赤ちゃんのもとである受精卵は、分割を繰り返して成長します。分割のスピードや細胞の形などは、受精卵のグレードに大きく影響します。グレードを上げたり、妊娠しやすい体作りをしたりするには、何をするとよいのか対策も知っておくことが大切です。
着床率は、受精卵のグレードが大きく影響します。そのため、医師は受精卵ひとつひとつを細かく検査し、グレードをつけていきます。体外受精で受精卵を体に戻す場合は、グレードのよい受精卵を戻すようにすることで、着床率を高めています。
今回は、グレードのよい受精卵とはどのようなものなのか、また、受精卵の分割とグレードの関係性などについて解説していきます。
体外受精を行う場合、卵子と精子が受精したらすぐに体に戻せるわけでなく、受精卵の細胞分裂が進んだ状態で移植します。移植で初期胚移植か、胚盤胞移植かを選択することになります。
受精卵は、受精後1日~2日目には2つ~4つに分割された状態になりますが、その受精卵を初期胚と呼びます。受精後3日目頃、8つに分割される頃までは、比較的スムーズに細胞分裂が進行していきます。そのため、初期胚移植では、そのタイミングで移植を行います。
受精後5日~6日程度経過すると、初期胚よりも成熟した胚盤胞にまで成長します。着床するのはこの段階で、初期胚で移植するよりも、胚盤胞で移植したほうが着床しやすいといわれています。
受精卵が胚盤胞にまで成長する割合は、全体の約30%。胚盤胞で移植する場合、受精卵の細胞分裂をしっかりと進行させる培養の高度な技術と知識が必要といえます。
受精卵の分割スピードは、グレードとともに、受精卵の善し悪しを評価する基準の一つでもあるほど重要です。ひとつひとつの受精卵のスピードは異なります。分割スピードの早いものだと、受精後2日目で6分割以上、遅いものだと受精後2日目で2分割、3日目で3分割といったスピードになります。
受精卵の分割スピードの早さが、着床率に影響を与えることはなく、胚盤胞にまで成長できるかどうかは、精子の質によるところが大きいです。分割スピードの早い受精卵は、男の子の可能性が高く、反対に分割スピードの遅い受精卵だと、女の子の可能性が高いといわれています。
受精卵には成長の度合いに対して、ひとつひとつにグレードがつけられます。そのグレードの高い受精卵から、移植を行う仕組み。グレードは、初期胚と胚盤胞それぞれに存在します。
受精卵は分裂を繰り返し成長していきますが、分裂した一つ一つの細胞が、きれいな丸の形をしていることが理想といえます。分裂した際に、細胞が壊れてしまっているものを「フラグメンテーション」と呼びます。
フラグメンテーションを起こすようなケースも多くあり、グレードが下がる要因にもなります。
初期胚の場合、きれいに分割しているかを基準にグレードがつけられます。グレード5よりもグレード1のほうが、良質な受精卵となります。
均等に分割されているか、壊れている細胞(フラグメンテーション)の割合が全体の何%に当たるかによって、グレードが分けられます。
胚盤胞の場合、成長のスピードを基準にグレードがつけられます。同じ期間内に、より成長している受精卵のほうが良質ということになります。初期胚とは異なり、グレード1よりもグレード4のほうが良質となります。
また、胚盤胞では、グレードの数字の後ろに2文字のアルファベットもつけられます。アルファベットでは、赤ちゃんの質となる部分と、胎盤になる部分をランク付けしています。よいものがA、次いでBといったように表記されます。よって胚盤胞のグレードは「4AA」といった形で表されます。
受精卵のグレードが高いということは、質のよい受精卵であると評価されていることになります。そのため、グレードの低い受精卵よりも着床率が高くなるわけです。また、初期胚よりも胚盤胞を移植したほうが、着床率が高い傾向です。
なぜなら、移植後に受精卵が、自力で細胞分裂を行う期間を短くできるという点が一つ。そしてもう一つは、胚盤胞にまで成長できるほど、良質な受精卵であるということが、理由として挙げられます。
ただし、受精卵のグレードが高くても、着床する子宮内の環境が整っていなければ、子宮内での発育が難しくなります。卵子を取り出す採卵という作業は、子宮や卵巣にもダメージを与えます。
そのため、母体の回復のタイミングと、受精卵の発育のタイミングが合致しなければ、移植や子宮内での発育が困難になってしまいます。よって、受精卵のグレードだけに注目せず、しっかりと医師と相談しながら進めていくことが大切です。
受精卵は、細胞分裂を繰り返して成長していきますが、全ての受精卵が順調に分裂を繰り返すわけではありません。分割が止まってしまうことなどもあり、その原因の特定は難しいとされています。
全ての受精卵が、胚盤胞にまで順調に成長するわけではありません。約50%はの受精卵は、途中で分割が止まってしまい、子宮に戻せない状態になってしまいます。
そのことからも、受精卵を胚盤胞にまで成長させる培養の技術と知識は、ともに高いものを求められます。
体外受精を行っている人にとって、受精卵の分割が止まってしまうことはとても悲しいこと。しかし、分割が止まってしまう原因には、個人差もあり、特定が難しいことが現状です。
そのため、受精卵がしっかりと分割、成長してくれるように、質のよい卵子を作ることが大切です。生活習慣の見直しを行ったり、栄養バランスのよい食事を心がけたりするようにしましょう。
受精卵が順調に分割を進め、成長していかないことには、女性の子宮内に受精卵を戻せません。受精卵にしっかりと成長してもらうためには、医師や培養士の技術だけでなく、日々の生活習慣を見直し、妊娠しやすい体作りも積極的に行っていくことも大切です。
栄養バランスのよい食事を心がけることは、妊活にとって大切なこと。特に、妊活中は妊娠しやすい食材を、積極的に毎日の食事に取り入れるようにしましょう。中でも、老化を防ぐ抗酸化作用のある食材(ビタミンE)、葉酸を含む食材はおすすめ。
また、卵子の老化を防ぐためにも、喫煙している人は、すぐにでも禁煙することをおすすめします。パートナーが喫煙している場合は、受動喫煙を控えるため、また精子の老化を防ぐためにも、禁煙に協力してもらうようにしましょう。
質のよい受精卵のためには、質のよい卵子と精子が必要です。そのためにできることは、血流をよくすること、栄養バランスのよい食事を摂ることが挙げられます。
体をしっかりと温めることや、適度な運動を続けること、5大栄養素(タンパク質、糖質、脂質、ビタミン、ミネラル)を意識した食事を心がけるなどするとよいでしょう。卵子は発育し、成熟するまでに3カ月はかかります。よって、最低でも3カ月間は続けるようにしましょう。
体外受精を続けることは、心身ともにダメージを受けがちです。悩み過ぎるストレスもよくないので、身近なライフスタイルの改善を心がけましょう。自分一人で抱え込むのではなく、パートナーと一緒に、妊娠しやすい体作りを積極的に行い、卵子精子の質を上げ、受精卵が順調に成長できるようにすることも大切です。
ライフスタイルの改善を行ったからといって、すぐに卵子精子の質がよくなるわけではないので、長期的な視野を持ち、前向きに取り組むことも大切です。