卵子の老化や質が問われる昨今、自らの卵子や卵巣の状態はどうなのか気になるところ。そんな女性のために、卵子の数などを把握できるさまざまな検査を解説します。検査内容や方法をより早く知ることで、妊娠能力を把握して妊活プランに役立てましょう。
近年、「卵子の老化」や「質」が叫ばれ、自分の持つ卵子の状態に関心をもつ女性が増えています。特に、ある程度年齢が高くなってくると、年齢が気になってより関心が高くなるかと思います。
女性は、一生涯分の卵子を持って生まれてくるといわれていますが、その数には個人差があります。そして生活環境によって左右される体調も人それぞれ。つまり、妊娠する能力は一人ひとり違うのです。
ここでは、自らの妊娠する能力を把握できる検査や費用に関して、くわしく解説します。内容を正しく把握して、来るべき妊活に備えましょう。
卵子や卵巣におけるさまざまな検査は、「卵巣予備能検査」と呼ばれています。「卵巣予備能」とは、卵巣が持つ潜在的な能力のことで、卵子の数や卵巣機能を調べることで、自らの妊娠能力を知ることができます。検査の種類や内容を、一つずつ見ていきましょう。
AMHとは「アンチ・ミューラリアン・ホルモン」の頭文字を略したもので、AMH検査は「抗ミューラー管ホルモン検査」とも呼ばれています。この「AMH」と呼ばれるホルモンは、卵子のもとになる卵胞から分泌されているため、AMHの値を調べることで、卵子の数がどのくらいあるのかを知る目安になるのです。
AMHは月経周期に左右されないので、検査はどの時期でも行えます。また、検査の方法は採血のみで行います。
脳下垂体卵巣系ホルモン検査とは、妊娠に必要な数種類の女性ホルモンの分泌状態を、調べるものです。脳の「下垂体(かすいたい)」という場所から出される女性ホルモンは、卵胞の成長や排卵を司っているからです。
検査では、卵胞を大きくするように促す「卵胞刺激ホルモン(FSH)」や、排卵を促す「黄体刺激ホルモン(LH)」、妊娠しやすい体づくりをする卵胞ホルモン(エストロゲン)を測定します。ホルモン分泌は、月経周期によって左右されるため、検査時期が限定されます。この検査の場合、月経2~5日目が検査に適した時期で、採血によって調べます。
膣内に棒状の器具を入れ、超音波によって卵巣などを診る「超音波検査(経膣超音波検査)」。この検査を月経2~5日目に行うことによって、卵巣内にある小さい卵胞(前胞状卵胞)の数を調られます。この検査は、「前胞状卵胞検査」とも呼ばれています。
AMH(アンチ・ミューラリアン・ホルモン)は、前胞状卵胞から分泌されているので、前胞状卵胞の数が多ければ、AMHの値も高くなります。なお、月経異常がある場合には、検査費用に保険が適用されます。
「不育症」とは、妊娠はするものの流産や死産が繰り返され、受精卵や胎児が育たない状態のことをいいます。流産の原因のほとんどは、受精卵の染色体異常といわれていますが、まれに母体側に何らかの異常があることで、不育症になってしまう場合もあるとされています。
厚生労働省では、2回流産を繰り返した場合、不育症の検査を受けるように提唱しています。検査にはさまざまな項目があり、母体側のどの部分に流産や死産につながるリスクがあるかを調べます。母体側による流産や死産につながる原因としては、血液凝固機能異常や甲状腺機能異常、子宮形態異常、染色体異常などがあります。
卵子や卵巣が潜在的に持つ妊娠する能力「卵巣予備能」を調べる検査には、セルフキットを用いるなど、自分自身で手軽に行えるものはありません。採血や超音波を用いる検査なので、必ず、婦人科など専門の医療機関で受けましょう。
【参照リンク:https://www.nishikawa.or.jp/menu/dock/amh.html】
自分の卵子の数を知ることができるAMH検査。その検査を受けることを特に意識するとよいのは、30代以上で子供をもちたいと望む女性だとされています。
女性の卵子は、胎児のときにすでに作られ、誕生したときには200万個を有していまが、その後は新たに作られることはなく、成長して排卵するか、消滅するか、老化するのみ。したがって、35歳頃には2~3万個になってしまい、妊娠をするチャンスも少なくなってしまうのです。では、AMH検査について詳しく見ていきましょう。
AMH(アンチ・ミューラリアン・ホルモン)は、卵子のもととなる「卵胞」が、成熟する初期段階で分泌されているホルモンです。卵巣の中には、原始卵胞と呼ばれる卵子のもとが存在し、それが刺激を受けて成熟し、やがて卵子となって排卵します。
AMHの値が高いということは、成長を始めた卵胞が多いことを表し、卵子の数も多いことを表しているとされています。AMHの値を調べることで、卵子がどれくらい残っているか目安を立てられるのです。
AMH値が高いからといって、「妊娠率」も上がるとはいえません。AMHは、あくまでも卵子の「数」の目安を知るものであり、卵子の「質」の良し悪しを知るものではないからです。卵子の数が多ければ、妊娠のチャンスは増えますが、その「質」が悪ければ受精や着床に至らなかったり、流産をしてしまったりする可能性もあります。
逆に、卵子の数が少なくても、「質」が良ければ妊娠出産に至る可能性もあります。そういう意味では、AMHと妊娠率は、必ずしも直結するものではないといえるでしょう。
AMHの値は、基準値や正常値を設定することは難しいとされています。それは個人差があるからです。しかし年代別に見てみると、歳を重ねるごとにAMH値も減少するといいます。
ただし、AMHの数値が高いからといって、安心はできないようです。AMH値が4.0~5.0ng/ml以上と高すぎる場合は「多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)」という疾患の可能性があるからです。
多嚢胞性卵巣症候群は、排卵ができずに卵巣内に卵胞がたまってしまうもので、不妊の原因の一つといわれています。AMH検査を受けたら、必ず、医師の説明をしっかり聞きましょう。
【参照リンク:http://ivf-asada.jp/amh/amh.html】
AMH検査は、全国のほとんどの不妊専門の医療機関で受けられます。自分の希望する医療機関があれば、あらかじめ問い合わせておいてもよいでしょう。
検査方法は、採血による血液検査で、結果は2週間程度でわかるようです。
AMHの検査費用は、医療機関によって差がありますが、おおむね10,000円以内で検査を受けることができます。保健の適用はされないので、自費で10,000円以内の支払いと考えておくといいでしょう。
あらかじめ医療機関に問い合わせておくと、安心できます。
将来、子供を持つことを望む女性にとって、自らの卵巣や卵子の状態をあらかじめ知っておけば、ライフプランが立てやすくなります。妊活も適切なタイミングで行える可能性が高まりますし、病気にかかっていた場合は、早く治療をはじめられます。自分の体ときちんと向き合い、悔いのない生活を過ごしていきましょう。