待望の妊娠に喜んでいたら、妊娠継続が難しくなる子宮外妊娠と診断され、自分を責めてしまっている方もいるでしょう。しかし子宮外妊娠の発症率は意外に高く、原因もはっきりしていません。そこで今回は、子宮外妊娠の詳細や発症率などを見ていきましょう。
子宮外妊娠によって、妊娠継続を諦めなければならなくなり、つらい想いをしている方は意外に多いとされています。しかし、そのことはあまり知られていないので、妊娠を喜んでいたら、いきなり子宮外妊娠と診断されて、絶望して自分を責めている方も多いでしょう。
今回の記事では、子宮外妊娠はどれくらいの確率で起きているのか、またその要因や治療法などを取り上げていきます。あまり落ち込みすぎずに、今回の子宮外妊娠の原因を探り、次回の妊娠に生かしましょう。
子宮外妊娠とは、本来なら子宮内に着床すべき受精卵が、子宮外に着床してしまうことを指します。子宮外では、胎児が問題なく成長できるスペースがないため、残念ながらほとんどの場合、妊娠の継続を諦めなくてはならないことになります。
子宮外妊娠では、卵管に着床してしまうケースが多く、そのまま放置してしまうと卵管が破裂して、母体の命に危険が及ぶこともあるのです。そのため、子宮外妊娠に気付いたら、できるだけ早めに対処する必要があります。
子宮外妊娠の割合は、妊婦全体では約1%とされています。しかし、患者の8割は経産婦とされているのです。つまり、初めての妊娠の場合では、子宮外妊娠の確率は約0.02%ほどで、2度目以降の妊娠では、その確率は約0.08%ということになるのです。
経産婦のほうが、子宮外妊娠をする確率が高いということなので、2度目の妊娠だからといっても、油断は大敵です。数字だけみると、かなり少ない確率のように感じますが、100人の妊婦がいたら、その内の一人は子宮外妊娠をしていることになるので、注意が必要でしょう。
子宮外妊娠の原因は、まだはっきり分かっていませんが、子宮外妊娠のリスクを上げるとされる要因は、いくつかあります。そこで以下では、子宮外妊娠のリスクを高める要因について、見ていきましょう。
通常は、卵子と精子は卵管で受精して受精卵となります。その後、その受精卵は細胞分裂をしながら、子宮に向かって移動していきます。その際に何か問題が起きて、卵管から受精卵が出てしまうと、腹腔や卵巣に着床してしまうことがあるのです。
なぜ受精卵が卵管から外に出てしまうのかについては、はっきりと分かっていません。しかし、卵巣で胎児が大きくなってしまうと、次回の妊娠可能性にも影響します。また、腹腔に受精卵が着床してしまった場合は、開腹手術が必要になることもあるので、卵巣や腹腔での子宮外妊娠に気付いたら、できるだけ早く対処するようにしましょう。
卵管の内部の癒着で、受精卵の通り道が塞がれていると、移動できない受精卵が卵管内で着床してしまうことがあります。卵管内部での癒着の原因は、性感染症や子宮内膜症、卵管炎などが考えられています。
卵管内で受精卵が着床してしまい、受精卵が大きくなっていってしまうと、母体の命に関わる「卵管破裂」の危険性が上がってしまいます。子宮外妊娠の約98%は、卵管で起こっているそうなので、特に注意が必要です。
子宮まで受精卵が到達できても、子宮内部に何らかの問題があると、子宮内で着床できないということもあります。過去に中絶手術を受けたことがある場合や、避妊具を子宮内に入れていたことがある場合は、子宮内の環境が変化することで、受精卵が子宮内部で着床できないということが多いようです。
また、生まれつき子宮の形状や、卵巣の機能に問題がある方も、子宮内で受精卵が着床しにくいことがあるとされています。
不妊治療と子宮外妊娠は、深い関わりがあるものとされています。不妊治療は、妊娠の可能性を大きくするために行うにもかかわらず、その不妊治療が、子宮外妊娠のリスクをあげてしまうこともあるのです。
不妊治療を行っている方や、妊活を行っている女性は、特に以下で見ていく不妊治療と子宮外妊娠の関係について、しっかり確認しておきましょう。
