2018.08.09

体外受精で行われる移植とは。治療内容の基礎知識を知っておこう

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最近では、タイミング法や人工授精、体外受精などの不妊治療を受ける夫婦が増えています。しかし、治療内容などの知識がないことで抵抗感や不安があることも事実です。治療前に基礎となる知識をもっておくことで、治療に対する不安を減らすことができます。

体外受精の移植による不妊治療法を紹介

体外受精の移植による治療方法を紹介

近年、働く女性が増えたことで、結婚する年齢が高くなる傾向にあります。そのため、妊娠や出産の年齢も高くなる傾向にあり、高齢出産のリスクとともに不妊に悩む女性が増えてきています。

不妊治療は、タイミング法、人工授精、体外受精、顕微授精などの治療法があります。なかでもタイミング法は、不妊治療の一番最初に行われる治療法です。タイミング法でも妊娠することができない場合は、精子を直接女性の子宮のなかに注入する人工授精が行われます。しかし、人工授精でも妊娠することができない場合は、体外で受精させ受精卵を子宮のなかに移植する体外受精、顕微授精が行われます。

体外受精の移植について

体外受精とは

体外受精は、女性の体内で受精することができない場合に行われる治療法です。体外受精が行われる条件として、卵管の通過障害やピックアップ障害などがある場合、受精障害、男性不妊、自然性交や人工授精でも妊娠することができない場合に行われます。

体外受精の治療法は、まず最初に卵子を十分に成熟させるために内服薬や注射を使って卵巣を刺激します。そして、排卵が起こる直前で卵子を採卵、同時に精子も採精します。その後、その日のうちに受精が行われ、受精卵が十分に成長したら女性の子宮内に移植されます。そのため、移植後は自然妊娠と同じように子宮内膜に着床、お腹のなかで赤ちゃんを育てることができます。

初期胚による移植法は

人工で受精させた受精卵は、徐々に細胞分裂を繰り返しながら成長を続けていきます。受精卵は、受精後2、3日すると4から8分割胚と呼ばれるまでに成長します。この状態の胚を、初期胚と呼びます。

初期胚の段階で移植することを分割期胚移植といい、古くから行われている移植法になります。分割期胚移植をすることで、本来女性の子宮のなかで成長する分割期から胚盤胞になるまでを育てることができます。しかし、胚盤胞まで成長することができない場合もあり、胚盤胞移植に比べると妊娠する確率が下がってしまいます。そのため、より質のよい胚を移植する必要があります。

胚盤胞による移植法は

受精卵は、受精後5、6日すると胚盤胞と呼ばれる子宮内膜に着床する直前の状態になります。この状態になった受精卵を子宮内に移植することを、胚盤胞移植と呼びます。

胚盤胞を移植することで、移植後に子宮内膜に着床する確率を高めることができます。そのため、分割期胚移植に比べると妊娠の成功率が高いのが特徴です。しかし、胚盤胞と呼ばれるまで成長しないと移植することができないため、胚盤胞まで成長しなかった場合は、移植をすることができません。

体外受精の周期について

採卵のための周期とは

体外受精を行う場合は、自然な排卵のタイミングに合わせた自然周期と刺激周期の2パターンのどちらかで行われます。自然周期に合わせた採卵は、排卵誘発剤を使わない治療法で、主に年齢が若い人や月経周期が正常で排卵機能に問題がない人が行うことが多いです。排卵誘発剤を使わないことで身体への負担が少なく、経済的負担も減らすことができます。また、毎月行われる排卵に合わせて採卵することができるため、治療を受ける回数を増やすことができます。

刺激周期法は、排卵誘発剤を使用することで、通常に比べて卵子の発育をよくする方法です。複数の卵子を育てることができるため、よりよい受精卵を見つけることができます。月経から採卵が行われるまでの間に、毎日排卵誘発剤の注射を受ける必要があります。しかし、排卵誘発剤に強く反応してしまうと、卵巣過剰刺激症候群などを引き起こすリスクがあります。

移植を行う周期とは

体外受精での移植は、採卵のための周期とは別の周期で行う方法があります。主に凍結融解胚移植の際に行われる治療法で、ホルモン補充周期は、生理2日めから子宮内膜を厚くして着床する準備をするために卵胞ホルモン剤の投与が行われます。その後、子宮内膜の状態を確認後、黄体ホルモンの投与が行われ、移植が行われます。

