「基礎体温」を測ることを面倒に感じたり、測っても意味がないと思ったりしていませんか。しかし、基礎体温は妊娠を希望する人も、そうでない人も、自分の日々の身体の状態を知るためにとても役に立つものです。正しく測って生活に役立てましょう。
基礎体温は女性にとって身体的な健康や、婦人病などの状態を知るバロメーターとなるものです。それは、なんとなくわかってはいるものの、実際に測ろうと思っても、どうすればいいのか分からないという人もいるのでは?またグラフを付けたとしても、何をどう見ればよいのか見方を知らない、ということもあるかもしれませんね。
この記事では、基礎体温の正しい測り方やグラフの付け方、そしてグラフからわかることについて解説したいと思います。正しく理解して実践し、自身の体の状態を常に把握しておきましょう。
「基礎体温」と普通の体温の違いをご存じでしょうか。普通の体温を測るときは、「動かず・安静にしている状態」で測る以外は制約がなく、昼や夜、動いたあとや寝ながら測っても特に問題はありません。しかし、基礎体温は「朝目覚めてすぐ・動いていない状態」で測る必要があります。
基礎体温を測ることで、女性はホルモンによって、身体のリズムが大きく左右されていることがわかります。この基礎体温は、風邪で熱があるときに測るような普通の体温とは違い、少しの変化で変わってしまう、とてもデリケートなものです。
細かい動きを見るためではなく、大きな波を確かめるものなので、神経質に考える必要はありませんが、測り方を間違えると、正しいグラフにならないので気をつけましょう。
基礎体温を測るには、普通の体温計ではなく、目盛りが細かく舌の下で測る「婦人用体温計」を使用します。そして、できるだけ毎朝同じ時間に、目覚めてから身体を動かす前の安静時に測るということが鉄則です。
最近は、スマホのアプリと連動できる婦人用体温計など、形も機能も豊富にそろっています。使いやすいものを選んで、寝室の枕元に置いておきます。朝起きて動かなくてもいいように、手を伸ばせば届く場所に置いておきましょう。
基礎体温を測ったら、グラフに記載していきます。女性ホルモンは、生理と生理の間で1周期と考えて、その周期ごとに必要なホルモンが、分泌されたり減少したりを繰り返します。それによって、体温にも変化があるので、少なくとも1~3カ月は記録しましょう。
基礎体温を記録するグラフとして、昔から使われているのが「ノートタイプ」です。数カ月分をいっぺんに見られるので、自己管理がしやすく、どこででも確認することができます。また、その日の体調やスケジュールなども、メモ欄に記載できることが利点です。
インターネットでグラフだけを印刷するか、婦人科の病院などで、製本されたノートが購入できます。
無料のスマホアプリで、基礎体温グラフに関するものがたくさんあります。婦人用体温計と同じメーカーが出しているアプリなどは、基礎体温を測るだけで連動し、自動でグラフ化してくれたり、排卵日を予測したりしてくれます。
また、起こりやすい体調の変化などに関して、アドバイスをしてくれるものもあります。アプリタイプは、めんどくさがり屋さんにはおすすめです。
基礎体温を測ることによって、ホルモンの増減や期間が正常かどうか、排卵があるかどうかなどが分かります。そして、それによって起こる体調や気分の変化や、自分が妊娠しやすい状態なのか、婦人病の疑いがあるのかなどの目安にすることもできます。
基礎体温のお手本は、前回の生理から今回の生理までの間に、低温期と高温期のきれいな二層に分かれている状態です。生理周期が平均的な28日周期の場合、低温期が14日程続き、高温期の境目で体温が一旦急激に下がり、この日の前後が排卵日だと予測できます。
そして、高温期に移行して高温状態が14日ほど続きます。その後妊娠しなければ、高温期から低温期に一気に下降して生理が始まります。この流れを基礎体温グラフで見ると、二層になっています。
この場合、卵胞ホルモン(エストロゲン)や黄体ホルモン(プロゲステロン)が、正常に分泌されていると考えられます。
基礎体温をグラフにしたときに、お手本のようにきれいな二層になる人もいれば、そうならない人もいます。それはホルモンバランスが乱れていることが、大きな原因の一つです。さらに、グラフの状態によって、それぞれ推測される理由があります。
低温期のまま基礎体温が上がらない場合は、「無排卵」の可能性が高いと考えられます。一般的に、低温期に卵胞ホルモン(エストロゲン)というホルモンが、分泌されて卵子が育ち、排卵後は黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されます。
