不妊治療の最後の手段とされる卵子提供。なかなか妊娠の兆しがなくて悩んでいる方は、卵子提供を考えることもあるでしょう。しかし、不妊治療には多くのリスクも伴うので、慎重な検討が必要です。そこで今回は、卵子提供について詳しく見ていきましょう。
なかなか不妊治療がうまくいかないと、不安と焦りで追い詰められてしまいますね。自分の卵子に問題があるのではないかと考え、卵子提供を検討している方も多いでしょう。
しかし、卵子提供による妊娠、出産にはリスクもあるので、事前によく卵子提供について、じっくり検討しておくことを強くおすすめします。そこで今回は、卵子提供のメリットとリスクだけでなく、最新情報についても見ていきましょう。
最近卵子提供は、数多くの手段がある不妊治療の一つの手段として、認知度が上がってきています。そのため、卵子提供について詳しく知っている方もいるでしょう。しかし、詳しく知らないという方のほうが、多いのではないでしょうか?そこで、そもそも卵子提供とはどのようなものか、再確認していきましょう。
卵子提供を受けるためには、倫理委員会からの認可が必要で、認可が下りるのは、「卵子提供でなくては妊娠できない場合のみ」とされています。そのため、卵子提供は不妊治療の最後の手段とされているのです。この方法が認められるのは、主に婦人系の疾患が原因で、卵巣を摘出しなければならなくなった方や、卵子を作る機能を、完全に失ってしまった方などとされています。
しかし、長く不妊治療を続けていて、体外受精も何回も行っているのにもかかわらず、一向に妊娠の兆しがない場合は、卵子提供が認められる可能性が高いです。長い不妊治療に悩んでいる方は、一度検討してみてもよいかもしれません。
不妊治療が認められるのは、早期の閉経や卵巣の摘出などによって、卵子を体内で作ることが不可能になったり、体外受精がどうしても上手くいかなかったりして、患者本人の卵子では受精が困難と判断できる場合です。
また、卵子の提供者は基本的に匿名ですが、適当な匿名の卵子提供者が見つからない場合は、姉妹や友人といった関係の方が、卵子の提供者となることが多いようです。卵子提供者が決まると、提供者から卵子を採取して、患者の夫の精子と体外受精させます。そして受精卵ができたら、患者の子宮にその受精卵を移植させるということが、一連の流れになります。
卵子提供には今でも賛否両論あるので、決断をするまでには長い葛藤があるでしょう。しかし、その決断までの葛藤は、パートナーとの絆を深めるチャンスにもなる得ます。よって、検討する際には一人で考え込まずに、必ずパートナーとよく話し合って、考えるようにすることをおすすめします。
以下では、卵子提供を選択する理由について、見ていきましょう。検討中の方は、自分と同じ立場で卵子提供と向き合っている仲間がたくさんいることを実感して、不安を少しでも和らげてくださいね。
卵子提供を決断する主な理由には、何らかの理由で卵子を作る機能が失われてしまったからということが、考えられます。卵子を作る機能が失われてしまう原因にも、さまざまなものがあるため、以下ではその原因について見ていきましょう。
卵子を作る機能が失われてしまう主な理由には、年齢が40歳に満たないのにもかかわらず、閉経を迎えてしまう早期閉経や、卵巣に患った婦人系の病気による影響が挙げられます。
自覚症状がないまま、進行することも多い卵巣の疾患は、気付いたときには卵巣の摘出が必要なレベルにまで、悪化してしまっていることも多いので、注意が必要です。
染色体の欠損によって、生まれつき卵子を作れないこともあります。例えば、ターナー症候群などの染色体異常の影響によって、先天的に卵子を作れないこともあるのです。
ちなみに2013年から、「卵子提供登録支援団体」というNPO法人が、ターナー症候群によって卵子を作れない女性を対象に、卵子提供を仲介する事業を行っています。
卵子は、特に30代後半ごろから老化のスピードが早くなっていくことで、妊娠する確率が低下すると同時に、流産の確率も高くなってしまうのです。そのため、患者が高齢の場合は、若い卵子で体外受精が可能な卵子提供を選択することも、多いとされています。
卵子提供による不妊治療では、患者が45歳以上でも出生率が高いのです。そのため、高齢出産を望む方が、卵子提供を決断することも多いのです。
最近では、日本でも卵子提供という言葉の認知度が上がってきています。しかし、海外と比べると、まだ認められる条件も厳しく、ドナー不足という大きな問題があることが現状です。そこで以下では、日本の卵子提供の現状について、詳しく見ていきましょう。
日本では現在卵子提供に関する法整備は、残念ながら進んでいません。しかし現在では、配偶者でない方同士の体外受精については、不妊治療を専門に行う30カ所の病院が加盟しているJISART(日本生殖補助医療標準化機関)が、独自のガイドラインを作っています。
2003年から、厚労省で卵子提供は厳しい条件付きで認められましたが、それ以降、さらに細かい法整備が行われる気配はないまま、今日に至っています。卵子提供による体外受精は、日本ではJISARTが作ったガイドラインを必ず守ったうえで、2008年から行われているのです。
日本の卵子提供では、ドナーが不足しているという重大な問題があります。そのため、日本で卵子提供を受ける場合は、第三者から卵子の提供を受けるよりも、姉妹や友人から卵子の提供を受けることが多いとされています。
2003年に厚労省により、厳しい条件付きで卵子提供を認められましたが、提供者は第三者に限られています。しかし、ドナーが圧倒的に足りていないので、実際には姉妹や友人などが提供者となることが多いのです。
