不妊治療は高額な治療費がかかります。
クリニックで説明を受けたその金額に驚いて、治療を断念する人もいるでしょう。
しかし不妊治療にも、医療費控除を使うことができるのです。
治療費の一部が戻るこの制度を賢く利用して、前向きに治療に取り組みましょう。
不妊治療には高額な治療費がかかります。
費用がかかりすぎてしまい、今後も治療を続けるかどうか悩んでしまう夫婦もたくさんいるでしょう。
そんなときに活用したいのが、医療費控除です。
医療費控除というのは、簡単にいうと治療にかかった医療費の一部が還付される制度。
しかし実際申請するときには「サプリメントは治療費に入るの?」「所得によって条件は変わるの?」など疑問がでてくるでしょう。
不明点をクリアにし、賢く医療費控除を活用しましょう。
不妊治療には、医療費保険が適応されません。
そのため高度不妊治療を受けている場合、一度の顕微授精だけでも40万円~60万円ほど費用がかかります。
つまり1年の内に2度顕微授精をすれば、それだけで軽く100万円を超えることもあるのです。
そんなときに知っておきたいのが、助成金と医療費控除です。
助成金制度は厚生労働省が始めた制度で、不妊治療をしている家庭の医療費の負担軽減を目的としています。
ですが助成金制度には所得制限があり、所得金額の合計が730万円未満でなければ助成を受けられません。
しかし所得制限にひっかかってしまう家庭の場合でも、医療費控除は確定申告をすれば一定の金額を満たすことで還付金を得ることができます。
医療費控除を賢く利用しましょう。
医療費控除には、還付金以外にもメリットがあります。
医療費控除を行うことで税額が下がるという節税効果です。
所得税と住民税が減額されるのですが、とくに住民税に関していうと翌年の6月からの給与から引かれる住民税が安くなります。
また、さまざまな行政サービスにもメリットがあり、たとえば保育園での保育料は2015年以降、住民税を元に定められるようになりました。
そのため住民税が安くなるということは、保育園料も安く抑えられるということになります。
不妊治療で医療費控除を受けるためには、法律上夫婦と認められている必要があります。
生計が一緒の家族ならば、不妊治療費用だけではなく風邪を引いたときの病院代などさまざまな医療費を合計することができます。
また、別居をしていても生計が一緒ならば医療費控除をまとめることができるのですが、入籍していない事実婚の場合には生計が一緒ではないのでまとめることができません。
申請に必要なもののひとつに、診療薬代の領収書やレシートがあります。
治療にかかった分は、捨てずに必ず保管しておきましょう。
また病院までの交通費も医療費控除の対象となります。
交通費に関してはバスなどで領収書が取りにくいこともあり、メモ書きでも可能となっています。
不妊治療を目的とした鍼マッサージ代も認められていますが、リラクゼーションを目的としたものは申請することができません。
不妊治療を目的とした薬やサプリメントで、医師から指示があったものならば医療費控除の申請対象とすることができます。
しかし指示がなければ対象外となるので注意が必要です。
病院や薬局で処方してもらったもの以外、たとえば市販薬や漢方薬なども医師の指示があれば対象となるので、購入した際には忘れずに領収書を保管しましょう。
検査治療などにより不妊治療に入院を伴った場合、その入院代ももちろん医療費控除の申請対象です。
では食事代はというと、こちらも入院費用の一部として考えられるため、食事代、それから検査着や、シーツのクリーニング代も医療費控除の対象となります。
医師の診察を受けるために直接必要なものか、そうでないかで判断しているため自分で持ち込んだパジャマのクリーニング代だったり、入院以外の食事は対象外です。
所得が200万円以上か、そうでないかで医療費控除の対象額が異なります。
はじめに、よく勘違いしている人がいるのですが、所得というのはイコール年収ではありません。
所得とは、年末調整や確定申告で社会保険料などの控除額を引いたあとの金額をいいます。
所得200万円以上の場合には、総医療費の10万円以上が申請対象です。
また所得200万円未満は、所得×5%が医療費控除の対象額となります。
医療費控除をしたら、いくらくらい還付金をもらえるのか気になるところです。
まず医療費控除の対象金額を確定します。
たとえば助成金などをもらった場合には、かかった医療費総額から助成金分を引かなければなりません。
そのようにして医療費控除対象額を確定したら、あとは自分の所得税率をかけるだけです。
つまり、「医療費控除の金額」×「所得税率」=還付金です。
以下に所得金額における税率を記載しますので、参考にしてください。
・195万円以下5%。
・195~330万円以下10%。
・330~695万円以下20%。
医療費控除の対象額は、助成金や保険金を除いたものです。
そのため、厚生労働省の助成金や市区町村の助成金を得た場合には、医療費総額から助成金や保険金分を引かなければなりません。
つまり治療にかかった費用が130万円で助成金が30万円だった場合、100万円が医療費控除の対象額となります。
医療費控除額は、医療費控除対象額をもう一度おさらいすると、以下の計算式になります。
「1年間の総医療費額」-「保険金や助成金」-「10万円(所得200万円以下は所得の5%を引いた金額)」=「医療費控除額」
そして上記の計算式で出た医療費控除額に、自分の所得税率をかけると還付金の額が出ます。
計算式さえはっきりとしていれば、計算自体は難しいものではありません。
一度計算してみましょう。
夫婦共に会社勤めの場合には、所得の大きいほうで医療費控除をしたほうが得です。
なぜなら、所得が違えば所得税率が異なるため、所得税率が大きいほうが還付金も大きくなるのです。
医療費控除が100万円、夫の所得が500万円、妻の所得が190万円の場合で計算してみます。
夫の場合は100万円×税率20%で還付金は20万円。
妻の場合は100万円×税率10%で還付金は10万円です。
倍の差が現れました。
共稼ぎの場合には、所得の多いほうで医療費控除をしてください。
カードで支払いをした場合にも注意が必要です。
医療費控除の対象となる医療費は「その年の1月1日から12月31日に支払った医療費であること」とされています。
窓口で支払ったのが12月で、引き落としが年をまたぐ場合迷うかもしれません。
しかしカード払いはカード使用日が支払日となるので、12月に支払った医療費分として計算することになります。
不妊治療の助成金の申請は、いつのタイミングがよいのでしょうか。
まず助成金の申請期限は「治療終了した日の属する年度内(4/1~翌年3/31)」です。
治療の途中で小分けに申請を出した場合、医療費控除額を算出する際に助成金を引かなければなりませんが、引かれる回数が多いと損となります。
また申請期限は年度内となっているため、年をまたぐ場合には12月までに助成金を得るか、それとも年明けに申請を行うかしっかりと考えてから行いましょう。
不妊治療には高額な費用がかかります。
申請すれば数十万円の還付金が戻ってくるかもしれないのです。
しっかりと医療費控除について学び、不妊治療を助けてくれる制度を賢く活用しましょう。
治療費が高額だからというだけで、不妊治療を断念するにはまだ早いかもしれません。