不妊治療ではどれくらいの助成金を受けられるのか知っていますか?
不妊治療には高額な医療費がかかるので、助成金がいくら出るのかは、これから治療を受けようとする方は気になるところです。
現在、各自治体が行っている「特定不妊治療助成制度」というものがあります。
これから不妊治療を始めようとしている方は、助成金額や申請方法や受け取るときのポイントなどを確認しておきましょう。
不妊治療の検査や治療は、健康保険の対象外になるものが多く、経済的な負担が大きいのですが、その負担を軽減してくれる助成制度があります。
助成金制度は自治体によって内容が異なる場合があるので、利用する際はお住まいの自治体に確認しましょう。
不妊治療で保険の対象外になる治療法は、高度不妊治療といわれている体外受精や顕微授精など。
保険の対象にならないため、体外受精だと1回あたり20~50万円ほどの高額な費用が必要です。
助成制度を利用することで、全額ではありませんが多少の負担は軽減することが可能です。
助成金額は、治療ステージにより異なりますが、7.5~25万円程です。
助成の対象になるのは、体外受精と顕微授精のみ。
治療1回あたり以下の助成額が上限です。
また、平成28年4月の制度の改正により、初回の助成額の上限が30万円に拡大されています。
● 治療ステージA(新鮮胚移植を実施した場合):20万円(初めての助成を受ける場合は30万円)
● 治療ステージB(当初からの方針により凍結胚移植を実施した場合):25万円(初めての助成を受ける場合は30万円)
● 治療ステージC(以前凍結した杯を解凍して胚移植を実施した場合)、F(採卵できず中止になったなどの場合):7.5万円
● 治療ステージD(移植のめどが立たずに治療が終了した場合)、E(受精できなかった場合):15万円(初めての助成を受ける場合は30万円)
平成28年4月1日の制度改正の内容に基づいた助成回数です。
治療開始日時点の年齢により適用回数が異なりますが、過去に助成を受けた方も含めて、すべての方が以下のように適用されます。
● 妻が39歳(治療開始日時点の年齢)までに1回目の助成を受けた場合:6回まで
● 妻が40~42歳まで(治療開始日時点の年齢)までに1回目の助成を受けた場合:3回まで
厚生労働省では、以前から不妊治療支援事業を打ち出していますが、平成28年4月1日以降に内容が変更。
事業主体はあくまでも地方自治体であり厚生労働省は事業費用を補助するだけです。
そのため助成制度は、住んでいる自治体によって上限額が変わります。
例えば東京都の場合は、初めて助成を受ける場合は30万円が上限です。
また、助成制度には他にもいろいろな決まりがあります。
所得制限額は、夫婦合算の所得をベースとして730万円です。
さらに、事業実施主体において医療機関が指定されていたり、助成対象者が段階的に絞られているということも特徴。
43歳以上で不妊治療を始める場合は完全実費になるので注意しましょう。
保険医療機関で不妊検査を受ける場合も助成を受けることができます。
不妊検査の場合は1回5万円が上限です。
助成回数は、夫婦1組につき1回限り。
助成の対象になる不妊検査や対象者は以下のようになります。
ただし、助成制度は自治体によって異なる場合があるので、利用する際は住んでいる自治体に確認しましょう。
精液検査、内分泌検査、画像検査、精子受精能検査、染色体・遺伝子検査など。
超音波検査、内分泌検査、感染症検査、卵管疎通性検査、フーナーテスト、子宮鏡検査など。
● 検査開始日のときに法律上の婚姻関係がある夫婦であること。
(事実婚は対象外。)
● 検査開始日の妻の年齢が35歳未満である夫婦。
(夫の年齢制限はない。日にちは、夫婦どちらかの検査開始日の早い方が基準。)
● 検査開始日から申請日まで、夫婦のどちらかが継続して都内に住民登録している。
● 保険医療機関で、夫婦ともに助成対象の検査を受けている。
不妊治療の助成金を受け取るには、現住所を管轄する保健所(健康福祉センター)へ申請する必要があります。
治療が終了したら、必要書類を用意して、住所地を管轄する保健所に郵送をして提出しましょう。
申請に必要な書類の1つに「特定不妊治療費助成申請書」があります。
この申請書は、住んでいる住所を管轄する保健所(健康福祉センター)のサイト等からダウンロードできるのでご確認ください。
助成金の申請手続きをする際には、必要な書類を準備します。
必要な書類をすべて揃えたら保健所に提出しましょう。
必要な書類は以下のようなものがあります。
● 特定治療支援事業申請書・様式第1号
(治療1回につき1枚必要で、夫婦連名で署名もしくは記名押印する)
● 特定治療支援事業受診等証明書・様式第2号
(治療1回につき1枚必要で、指定医療機関で証明を受ける)
● 住民票の写し
(申請日から3カ月以内に発行されたもの。夫婦連名で、続柄や本籍や筆頭者を省略しない。個人番号の記載は不要。)
