2018.08.07

【精子無力症とは】男性も女性も知るべき男性不妊症の正しい知識

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皆さんは精子無力症という病気をご存じでしょうか?あまり知られていない病気なので、聞いたことがないという人も多いでしょう。しかしこの病気は、不妊症につながる恐ろしい病気なのです。そこで今回は、精子無力症について見ていきましょう。

健康番組でも教えてくれない精子無力症という言葉

原因不明のまま、妊活が長い間うまくいかないと、夫婦ともにどんどん不安になってしまいますね。しかし、病院に行って相談したくても、全く原因が分からないと、どの医師にどのように相談したらよいのかと迷ってしまうでしょう。

不妊の原因の一つには、精子無力症という病が挙げられます。しかし、精子無力症がテレビやネットで取り上げられることは少なく、その認知度はかなり低いことが現状です。

そこで今回は、その精子無力症について見ていきましょう。治療にかかる費用も詳しく見ていくので、原因不明の不妊に悩んでいる方は、ぜひよく確認してみて下さい。

精子無力症は精子の運動不足

まず精子無力症の症状について、見ていきましょう。精子無力症とは、通常60~80%とされている精子の運動率が40%以下になり、妊娠の可能性が低くなってしまう症状です。

精子は卵子のある卵管に向かって、移動していく力を持っています。そして、卵子に精子が到達すると、受精卵ができるのです。しかし、その精子が移動する力が弱まってしまうと、精子が卵子に到達することも困難になります。その結果、妊娠の可能性が低下してしまうのです。

全体の精子の半分が不活発状態であったり、活発に動いている精子が、全体の4分の1以下であったりすると、精子無力症の危険性が高いとされています。しかし精子無力症を正確に診断するためには、精液量と精液の濃度、運動率をかけ合わせた「総運動精子数」を調べる必要があります。そのため、単に運動率の値だけで、精子無力症と判断することはできないのです。

精子無力症の原因

精子無力症の原因には、先天性の原因と後天性の原因があります。しかし、全体の30%の原因は、まだ明確にわかっていないのです。精子無力症の効果的な予防や治療のためには、まず原因を突き止める必要があります。そこで、現在判明している精子無力症の原因について、しっかり確認しましょう。

精子無力症の先天的な原因

先天性の精子無力症の原因には、遺伝的な問題や加齢による影響、先天的な性機能不全などが挙げられます。先天的な性機能不全とは、元々、性的な興奮や欲求を感じにくく、勃起障害やオルガスムス障害などの症状が出ている状態のことを指します。

性機能不全に陥っていると、精子の質にも悪影響が及び、精子無力症のリスクも上がるとされているのです。最近では、世界中の男性の精子の動く力が、低下しつつあるとされています。そのため、先天性の要因による精子無力症が、世界規模で増えている可能性も高いのです。

精子無力症の後天的な原因

後天的な要因には、乱れた食生活や過剰なストレス、過度の喫煙、熱すぎるサウナやお風呂などが挙げられます。これらの要因は、精子無力症以外のさまざまな男性不妊の症状にも、つながるとされているのです。とり過ぎた油は、精子の酸化を早めて質を悪くさせるとされています。さらに食品添加物にも、精子に悪影響が及ぶ可能性があるとされているのです。

また、大きなストレスを抱えていると、男性の性機能の維持に欠かせない「テストステロン」という男性ホルモンの分泌量が減ります。テストステロンが減ると、精子自体の質や量にも悪影響が出るとされています。さらに、過度の喫煙も精子に悪影響があるとされています。実際、喫煙者の精子は喫煙していない人よりも、約10~17%少ないとされているのです。

そして、熱すぎるお風呂やサウナに長時間入る習慣があると、精巣にダメージが蓄積され、精子の質や量に影響が出ることがあります。男性の精巣が体外に出ているのは、精巣の熱を逃がして、高温に弱い精子を守るためなのです。ちなみに、精子にとってベストな温度は32~34℃とされています。

原因を特定できないこともある

精子無力症の原因には、環境ホルモンによる影響や、生活習慣の乱れによる影響など、実にさまざまなものが挙げられます。しかし、今でも精子無力症の原因については不明な部分も多く、患者の3割ほどが、原因不明とされているのです。

精子無力症の検査は、通常1カ月につき2回の精液検査で行います。2回の検査結果に大きな違いがある場合は、3回目の精液検査を行うこともあります。しかし3回の検査後でも、要因がはっきりしない場合も多々あるのです。

もし原因が特定できなくても、サプリメントや手術による治療によって、改善することもあります。そのため、原因が分からないからといっても、治療を諦める必要はありません。

精子無力症への有効な治療法いろいろ

精子無力症の治療法は多種多様で、さまざまな薬を使用した治療法や、ホルモン治療などがあります。その中でも有効とされている治療法とは、どのようなものなのでしょうか?

