります。
月1回の排卵日にたった1個飛び出す卵子は24時間しか寿命がありません。そのうち特に受精に適した時間はわずか6~8時間しかありません。精子は3~4日生きているので、排卵日前の4日から排卵日までが性交に最適で妊娠の確率も上がります。
卵子の状態がいいタイミングに精子が卵子に出会えるようにしましょう。こうして精子と卵子が出会ったら受精し、受精卵は着床すべく動き出します。
排卵から受精までの1日。そこでできた受精卵は細胞分裂を繰り返しながら4~6日間かけて「胎盤胞」と呼ばれる形に成長し子宮腔内に到着、子宮内膜に入ります。これが着床です。そして、胎盤胞を覆っていた膜が破れ子宮内膜に根を張り出してどんどん中に潜り込み、5日間ほど経つと着床完了。胎児の形成が進んでいきます。
「妊娠超初期」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?妊娠初期という言葉の中に、さらに「超」が入ります。これは妊娠3週目くらいの、受精卵が着床完了した頃のことを言います。受精卵が無事に着床すると、女性の体にはさまざまな変化が現れてきます。それにはどのようなものがあるのでしょうか?
着床出血とは、受精卵が着床する際に子宮内膜を傷つけた場合に起こる出血のこと。排卵日から7~10日ほど経った頃に起こります。ただし、この着床出血を経験する人は約2%で、出血の有無には個人差があります。生理と間違う人も多いようなので、自分の生理周期を把握して生理予定日より早く変化を感じたら着床出血を疑いましょう。
また、基礎体温が高くなります。通常の基礎体温はアップダウンのグラフになりますが、下がる時期になっても高温のままという状態や、37度前後で3週間以上体温が高い場合は妊娠している可能性があります。
妊娠すると、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンの数値が上がります。妊娠検査薬は、尿中に含まれるhCGの濃度で妊娠の有無を判定します。日本の妊娠検査薬は妊娠5週前後のhCG濃度に反応するように作られているものが多かったようですが、最近は妊娠3週でも正確に判定できるものも出ているようです。
妊娠は、パートナーとの愛を確かめ合った軌跡の先にある「奇跡」。そう考えるととても愛おしく大切にしなければと思いませんか?小さな命を着床後の性交によって、危険にさらしてしまう可能性もあるのです。もし着床後の性交によって妊娠への不安やストレスを感じるなら、それは体にも負担を与えますし、パートナーとの関係悪化にも繋がりかねません。
着床を機に、パートナーとじっくり向き合って話し合いをして、会話を楽しむことも一案です。これをきっかけに、2人で外出したり趣味を共有することもおすすめします。小さな命の芽生えは、性交よりも、2人の絆を一層深いものにしてくれることでしょう。