2018.07.05

「卵子凍結を決心する前に」費用やリスクを把握して慎重に選択を

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未婚・既婚を問わずに女性のフルタイム勤務が増え、生涯未婚率の上昇や晩婚化も進んでいます。いずれ子供を作りたいときのために、若いうちに元気な卵子を凍結しておこうと考える人も増えています。まずは、メリットやデメリットの知識をつけておきましょう。

卵子凍結で若いままの卵子を残しておく

いまや、卵子を凍結して保存できる時代です。まだ子供を持つ予定はないけれど、将来的には子供が欲しいと望み、卵子凍結を考えている人もいるかもしれませんね。そうはいっても、簡単に選択できることではないので、すぐに決断することは難しいでしょう。

今回は、卵子凍結を選択する人の理由や、治療の方法や費用、そしてリスクに関することまで、幅広くみていきます。正しい知識を得て、慎重に選択しましょう。

卵子凍結の説明

もしいきなり、卵子を凍結したほうがいいなどと人から聞いた場合、何の目的で卵子を凍結する必要があるのか、いったい何をすればいいのか分からず、少なからず怖い気分になりますね。ここでは「卵子凍結」とは、実際どういったことをするのかを見ていきたいと思います。

卵子を採取し凍結保存すること

卵子は子宮の両端にある卵巣の中の、卵胞という袋で育ちます。卵子凍結は、不妊治療などで行われることの多い「受精卵の凍結」とは違い、「卵子だけの状態で凍結保存する」状態のことをいいます。

受精卵の凍結は、夫婦でなければ行えませんが、卵子の凍結保存は女性一人で行えるので、既婚女性に限らず未婚女性でも実施できます。

卵子凍結を行う目的

卵子は年齢とともに老化していきます。老化というと聞こえが悪いですが、高齢になるほど遺伝子異常を持つ卵子が排卵される確率が高くなり、どうしても流産率も高まります。

卵子凍結を行う目的は、人によってさまざまです。たとえば、将来的に子供を持ちたいと考えているけれど、現時点では無理な人もいます。その場合、若くて健康な状態で卵子を採取して、凍結保存しておき、いずれ環境が整って、子供が欲しいと思ったときに備えることが目的です。

しかし、卵子凍結を行ったからといって、必ず妊娠できるわけではないことは、理解しておく必要があります。

卵子凍結を行う理由

具体的にどのような場合に、どんな人が卵子凍結を希望するのでしょうか。人それぞれいろいろな事情で、卵子凍結を希望すると思いますが、その中でもよくある理由についてご紹介します。

病気の女性の場合

いつかは妊娠を希望している女性で、今後投薬治療や手術などを行う場合、抗がん剤などによっては、卵巣機能にダメージがおこる場合があります。

また、卵巣摘出など物理的に卵子を作れなくなってしまう場合にも、その前に卵子を採取して保存しておくと、健康になったときに妊娠を試みることができます。このような場合を「医学的適応」といいます。

健康な女性で現時点での妊娠出産願望がない場合

現在は独身で結婚の予定がないけれど、いつかは結婚して子供が欲しいと思っている人も多いと思います。女性もフルタイムで仕事をすることが普通の時代になっています。そのため、若いうちはキャリアを磨くことを優先して、結婚や妊娠・出産は、もっと落ち着いてからと考える人もいるでしょう。

または、既婚女性でも仕事が忙しく、キャリアを優先させたい場合や、身近な人の看病や金銭的な問題などで現在は子供を持つことが難しい場合。「今は産めないけれどいつかは子供を持ちたい」と考えている人も多いと思います。

そんなときに、若いうちに元気な卵子を採取して凍結保存しておき、落ち着いたらその卵子で子供を持ちたいと考えて、卵子凍結を行う場合もあります。このような場合を「社会的適応」といいます。以前は「医学的適応」が大半でしたが、近年「社会的適応」で卵子凍結を希望する人も増加しています。

パートナーの都合による場合

女性側が妊娠を希望している場合でも、パートナーが海外赴任中であったり、病気で長期入院中の場合もあります。このような場合、女性側が20代であれば、パートナーが回復したり、仕事が落ち着いたりした数年後に、自然妊娠を試みればよいでしょう。

しかし、女性が35歳以上の場合は、1年がとても貴重な時間となります。1年前の卵子なら妊娠できたかもしれないという場合もあるため、少しでも若い今のうちに、卵子だけでも凍結しておきたいというケースもあります。

卵子凍結で卵子の老化を止める

なぜ、若いうちの卵子を凍結しておく理由があるのでしょうか。卵子が老化するという言葉を聞きますが、具体的に何がどうなるのでしょう。

加齢による卵子の老化

卵子というのは、「原子卵胞」という卵子の元から、毎月、排卵できる大きさの卵子が誕生します。この「原子卵胞」は、女性が生まれたときが一番多く、年齢とともに減少し、決して増えることがありません。

