人工授精で出血が起こる原因には、いろいろあります。出血だけでなく痛みがともなう場合もあり、出血と痛みの原因を知ることが大切です。さらに、様子をみてよい出血や痛みと、医師に相談をすべき出血や痛みを知っておくことも必要です。
不妊治療を行っていくなかで、「タイミング法」の次にステップアップすると、「人工授精」になります。人工授精は、精子を直接子宮へ注入することで、受精の確率をあげるといわれています。ただし器具が体内に入ることで、傷をつけてしまい出血があったり、精子の状態で痛みを伴うこともあるといわれています。
妊活中の方なら、こうした情報を目にして、不安に思っている方も少なくないかもしれませんね。そこで今回は、人工授精で出血や痛みが起きる原因や、出血した際の注意点などについてみていきたいと思います。万が一のときにも、正しく理解して落ち着いて対処していきましょう。
人工授精での出血の原因にもいろいろあります。どの部分からの痛みで、どのくらいの出血量なのかを確認することが必要です。
一般的には、人工授精を行う際に痛みはないといわれています。しかし、精子を子宮に注入するさいに、特殊な器具や、カテーテルという注射器のようなものを使用します。子宮の角度や、子宮頸管の曲がり方などで、器具やカテーテルが子宮内や子宮頸管にあたって傷をつけてしまい、そこから出血してしまうことがあります。また、痛みがでる場合もあります。
痛みや出血は、すぐおさまることが多いので心配はいりません。ただし、まれに傷をつけた場所が炎症をおこすことがあります。治療後には、抗生物質服用の指示がありますが、痛みが強くなって発熱などの症状が出た場合には、受診した病院に連絡しましょう。
人工授精では、採取した精子を洗浄して濃縮する作業を行います。これにより運動していない精子や、感染症の原因になる雑菌、異物などを取り除けます。
このときに使用される洗浄液成分が、腹膜を刺激して腹痛を感じることがあります。この痛みは、とくに人工授精直後に感じることが多いといわれています。
人工授精は器具を体内に挿入するので、感染が起こる可能性がまれにあります。また、遠心処理を行っている精液でも、雑菌をゼロにすることは困難です。
本来は子宮頸管がバリアとなり、子宮内への侵入を防ぐ働きをします。しかし、人工授精では、直接子宮内へ注入するので、雑菌などが存在していた場合に、卵管や腹腔内にばらまかれてしまい、「腹膜炎」になってしまうことがあります。したがって、人工授精後に処方された抗生物質は、かならず指示のとおりに服用することを忘れないようにしましょう。
人工授精では、排卵誘発剤を併用することが多くあります。これは、より妊娠の確率を高くするためです。排卵誘発剤は主に2種類。服用タイプのクロミッドと、注射薬のhCGなどです。排卵誘発剤には副作用があり、卵巣が腫れてしまったり、痛みを感じることがあります。
飲み薬(クロミッド)の場合、副作用は比較的に少ないといわれています。しかし、自然妊娠より多胎妊娠の確率が高くなること、そして、長期に服用した場合は、痛みと下腹部の張りが続くなどの副作用があります。
注射薬(hCG)の場合、皮下注射で投与することによって、卵巣により確実な効果が期待できることもあり、妊娠率は高くなります。しかし、副作用が強くでることも多く、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)になりやすくなるので注意が必要です。
ひどくなると腹痛だけではなく、吐き気や尿の減少、腹水や胸水などの症状が出る場合もあります。よって、違和感を感じたら、すぐに担当医に相談しましょう。
人工授精後1~2週間後に腹痛や出血があった場合、着床痛や着時出血の可能性があります。着床時に少量の出血があり、おりものに混じるような薄い色のものが、2~7日ほど続くことがあります。
また、着床痛も生理痛に似ていますが、より痛みは小さく期間も短いといわれています。これらの痛みや出血は、かならず起こるわけではありません。また気がつかない場合もあります。
痛みが長く続き、強くなったり、出血が多くなったりした場合は、着床痛や着時出血ではないこともあるので、医師に相談したほうがよいでしょう。
人工授精を行った直後から数日の間に、出血や痛みを感じることがありますが、その後、2~3日にでおさまるものであれば心配はいりません。しかし、出血の量が多かったり、痛みが続いたりした場合は、早めの受診が必要です。
大量の出血とひどい痛みが続く場合は、すぐに受診が必要です。人工授精は、排卵誘発剤を併用していることが多いため、まれに、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)になることがあります。
また、お腹のハリや、重い生理痛のような痛み、大量の出血などの症状の場合は、初期の流産の可能性があります。さらに、初期の流産は12週目までに発生します。初期の流産の予防や治療薬等はありません。出血や痛みなど気になることがある場合は、早めの受診が必要です。
人工授精の際の器具挿入時の傷は、着床時に治癒していることが多く、少量の出血が起きた場合は、違う原因を考えます。人工授精後、約2週間ほどで妊娠の兆候があらわれますが、この時期に少量の出血があった場合、約90%以上が自然に治り、正常な妊娠へ戻ります。
人工授精の成功率は、年齢にもよりますが、1周期あたりの成功率は5~10%です。30代では10~15%、40代では2%ほどといわれています。
人工授精の成功率は、自然妊娠とほぼ同じです。女性は35歳を過ぎると、子宮内膜の状態や卵子の質が落ちていくことなど、さまざまなリスクがあるため注意しておきましょう。
病院によっては、人工授精後の入浴に制限がないことがあります。しかし一般的には、人工授精後の入浴は控えたほうがよいといわれています。
人工授精の際に、カテーテルなどの器具を挿入し、子宮頸管などが傷ついた状態で入浴してしまうと、雑菌が侵入して、感染症を引き起こす原因になります。それらを防止するために、人工授精後当日は、シャワーのみにしておきましょう。
また、少量でも出血がある場合は、医師の指示がとくにない場合でも、入浴は翌日以降に控えたほうが安心です。病院から抗生物質が処方された場合も、服用は忘れないようにしましょう。
人工授精後の性交渉には制限がありません。この時点で性交渉をしても、妊娠率があがることはありません。
夫婦生活のコミュニケーションの一つとしてとらえ、ストレスをためないことが大切です。ただし、雑菌の侵入が原因で感染につながることもありますので、とくに清潔にするように注意しましょう。しかし、出血がある場合は、しばらく控えたほうが安心です。
人工授精は基本的には 痛みを感じないといわれています。現在では、カテーテルも柔らかなものを使用することが、一般的になっています。人によっては、子宮頸管が大きく曲がっていたりすると、痛みが生じたり出血したりする場合があります。
出血と痛みは少量で、2~3日でおさまるものであれば、心配ないことが多いですが、痛みが増してきたり、長く続いたり、またはほかの症状や違和感などがあった場合は、すぐに受診した病院に連絡をしましょう。