卵子が大きくならずに排卵しなかった場合、基礎体温を上昇させる黄体ホルモンも、十分に分泌されていないと考えられます。
黄体ホルモンは分泌されているけれど、その期間が短いタイプ。黄体ホルモンは、短くても約10日程度は分泌が続くことが正常で、その間は基礎体温が高い状態が続きます。高温期が9日以下の場合は、黄体ホルモンが十分に分泌されない「黄体機能不全」の可能性があります。
低温が続くというわけでもなく、高温の日もあれば、低温の日もある状態が続くはっきりしないタイプもあります。この場合、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの分泌バランスが崩れているので、基礎体温が安定しない状態が続きます。この場合、「黄体ホルモンの乱れ」や「無排卵」の可能性があります。
高温期はあるけれど、低温期が長いタイプも。通常、生理1日目から排卵までは、18~20日程度です。低温期が長いということは、排卵までが長いということです。排卵までに20日以上かかる状態が続くのは、「卵巣機能不全」の可能性が考えられます。
高温期が2週間以上続く場合は、「妊娠」している可能性が考えられます。もちろん、それだけでは妊娠の判定はできませんが、高温期が続くのは、黄体ホルモンが分泌され続けているからです。妊娠している場合、生理予定日が近づいても、受精卵や子宮内膜を育てるために、黄体ホルモンがそのまま分泌され続けます。
しかし妊娠の可能性がなく、生理が始まったにもかかわらず、2週間以上高温期が続く場合は、黄体ホルモンが減少しない「黄体依存症」の可能性があります。どちらにしても、高温期が長く続く場合は、早めに婦人科で受診することをおすすめします。
基礎体温がきれいな二層になっていない場合は、全て問題があるのでしょうか。他の人の基礎体温グラフを見る機会はあまりないので、自分のグラフが正常の範囲なのか、問題があるのかはよくわからないと思います。比較できるものがあると安心ですね。
知り合いの女性同士で会話していても、基礎体温がきっちり二層に分かれている人と、そうでない人に分かれます。実は、そんなにきっちりと二層に分かれた、お手本のようなグラフが毎月続く人は稀で、ちょっとしたことで変化します。
心配性の人は、日々の基礎体温の変動でいろいろと考えてしまいますが、基礎体温はもっと大きな波を見るものです。数カ月つけて、自分の傾向を把握するために役立てましょう。
明らかに高温期がない場合や、極端に低温期が長い場合には、病気の可能性も考えられます。無排卵、多嚢胞性卵巣、卵巣機能不全、妊娠初期、ストレス、高プロラクチン血症、ホルモンバランスのくずれなどの場合も、ガタガタのグラフになります。
放置すると、あとで不妊の原因になる恐れもあり、子宮内膜症や下垂体腺腫など、すぐに受診が必要な重篤なものもあるので、注意が必要です。
基礎体温を測る基本は、毎朝同じ時間に、目覚めてから身体を動かす前の安静時に測ることです。しかし、スケジュールや体調によって、毎日同じ時間に測れないときや、徹夜したり朝急いでいたので、測り忘れることもあるでしょう。そんなときにはどうすればよいのでしょう。
4時間以下の睡眠や2度寝、ストレスがたまっている状、夜中のトイレが続く日の測定では、正確な基礎体温が測れないこともあります。また、起きてから測るまでの間にあくびをしたり、寝返りをしたり、夏と冬の気温の変化だけでも、基礎体温は変化します。
毎日きっちり測ろうと思いすぎて、基礎体温を測ることが嫌にならないように、正しく測定できないときには無理せずに諦めましょう。
その日の健康状態や、風邪を引いた日、睡眠状態などを備考欄にメモしておくとよいでしょう。ほかにも、常用している薬があれば、記載しておくと婦人科で基礎体温表を渡したときに便利です。
備考欄があるノートタイプは、こういうメモを残すのに適していますが、アプリタイプでもメモ機能が付いているものもあります。あまり神経質にならずに、日記のつもりで状況をメモしておくことが続けられる秘訣です。
グラフのちょっとした変化に、一喜一憂する必要はありませんが、数カ月記録してみて不安に思うところがあれば、早めに婦人科で受診してみましょう。婦人科では、病気ではなくても「基礎体温表を見て、不安に思うところがあるので相談したい」と申し出て、気軽に診てもらいましょう。