2018.07.05

子宮外妊娠と手術の正しい知識を持って母体を安全に守ろう

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子宮外妊娠は、妊娠の中で1%と少ない確率ですが、子宮が破裂してしまうと大量出血で命の危険もあります。そのため、早めに発見して対処することが一番です。子宮外妊娠の兆候や検査、そして治療法や手術、術後の生活などを知っておきましょう。

子宮外妊娠について正しく理解しよう

妊娠初期に下腹部痛や出血などがあったとしたら、「子宮外妊娠ではないか」と疑ってみたり、安定するまではさまざまな不安が生じるものですね。

子宮外妊娠は、正常な妊娠ではないので病気に近いものがあり、母体の命が危険にさらされることもあります。そのため、早期に発見し、適切な処置を行うこと大切です。子宮外妊娠をして、手術をしたあとも再度、妊娠はできますが、それについても医師の経過観察が必要です。

子宮外妊娠になったら、どんな症状が出るか、検査方法はあるのか、子宮外妊娠の見分け方や治療法、費用などについての知識を得ておくことが早期に子宮外妊娠を発見し、母体が危険な状態になるリスクを減らすことができます。

子宮外妊娠とその確率について

子宮外妊娠とわかったらとてもつらいですが、診断されたら母体のためにも、早めに対処したほうが安全です。子宮外妊娠になる確率は、100人に1人と誰にでもおこりうる確率です。子宮外妊娠をしたら現れる症状や、検査方法などについてみていきましょう。

子宮外妊娠の前兆

子宮外妊娠をすると、生理ほど多くはないですが出血が続きます。子宮内膜ではない場所に、受精卵が着床して根を張るため、組織が傷ついたときに出血するのです。また、着床したときに、下腹部にチクチクとした生理がきたような痛みを感じます。

痛みはその人によって違いますが、次第に強くなっていくことが多いです。しかし、痛みは正常な妊娠でもあるので、下腹部の鋭い痛みや不正出血があるだけでは判断しにくいです。そんなときは、基礎体温が目安になります。

基礎体温は生理が来ると急に下がりますが、妊娠した場合は高温のままの状態です。出血があるのに、高温期が続いて下腹部痛がある場合は、子宮外妊娠が疑われます。

検査薬での反応

妊娠検査薬は、着床して増える「hcgホルモン」の量を測ることで、妊娠か違うかを判定するものです。その検査薬によって、「朝一番の尿で検査してください」と書かれているものもあります。それは、水分をたくさん摂取することで、尿中のhcg濃度が薄くなることがあるからです。

妊娠検査薬によって違いますが、検査は生理予定日の1週間後や、生理予定日の当日に行います。妊娠検査薬が陽性の場合は、判定する部分にはっきりと色のついたラインが現れます。しかし、ホルモン量には個人差があるので、誰しも同じようにでるわけではありません。

薄いラインしか出ない場合は、再検査の必要があります。不妊治療を受けている場合は、体の中に残っている成分が、hcg検査薬に陽性反応をすることがあります。また、検査日に遅れたときは、陰性反応になることがあります。

子宮外妊娠の検査方法

子宮外妊娠の検査方法には、超音波検査やhcg検査があります。

超音波検査とは

超音波検査はエコー検査とも呼ばれ、経膣超音波検査と経腹超音波検査があります。6週目ごろからは、お腹に機械をあてて胎児を見る経腹超音波検査を行います。それ以前は、膣にプローブを入れて、胎嚢を確認します。

正常妊娠であれば、超音波検査により6週間ほどで胎嚢が確認できますが、胎嚢が確認できなければ、子宮外妊娠との可能性が高いです。ただし、妊娠周期には個人差があるので、胎嚢が小さすぎると確認できないことがあります。

hcg検査とは

子宮内に胎嚢が確認できないときは、採血でhcgホルモン検査を行い、hcgホルモンが増えているかどうかを調べます。子宮外妊娠のときは胎児が育たないので、ホルモン分泌が止まることもあります。

そのため、検査でhcgホルモン値が減少しているときや変わらないときは、子宮外妊娠か流産しているときです。子宮外妊娠の判別は難しいですが、二つの検査によって子宮外妊娠だということがわかります。

子宮外妊娠の種類とリスクについて

子宮外妊娠は、卵管が90%を占めていて、残りの10%が卵巣、腹腔、頸管での妊娠です。それぞれの場所で妊娠した場合は、どのような症状になるのかを知っておきましょう。

卵巣妊娠の場合

卵巣に着床した場合は、卵巣の表面に根を張り、胎嚢が大きくなります。卵巣は卵管の両端にあり、卵細胞とそれを包む卵胞が入っていて、それを成熟させて卵巣から排卵します。受精卵が卵巣に着床し、卵巣で育つと卵巣破裂の恐れがあります。

