男性不妊の原因は、大きく2つに大別されます。
精子の問題と、性機能不全です。
ここでは、精子の問題、高度の精液性状低下についてご紹介します。
高度の精液性状低下とは、精子の数が極端に少なく、精子運動率が20-30%以下と極端に低い場合のことを言います。
精巣機能障害やホルモンの分泌低下による低ゴナドトロピン性腺機能低下症や幼少時のおたふく風邪、高熱による生殖機能への影響によって、高度の精液性状低下がみられることがあります。
精液中に精子が全く見られない状態を無精子症といいます。
この中で、精巣内では精子が作られているのに精液中に精子が出てこない閉塞性無精子症があります。
代表的な疾患として先天性両側精管欠損症や精巣上体炎後の炎症性閉塞、鼠径ヘルニア手術等があります。
一方閉塞がないのに精子が全く作られていない無精子症もあり、そのほとんどは原因不明ですが、10-19%に染色体異常であるクラインフェルター症候群がみられます。
無精子症や精子の数・運動率に問題があると診断されることは女性にとってはもちろん、男性には相当の精神的ダメージは大きいものです。
しかし無精子症と診断された場合でも精巣内で精子が作られていることもあります。
ですので男性が外科的手術を受けることにより精子を取り出し顕微授精で妊娠することもできますので、あきらめる必要はありません。
また無精子症の8割は、精巣内で全く作られていない、もしくはわずかしか作られていない非閉塞性無精子症といわれています。
無精子症の検査方法としては、フーナーテストや精液検査で精子が見つからない場合や極端に数が少ない場合にさらに詳細な検査を行います。
問診、触診、ホルモン値検査などを行い、精子の形成を促すホルモンであるFSHの値を調べます。
睾丸の大きさが正常であれば閉塞性無精子症の可能性を、FSHの値が高く睾丸が小さい場合や触診で痛みを感じる場合は非閉塞性無精子症の可能性を疑っていきます。
閉塞性無精子症の場合、自然妊娠を望み、女性側に不妊原因がなくカップルの年齢が36歳未満の場合に、精路再建手術という方法があります。
女性側にも何らかの不妊原因がある場合や、年齢が35歳以上の場合は、精巣や精巣上体内の精子を採取して顕微授精を行う方法が検討されます。
次に非閉塞性無精子症の場合、ホルモン異常が原因の場合は、ホルモン剤を注射することで精子が精液中に出現する可能性があります。
また、患者の半数は精巣内の一部分で正常に精子を形成していることが分かっているので、MD-TESEと呼ばれる方法で精子や精子になる前の細胞である後期精子細胞を探します。1匹でも精子が見つかると排卵誘発によって採卵した卵子とともに顕微授精を行って妊娠できる可能性があります。
高度の精液性状低下は、高い技術力が求められる治療法ですので、適切な方法を選択するためには、男性不妊治療専門のクリニックで、治療経験が豊富な医師に相談することが大切です。