自然周期は、自然排卵に合わせて凍結胚を移植する方法です。生理2日めから3日めに排卵誘発剤を使用して、卵子を刺激する場合と、排卵誘発剤を使用しない場合に分かれます。自然周期の場合は、排卵する日にちを見極める必要があるため、複数回の通院が必要になります。

排卵誘発周期は、排卵誘発剤を使用することで卵胞に刺激を与え、卵子の育ちをよくする方法です。質のよい卵子を育てることができるため、受精の確率を高めます。しかし、何回も排卵誘発剤を使用すると、身体に耐性がついてしまい、効果が薄れてしまうことがあります。

移植後の過ごし方について

普段通りに動いてOK

体外受精を行ったあとは、とくに安静に過ごす必要はありません。また、移植後に動いたとしても胚にダメージを与えたり、着床に影響を及ぼすことはありません。そのため、体外受精を行う前とおなじように運動、入浴、夫婦生活を送ることができます。

しかし、病院によっては体外受精後の感染を防ぐために、その日の入浴を控えるようにいわれる病院もあるため、確認が必要です。日常生活で気になることがある場合は、医師に相談するといいでしょう。

ストレスは溜め込まない

体外受精を含む不妊治療などの妊活は、時間と費用がかかることからストレスを感じることがあります。しかし、妊活をしている女性がストレスを溜めてしまうと、卵胞などの発育などに関係する生殖ホルモンの分泌を促す視床下部に影響を与えてしまいます。視床下部の働きが不十分になると、生殖ホルモンの分泌が悪くなり、排卵障害の原因になってしまったり、生理不順の原因になることがあります。排卵障害や生理不順は、不妊の原因になることがあるため、注意が必要です。

ストレスを溜め込まないためにも、軽いジョギングやウォーキング、ストレッチなどをして、ストレスを発散させるようにしましょう。

バランスの取れた食事を摂る

不妊治療による妊娠の成功率を高めるためにも、毎日の食生活は大切です。特に、バランスのとれた食事をすることで、妊娠しやすいからだを作ることができます。

妊活をしている場合、特にビタミンEの摂取が必要です。ビタミンEには老化を防ぐ効果があり、卵子と精子の老化も防ぐことができます。ビタミンEが多く含まれている食材は下記の通りです。

・アーモンド、落花生などのナッツ類
・かぼちゃ、ブロッコリー、ホウレンソウなどの野菜
・ウメ、アボカド、マンゴーなどの果物

これらの食材を使い、栄養素を意識しながら、妊娠しやすい体づくりを行いましょう。

移植後に注意したいこと

子宮を温めすぎない

身体を冷やしてしまうと血行が悪くなったり、体温が下がることで、妊娠の妨げになってしまうことがあります。そのため、妊活中は入浴やホッカイロ、腹巻、靴下を使って身体を温めて、血行をよくする必要があります。

しかし、身体を温めすぎないようにしましょう。胚は熱に弱いため、身体を温めすぎてしまうと胚が弱ってしまい、着床する確率を下げてしまいます。特に、身体を必要以上に温めるおそれがある長風呂は控えるようにしましょう。

飲酒や喫煙は控える

妊活をしている場合は、妊娠前に飲酒や喫煙は控える必要があります。飲酒は月経不順の原因になることがあり、喫煙は、妊娠の可能性を下げてしまします。また、不妊の原因になることもあります。

飲酒や喫煙は、母親への影響だけではなくお腹のなかの赤ちゃんへの影響もあるため控えましょう。飲酒をしていた女性が妊娠した場合、胎児性アルコール症候群になる確率が高くなってしまいます。また、喫煙をしてしまうと、乳児突然死症候群になる確率が高くなったり、低体重のリスクが上がります。妊活を始めた段階で徐々に量を減らし、早い段階でやめましょう。

激しい運動は避ける

体外受精を行ったあとは、妊娠する可能性があることから、激しい運動は避けるようにしましょう。特に、登山や長距離のジョギングは身体への負担が大きいため、控える必要があります。また、自転車に乗った際に起こる振動が体に伝わることで、子宮収縮を起こす可能性があるといわれています。そのため、体外受精を受けたあとの自転車での長距離移動はやめましょう。

