2018.08.09

体外受精の金額はどのくらいかかるか知ろう。金銭面から見た不妊治療

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体外受精というと、これまでの不妊治療よりも1段階上に進んだといった印象を受けることでしょう。それによる不安や、金銭的な負担を考え、前に進みにくいケースもあるかもしれません。まずは、金銭負担の程度を知り、治療開始の判断をしましょう。

体外受精をしたい

不妊治療において体外受精を望むということは、もうかなり不妊治療が進んでおり、不妊の原因もわかってきていることかと思います。

とはいえ、体外受精になると、自分の体外で受精が行われることから、これまでの不妊治療とは違った印象も受けますし、さらに金銭的負担も増すことになるでしょう。実際に不妊治療に入る前に、知りえることは知っておきましょう。覚悟を決めてから不妊治療に入った方が、想定外のことを減らすことができます。

体外受精1周期に必要な金額の内訳

体外受精1周期に必要な金額の内訳を大まかに知っておきましょう。体外受精は採卵をし、受精させ、うまく受精できたものを女性の子宮内に戻します。

このように述べただけでも、高度な医療行為であることはうかがえるでしょう。当然、それにかかる金額も相応にかかってきます。先にある程度の金額を把握しておくことで、生活費への負担を知ってから始めた方がよい治療といえそうですね。

排卵誘発剤を投与し超音波検査をするための費用

体外受精をするためには、まずは女性の体内から卵子をとる必要があります。そのためには、排卵誘発剤という薬物を投与し、排卵をうながすのです。この際に痛みを感じることもあり、金銭的負担だけでなく、身体的負担もある治療であるといわれています。

FSH・HMG注射が1万円程度、スプレキュア点鼻が1万円~1万5,000円程度、確認のための超音波検査が2,000円程度と、数万円以上は覚悟しておきましょう。痛みだけでなく、タイミングを合わせての来院など、仕事をやすまなくてはいけない部分もあり、収入面でのマイナスも覚悟しておきましょう。

採卵と採精をするための費用

採卵と採精をするためにも費用がかかります。精子は自宅でとったものを持っていくことも可能ですが、卵子は病院で採卵せねばならないので、費用がかさみます。

排卵には、10万円~20万円程度(回数を重ねると軽減することもあります)かかるとされており、うまく取れるかもやってみないとわからない部分があります。また、精子も採精したものの中からよりよい精子を選ぶために、精子調整媒精というものを行います。これに、7万円程度かかり、よい精子と卵子を受精させ、余剰の卵子は凍結保存(本数により増額)することになるのです。

これだけでも、非常にお金がかかることがわかります。そもそも普通に出産しても、子供の為に100万円程度は用意しておいたほうがよいとされているので、そこにさらにお金がかかるということは相当な負担になります。

容器で受精し培養するための費用

受精させた卵子を培養するためには、1個10万円程度かかります。さらに、いくつかの卵子が上手く受精できた場合は、凍結胚保存をおこない、この費用は3万円~8万円程度とされています。全ての卵子を凍結させた場合は、20万円程度(1年保管料別途5万円程度)かかります。

また、受精した卵子が上手く育ち、初期胚と胚盤胞ができるまで培養する必要もあります。これがうまくいかない場合は、残りの凍結保存した卵子を使用することになるため、さらに費用がかかってきます。

子宮内に胚移植するための費用

受精した卵子が順調に育ってきたら、それを今度は母体に戻す必要があります。現在の医学では母体以外の場所で子供を成長させることはできませんので、子宮内に戻す必要があるのです。この胚移植が8万円~10万円程度(凍結胚移植は+3万円程度)かかります。

初期胚移植と胚盤胞移植に成功すれば妊娠を継続することができますが、これがうまくいかない場合もあります。何度か挑戦する必要があるケースが多く、その分お金がかかります。

胚移植から約2週間後に妊娠判定するための費用

胚移植から約2週間後に妊娠判定するための費用も必要になります。血液検査や尿検査に500円程度と、これは通常の妊娠と大差ありません。また、妊娠していれば黄体ホルモン投与などが必要になる場合もあります。

これは、妊娠を継続しやすくするためのホルモンで、1,000円程度と、そこまで高額ではありません。ですが、こういった金額の積み重ねが、不妊治療の金額を上げていくため、不妊治療にはお金がかかるとされているのです。

その他でかかる費用

不妊治療は治療そのものだけにお金がかかるだけではなく、ちょっとした検査など、細かい部分でいつの間にか積み重なっていくお金があります。そして、気づくとお金が足りないといったことも起こりえますので、そうならないためにも、現実的な計算をしておきましょう。

また、不妊治療をしている病院が近くにない場合などは、交通費などもばかにならない金額になることもあります。有給が取得できない仕事をしている場合は、治療の為にかかる時間によって収入減につながることもあり、思いのほか出費はかさむものです。

月経中の検査にかかる費用

生理中の検査を行うためにもお金がかかります。きちんと月経がきて、その時のホルモン量はどうかなどを調べ、妊娠に結び付くかを調べるのです。LH・FSH・プロラクチンの値を調べるための血液検査、TRHテスト等に2万円程度かかることでしょう。

妊娠は病気ではないとよくいわれますが、同様に不妊治療も、多くが保険適用外になります。補助が出る部分もありますが、自費による負担は大きく、家計を圧迫することは間違いないです。少しでも助成や保険の対象にならないか、調べておきましょう。