そして、年齢とともに、原子卵胞の数も質も低下していきます。また、その原子卵胞から作られる卵子も、年齢とともに数が減少し、卵子が作られた時点で、質も20代の頃よりも低下しています。

35歳頃を過ぎると急速に老化する

卵子の質の低下とは、35歳以上になると年齢とともに、染色体異常を持った卵子の確率が高くなるということです。タイミング法や人工授精、体外受精をしてもなかなか妊娠できなかったり、妊娠はしたものの、細胞分裂の段階でそれ以上成長できずに、途中で流産してしまったりする確率が高くなります。

もちろん、全てが卵子の質の問題とはいえません。しかし、高齢の卵子の場合は、なんとか出産できても、ダウン症や心肺機能に問題がある状態で生まれてくる可能性も、高くなってしまうということです。

若いうちに卵子を取出し凍結保存する

卵子を凍結するためには、まず「採卵」といって、卵子を体内で育てて体外に採取する必要があります。毎月排卵している場合、子宮の左右にある卵巣から、成熟した卵子が毎月交互に一つずつ排卵されます。卵子凍結が目的で採卵を行う場合、排卵誘発剤を使用して、同じ周期に多くの卵子を育て、一度にたくさんの卵子を採取する方法をとります。

しかし、年齢とともに排卵誘発剤を使用しても、卵子の数が少なかったり、全く取れなかったりする場合もあります。もちろん、その場合も費用はかかるので、卵子凍結は若いうちに採卵しておくことが必要です。

人にもよりますが、排卵誘発剤を使用して採卵を行う場合、一度の採卵で採れる卵子の数は、20代では10個程度、30代では5個程度、40代では3個程度といわれています。

卵子凍結にかかる費用

卵子凍結を希望する場合、どこに行って何にいくらの費用がかかるのでしょうか。基本的に、卵子凍結を希望する場合は、病気で入院中などの場合を除いて、レディースクリニックに行くことが多いです。その中でも「卵子凍結」を実施している病院は、それほど多くはありません。現時点で、東京都内や大阪神戸などの都心でも、それぞれ5~8件程度といわれています。

自由診療でクリニックによって違いがある

卵子凍結の費用は自由診療で、現在は一部の「医学的適応」以外は、保険は適応外がほとんどです。費用はクリニックによって違いがありますが、初めての卵子凍結の費用は、初診から始まり、婦人病や感染症などの検査で約20,000~40,000円ほどかかります。

その後の排卵誘発剤で約20,000~70,000円、数回の診察に約10,000~20,000円、採卵で静脈麻酔も含めて約15~30万円です。採卵する卵子の数が多い場合は、金額が増すことになります。そして、卵子凍結の費用も、採卵できた卵子の数が多いほど増加し、卵子6個で年間約10~20万円程度が必要です。

全て合計すると、クリニックの門をたたいてから卵子凍結までに、平均で約40~70万円の費用がかかる計算になります。

1年ごとに更新する凍結卵子の保管料がかかる

無事に卵子を採卵して凍結ができても、それを維持するために、1年ごとに保管料がかかってきます。こちらもクリニックによってさまざまですが、年払いのところが多いです。また、自分で継続申請をしなければ、破棄されるところもあるので注意が必要です。

卵子凍結は、一つの容器に2~3個の卵子が入るものを1本として計算し、1本あたりの1年間の保管料が、約20,000~50,000円で、採卵数が多いほどその金額は多くなります。

卵子凍結の方法

卵子凍結をする方法は、クリニックによって異なりますが、基本的には診察、検査、排卵誘発、採卵、卵子凍結の流れになります。病気などで入院中の場合を除いて、基本的にクリニックなどでの卵子凍結は、入院する必要はありません。

適性検査を行う

卵子凍結を希望して、クリニックで受診した場合、最初にアンケートや問診から始まります。年齢や健康状態、生理周期や妊娠出産経験などを確認し、その後、血液検査などでホルモンの値や感染症を確認し、内診で子宮の状態を確認します。

血液検査の結果はすぐに出ず、後日の場合が多いです。クリニックによって異なりますが、卵子凍結の条件は、採卵時点の年齢が30代までだったり、採卵した卵子を戻す最高年齢も、45歳あたりと決められているところが多いです。例えば、42歳での卵子凍結の希望は、受け入れ自体が難しいところも多いです。

排卵誘発剤により卵巣を刺激する

検査で問題がなければ、次に採卵する卵子を育てていきますが、全く排卵誘発剤を使用せずに採卵する方法と、排卵誘発剤を使用して、複数個の卵子を採卵する方法があります。排卵誘発剤には、注射や内服薬など種類があり、どれを使用するのか、どの方法で採卵するのかは、クリニックによって違ってきます。

