2018.08.07

「排卵誘発剤使用による双子の妊娠率」妊娠中のリスクを理解しよう

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人工授精や自然妊娠で排卵誘発剤を使用すると、双子が生まれやすいと聞きます。双子が一度に授かると喜びが大きい反面、双子を妊娠するという心配もありますね。双子を妊娠する仕組みや双子の種類、排卵誘発剤による妊娠率と妊娠中のリスクを理解しましょう。

排卵誘発剤で双子は妊娠するのか

不妊治療で排卵誘発剤を使用すると、多胎妊娠をしやすくなります。その際に、双子になる確率はどのくらいか、なぜ双子が生まれるのか、母体や胎児へのリスクはあるのかなどの心配があります。

まず、排卵誘発剤の種類によって、どのくらいの確率で双子を妊娠したのかを紹介します。しっかりと把握したうえで、判断したいですね。

なぜ排卵誘発剤に双子妊娠の可能性があるのか

排卵誘発剤は、排卵障害の人やタイミング法でうまくいかない人などに用いられます。卵胞を発育させ、排卵を促す薬で、妊娠率をあげられます。卵胞の成長は、1日に1,2mmほどで、排卵時には18~22mmほどの大きさに成長しています。

十分に成長した卵胞が、多量のLHホルモンが分泌したときに排卵します。この排卵を促すために用いる排卵誘発剤は、その副作用として、多胎率の上昇があげられています。ただし、多胎率は排卵誘発剤の強さに比例しています。

 

排卵誘発剤による双子妊娠の確率

排卵誘発剤には、飲み薬のセキソビットやクロミッド、注射薬のHMG製剤などがあります。それぞれの双子妊娠の確率をみてみましょう。

経口排卵誘発剤セキソビット

飲み薬の排卵誘発剤セキソビットは、クロロフェニルともいわれていて、最も副作用の少ない薬とされています。そのため、軽度の排卵障害の人や、不妊治療の初期の段階で用いられます。副作用が少ないので、多胎妊娠が起こることは、非常に少ないとされている薬です。

セキソミッドを服用すると、卵胞刺激ホルモンの分泌に伴い、卵胞がよく育つようになります。しかし効果が弱いので、クロミッドと併用することもあります。

経口排卵誘発剤クロミッド

飲み薬の排卵誘発剤クロミッドは、クロミフェンともいわれていて、脳下垂体を刺激することにより、排卵を促すLHや卵胞刺激ホルモンの分泌を促す薬です。クロミッドは、それ以外にも卵子の数を増やしたり、黄体機能を高めるといった役割があります。

クロミッドは、セキソミッドに比べて効果が高い分、子宮内膜が薄くなったり経管粘液が減少したりなどの副作用があります。また、多胎妊娠のリスクもありますが、この薬による多胎率は約5%といわれています。

注射薬の排卵誘発剤HMG製剤

注射薬のHMG製剤は、コナドトロピン製剤とも呼ばれ、卵巣に働きかけて卵胞を成熟させるとともに、卵巣を刺激して排卵を誘発します。経口のものより作用が強く、卵巣を直接刺激するので、一度に複数の排卵が起こることが多いとされています。

排卵障害の人への注射と、体外受精のために卵子をたくさん取る必要がある場合では、注射の量が違います。体外受精の場合は、1個しか卵子を採取しませんが、自然妊娠の場合は、HMG製剤による多胎率は約20%前後といわれています。それだけでなく、体外受精をする場合に大量に投与すると、卵巣過剰刺激症候群になるリスクが増えます。

一卵性双生児と二卵性双生児

双子かどうかわかるのは、妊娠5週目くらいです。双子には一卵性双生児と二卵性双生児があり、同じ双子でも違います。その違いについてくわしくみてみましょう。

一卵性双生児について

一般に、排卵されたひとつの卵子は精子と授精して、受精卵として子宮内膜に着床して根を張り、ひとつのまま細胞分裂しながら育ちます。しかし、一卵性双生児は、一つの卵子と一つの精子が受精し受精卵となったあとに、分割することで双子になります。

一つの卵子から分割しており、性別、血液型、DNAなどの遺伝子はすべて同じなので、双子のそっくりさんになります。全妊婦さんの0.4%に一卵性双生児が出現し、排卵誘発剤の注射薬を使用した場合に、一卵性双生児が生まれる確率が高くなるといわれています。

