妊娠超初期に少量の出血が起こる「着床出血」。しかし、まれに生理と同じくらいに量の多い出血がみられる方もいるようです。多めの出血が着床出血によるものなのか、それとも着床出血以外によるものなのか、考えられる原因を詳しく探っていきましょう。
妊娠超初期症状のひとつ「着床出血」。一般的に、着床出血は少量とされていますが、まれに生理と同じくらいに出血する方もいるようです。生理とは違う出血があると不安になってしまいがちですが、着床出血が起こるとされる時期に量の多い出血がみられた場合、いったいどのようなことが原因となっているのでしょうか。考えられる原因を詳しく探っていきましょう。
気になる出血が「着床出血」だった場合、妊娠している確率は100%。しかし、着床出血についての知識がなかった場合、妊娠初期の出血に対して不安を感じてしまうことがあるようです。妊娠を希望していた方にとっては、生理が来てしまったのだとがっかりしたり、流産や病気だと勘違いしてしまうことも。
着床出血は妊娠したからといって必ず起こる初期症状ではありませんが、着床出血が起こったときに冷静に判断できるよう、その特徴をしっかり把握しましょう。
着床出血はなぜ起こるのでしょうか。着床出血の起こるメカニズムと症状の特徴を詳しくみていきましょう。
着床出血は、妊娠したからといって必ず起こるわけではありません。起こる確率は、妊娠したすべての女性のうち2%、50人に1人程度だといわれています。
精子と卵子が受精してできた受精卵は、1週間ほどかけて子宮に到達し、子宮内膜に絨毛(じゅうもう)と呼ばれる小さな根を下ろし着床します。その際に、絨毛が軽く子宮壁を傷つけて出血することがあり、このときの出血が体外に出てくることを「着床出血」といいます。
着床出血の起こる時期は生理予定日の1週間前~生理予定日頃。症状には個人差がありますが、一般的には、1~3日程度の短期間で止まり、量はおりものに少し血が混じる程度の微量であることが多いようです。また、色もピンク色や薄い茶色など薄めの場合が多いようですが、真っ赤な鮮血がみられる方もいます。
「生理」と「着床出血」は起こる時期や症状が非常に似ています。そのため、判断が難しいケースもありますが、「出血量」・「におい」・「出血期間」・「基礎体温」などの違いで見分けられる場合があります。
ナプキンを使用しなければならないほどの出血量がある生理に対して、着床出血はおりものに血が混じる程度のごく少量。また、2~3日目にかけて赤黒い出血が増え、その後、数日かけて止まっていく生理に対して、着床出血は薄い色のわずかな出血が1~3日続く程度です。
また、生理の場合、血と一緒に古くなった子宮内膜組織が剥がれるため生臭いような独特なにおいがしますが、着床出血の場合は新しい出血なので、無臭であることがほとんどです。
そして、1番の違いは基礎体温です。生理の場合は基礎体温が下がって低温期に入りますが、着床出血の場合は、本来低温期に入る時期にも体温が下がらず高温期を維持しています。いつもの生理と違って、このような症状がみられた場合、着床出血の可能性が高くなります。
一般的に、着床出血はごく少量とされ、生理と同じくらいの出血量が見られる場合は、予定通り生理が始まった可能性が高くなります。しかし、まれではありますが、血の塊や生理と同じくらいの出血が起こる場合もあるようです。なぜそのようなことが起こるのでしょうか。
まず考えられることは、妊娠したことによるホルモンバランスの乱れです。妊娠するとhCGという妊娠を維持するためのホルモンが分泌され、このホルモンによってエストロゲンとプロゲステロンという二つの女性ホルモンの分泌量が維持され生理が止まります。しかし、妊娠初期段ではhCGホルモンの分泌量が少なく、エストロゲンとプロゲステロンへうまく作用できずに、一時的に生理のような出血が起こる場合があるのです。
また、着床出血が起こるタイミングで偶然不正出血が重なったり、子宮頚部など子宮の外側に原因があって多めの着床出血がみられる可能性もあります。
これらが原因であった場合、正しい時期に妊娠検査薬を使用すれば陽性反応を示します。そのため、量の多い着床出血が起こった場合でも、妊娠している可能性があるのです。
生理だと思っていたら実は妊娠していた、という経験をされている方もいるようです。実際に経験された方の例を取り上げてみましょう。
「生理予定日1日前から10日間、普段の生理と同じくらいの量の出血が続き、基礎体温を測ってみると出血が起こった日は少し下がったものの、その後は高温期を維持。1週間後に妊娠検査薬を使ってみると「陽性反応」があり、さらに1週間後に産婦人科を受診すると胎嚢が確認でき、無事に妊娠が判明。」