行きたいクリニックが決まったら、そのクリニックのホームページなどで調べてみるとよいでしょう。基本的には、排卵誘発剤を使用して一度にたくさんの卵子を採卵し、費用や時間を抑える方法をとります。

卵子を採取する

卵子を包む卵胞の大きさが、20mmほどまで成長したものが複数ある状態になると、採卵を行います。「採卵」とは、膣用の超音波をセットした状態で、膣内から細く長い針で卵巣の中にある卵胞を刺し、卵胞の中にある卵子を採取します。針の先にはチューブがつながれており、卵子はそのチューブを通って保管されていきます。

採卵は、かなりの痛みを伴う人も多いため、静脈麻酔を行ってくれる病院も多いです。静脈麻酔は完全に意識がなくならないために復帰も早く、入院の必要がないことがメリットですが、全く痛みのない人もいれば、麻酔を行ってもかなりの痛みを伴う場合もあります。

採取した卵子を液体窒素で冷凍し保存する

採卵した卵子は、すぐに細胞を生きたまま凍結するために、耐凍剤に浸透させます。その後、細胞の周りに水晶を形成させることにより、脱水・濃縮してゆっくり凍結させる【緩慢凍結法】や、ガラス化液に投入して、約1分で細胞が脱水・濃縮され、瞬時に凍結される【超急速ガラス化保存法】などの方法により凍結されます。凍結された卵子は、液体窒素で長期間冷凍保存されることになります。この方法は、病院によって異なります。

卵子凍結のリスク

どれだけお金を払っても時間は戻せません。そのため、若いうちに健康な卵子を凍結しておけることは、メリットが大きいですが、デメリットもたくさんあります。

高額な費用がかかり全額自己負担

採卵数や排卵誘発剤の種類などによって異なりますが、卵子凍結は保険が適用されません。全額自己負担で、卵子凍結までには平均で約40~70万円の費用がかかり、さらに毎年保管料が約20,000~50,000円ほどかかるとなれば、なかなか手軽に行えるものではありません。

したがって、パートナーとともに、何を優先したいのかをじっくり話し合う必要があるでしょう。

採卵時の体への負担

採卵を行ったり、排卵誘発剤を使用したりすることで、体の負担にもなります。排卵誘発剤の副作用で、重篤なものでは【卵巣過剰刺激症候群(OHSS)】と呼ばれるものがあります。これは、過剰な刺激で卵巣が腫れてしまい、ひどい場合は、腹水や胸水が溜まって手術が必要になる場合もあります。

また、排卵誘発剤は、血栓症になるリスクもあります。軽度であっても吐き気や微熱、だるさなどに悩まされることもあります。

そして採卵時も、静脈麻酔を使用する病院とそうでない病院があります。採卵する針も、極細の針を使って痛みを和らげる病院や、採卵時に卵子の破損などを防止する目的で、極細ではない通常ゲージ針を使用するクリニックもあります。また、採卵後に感染予防のために抗生物質を処方してくれるクリニックなど、先生の方針によって、実にさまざまです。

誘発と採卵は、身体的に負担のかかるものですが、なるべく体の負担が少ない方法をとりたいですね。

凍結卵子の融解時の生存率が低く妊娠率が下る

40歳での妊娠率は、凍結受精卵を体内に戻した場合は、15~20%ですが、卵子凍結の場合は、10%以下と低くなるようです。つまり、若いうちに採卵した卵子を凍結した場合と、若いうちに精子と受精させた状態の受精卵を凍結した場合では、妊娠する確率が変わってくるということです。

40歳になってから子供を持ちたいと思って、保存してある卵を融解したときの卵の生存率は、受精卵のほうが高く、若い凍結卵子の妊娠する確率は、若い凍結受精卵よりは低いということになります。

高齢出産のリスク

卵子凍結にかかわらず、35歳以上で出産する場合は、妊娠合併症を発症する確率や、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)になる確率が高くなります。それに伴い、胎児が出る前に子宮から?がれてしまう「常位胎盤早期剥離」のリスクが増します。

卵子凍結の場合も、出産時の母体は高齢であるため、同様の注意が必要です。

卵子凍結を慎重に考え幸せな選択を

健康な女性でも、卵子凍結ができる時代に生きているという事実は、選択肢のない時代と比べると、それだけでも幸せなことです。しかし、お金には変えられないメリットと、それに伴う大きなデメリットがあることを十分に理解し、パートナーとよく話し合って、自分たちにとって最良と思う選択をしてください。

妊活部編集スタッフ
この記事のライター 妊活部編集スタッフ

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