● 戸籍謄本
(申請日から3カ月以内に発行されたもの。通算1回目で初めて助成を受ける場合、もしくは夫婦どちらかが他市に住民票がある場合に限る)
● 夫婦それぞれの申請日の前年
(1月~5月までの申請日の場合は前々年)の所得額を確認できる書類(住民税課税証明書、住民税非課税証明書、住民税額決定通知書のコピーなど)
● 振込先の金融機関と口座番号等がわかるもの
● 保険適用外の治療費の領収書
(自治体により、コピー可の場合と不可の場合とあるので要確認)
● 精巣内精子生検採取法等受診等証明書・第3号様式(手術を実施した医療機関が記入)と、それに係る保険適用外の治療費の領収書
(自治体により、コピー可の場合と不可の場合とあるので要確認)
申請には期限があります。
助成対象になる1回の特定不妊治療が終了した日(妊娠の有無は問わず、妊娠の確認をした日、または医師の判断で治療を終了した日)が属する年度末が申請期限。
申請日は郵便局の消印日になるので、3月31日消印有効です。
また、1月~3月までに特定不妊治療が終了したものが申請する場合は特例があります。
当該年度末の3月31日までに申請書等が提出できない場合、4月1日~6月30日(消印有効)の期間に限り、申請可能です。
不妊治療の助成金を受けるには、夫には年齢制限がありませんが、妻の年齢には年齢制限があるのです。
そして、年齢により助成を受ける回数も変わります。
初めて助成を受けて治療を開始したときに妻の年齢が39歳以下だった場合、43歳になるまで通算6回まで助成を受けることが可能。(平成27年度までに助成を受けた回数も通算される。)
初めて助成を受けて治療を開始したときに妻の年齢が40歳以上だった場合、43歳になるまで通算3回の助成を受けることが可能です。(平成27年度までに助成を受けた回数も通算される。)
「治療を開始したとき」とは、夫婦のどちらから治療を開始したときです。
そして、通算の助成回数が上限に満たなくても、妻の年齢が43歳以上で治療を開始したのであれば、助成の対象外になるので注意しましょう。
不妊治療にかかった費用は医療費控除が受けられます。
例えば、不妊治療の検査代、治療費、薬代、不妊治療のために行った鍼治療やマッサージ代、病院に行くときの往復の交通費など。
ただし、交通費は基本的には電車やバスなどの公共交通機関の使用が原則なので、使用した日、交通手段、駅名、料金をメモしておきましょう。
足を怪我していて動けないなどの理由がある場合のみタクシーも可です。
医療費控除の対象になるのは、1月~12月までの1年間の不妊治療費とその他の医療費の合計が10万円を超えていた場合。
世帯で申請するので、自分だけでなく世帯の医療費が10万円を超えていたのであれば申請できます。
10万円を超えていなくても、所得の5%が10万円未満の場合は医療費控除が可能です。
源泉徴収書を見て確認してみましょう。
助成の対象となるのは、特定不妊治療とされている体外受精と顕微授精のみ。
例えば、人工授精の場合は対象外です。
もっと詳しくいうと、法律上で婚姻している夫婦が、特定不妊治療以外の治療方法では妊娠する見込みがない、または妊娠する可能性が極めて少ないと医師に診断されて、指定医療機関で特定不妊治療である体外受精と顕微授精を受けた場合は助成の対象。
治療1回につき、助成額の上限まで助成を受けることが可能です。
男性不妊の場合、特定不妊治療の過程の一環とされている「精巣内精子生検採取法、精巣上体内精子吸引採取法、経皮的精巣上体内精子吸引採取法、精巣内精子吸引採取法」の費用の一部が助成されます。
申請は、妻の助成上限回数の範囲内であれば可能です。
指定医療機関又は指定医療機関から紹介された医療機関で手術を受けているということも助成の条件。
助成対象費用は、医療保険が適用されない手術の代金や精子凍結の料金。
男性不妊治療単独で助成を申請することはできません。
特定不妊治療費が助成の対象外になった場合は、男性不妊治療も助成の対象外になります。
助成を受けるにはさまざまな条件を満たしている必要がありますが、その条件の中には所得制限もあります。
それは、「夫婦の合算所得額が730万円未満である」ということです。
所得制限は、夫婦の前年の所得額の合計額で確認します。
申請日が1月~5月の場合は、前々年の所得額の夫婦の合計額で確認。
その他の条件をすべて満たしていたとしても、所得制限がオーバーしていると助成を受けることはできないので注意しましょう。
不妊治療は保険の適用外になる治療も多く、高額な治療費がかかります。
経済的な負担を少しでも軽減するために、助成金を利用しましょう。
助成を受けるためには、おおよその助成額や助成額の上限、申請方法、助成を受けるための条件を確認する必要があります。
あらかじめ助成を受けるときのポイントを抑えておき、不妊治療をすることになったら、助成金を忘れずに申請しましょう。