不妊治療において、取り出した卵子と精子を体外で受精させ、その受精卵を子宮に戻すという体外受精は、行われることが多い治療法です。しかし、この体外受精の合併症には、子宮外妊娠も含まれているのです。
体外受精は体外で受精させるので、一見、子宮外妊娠のリスクは少なそうに思えます。しかし、卵子を取り出す際に使われる排卵誘発剤によって、エストロゲンという女性ホルモンの分泌量が多くなりすぎて、その影響で受精卵が子宮内で着床しにくくなるとされているのです。
排卵誘発剤を使った不妊治療は、たくさんありますが、その排卵誘発によって、エストロゲンという女性ホルモンの分泌量が多くなり、子宮外妊娠が起こりやすくなるとされています。排卵誘発を行う代表的な治療法が、体外受精です。
一説では、受精卵をそのまま移植する「新鮮胚移植」よりも、受精卵を一度凍結してから移植する「凍結胚移植」のほうが、子宮外妊娠の確率は下がるとされています。しかし、母体の状態によっては、「新鮮胚移植」のほうが、妊娠確率が高い場合もあるので、体外受精の方法は、自分に合ったものを選ぶようにしましょう。
子宮外妊娠のサインとなる症状には、さまざまなものがあります。放置していると、次回の妊娠の可能性を低下させたり、母体の命を危険にさらす可能性が高い子宮外妊娠は、早めに発見するということが、大切なのです。
以下では、その子宮外妊娠のサインとなる症状を見ていきましょう。
子宮外妊娠と診断されるまでには、血液検査とエコー検査が行われます。血液検査では、妊娠すると高くなるhcg(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の量を測ります。通常の妊娠では、このhcgの値がだんだんと高くなっていくとされているのです。
しかし、子宮外妊娠においてもhcgは高くなるので、必ずエコー検査で子宮内に着床した受精卵の姿である、胎嚢を確認することになります。このエコー検査で、胎嚢が子宮内に確認できないのに、hcgの数値が高い場合は、子宮外妊娠の可能性が高いと判断されるのです。
また、尿にもhcgは含まれているので、妊娠検査薬はその尿の中のhcgに反応して、陽性反応を示します。さらに、胎嚢は妊娠5~6週目ごろから確認できるようになるので、妊娠6週目くらいには、子宮外妊娠かどうかが判明するとされているのです
人によって、子宮外妊娠の自覚症状は異なりますが、多くの場合は、下腹部がじくじくと痛むことがあるとされています。また、下腹部に刺すようなするどい痛みを感じることがあるようです。
妊娠の可能性があり、下腹部に痛みを感じる場合は、我慢せず早めに産婦人科で受診するようにしましょう。
子宮外妊娠では、かなり血液量が多い不正出血が、症状として出る場合もあります。正常な妊娠であっても、まれに不正出血がありますが、正常な妊娠では、ほとんどの場合は出血量は少ないとされています。しかし子宮外妊娠の場合、出血量が多いという特徴があるのです。
そのため、妊娠の可能性があり、量の多い不正出血が見られる場合は、医師に早めに相談することをおすすめします。
一般的に、「子宮外妊娠は、一度なってしまうと治らない」というような、ネガティブなイメージが強いです。しかし、さまざまな治療法がありますし、残念ながら今回の妊娠を諦めざるを得なくなっても、次回の妊娠に希望を残すことができる治療法もあるのです。
そこで以下では、子宮外妊娠の治療法について見ていきましょう。
子宮外妊娠は多くの場合、妊娠継続を断念せざるを得ない状況になってしまいます。しかし、血液検査において、妊娠反応の強さを示すhcgの数値が低い場合は、しばらく注意深く見守るという待機療法をとる場合もあります。
しかし、hcgが低いままだと、流産の可能性も高くなってしまうため、油断はできません。
