妊娠をするためには受精が大切です。受精は、精子と卵子が一つになったものが受精卵です。受精から妊娠するまでには、着床してからたくさんの細胞分裂を繰り返します。また、自然妊娠と体外受精による着床や、細胞分裂の違いなどを分かりやすく見ていきます。
受精という言葉は知っていても、実際にどのように起こるのか分からない人もいるのではないでしょうか。ここでは、受精卵が生まれるまでの工程や、受精から妊娠に至るまで体の中で起きる変化について分かりやすくみていきましょう。
受精卵は、赤ちゃんの始まりです。受精卵の細胞分裂での成長や分割などを経て着床していくのか理解しましょう。
受精卵は、卵子と精子が融合した細胞です。女性の体内で成熟した卵子が排出されている状態で、男性から射精された精子が子宮内から子宮頸管、卵管の中へ進入します。そして、精子と卵子が融合されて一つになれば受精卵。受精しなかった卵子は、未受精卵と呼ばれます。
受精卵は、卵子の中に入った一匹の精子のみで成立します。排卵性交渉などにより膣内に入ってきた精子は、子宮頸管を通り卵管に移動します。このとき、卵管膨大部にまで到達する精子はたった数十~数百個になります。さらにそのうちの1匹の精子だけが、卵子の膜を破り細胞の中に入ることができ受精することができます。
受精に可能な時期は排卵前後です。受精は、タイミングが大切です。タイミングを見極めて受精につなげましょう。排卵前後は、性交渉をすると妊娠しやすいといわれています。排卵日は、人それぞれ違います。しかし、生理周期と基礎体温を測ることで排卵日を予測することができます。また、排卵検査薬を用いて特定することもできます。
排卵の数時間前が最も妊娠しやすいといわれています。排卵検査薬で要請になったら、すぐに性交渉をおこなうことで受精する確率が最も高くなります。
卵子と精子には寿命があります。寿命を迎えてしまった卵子と精子では、受精することができません。卵子と精子の寿命はどれくらいでしょうか。
排卵した卵子の寿命は、わずか24時間といわれています。かつては、卵子の寿命の1日間は受精可能な時間と考えられていました。しかし現在は、排卵後妊娠可能なのは約6時間から8時間と考えられています。妊娠を希望するのであれば、排卵時期がとても重要です。
精子の寿命は、女性の体に進入してから約3日の72時間です。しかし実際は、女性の膣内は強い酸性の状態なので酸性に弱い精子は膣内でほとんど死んでしまうため寿命が短くなります。精子は、1度の射精で1億~4億個排出されます。そのうちの数千万から数億個の精子が膣内に進入しますが、上記のように大半が死んでしまいます。
子宮頸管までたどり着ける精子は、射精時の100分の1程度とされています。卵子までは、数十個~数百個まで減少します。生き残った精子が卵管膨大部で待つ卵子と交われることで受精可能となります。
一般的に精子の寿命は、最長1週間ぐらいと考えられています。卵子と精子の寿命を考えると、排卵日6日前から排卵日の次の日まで受精が可能と考えられます。精子の寿命と受精可能期間が違うのはこのためです。精子の受精可能期間は、最大5日間です。この期間を過ぎると、精子は受精能を失ってしまいます。
精子の寿命が7日間くらいであっても、受精可能状態をずっと保つわけではなく実際には5日間くらいが受精可能状態です。
卵子と精子が出会い、受精卵になったあとはどのような状態になるのでしょうか。受精卵からの変化を知りましょう。
受精卵は、子宮に着床することで妊娠が成立します。受精卵は着床する前に、時間をかけて細胞分裂を繰り返して着床できる状態に変化します。受精卵は、受精後35時間くらいから卵管の中で細胞分裂がはじまります。細胞分裂を繰り返し、およそ3~4日で16分割の桑実胚となります。
受精卵は、桑実胚の状態で子宮にたどり着きます。その後も、子宮内膜で着床できるようになるまで細胞分裂を繰り返して赤ちゃんの元となる胚盤胞となり着床します。