月経開始から7日から10日目の検査費用

不妊治療の大きな特徴はとにかく検査が多いことです。そしてその検査は自己都合ではなく、生理等の身体のタイミングによって検査日が決まります。働く女性にとって、これは非常に厳しいものであり、不妊治療を断念する理由のひとつにもなりやすい部分です。検査に行きたくても仕事をやすめない。また、やすみを無理にねん出しても、結果に結びつくとは限らないといったジレンマもあることでしょう。

月経開始から7日から10日目に行う検査として、卵管通気通水検査があります。これは卵管が正常に機能しているか調べるためのものですが、8,000円程度かかります。子宮腔内造影の検査には1万円程度かかります。金銭的負担も大きいため、不妊治療で貯蓄を使い果たすこともあり、両親から援助を受けているという夫婦もいるようです。

排卵期その他の検査テスト費用

排卵期その他に行うテストにもお金がかかります。実際の不妊治療と比べると高額ではないですが、フーナーテストに300円程度、血液感染症検査(B型肝炎、HIV等)に1人5,000~8,000円程度、抗精子抗体検査に8,000円程度と、塵も積もれば山となる、いつの間にか数万円以上になっていることもあるでしょう。

これらのテストは生殖機能や妊娠やその後に影響する病気がないか、または妊娠しにくい抗体を持っていないかなどを調べるもので、医学の発展とともに増えていっています。今後、不妊の原因が記入されればされるほど、検査可能な項目も増えていきますので、よい部分もありますが、金銭的な負担は増えていくことでしょう。

卵子が採取できなかった場合の料金

卵子の採卵には失敗することもあります。また、治療の途中で不妊治療の中断を希望した場合などでも、一定の金額はかかることになります。その場合は、治療費として3万円程度、治療途中で排卵・希望による中断の治療費は1日5000円程度となるでしょう。

卵子の採取には痛みを伴いますし、恐怖心がある方もいるでしょう。また、不妊治療自体、夫婦での話し合いが不十分なまま進められていることもありますので、まずは心構えからしっかりとして臨みましょう。痛みを伴うこともある程度覚悟しておき、どの程度の内容かなどはしっかりと医師に確認をしていきましょう。

男性不妊の場合の特殊技術料金

不妊は女性だけが治療を行うものではありません。男性側に不妊の原因がある場合、男性不妊の治療を行う必要があります。もちろんこの場合も、まずは検査を行い、不妊の原因と程度を調べる必要があるので、この時点でもお金はかかることになります。

精巣上体精子回収法(PESA)で8万円程度、精巣精子回収法(TESE)で10万円程度、さらに精子凍結保存で5,000円~1万円程度(保管料別途1万円程度)と、男性不妊の場合も多額の治療費を必要とします。むしろ男性不妊の場合は、女性用の採卵などの治療とセットになることもあるため、より高額な治療費になる傾向があります。

保険適用外の費用をサポートしてくれる制度

不妊治療は基本的に保険の適用外となります。このため、高額な治療費が必要となりますが、少子化対策の一環として、これをサポートしてくれる制度もあります。簡単にいえば、助成金としてお金をもらえるということです。これによって、不妊治療を受けるハードルが下がり、少子化に歯止めがかかるようにといった、政策のひとつでもあります。

自治体による不妊治療助成金制度

自治体による不妊治療助成金制度があります。これは住んでいる地域によって内容や金額が異なりますので、所属の自治体の制度を確認してみましょう。1回15万円まで(初回30万円まで)、年収730万円まで(自治体による)、43歳までなど、条件が付くことが多いです。

こういった条件は、自治体によって変わり、多くの場合は回数制限や年齢制限がついています。収入の制限は自治体によって金額が異なりやすいので、要注意です。わずかな差で助成が受けられないこともありますので、引っ越しのタイミングなどには注意しましょう。

引っ越し先の自治体では不妊治療の女性が助成金を受けられず、思いのほか高額な金額を負担することになって驚くこともあるでしょう。基本的には、住居地の自治体での助成になりますので、先に調べてから治療や引っ越しのタイミングを決めるとよいでしょう。

病院による成功報酬制度

病院による成功報酬制度があるところもあります。妊娠に至らなかった場合の費用負担を軽減、薬代別途・年齢制限・料金プランなど病院によりさまざまです。これは病院によるサービスですので、全くない場合もあります。

ほかにも、通いやすくなるようなサービスはさまざまにあり、ネット予約や個別の待合室など、プライバシーに配慮したサービスも多くあるでしょう。

ただし、こういった制度がある病院が必ずしも治療にとってよいとは限りませんので、そういった点では注意が必要です。病院選びは設備・通いやすさ・サービス・環境など、さまざまな角度から検討をして選ぶようにするとよいでしょう。なかなか不妊治療がうまくいかない場合は、セカンドオピニオンを考えてみてもよいです。

体外受精は予備知識や心構えをもって臨もう

体外受精は不妊治療の中でも高額になりやすい治療です。予備知識や心構えを持って臨むことが望ましいでしょう。また、一度で妊娠できる確率も、決して高いものではありません。このため、何度も治療に通う必要があるといった費用的な負担、時間的な負担。さらに精神面での負担も、大きいといわざるを得ません。

実際に体外受精にのぞむ際は、きちんと予備知識や心構えを持ち、なおかつパートナーとよく話し合ってから始めていくとよいでしょう。そうすることで、少しでもストレスの少ない不妊治療を受けることが可能となります。

妊活部編集スタッフ
この記事のライター 妊活部編集スタッフ

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