日本国内で、卵子提供を受けるためには、JISARTが認めた医療施設で治療を受ける必要があります。その後、卵子の提供者を探して受精卵を作り、受精卵を患者の子宮に移植する手術が行われるのです。
しかし、この一連の流れにはかなり時間がかかりますし、細かく厳しい条件がいくつもあるので、それらの条件をクリアしていくこともかなり大変です。卵子提供を検討するときには、これらの大変さも考慮する必要があります。
日本では、卵子提供に関する法整備が進んでいないうえに、規制が厳しいので、日本よりも法整備が進んでいて規制も緩い、海外で提供を受けることを検討する方もいます。
日本には、卵子提供を海外で受けたい方をサポートをする仲介業者(卵子提供エージェンシー)があるので、多くの場合は、その仲介業者を通して、海外で卵子提供を受けます。日本人が渡航先に選ぶ国は、タイやアメリカ、台湾などが多いようです。
国によって条件や費用は大きく異なるので、海外での提供を検討する場合は、渡航先での情報をよく集めておきましょう。
国外での卵子提供は、国内の場合とは全く違った流れで行われます。広い選択肢の中で、提供を検討するためにも、これから見ていく国外での情報について、よく確認しておきましょう。
卵子提供を国外で受けるためには、まず国外での卵子提供をサポートしてくれる仲介業者(卵子提供エージェンシー)を選らぶことになります。卵子提供エージェンシーは、手間取りやすい海外の病院の手配や、提供者の紹介などを行い、不安になりやすい海外で的確にサポートしてくれます。
国内には、エージェンシーがたくさんあるので、自分に合ったプランを立ててくれるところを選ぶとよいでしょう。
国外で卵子提供を受けることには、さまざまなメリットがあります。そこで以下では、国外で卵子提供を受けるメリットについて、詳しく見ていきましょう。検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
国外で卵子提供を受けるメリットですが、まずは日本よりも法整備がしっかりしているという点が挙げられます。卵子提供目的の渡航先として、今人気の台湾では、法整備が進んでいるだけでなく、国営の病院で卵子提供が行われているのです。
国外で卵子の提供を受けることは、ハードルが高いように思えますが、仲介業者の卵子提供エージェンシーが、ほぼ全てのプランをしっかり立ててくれます。的確なサポートも受けられるので、多くの労力も長い時間もかかることなく、卵子提供を受けられるのです。
日本を除いた卵子提供を行っている国のほとんどは、提供者は30歳以下と定められています。日本では、年齢の上限は40歳とされているので、海外のほうがより若く、健康な卵子の提供が受けられるというメリットがあるのです。
以下では、卵子提供におけるリスクを見ていきましょう。卵子提供は不妊治療の最後の手段ですが、リスクもある方法なので、慎重に進めることを強くおすすめします。
卵子提供を受ける患者側には、多くのリスクがあります。検討中の方は、特にそのリスクについて、よく把握しておきましょう。
卵子提供を受けるためには、高額な費用がかかります。国内では、平均150万円ほどの費用がかかりますが、海外では費用はもっと高く、平均して200~500万円ほどかかるとされているのです。国によってかなり費用が異なるので、海外での提供を検討するときには、ぜひ複数の国の費用を比べるようにしましょう。
卵子提供を受ける場合は、母体への負担が大きく、さらに患者が高齢の場合は、母体の負担はより大きくなるというリスクがあります。また、妊娠中に妊娠合併症が出るリスクも高いので、母体の健康面への考慮が欠かせません。
日本では、卵子提供に関する法整備が、まだ進んでいないことが現状です。そのため、卵子提供によって生まれてきた子供が、将来、自分の出自に疑問をもってしまうリスクがあることも、考慮しておかなければなりません。
卵子提供では当然ながら、母体の遺伝子は子供に引き継がれません。患者は、そのことについて将来悩まないいように、卵子提供の決断前に深く考えておく必要があります。
卵子提供では、提供者にもリスクがあります。提供者は、生まれてくる子供の生物学上の母という重要でいて、複雑な立場に置かれることになります。そのため、事前に患者だけでなく、提供者の負担も考慮しておく必要があるのです。以下では、卵子提供者のリスクについて見ていきましょう。
卵子を提供するためには、排卵誘発剤や麻酔を使用する必要があります。しかし、それらには副作用があるので、事前に卵子提供者の身体の負担も考慮しなければなりません。
卵子を提供して生まれてきた場合、戸籍上は自分の子供にはなりません。しかし、自分の遺伝子を受け継いでいる子供に対する感情が、精神的な負担になるというリスクもあるのです。
卵子提供の決断に至るまでには、さまざまな葛藤や不安に襲われるでしょう。そのため、卵子提供を検討している方は、一連の流れに関する知識を得たり、細かい情報を得られる説明会などに、参加したりすることをおすすめします。
一連の流れや細かい知識について、しっかり確認できれば、その葛藤の苦しみや不安も軽くなるでしょう。そういった説明会では、同じ思いの方と知り合えるので、心強い仲間を作るためにも、卵子提供を検討中の方はぜひ参加してみてください。
卵子提供には、さまざまなメリットがある一方で、母体や提供者へのリスクなども多くあります。そのため、あくまでも不妊治療の最後の手段として、捉えておいたほうがよいでしょう。
不妊治療として卵子提供を決断する際は、自分に対するリスクはもちろん、提供者側のリスクがあることも十分に考慮して、慎重に行いましょう。