受精卵は、受精後3日間かけて子宮へ移動します。受精卵は、移動中の2,3日(受精後5,6日)の間は子宮内で浮遊しています。その間、子宮内は女性ホルモンの働きで着床に適した環境に整えます。子宮内膜は、受精卵を受け入れるために暑さが20mmぐらいになります。
卵子は一つの精子が受精すると、他の精子が入れないように周りの膜の性質を変えます。受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、2~3日かけて子宮へと移動します。さらに2~3日かけて、子宮内膜のベッドへもぐりこみます。受精卵は、だいたい7日間くらいで子宮内膜に着床し妊娠となります。
妊娠には、自然妊娠のほかに体外受精もあります。体外受精は、どのようにしておこなうのでしょうか。体外受精の方法を知りましょう。
体外受精とは、女性の卵子を体外に取り出しパートナーの精子と受精させ、できた受精卵を子宮内に戻して着床させる方法です。妊娠の確立を上げるために、ホルモン薬を使用して多くの卵子を十分に成熟させ採卵させます。排卵誘発に使うホルモン薬の種類や投与方法はさまざまあるので、個人個人の体調などに合わせて使用します。
体外受精をおこなうために、卵子と精子を取り出します。卵子は、排卵日の直前に取り出します。採卵数平均は①25歳で約10個②35歳は約5個③40歳は約3個となります。年齢が上がるにつれて、採卵できる卵子の数は少なくなります。しかし、妊娠において必要なのは卵子の数よりも質が大切です。卵子の質がよければ、数が少なくても妊娠につながりやすくなります。
採卵をおこなった同日に採精もおこないます。採精は①クリニックの個室でおこなう②自宅で採精したものを持ち込むかのいずれかです。
精子と卵子を受精させるには、二つの方法があります。①シャーレ上で卵子に多数の精子をふりかけて受精させる体外受精が一つ目です。②顕微鏡下で細いガラス管を使用して1匹の精子を卵子に注入し受精させる顕微授精が二つ目です。二つの受精法の違いは、送り込む精子の数にあります。
受精卵の元気がいいと、分割スピードが早くなります。受精卵が分割して、着床できる状態に素早くいければ子宮内膜に着床する率が高まります。受精卵の分割スピードは、受精卵を評価する要素の一つです。分割するスピードは一定ではなく、個人差があります。受精卵に元気がないことで、分割も途中で止まってしまいます。
また、分割スピードが早いと男の子が生まれる確率が高いといわれています。男児の受精卵は成長スピードが速いといわれているからです。体外受精では、グレードの検査がおこなわれます。グレードのよい受精卵が選ばれ体内に戻します。グレードは、受精卵の成長スピードも重視されるので体外受精では男の子が生まれる確率が高くなります。
体外受精の成功にはグレードの高い受精卵が必要でした。分割スピードが速いかどうかも受精卵の評価をする要素の一つでした。しかし、年齢が高くなるにつれて分割スピードが遅かったり止まったりします。このために、体外受精がなかなかうまくいかないことが多いです。
何度か採卵をして、顕微授精をしても分割スピードが遅く胚盤胞(赤ちゃんの元のようなもの)まで育たず子宮に戻せずに終わってしまいます。受精卵の分割スピードが遅くなる要因の一つは、卵の質が悪い可能性があります。分割状況がよければ質のよい卵であると考えられるためです。グレードのよい卵は、数よりも質であることが分かります。
採卵した卵の90%以上は、体外受精の受精卵となり2日目の4分割まで発育します。発育後は、途中で発育停止になる受精卵が出てきます。5~7日目の胚盤胞まで到達する卵は50%くらいまで下がります。発育停止になる受精卵の数には個人差がありますが、受精卵の数が多ければ多いほど胚盤胞まで分割する受精卵の確立が高くなります。
