誰にでも起こりうる可能性のある子宮外妊娠。言葉は聞いたことがあっても、どのようなものなのかは意外に知らないことも多いです。子宮外妊娠になった場合の症状や治療法などについて、知識を深めることが自分の体の変化に気づくことにもつながります。
本来、子宮に着床するはずの受精卵が、子宮以外の場所に着床することを子宮外妊娠といいます。卵管や卵巣、子宮頸管や腹膜などに着床してしまいます。
子宮外妊娠でも、通常の妊娠と同じように、生理が止まり、市販の妊娠検査薬で陽性反応が出ます。しかし、子宮外妊娠の場合、そのまま妊娠を継続することはできません。不正出血や下腹部痛、腰痛などの症状が現れたら、必ず婦人科を受診しましょう。
子宮外妊娠は、「何らかの理由で、受精卵が子宮内膜以外の場所に着床してしまった状態」のことをいいますが、子宮外妊娠を引き起こす原因としては3つのことが挙げられます。
子宮外妊娠の最も多いケースとして、卵管着床があります。受精卵を子宮へと運ぶ管のことですが、過去に開腹手術などを受けて、卵管が癒着を起こしている場合、受精卵の通り道がなくなり、卵管着床になるケースが考えられます。
また、卵巣から飛び出した受精卵は、卵管内に取り込まれることが通常ですが、なんらかの原因で腹腔内や卵巣に取り込まれ、そこで着床してしまうケースも。ほかにも、過去の中絶経験や子宮内での避妊具使用などが原因で、子宮外妊娠を引き起こしてしまう場合もあります。
子宮外妊娠の場合でも生理が止まり、市販の妊娠検査薬で陽性反応が出てしまうため、自分では判断しづらいもの。しかし、通常妊娠とは異なる大きな症状の特徴を知っておくことで、早めに病院で受診することにつなげられます。したがって、しっかりと知識を身に付けておくことが大切です。
子宮外妊娠を経験した約9割の人が、下腹部痛を感じています。その下腹部痛には特徴があり、脇腹にも痛みを感じたり、長時間続く痛み、だんだん強くなる痛み、下腹部から肛門へ刺すような痛みといった、生理痛とは比較にならないほどの強い痛みが特徴です。
特に卵管に着床し、受精卵が成長してしまった場合は、卵管破裂を起こし、立っていられないようなかなりの激痛が走ることもあるようです。
子宮外妊娠では、下腹部痛と一緒に不正出血が起こる場合があり、色は暗赤色や薄いピンク色のため、生理や着床出血と間違えることもあります。
正常な妊娠でも不正出血が起こることはありますが、子宮外妊娠の場合には、出血の量が多いことが特徴です。また、少量から徐々に量が増えていく傾向もあるので、覚えておくとよいでしょう。
子宮外妊娠の場合でも、正常な妊娠と同様に妊娠検査薬で陽性反応が出ます。しかし、下腹部痛が治まらずに徐々に強くなったり、生理前に低温期に入る基礎体温が下がらずに安定しない、いつもの生理よりも短い、または長いといった違いがあります。
このように、通常の生理のときには感じない違和感を感じたら、すぐに病院にかかるようにしましょう。
正常な妊娠でも出血することがあります。それは着床出血といわれるものですが、その場合は一度の出血で2日~3日程度で治まります。
子宮外妊娠の場合は、出血が継続的という点が異なります。また、腹痛が伴ったり、量が徐々に増えたりした場合には、子宮外妊娠による不正出血を疑いましょう。
子宮外妊娠は、妊娠7週目頃から腹痛や出血、吐き気、頭痛といった症状が現れることが多いです。しかし、初期の段階では自覚症状がなく、気づかないことが多い点も特徴です。
妊娠検査薬で陽性反応が出たら、妊娠5週目~6週目ごろには病院で受診をします。その際に、エコー検査を受けることで早期発見につながり、対処することが可能です。
子宮外妊娠になる確率は、100人に1人といわれており、誰にでも起こりうることです。そのため、油断することなく、自分の体の変化をしっかりとチェックすることが大切です。では、子宮外妊娠になる原因には、どのようなことがあるのかを解説します。
性器クラミジア感染症などにかかると、骨盤内で炎症が起こりやすくなり、その際に、卵管炎を併発することが多く、卵管の癒着を引き起こします。その結果、卵管の通りが悪くなり、子宮外妊娠の原因になる可能性があります。
卵管の癒着がない場合でも、炎症によるダメージを受けて卵管の繊毛(じゅうもう)運動が弱くなってしまいます。すると、受精卵をスムーズに子宮内まで運ぶことができずに、子宮外妊娠になってしまうケースもあります。
開腹手術を経験すると、術後に腹腔内で癒着が起こる可能性が高くなるといわれています。手術時の炎症や癒着、奇形などにより、卵管が狭くなっていることが原因で、受精卵の通り道である卵管で着床してしまい、子宮外妊娠になるケースもあります。
過去に、子宮外妊娠の治療で卵管保存手術を受けている場合、再発の確率が高くなる傾向があります。経験がある場合は、子宮外妊娠の症状にも気づくことができる場合もあるので、油断せずにしっかりと経過を見守りましょう。
また、時期がきたら速やかに産婦人科で受診をして、検査をしてもらうとよいでしょう。
子宮外妊娠のほとんどが、卵管に着床するケースになります。その場合、受精卵の成長によって、卵管が破裂することを防ぐ治療を行います。治療方法は、症状や受精卵の状態によって異なります。
子宮外妊娠の場合、流産してしまうケースが多いですが、病院での検査によって早期に発見できます。
たとえば、受精卵の大きさが破裂するほどの大きさになっていない、またはHCGの値(妊娠中に分泌されるホルモン値)が低い場合は、特に治療をせずに待機療法で治る場合があります。待機療法は、子宮外妊娠のような場合には、最も望ましい療法ともいえます。
薬物療法が用いられるケースには、症状が軽い、出血などの問題がない、HCG値が低いといった場合です。細胞の増殖を抑えるMTX(メソトレキセート)という薬を、卵管に投与するという方法です。
卵管を傷つけずに治療できるメリットがありますが、抗がん剤の一種である薬を用いることや、副作用があることに、抵抗を感じる女性も多いです。
子宮外妊娠の症状が進んでいる場合、卵管破裂を防ぐためにも、卵管を切除する必要が出てきます。検査によって、HCG値が高く受精卵が成長していることが考えられる場合。投薬によっての治療が難しいことが多く、胎のうを除去する手術が必要になります。
手術には卵管を残す温存手術と、卵管ごと取り除く根治手術の2種類あります。胎のうの大きさや症状によって決められるので、医師の説明をきちんと聞くことが大切です。
卵管保存手術は、胎のうが小さく、出血が見られないときに用いられ、卵管を温存することができる手術方法です。卵管を切開し、胎のうや血腫を取り除く方法で、卵管を傷つけることが少ない手術方法といえます。
また、手術後に卵管が正常な働きをする確率が高いことが特徴。そのためには、もし子宮外妊娠になってしまっても、早期発見、早期治療することが重要です。
子宮外妊娠は、誰にでも起こりうるものです。しかし、正常の妊娠と同様に、妊娠検査薬で陽性反応が出ることや、出血が見られるといった気づきにくいものであることも確かです。
体へのダメージを少しでも軽くするためには、子宮外妊娠に関する知識を深めると同時に、早期発見をして、すみやかに治療を開始することが大切。妊娠が疑われるような場合は、すぐに産婦人科で受診するようにしましょう。