このように、生理のような出血が起こったにも関わらず妊娠した方がいます。正しい結果の出る時期に妊娠検査薬を使って陰性になった場合は生理の可能性が高くなりますが、陽性になった場合は必ず産婦人科に相談するようにしましょう。
【参照リンク:https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10178601360】
これまでみてきたように、量の多い出血でも着床出血の可能性はありますが、出血にはさまざまな原因が考えられます。では、着床出血以外で考えられる出血の原因を探っていきましょう。
生理予定日前後に出血し、正しく判定結果の得られる生理予定日1週間後以降に妊娠検査薬を使って陰性となった場合、その出血は「生理」の可能性が高いでしょう。
生理の血は経血とよばれ、古くなった子宮内膜組織が剥がれでたものです。血の色は黒っぽいような濃い赤色で、塊があり、生臭いような独特なにおいがします。また、生理周期や出血期間は個人差がありますが、だいたい25~38日周期で3~7日間出血します。
生理と生理の間くらいに起こる出血は、排卵による可能性があります。排卵とは、成熟した卵胞が卵巣の壁を突き破って破裂し、なかの卵子が卵管内に排出されることです。そして、その時期に起こる出血を「排卵出血」といいます。
排卵出血が起こる原因は二つあるとされ、一つめは、卵胞が卵巣の壁を突き破る際に傷つけてしまうことによる出血。そして、もう一つめは、排卵直前に女性ホルモンのひとつ「エストロゲン」の分泌が減って子宮内膜が少し剥がれることによる出血です。特に、二つめの「ホルモンバランスの変化」が排卵出血の主な原因とされ、排卵が終わってエストロゲンの分泌が増えてくると出血は止まります。
排卵出血の特徴は、ごく少量の出血が排卵日前後に1~3日みられる程度で、必ず毎月起こるわけではありません。また、人によっては「排卵痛」と呼ばれる下腹部痛を伴うこともあります。排卵出血は、生理的な現象であり、病気や将来の妊娠に影響を与えるような心配はありません。
生理以外の不正出血には、着床出血や排卵出血のように病気の心配がないもののほか、子宮や卵巣などに何らかの異常があって起こる場合もあります。
出血が起こる代表的な病気は、子宮がん、卵巣がん、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮頸管ポリープなど。血の色や出血量、出血期間は病気によってさまざまで、腹痛を伴うケースもあります。
妊娠した証である着床出血。しかし、妊娠による出血は着床出血だけではありません。なかには、妊娠の継続が難しいことを示す出血であることも。着床出血以外で、妊娠による出血にはどのようなものがあるのかを詳しくみていきましょう。
妊娠成立後に不正出血が起こる原因のひとつに、「異所性妊娠」による可能性があります。異所性妊娠とは、本来であれば子宮内膜に着床するはずの受精卵が子宮以外の場所で着床してしまうことで、「子宮外妊娠」とも呼ばれます。
異所性妊娠による出血は、だいたい妊娠6週目頃に少量の出血からはじまり、下腹部の痛みを伴ってだんだん量が増えていくのが特徴です。赤ちゃんは子宮以外の場所で育つことができません。そのため、異所性妊娠の場合は、妊娠を継続することができなくなってしまいます。
妊娠成立後の不正出血には、「絨毛膜下血種」が原因となっている場合もあります。絨毛膜下血種とは、妊娠初期に多くみられる症状です。
受精卵は「羊膜」・「絨毛膜」・「脱落膜」の三つの膜で構成された卵膜に包まれていて、着床すると真ん中の「絨毛膜」から突起した絨毛が子宮内膜(脱落膜)に根を張って子宮と結合します。このとき、絨毛の先が脱落膜を破壊し血管を傷つけて出血が起こることがあり、このときに血種(血のかたまり)ができることを「絨毛膜化血種」といいます。
出血量は血種ができた場所によって異なり、ほとんどの場合は妊娠中期頃までに自然消滅しますが、血種が大きくなってしまうと流産や早産の原因となることもあり注意が必要です。
妊娠成立後の不正出血には、「初期流産」の可能性もあります。流産とは、妊娠22週未満に妊娠が継続できなくなってしまうことで、全体の15%の確率で起こるといわれています。
初期流産による不正出血は、生理のような出血やレバーのような、塊の出血がでる場合があります。また、出血以外に、下腹部痛、基礎体温の低下、つわりが急になくなるといった症状がみられます。
不正出血は、目にはみえない体の変化を教えてくれるサインでもあります。しかし、妊娠や排卵による出血なのか、ホルモンバランスの乱れによる出血なのか、さらに病気による出血なのかを自分で見極めるのはとても難しいことです。
体からのサインを見逃さないよう、気になる不正出血があった場合は、一度病院を受診するようにしましょう。