受精卵は、2日目の4分割卵と胚盤胞で評価(=グレード)がつけられます。グレード1が最もよい受精卵になります。割球が均等で細胞の断片がないのが質のよい受精卵です。グレード5になるほど、悪い受精卵になります。割球が不均等で細胞の断片が多いのがしつの悪い受精卵です。
しかし、受精卵のグレードにこだわりすぎることはやめてください。グレードが悪いからといって、必ず妊娠しないとは限りません。グレードが多少悪くても、分娩に至るケースもあります。グレードはあくまでも参考程度にしましょう。神経質になり過ぎないことが大切です。
質のよい胚盤胞を子宮内に戻せたからといって、100%着床し妊娠できるわけでもありません。子宮内膜の状態などさまざまな条件が合わさったときに妊娠へとつながります。グレードだけを見ないで、全体の体のバランスも大切にしてください。
受精卵の分割が止まる原因にはなにが考えられるでしょう。受精卵の質以外にも原因があるのか確認しましょう。
受精卵が分割をはじめて初期胚までは、卵子の力でおこなわれます。それ以降の分裂は、受精卵の力といわれています。しかし、分割が止まってしまう場合は卵子の質が関係していると考えられます。分割の遅い受精卵は、どうしても着床しにくくなります。
採卵するときの方法も、卵の質を大きく変えます。誘発する方法を、刺激周期ではなく自然周期に変更する。使用する薬を変更する、卵巣をホルモン療法などで休ませてから治療周期をはじめるなどやり方はさまざまです。自身に合ったやり方をおこなってください。
受精卵への栄養が不十分だとうまく分割できないこともあります。炭水化物などの摂取量が多くても、細胞の生成に大切なたんぱく質やビタミンが摂取されていないといけません。栄養療法をおこなうことで状況を改善することができます。
受精卵の分割が途中で止まってしまうのに、染色体の異常が考えられます。受精卵の成長には、染色体の情報が必要です。分割を繰り返して胚盤胞までいくには、染色体がきちんと活性化していないといけません。染色体が活性していないと、受精卵の成長は止まってしまいます。
受精卵の染色体の異常を調べることは可能ですが、日本国内ではできません。しかし、母親側・父親側の染色体を調べることは可能です。採決で簡単に調べられるので参考にしてください。
受精卵の分割停止を減らすためには、どのようなことに取り組めばよいでしょう。体に負担のかからない方法を実践しましょう。
卵子に問題があったり卵子に空砲が多かったりする場合、排卵誘発法を変えてみましょう。低刺激法や完全自然排卵周期法を用いることで、空砲を減らし卵子をゆっくり育てることができます。ゆっくり育てることで、卵子の質をよくすることができます。
卵の質をよりよくするためには、栄養も大切です。食事療法をおこなうことで、受精卵により多くの栄養を送ることができます。受精卵の発育を改善することができます。特に、たんぱく質やビタミン、ミネラルの摂取を十分にします。
また、ごはんやパン、うどんなどといった糖質はなるべく摂取を減らしましょう。不妊症の人が糖質を摂りすぎることで、受精卵の代謝が悪くなります。受精卵の分割を上げるために、糖質を控えビタミンなどの摂取を心がけましょう。
漢方薬を服用することで卵子の質を上げることができます。漢方は、比較的副作用が少なく安心して服用できます。「白虎加人参湯」「四逆散」「竹温胆湯」などの漢方を処方してもらえる病院もあります。医師に相談して、処方してもらうのもいいでしょう。
受精卵が着床するためには、受精卵の分割スピードが重要です。しかし、体外受精をおこなった受精卵でも、途中で分割が止まってしまうことがあるのです。受精卵の分割を止めないためにも、卵の質を高めることが大切になってきます。
また、卵の質を高めるためには、採卵方法を見直したり栄養を見直したり、漢方を取り入れたりと、方法はさまざまです。自身の体に合った方法を実践して、体外受精から着床そして出産まで叶えましょう。