卵巣破裂をすると、下腹部に猛烈な痛みがあり、嘔吐することもあります。卵巣破裂は、卵巣嚢腫や卵巣がんでもおこります。

腹腔妊娠の場合

腹腔妊娠は、受精卵が腹腔に着床した場合です。腹腔とは、腹壁と横隔膜壁の間をいいます。腹腔妊娠の割合は少なく、子宮外妊娠の1%程度です。

まれに、卵管から飛び出した受精卵が、卵管内に行かずに腹腔に着床し、子宮外妊娠になります。また、続発性腹腔妊娠では、卵管流産や卵管破裂を起こしたあとに、胎芽だけが腹腔に排出され、腹腔に着床する場合があります。

その場合、胎盤の一部が卵管に着床しているので、胎芽が発育し、胎盤は次第に広範囲に着床していきます。胎児は胎嚢で覆われ、広い腹腔で大きくなります。腹腔で大きくなるので、下腹部の痛みや不快感があります。腹腔妊娠の場合、かなり診断が困難で、腹部X線や超音波断層法、MRI検査を行います。

卵管妊娠の場合

子宮外妊娠のほとんどが卵管妊娠であり、卵管破裂による母体の危険がある子宮外妊娠です。何らかの理由で卵管が癒着していると、卵管を受精卵が通過できないため、卵管に着床するケースがあります。卵管結紮などの不妊手術をしている人も、卵管妊娠になるケースがあります。

卵管破裂を起こすと下腹部に激痛が走り、大出血を起こす恐れがあります。救急車で運ばれて緊急手術になる場合が多く、母体が危険な状態になるリスクが高いです。

頸管妊娠の場合

受精卵が子宮内膜に着床せずに、子宮の出口近くにある細い頸管に着床することがあります。これを「頸管妊娠」といいます。頸管妊娠は、子宮内膜が炎症しているときや子宮奇形、子宮筋腫のときに起きやすいと報告されています。

一般に自然妊娠の場合は、栄養をとりこむ繊毛が子宮内膜に根を張り、そこで栄養分を胎児に送ります。すると、受精卵を包み込む部分と、それを支える部分とに子宮内膜が変化します。しかし、頸管妊娠の場合は、内膜に着床してもそのような変化がないので、繊毛は子宮内膜のほうへ伸びていきます。

そして、子宮筋層内に伸びて根を張るので、不正出血も。このときに、子宮動脈が横にあるために、筋層内へ根が伸びていくことで、血管が破綻して動脈出血という大量出血を起こしやすいので、非常に危険です。大量出血を起こした場合は、子宮摘出手術が行われます。

子宮外妊娠の原因とは

子宮外妊娠の原因には、子宮内膜症や過去に開腹手術をうけた人、性感染症になったことがある人、子宮外妊娠をした人の再発などがあげられます。以下で、くわしくみていきましょう。

その他の病気によるもの

子宮内膜症が原因となり、子宮外妊娠をすることがあります。子宮内膜症とは、内膜が子宮ではない所にできる病気です。

子宮内膜症が悪化すると、卵管や卵巣、腸などの器官の癒着が起こります。また、子宮の炎症から、子宮まで受精卵が運べず、卵管に着床するというケースがあります。

過去の手術や症状によるもの

過去に受けた手術や、性感染症などが子宮外妊娠の原因となることもあります。

過去に開腹手術を受けた場合

過去に開腹手術を受けた人は、腹腔で癒着を起こしやすくなります。また、卵管が炎症を起こしたり、癒着したりする場合もあります。そのために、子宮外妊娠になる可能性があります。

性感染症にかかったことがある場合

クラミジア感染症などの細菌の性感染症にかかったことがある人は、腹膜炎や骨盤内の炎症により、卵管が炎症をおこして癒着することがあります。炎症を引き起こすと、癒着がなくても卵管から子宮に運ぶ力が弱くなります。そのため、受精卵を子宮まで運ぶことができずに、子宮外妊娠になります。

子宮外妊娠をしたことがある場合

過去に子宮外妊娠をしたことがある人で、卵管の温存手術を受けている人は、子宮外妊娠の再発率は10~15%と高くなります。そのため、何度も再発する人は、卵管をとりのぞく手術をすることになります。卵管破裂のリスクがあるため、母体への安全が第一なのです。

子宮外妊娠の治療法と費用や入院期間について

子宮外妊娠は1%の確率なので、子宮外妊娠をする人はわずかです。しかし、もしもの場合のために、治療の方法や手術内容について知っておきましょう。手術費用や術後の回復はどのくらいかについても、目安を知っておくと安心です。

治療の方法について

子宮外妊娠を早期発見した場合と、卵管破裂する頃まで胎嚢が大きくなっている場合など、妊娠の場所や週数により方法は異なります。治療法には、待機療法や薬物療法、卵管を残す手術か卵管切除術などがあります。

待機療法と薬物治療法

待機療法は、自然に吸収されることを待つ方法です。待機療法は少ない治療法ですが、自然に吸収されるのは10~20%ほどで、自然に流産するケースも多くあります。子宮外妊娠の初期で、血液中のhcg値が低い場合は、流産する可能性があるため待機療法で様子を見ます。

薬物療法は、hcg値が低くて症状が軽い人に、細胞が増殖しないようにする抗がん剤の注射を、卵管に注射します。薬物療法は、手術のように卵管を傷つけなくて済みます。抗がん剤なので、効果が高い治療といわれています。