子宮外妊娠と診断されても、症状が軽い場合は、薬で治療することも可能です。子宮外妊娠の薬物療法では、細胞増殖を抑える効果のある薬を、卵管に投与することになります。ただしその場合、使用される薬物には、抗がん剤も含まれるので副作用には注意が必要です。
子宮外妊娠で、妊娠の継続が困難と判断された場合は、子宮や卵管などの内容物を取り出したり、卵管を切除したりする手術を受ける必要があります。その手術には、腹腔鏡手術と開腹手術の2種類あります。
以下では、その2種類の手術の違いについて、見ていきましょう。
腹腔鏡手術は開腹手術と比べて、傷跡が大きく残らず、手術後の痛みも少ない手術です。そのため、多くの場合は、まず腹腔鏡手術が可能かどうか検討されます。
しかし、腹腔鏡手術は開腹手術と比べると、手術時間が長くなりますし、5~10%ほどの確率で、絨毛細胞が体内に残ってしまい、再発してしまうデメリットもあるため、事前によく確認しておきましょう。
子宮外妊娠が起こった場所や症状によっては、腹腔鏡手術では、完全な処置が不可能なこともあります。その場合は、開腹手術が行われます。開腹手術は腹腔鏡手術と比べて、傷跡が大きくなりがちで、術後も痛みがあります。しかし、手術時間は比較的短く、再発の可能性も少ないというメリットがあります。
どちらの手術が適しているかどうかは、子宮外妊娠の状態によって異なるので、医師とよく相談してから決めましょう。
子宮外妊娠は再発の危険性も高いので、治療においても注意が必要です。再発してしまった場合は、今後の妊娠の可能性にも影響することがあるので、妊活をしている方は、この機会に子宮外妊娠の再発について、よく把握しておきましょう。
子宮外妊娠は、原因がはっきりと分かっていません。原因がきちんと解消されていないと、再発するリスクも大きくなりやすく、再発率は約10%とされています。
腹腔鏡手術をしたとしても、5~10%の確率で再発してしまうとされているので、手術をしたからといっても、完全に安心はできないのです。
子宮外妊娠の治療で、2本ある卵管の1本を切除したあとに、残った卵管に子宮外妊娠が再発して、そちらも切除しなくてはならなくなることもあります。この場合、残念ながら、以降の自然妊娠は不可能になってしまうとされています。
しかし、自然妊娠が難しくなっても、人工授精や卵子提供などの方法で妊娠は可能なので、卵管を失ったとしても、完全に妊娠できなくなるわけではないのです。
子宮外妊娠を経験すると、次回の妊娠でも同じことが起きてしまうのではと不安に思ってしまいますね。しかし、子宮外妊娠のあとでも、適切な対処を行っていれば、正常に妊娠することは十分可能なので、過度に不安に思う必要はありません。
以下では、その適切な対処法について、見ていきましょう。
卵管での子宮外妊娠の治療で、卵管を切除しなかった場合は、卵管内の同じ所で子宮外妊娠を再発する可能性が高いので、次回の妊娠前には必ず卵管の検査をしましょう。
卵管での子宮外妊娠では、卵管の詰まりやすさが原因であることが多いので、卵管の詰まりやすい箇所が特定できれば、子宮卵管造影を使って、卵管を詰まりにくくすることも可能です。
子宮外妊娠は、クラミジア感染による卵管炎や、卵管周囲炎が原因であることが多いので、子宮外妊娠後の妊娠前には、必ずクラミジア感染の検査も行いましょう。
とある調査では、子宮外妊娠の経験者の約2~3割が、「クラミジア感染症に代表される骨盤内の炎症が原因による卵管障害」であるという結果も出ているのです。
妊娠継続が難しくなる子宮外妊娠は、原因がはっきり分かっていないうえに、発症率や再発率が意外に高いので、誰にでも起こる可能性があるものです。そのため、子宮外妊娠によって、妊娠継続を諦めなくてはならなくなっても、あまり自分を責めないようにしましょう。
さらに、一度子宮外妊娠になってしまっても、原因を探って適切な治療や対処ができれば、次回の妊娠に希望を持つことができるます。子宮外妊娠の治療後は、精神的に回復するまで待ってから、次回の妊娠への備えを盤石にしていきましょう。