サプリメントを使った方法

精子の中央部にあるミトコンドリアは、精子の動きに欠かせないエネルギー源となります。しかし、そのミトコンドリアに活性酸素がたまると、活性酸素の活動を低下させる抗酸化物質を持たない精子は、酸化ダメージを負ってしまうのです。その結果、精子の運動率が下がるとされています。

そこで、抗酸化物質である「コエンザイムQ10」と、「トコフェロール」という成分含有のサプリが、精子無力症の抗酸化療法として活用されています。これらの成分配合のサプリは、薬局でも販売されていますが、配合量が少ないため、処方されたサプリを飲むようにしましょう。ちなみに抗酸化療法は、精子無力症の治療初期に行われることが多いとされています。

精管への手術による方法

精子無力症は、精巣付近の静脈が逆流してしまう「精索静脈瘤」によって、引き起こされることもあります。この精索静脈瘤は、男性全体の約15%に起きているとされていますが、自覚症状がほぼないので、放置してしまう人も多いとされています。

しかし放置していると、精巣の温度の上昇や血流の悪化を招き、男性の更年期障害や深刻な不妊につながる危険性もあるのです。精索静脈瘤の治療には、問題のある静脈を遮断する手術をすすめられます。

その手術には、骨盤内部から精巣につながる静脈を遮断する「高位けっさつ術」と「腹腔鏡手術」、骨盤から外にでている静脈を遮断する「低位けっさつ術」の2種類があります。世界基準のガイドラインでは、不妊治療の初めに、精索静脈瘤の治療を行うことが推奨されています。

ホルモンを使った治療法

精子の成長や活発化には、男性ホルモンである「テストステロン」を増やすことが有効とされています。そのため、精子無力症の治療では、テストステロンを補う薬を服用するホルモン療法も行われているのです。

最近では、「クロミフェン」という抗エストロゲン製剤がよく使用されます。この薬には、精巣のテストステロンを補う効果があるとされているのです。クロミフェンは、女性の排卵抑制剤としてもよく使われる薬です。しかし、男性の不妊症の改善にも効果があるとされ、精子無力症の治療でもよく使用されています。

精子無力症の検査や診療に必要な費用は

病気の治療では、費用のこともきちんと把握しておく必要がありますね。では、精子無力症の検査や治療には、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。

検査は数千円~30,000円程度

精子無力症の検査にかかる平均費用は、約数千円~30,000円と大きな開きがあります。検査を受ける病院や検査方法によって、検査費用は大きく異なるためです。

一般的に精子無力症の検査は、産婦人科や泌尿器科、不妊外来専門科などで受けられます。主流な検査方法は、1カ月に2~3回ほど採取した精液を検査する「精液検査」と、「触診検査」です。しかし最近では、主に男性の不妊治療に特化した医療機関で行われている、「ブライダルチェック」という検査方法も増えています。

ブライダルチェックとは通常の精液検査に、さまざまな性感染症を検査する「STD検査」を追加した検査方法です。費用は約20,000~30,000円と少々高めですが、産婦人科での検査に抵抗を感じやすい男性でも、気軽に受けられる検査として人気を集めています。

診療に10?60万円程度

精子無力症の診療全体では、平均して10~60万円程かかるとされています。高額ですが、治療方法や病院によって費用はかなり異なります。

さらに、助成金や保険などを活用することで、思ったよりも安く済むことも多々あるのです。そのため治療前には、活用できる助成制度や保険について、よく調べておきましょう。

保険や助成金に頼れる場合も

現在では、男性の不妊治療に対しての国の助成制度はありませんが、自治体によっては、男性の不妊治療に対する助成金制度を設けていることもあります。しかし、そのような自治体の助成金制度の多くには、世帯の所得や利用回数などに、ある程度の制限が存在するため注意が必要です。

また、精子無力症の治療には、保険が適用されることもあり、保険金で高額な治療費を補填することも可能とされています。しかし、病院によって保険の詳細は異なるので、病院に保険のことについて、事前によく確認しておきましょう。

パートナーと知識を共有することが解決への第一歩

精子無力症の治療には、パートナーの協力が必要です。そのため、精子無力症の治療では、まず正しい知識を、パートナーと一緒に共有することが大切といえます。治療との向き合い方と、気軽にできる精子無力症の対策についても見ていくので、ぜひ精子無力症の治療に役立てて下さい。

男性が原因の不妊で恥ずかしがる必要なし

不妊症は、女性の問題と思い込んでいる人も多いですが、実際には不妊症の原因が、男性にあることも多いのです。WHOの研究によると、不妊の原因の約50%は男性にあるとされています。

しかし日本では、男性の不妊症の認知度は低いので、不妊症という診断に衝撃を受けたり、恥ずかしいと想ったりする男性も多いのです。そのため、パートナーが精子無力症という診断を受けたら、女性は寄りそう姿勢を大切にしましょう。

積極的に検査結果や知識を共有したり、励ましたりすることで、患者本人が治療に対してポジティブになれることもあるのです。

普段の健康習慣を変えるのも立派な治療法

精子無力症の治療中には、運動や睡眠、食事といった基本的な生活習慣を正すことも重要になります。生活習慣を正すことによって、すぐに劇的な効果が表れるわけではありません。しかし、原因となる要素を極力排除することは、精子無力症の改善に欠かせないものなのです。

また、ストレス発散を適度に行うことも、手軽にできる対処法の一つとされています。ストレスが軽減されることで、男性ホルモンの分泌が安定化し、精子無力症が改善されることもあるのです。

正しい知識でパートナーとの二人三脚で妊活を

不妊治療はどちらに原因があるにしても、パートナー同士で協力して乗り越えるべきことです。パートナーが精子無力症である場合は、ぜひ本人と正しい知識を共有して、共に不妊治療を乗り越えていきましょう。

お互いに協力して不妊治療に向き合うことができれば、その経験によってニ人の絆はさらに強くなるでしょう。

妊活部編集スタッフ
この記事のライター 妊活部編集スタッフ

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