射精のとき、我慢や寸止めするクセのある人がいます。パートナーがそうした男性である場合、前立腺炎になる可能性を心配したり、不妊の原因になるのではと不安に思うことも。前立腺炎の原因と、発症後の対策についてチェックして、できることを考えましょう。
そもそも「前立腺」とは、膀胱の下にあって尿道をとり囲んでいる、男性のみに存在する臓器です。分泌される前立腺液は、精液と混ざり、精子の運動機能をサポートしてくれます。前立腺が炎症して尿道を塞ぐと、男性不妊になる可能性があります。
射精の我慢を含め、前立腺炎の原因となり得る事柄について、詳しくみていきましょう。
はっきりとは分からないことも多いとされる「前立腺炎」の原因について、可能性を挙げています。
前立腺の役割のひとつに、射精時に精液の逆流を防ぐ「逆止弁」の働きがあります。自慰やセックスをしているときに、故意に尿道を塞いで射精を止めてしまうと、逆止弁の機能の劣化を招きます。
逆流を防ぐ機能が衰えた結果、射精時の精液が尿道を逆流していまい、膀胱(ぼうこう)に入ってしまうことがあります。こうした症状を「逆行性射精」と呼びます。逆行性射精は、出てくる精液の量が減ることで自覚できます。
尿道は前立腺ともつながっているため、前立腺にも精液が入ることが考えられ、そうなると炎症の原因になり得ます。ただ、逆行性射精は「精液が減ることによる不妊以外に害はない」とする見方もあり、前立腺炎の原因になると、はっきり断定することはできません。
いずれにせよ、射精の我慢や寸止めは、身体にとってのメリットは1つもない、といわれています。
長時間同じ姿勢をとっていると、前立腺が圧迫されて刺激となり、炎症を起こしてしまうことがあります。また骨盤内の血流が悪くなると、下半身が血行不良となり、前立腺がむくみやすくなります。
トラックの運転手や、デスクワークの多い人は注意が必要です。1~2時間に1度は、席を立って身体をほぐすことを心がけましょう。下半身を温めるのも、前立腺炎の予防に効果的です。
前立腺炎には「細菌性」と「非細菌性」があり、症状が出るスピードによってさらに「急性」と「慢性」に分けられます。「急性」は細菌性、「慢性」は細菌性と非細菌性があり、症状が出ず治療も必要としない「無症候性炎症性前立腺炎」も存在します。
細菌性の場合の感染経路は、細菌が精液の通る道を逆流して、前立腺に入るといわれています。原因となる主な細菌は大腸菌、クラミジア、淋病などです。これらの細菌が、何らかの原因で前立腺に侵入し、増殖することで炎症が起こります。
ストレスが溜まると骨盤内の血流が悪くなり、「慢性前立腺炎」を発症しやすくなるといわれています。慢性前立腺炎とは、慢性的に前立腺が炎症を起こし、むくんでいる状態のことで、治療も長期に渡ることが多いです。細菌以外にもさまざまな原因があり、特定できないこともあります。
慢性前立腺炎は、前立腺炎全体の9割を占める病気です。下腹部や陰嚢(いんのう)に鈍い痛みや強い痛み、違和感があり、頻尿や残尿感、排尿時の痛みなどが症状として現れます。
喫煙は、血管の収縮を招き、血流を悪くすることが知られています。流れてくる血液が少なくなると身体が冷えて、下半身の血流が滞り、前立腺がむくみやすくなる恐れがあります。
そしてアルコールは、適量に個人差がありますが、飲みすぎると血流や血圧が不安定になり、前立腺炎のリスクを高めます。すでに発症している場合は、症状を悪化させる場合があります。
アルコールとカフェインには利尿作用があり、体内の水分を排出して血流を悪くすることがあります。水分不足では体内の細菌を洗い流す機能も損なわれるため、前立腺の炎症が起こる確率が上がります。
いざなってしまったときのために、知っておきたい、気を付けていきたいことです。
大量の水分を摂ることで、前立腺の炎症が起きている場所の菌を洗い流す効果があります。また、水分を補給すると血液中の水分量が増え、血流がスムーズになります。
前立腺のむくみや充血の改善につながるので、アルコールやカフェインを含まない飲料で、1日2リットル以上を目安に水分補給をするようにしてください。
炎症している前立腺は、刺激にとても敏感になっています。便秘や下痢などの排便における不調は、前立腺への刺激となり、炎症を悪化させてしまうことがあります。前立腺は膀胱の下に位置しますが、直腸とも、かなり近い場所にあるのです。
したがって、発酵食品や食物繊維の摂取、適度な運動などで便秘を解消するように心がけていきましょう。また、チョコレートや辛いものなどの刺激物を避けたり、下半身を冷やさないように気を付けたりして、下痢も改善させるのが重要です。
前立腺炎が進行すると、痛みが増したり、尿に血や膿(うみ)が混ざったりするようになります。40℃近い高熱が出ることもあり、前立腺のむくみがひどいと尿道がふさがり、排尿が困難になる場合もあります。
ここまではっきりとした症状が出ると、多くの人が泌尿器科にかかることになるでしょう。病院で適切な検査を行い、尿や前立腺液に含まれる細菌が特定されると、その種類に応じた抗生物質が処方されます。ほとんどの場合、数日~1週間ほどの服薬で症状の改善がみられます。
その後、細菌の種類や症状に合わせて1カ月~数カ月間、抗生物質の投与が続けられます。しっかり続けないと完治しない恐れがあるため、必ず医師の指示通りに通院・服薬する必要があります。
前立腺炎には、ストレスが大きく影響しています。下腹部などの違和感や不快感、痛みを我慢することが、さらなるストレスを生み、結果的に症状も悪化する、という悪循環に陥る男性もいます。症状としてよくみられる排尿時や排便時の痛みはとくに、毎日感じるストレスになります。
温かいお風呂にゆっくり浸かったり、気分転換になるような趣味に打ち込んで、溜まったストレスを解消させるようにしましょう。入浴は下半身を温めるためにも有効です。
前立腺炎は、重症化すると尿道が塞がり、排尿が困難になります。また精液の一部となる前立腺液に細菌が入った状態では、精液の状態が悪くなり、男性不妊につながる恐れもあります。
ただし、精子そのものに異常が出ることはなく、妊娠したとしても赤ちゃんの健康に影響はありません。子供を望むなら、あきらめずに治療しましょう。非細菌性の場合、治療中であっても性行為は可能です。
症状が軽度なうちは、入院や点滴なしで、服薬のみで治療できる場合もあります。少しでも不安に思ったときは、我慢せず医療機関を受診するようにしてください。
射精の我慢や寸止めはもちろん、過度な禁欲も健康を損なう要因になり得ます。正しい射精を行うと同時に、規則正しい生活でストレスを溜めないように心がけると、前立腺炎の発症や重症化のリスクを軽減することができます。
食生活や生活習慣を見直し、リラックスできる時間を作るように、パートナーと一緒に考えてみましょう。