二卵性双生児について

一卵性双生児が、一つの卵子から双子になるのに対し、二卵性双生児は卵子がふたつ排卵され、それぞれの卵子が精子と受精して、受精卵がふたつできることで双子になります。そのため、性別も血液型もDNAも別になり、双子でも顔が似ていないことがあります。

排卵誘発剤を使うと、一度に排卵される卵子の数が多くなることを考えると、二卵性双生児のほうが確率が高いように感じますが、そうしたデータの報告はされていないようです。

双子の妊娠期間中のリスク

双子を身ごもった場合、赤ちゃんにも母体にもリスクが大きくなります。赤ちゃんと母体それぞれのリスクには、次のようなものがあります。

赤ちゃんのリスク

双子になると単体子と比較して、赤ちゃんの間で循環血液量のバランスがうまく取れず、一方の赤ちゃんが高血圧に、もう一方が低血圧になることがあります。胎盤がひとつで二人の血液量のバランスが崩れることを、双体間輸血症候群といいます。

また、おなかの中で、一人の赤ちゃんが亡くなってしまう「バニシングツイン」が起こる可能性もあります。妊娠初期に、膜性診断を行うと胎盤の状態がわかります。胎盤には4種類あり、二羊膜二絨毛膜性双胎胎盤は、胎盤が離れて双子両方とも羊膜と絨毛膜をもっています。

二羊膜二絨毛膜性癒合双胎胎盤は、ニつの受精卵がくっついたままで着床したもので、両方とも羊膜と絨毛膜を持っています。二羊膜一絨毛膜性双胎胎盤は、胎盤がひとつしかなく、両方とも羊膜と絨毛膜を持っています。一羊膜一絨毛膜性双胎胎盤は、双子がひとつの胎盤を使っていて、お互いの間に絨毛膜がなく、ひとつの部屋の中にいるものです。双子の75%は、二羊膜一絨毛膜性双胎胎盤といわれています。

母体のリスク

単体子と比較して、妊娠高血圧症候群になる確率は、一人の子供を妊娠している人に比べ、双子や三つ子を妊娠している人は、3倍以上もの発症リスクがあります。また、お腹が大きくなって張るため、早産や流産の可能性も高くなります。

双子や三つ子になると、尿の量が増えるので羊水過多になったり、子宮壁が伸びすぎることで、出産のときに微弱陣痛になることもあります。

双子出産は出産のときも必要経費もかかる

双子の出産は、帝王切開が6、7割と一般的ですが、二人とも頭が下向きで異常がなければ、自然分娩できる可能性はあります。妊娠週数は、単胎児が37~41週6日に比べて、双子は36~37週と少し早めです。双子の出産費用は、病院や分娩方法などによって違いますが、60~80万円が目安とされています。

出産費用には、管理入院費や分娩代、帝王切開の手術代と赤ちゃん二人分の入院費が必要です。赤ちゃんの入院費は、1日10,000円の二人分が必要で、1週間の入院だと約14万円です。すると、100万円ほどの費用がかかることになります。

ただし、健康保険組合から分娩に際し、出産育児手当金が42万円×人数分がでるので負担はかなり減ります。そのうえ、高額療養費も入院費用によっては適用されるので、戻ってくる場合があります。高額療養費は自分で先払いして、あとから戻ってくる制度ですが、健康保険組合に限度額適用認定証を申請すると、病院の窓口で呈示することで、減額した額のみの支払いになります。

排卵誘発剤による双子妊娠の可能性とリスクを知ろう

排卵誘発剤には経口薬と注射薬があり、副作用として、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群があげられます。自然妊娠で双子を妊娠する可能性は、HMG注射薬では20%と高くなっています。双子だと、妊娠や出産が母体や赤ちゃんに与えるリスクが高くなります。

よく経過をみながら出産することが大切ですが、待望の赤ちゃんがうまれたときの喜びは大きいです。排卵誘発剤を使用する治療を受けるときは、双子や三つ子を妊娠するリスクをよく理解しておきましょう。

妊活部編集スタッフ
この記事のライター 妊活部編集スタッフ

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