体外受精後の運動には、ウォーキングをゆっくりとおこなったり、ゆったりとしたストレッチ、ヨガなどがおすすめです。

移植後の症状は

着床前はあまり症状は出ない

体外受精で妊娠が成功した場合、着床前はあまり自覚症状が出ないことがほとんどです。そのため、着床するまで妊娠に気づかないことも多いです。着床したことでホルモンバランスが変わり、妊娠の自覚症状が出ます。受精した段階ではまだホルモンバランスに変化がないため、自覚症状を感じにくいのです。着床が起こるまでは焦らずに普段通りの生活を送るようにしましょう。

着床時に着床出血がある

体外受精によって移植した受精卵が子宮内膜に着床した場合に、着床出血と呼ばれる微量の出血が起こることがあります。着床出血は、受精卵が子宮内膜に着床する際にもぐりこみキズがつくことで起こるといわれています。

出血量はとても微量で、血液の色もピンク色のことが多く、おりものに混ざってでてくることで、茶色い色をしていることもあります。ほとんどの場合は、1日程度でおさまることがほとんどですが、数日間続く場合もあります。また、着床出血が起こる人と起こらない人もいて、個人差があります。

着床後に妊娠初期症状が現れる

体外受精において妊娠が成立した場合、受精卵が子宮内膜に着床後、妊娠初期症状が現れることが多いです。妊娠初期症状には、着床痛による下腹部の痛みや、おりものが増えたり、サラサラした状態に変化することがあります。

また、妊娠が成立したことで高温期が続き、かぜのような症状がでることがあります。頭痛や寒気、だるさ、眠気、鼻水などのかぜのような症状が、妊娠によるものの可能性もあります。

人によっては、早い段階でつわりのような症状が出ることがあり、胃がむかむかしたり、吐き気、ニオイに敏感になる、食べ物の好みが変わるなどの症状が出る場合もあります。

移植後に着床しない原因は

年齢による卵子の質の低下が原因

体外受精で着床が成功しない原因として、卵子の質が悪いことが考えられます。体外受精に関わらず不妊の主な原因は、年齢を重ねることで卵子の質が下がってしまうことが原因となっている場合も多くあります。

毎月排卵される卵子は、全て生まれる前に作られており、新しく作られることはありません。そのため、年齢を重ねるごとに卵子の数が減っていき、同時に卵子の老化が進むことで、体外受精でも着床が成功しない原因になることもあります。また、卵子の質や数は、35歳を境に急激に下がっていきます。

胚の質が原因

着床しない理由として、胚の質が原因になっていることも考えられます。なかなか着床することができない場合や、妊娠初期で流産を繰り返してしまう場合は、胚の染色体の数に異常がないかを調べる必要があります。

胚の染色体に異常がある場合は、着床前スクリーニングが行われます。着床前スクリーニング検査をすることで、流産や死産、新生児死亡する恐れがある胚と正常な胚を見分けることができます。しかし、正常な胚を選んだとしても必ず着床するわけではないため、注意が必要です。

子宮内膜の厚みが原因

なかなか着床することができない場合は、子宮内膜の厚みが薄いことが原因になっていることも考えられます。妊娠に成功している約99%の場合は、子宮内膜には8mm以上の厚さがあります。また、7mm以上の厚さがあれば約50%、6mm以下では約20%の成功率といわれています。そのため、最低でも6mmの厚さが必要です。

子宮内膜が薄くなってしまう原因として、薬の影響が考えられます。特に、体外受精の治療で使われる排卵誘発剤が体に合っていない場合、副作用として子宮内膜が薄くなることがあります。

体外受精による移植で妊娠の確率を高めよう

体外受精は、自然妊娠、タイミング法、人工授精でも妊娠することができない場合にステップアップする治療です。しかし、体外受精は年齢を重ねるごとに妊娠の確率が下がってしまうため、なるべくはやめに治療を開始する必要があります。

不妊治療は、心身ともにストレスがかかりやすい治療法です。そのため、夫婦で協力しあい、赤ちゃんがお腹にやってくるのを楽しみにしながら前向きに治療を行いましょう。

妊活部編集スタッフ
この記事のライター 妊活部編集スタッフ

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