妊娠初期症状のひとつとして挙げられる「下痢」。しかし、同時に月経前症候群(PMS)の代表的な症状でもあり、生理前や生理中に下痢になる方もいます。妊娠初期症状の下痢と生理前の下痢が起こる仕組みと二つの症状に違いはあるのかを詳しくみていきます。
妊娠初期症状のひとつとして挙げられる「下痢」。しかし、それと同時に月経前症候群(PMS)の代表的な症状でもあり、生理前や生理中にも下痢になってしまう方がいます。そのため、妊娠によるものなのか生理前の症状なのか悩んでしまう方は少なくありません。そこで、妊娠による下痢と生理前の下痢が起こるしくみと二つの症状に違いがあるのかを詳しくみていきましょう。
妊娠初期や生理前に下痢になってしまう原因は、女性ホルモン「プロゲステロン(黄体ホルモン)」にあります。プロゲステロンは、排卵後から生理前にかけて分泌量が増え、子宮の収縮を押さえたり、受精や着床をしやすくするために体温を高めたりと、妊娠の準備のために子宮内の環境を整える働きがあります。
一方で、体の代謝を下げて子宮周辺の臓器の活発な動きも抑制してしまうため、腸の動きも鈍くなって下痢が起こりやすくなってしまうのです。
つまり、妊娠初期に起こる下痢も生理前の下痢も、プロゲステロンの増加によるホルモンバランスの乱れが主な原因。そのため、下痢の症状だけで妊娠初期症状なのか、月経前症候群によるもなのかを見分けることは難しく、その他の症状と合わせて判断することが重要になります。
では、下痢のほかにみられる代表的な妊娠初期症状を詳しく知っていきましょう。
生理予定日の一週間前から生理予定日頃にみられる「着床出血」。受精卵が着床する際に、子宮壁を軽く傷つけてしまうことによる出血で、一般的に、おりものに混ざったうすい茶色やピンク色の少量の出血が1~3日程度の短期間に起こります。症状には個人差が大きく、鮮血がみられる場合もあります。また、「着床痛」と呼ばれる子宮周辺の痛みを伴う場合もあります。
着床出血が起こる確率は全体の1~2%、50人に1人程度といわれているため、妊娠したからといって必ず起こる症状ではありません。
「腰痛」も妊娠初期にみられる症状のひとつです。腰痛は、卵巣や胎盤から分泌される「リラキシン」というホルモンが原因して起こるといわれています。妊娠を機に分泌量が増えるリラキシンは、骨盤を支えているじん帯を緩め、出産に向けて骨盤を広げようとする作用があります。そのため、腰に負担がかかり腰痛が起こりやすくなるのです。
妊娠すると、胸がはったり、乳首にチリチリとした痛みを感じることがあります。さらに、吐き気や食べ物の好みが変わるといった、つわりに似た症状が起こる場合もあります。
胸の張りや痛みは、産後に必要な母乳をつくる準備のため、乳腺や乳管が発達するために起こります。また、生理開始予定日を過ぎても吐き気が治まらない場合はつわりの可能性があります。
妊娠するとプロゲステロンの分泌が急激に増加し、ホルモンバランスが大きく乱れます。その影響で、体と心に変化が起こり、体には腰痛や下痢などの症状があらわれます。そして、心は精神的に不安定になりやすくなるのです。
妊娠初期にイライラを感じる女性は全体の約8割ほどといわれています。ささいなことでイライラしたり、憂鬱な気持ちになったり、やる気が起きないなどのように情緒が不安定になる場合、妊娠初期症状の可能性があります。
妊娠すると基礎体温が高いままの状態が続きます。そのため、熱っぽくなったり頭痛がするなど、風邪に似た症状があらわれることがあります。
妊娠していない場合、基礎体温は生理前に下がって低温期に入ります。しかし、受精卵が着床して妊娠が成立すると、プロゲステロンの分泌が続いて高温期の体温が維持されるのです。高温期が二週間以上続いている場合は、妊娠している可能性が高くなります。
下痢の症状が続くと心配になってしまいますが、妊娠初期の下痢によって流産する可能性は低いとされています。下痢は腸の収縮によって起こり、それに伴って腸の近くにある子宮も収縮するので、子宮付近に軽く痛みを感じる場合もあります。しかし、下痢やこのような軽い下腹部痛が直接流産を招く原因とはなりません。
ただし、下痢と同時に激しい腹痛や嘔吐がある場合は、妊娠初期のタイミングでウイルス性の食中毒に感染していることも考えられます。症状が悪化し、ひどい下痢をいつまでも繰り返してしまうと、妊娠に悪影響を与えてしまう可能性もあります。下痢に伴ってこのような症状がみられる場合は、自己判断せず早めに医師の診断を受けるようにしましょう。
妊娠によって体の中で起こる、目にはみえない大きな変化。それによって、体と心にはさまざまな不調があらわれるようになります。
下痢や腰痛といった体の不調や、イライラしやすいといった心の不安定さに心配しすぎたり過敏になりすぎないようにしてください。そして、妊娠が判明したら、無理をせず体を大切にして、早めに産婦人科を受診するようにしましょう。