胎児の成長が遅れたり止まったりしてしまう「子宮内胎児発育遅延」は、胎児にとって命に関わる重大なものとなります。そのため、特に妊婦の方や妊活の予定がある方には、今回取り上げる子宮内胎児発育遅延について、よく把握しておくことをおすすめします。
妊娠期間は、まだ見ぬわが子に愛情を深めていく幸せな期間です。しかし、妊娠期間中にはさまざまな危険もあります。その危険の一つに、「子宮内胎児発育遅延」というものがあります。妊婦の方で、定期健診の際にその可能性があると示唆され、不安になられた方もいるかもしれませんね。
子宮内胎児発育遅延とは、胎児の成長が遅れたり、完全に止まってしまったりしている状態を指します。この状態になってしまうと、胎児の臓器機能の発達が阻害され、さまざまな病気にかかるリスクや死亡率が上がってしまうのです。
しかし、子宮内胎児発育遅延に関する知識を持っていれば、予防や対処も可能なので、この機会にぜひ子宮内胎児発育遅延についての知識を把握しておきましょう。
子宮内の胎児の成長が、遅れたり止まったりする「子宮内胎児発育遅延」の発生率は意外に高く、約10%とされています。
そのため、現在妊娠している方だけでなく、これから子どもが欲しいと思っている方も、安全に出産するためにも、子宮内胎児発育遅延の知識を把握しておくことをおすすめします。以下では、まず子宮内胎児発育遅延の基礎知識について取り上げたいと思います。
子宮内胎児発育遅延には、「発育不全型」と「栄養失調型」、「混合型」という3つのタイプがあり、それぞれに特徴があります。
まず発育不全型は均衡型とも呼ばれ、胎児の遺伝子や染色体に先天的な異常があることで、胎児の発育が阻害されます。妊娠の初め頃から、中期までに発見されることが多く、全体の2割~3割を占めています。また、このタイプは、胎児の全身の大きさが、通常の成長スピードで成長した胎児よりも小さくなります。
不均衡型とも呼ばれる栄養失調型は、胎児に十分な栄養が送られないことで、胎児の成長が阻害されるタイプで、全体の約7割も占めています。栄養失調型の子宮内胎児発育遅延は、妊娠中期ごろに発見されることが多く、胎児の頭部以外の部分が、通常の成長スピードの胎児よりも、小さくなる傾向が強いという特徴があります。
混合型は、発育不全型とも栄養失調型とも断定できない、中間的なタイプの子宮内胎児発育遅延です。混合型の発生率は、わずか数パーセントほどですが、妊娠中毒症や母体の栄養失調状態などが原因とされているタイプなので、母体の健康にも注意が必要です。
ハイリスク妊娠とは、さまざまな要因から、「胎児や母体の健康に重大な危険がある」と予想される妊娠のことを指します。子宮内胎児発育遅延も、胎児や母体の健康がおびやかされる要因の一つです。
そのため、子宮内胎児発育遅延に陥ってしまった場合は、母体と胎児の栄養状態や健康状態を、定期的に注意深く観察し続ける必要があるのです。
誰でも死産になってしまうことは避けたいものです。しかし、子宮内胎児発育遅延に陥ってしまうと、死産になり確率は、通常妊娠の場合の8倍にもなるとされています。しかし、必ずしも死産になってしまうというわけではありません。
治療中は、特に胎児の定期的な健康チェックを欠かさないようにしましょう。母体の健康状態も胎児の健康状態に関係しますから、自分自身の健康状態も定期的に確認することも大切です。
子宮内胎児発育遅延の影響を受けた子どもは、低体重になりやすく、ほかにも低体温や低血糖、低カルシウム血症など、さまざまな疾患のリスクが高くなるとされています。知的障害やダウン症などのリスクも高いため、出産後も子どもの健康には注意が必要です。
しかし、子宮内胎児発育遅延になったら、必ず子どもにそういった障害が残るというわけではありません。子宮内胎児発育遅延の程度の差によっても、子どもの健康リスクは変わります。程度が軽い場合は、子どもにほとんど健康リスクがないこともあるのです。
子宮内胎児発育遅延は恐ろしいものですが、原因が分かっていれば効果的な予防ができ、正しい治療を継続すれば、改善することも可能なのです。そこで、以下では、自分でできる子宮内胎児発育遅延の対策について取り上げたいと思います。
子宮内胎児発育遅延の原因はさまざまありますが、主な原因には、胎児自身の体質や先天的な異常、母体の健康状態や胎盤、さい帯にある異常、環境による影響などが挙げられます。これらの内一つだけが原因という場合もありますし、さまざまな要因が複雑に重なり合って、原因となっている場合もあるのです。
原因によって、適切な治療法は異なるため、子宮内胎児発育遅延の治療では、まず担当医師と原因を突き止めることが重要です。
一度、胎児の大きさが小さくなってしまうと、通常の大きさまで戻すことはできません。しかし、要因を取り除く治療を行いつつ、母体の状態を良好に保っていれば、胎児の健康状態の悪化を遅らせたり、食い止めたりできるのです。
子宮内胎児発育遅延を改善するためには、医師の診察を定期的に受けることと、できるだけリラックスして過ごすことが大切です。さらに、胎児に十分な栄養を送るために、生活習慣を正してバランスのよい食事を心がけることも効果的です。
子宮内胎児発育遅延は、原因を突き止めて、正しい治療を受けることで改善できます。そのため、治療では医師ときちんとコミュニケーションを取るようにしましょう。
医師に自分の体調のことを詳しく伝えることができれば、医師もより的確な治療方法を検討できるので、より治療効果が高くなる可能性があるのです。少しでも治療効果を上げるためにも、医師との二人三脚を意識して、治療に臨むようにしましょう。
子宮内胎児発育遅延の治療には、ある程度の費用がかかります。以下では、その治療にかかる費用と、治療に適用できる保険について取り上げます。
子宮内胎児発育遅延は、それぞれのケースによって、治療内容や入院期間が大きく異なり、費用もその違いによって大きく変動します。そのため、治療内容や入院期間などが大体決まったら、費用について担当医師にしっかり確認することが大切です。
子宮内胎児発育遅延治療中に、医師から早産の危険性が高いと判断されると、診察の直後から入院生活が始まることもあります。また、子宮内胎児発育遅延の妊婦の分娩は、通常の分娩よりもリスクを伴うものです。
そのため、病院によっては別料金が請求されることもあるので、分娩時にかかる費用も、事前にしっかり確認しておくことをおすすめします。
現在では妊娠、出産に備えた女性向けの医療保険もたくさんあります。しかし、そのような保険に加入していない場合は、高額療養費制度を利用してみることをおすすめします。
高額療養制度とは、治療にかかった費用の内、個人の所得や年齢によって異なる上限額を超えた分は、返還されるという制度です。しかし、申請が通るまでに長時間かかることもあるので、申請はできるだけ早めに行うようにしましょう。
妊娠中に、子宮内胎児発育遅延と診断されてしまったら、誰でも驚いてしまいますし、落ち込んでしまうでしょう。確かに、子宮内胎児発育遅延はおそろしい病ですが、正しい情報をしっかり把握して、医師とコミュニケーションを取りながら、しっかり治療を続けていれば改善することも可能です。
そのため、子宮内胎児発育遅延と診断されたとしても、あまり気落ちせずに、医師と相談して前向きに治療に集中していきましょう。