外科的治療法の場合

子宮外妊娠となった場合で、初期で吸収されたり、流産しない場合は、手術による治療になります。手術では、妊娠した部分を切除する根治手術と、胎嚢を取り除く温存手術があります。ほとんどの場合が、開腹手術または腹腔鏡手術を行います。

開腹手術の場合

開腹手術は、卵管破裂で緊急に手術を行わなければならない場合、卵管の損傷がひどい場合、着床している場所がわからない場合などに、行われます。開腹手術をすると、卵管などへの損傷が激しいので、緊急手術や腹腔鏡下手術が難しい状態のときに行われます。

腹腔鏡手術の場合

腹腔鏡化手術は、主に卵管膨大妊娠に用いられる方法で、お腹に小さな穴を3~5個開けて、腹腔鏡という筒状のカメラを入れて観察し、胎児の胎嚢を取り出します。腹腔鏡下手術の場合は、傷口が小さくて早く回復します。

卵管を傷つけないので、卵管の機能を保てます。腹腔鏡下手術は、医師の高い技術が求められ設備が必要で、卵管閉塞や繊毛細胞が残るリスクもあります。

卵管切除術の場合

卵管切除術は、胎嚢が大きくなっている、または破裂してしまっている場合に行われる手術で、卵管を除去します。卵管切除術では、一方の卵管を切除するので、切除した部分での妊娠はできませんが、もう一方の卵管からの自然妊娠が可能です。

手術の費用と期間

子宮外妊娠の入院や手術費用ですが、開腹手術は約10万円、腹腔鏡手術は約18万円です。ほかにも、検査費用や投薬費用、点滴費用などが追加でかかります。差額ベッド代や食費もかかるので、全額の費用は高額です。ただし、子宮外妊娠の場合は、健康保険が適用されます。

そのため、手術と入院費用の自己負担が、月額80,000円以上になった場合は、高額医療費制度の対象となります。高額医療は、あとから協会けんぽなどの健康保険組合に申請することで、80,000円以上支払った額が戻ってきます。事前に限度額適用認定証を申請すると、入院費用が高額医療の払い戻し分を差し引いた額のみの支払いになり、かなり費用が低くなります。

入院期間に関しは、腹腔鏡下手術は3~5日、開腹手術は10日ほど必要です。開腹手術のほうが、術後の回復が遅く、退院後も安静が必要です。

手術後の状態について

手術後は、下腹部痛や傷口の痛みがあります。自宅に帰ってからも疲れやすく、倦怠感が続きます。回復は腹腔鏡下手術のほうが早く、卵管を片方切除した人でも、1カ月後には生理が来ることが多いです。卵巣を切除した場合は、女性ホルモンが分泌されている部分なので、更年期障害と同じような症状があらわれることがあります。

日常生活に戻れるまでの日数には個人差があり、回復が早い人もいれば、長くかかる人もいます。腹腔鏡下手術の場合は、退院後に早い人で10日程度で復帰できます。一方、開腹手術の場合は、仕事の復帰には退院後1カ月ほどかかります。仕事で体を使う場合は、もう少し休養が必要かもしれません。術後なので、無理をしないで、体の回復を待ってから仕事に復帰するようにしましょう。

子宮外妊娠後の妊娠について

子宮外妊娠をしても、片方の卵管切除だけなら妊娠は可能です。ただし、妊娠を望む場合は、卵管の状態を医師と確認することが大切です。子宮外妊娠をした場合の再発の確率は、10~15%あるので、また子宮外妊娠をすることもありますが、それ以外の人は自然妊娠をしています。妊娠を望む人は、子宮卵管造影検査を受けて、卵管の状態を医師に確認してもらいましょう。

子宮卵管造影検査は、子宮から造影剤を入れて、子宮や卵管の様子を確認します。この検査で、卵管が狭窄する部分があるか、卵管が詰まっていないか、卵管が膨大していないかなどが確認できます。子宮卵管造影検査で痛みを感じる人もいますが、子宮外妊娠の経験がある人は、検査を受けることをおすすめします。

また、子宮卵管造影検査を受けたあと、3カ月間は妊娠しやすくなります。卵管を両方切除した人は、自然妊娠はできませんが、体外受精で妊娠できます。よって、医師に妊娠の希望を伝えて、不妊治療を受けるといいでしょう。

正しい知識を持つことで母体を守ることができる

子宮外妊娠は、ほとんどの人が卵管妊娠ですが、卵巣妊娠や腹腔妊娠、頸管妊娠もあります。子宮外妊娠をすると、妊娠初期に自然に吸収されたり流産したりすることも多いです。しかし、不正出血が続いて、ついには大量出血や破裂をすることもあり、緊急手術になることもあります。

手術には、開腹手術と腹腔鏡手術があり、初期であれは待機療法や薬物療法を行うこともあります。子宮外妊娠をすると、次の妊娠も不安になりますが、多くの人が普通妊娠をしています。子宮外妊娠について正しく理解して、母体が危険にさらされないようにしましょう。

妊活部編集スタッフ
この記事のライター 妊活部編集スタッフ

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