不妊治療で用いられることの多い排卵誘発剤。注射タイプでは、高い効果を得られると同時に、強い副作用などのリスクも考えておかなければなりません。薬の種類や、それぞれの効果とリスクを知っておくことは、妊活をすすめていくうえでとても大切です。
不妊治療に用いられる薬剤の排卵誘発剤。高い効果に期待できる一方で、副作用などのリスクがあることも現実。不妊治療を検討している人なら、どのようなものなのか気になるところでしょう。
安心して使用するためにも、排卵誘発剤の種類や効果、リスクなどの知識は深めておきたいものです。今回は、詳しく解説しますので、参考にしていただけたら幸いです。
排卵誘発剤とは、卵巣に刺激を与えて卵子を成長させ、排卵を起こさせる薬のこと。主に、無排卵や無月経などの排卵障害がみられる場合に用いられ、不妊治療で使用する薬としては一般的ともいえます。正常な排卵周期の方でも、妊娠の確率を上げたい場合は、生殖補助医療のための採卵を行う際にも、使用されることがあります。
排卵誘発剤の治療は保険適応となりますが、一部の薬では保険適応外だったり、使用期間の上限が決められているものもあるので、しっかりと確認する必要があります。また、排卵誘発剤を使用した治療は、高額医療費の対象になるケースが多いので、健康保険組合や国民健康保険などに問い合わせて、確認しておくとよいでしょう。
排卵誘発剤を使用する効果として、たくさんの卵胞を育てることにより、質のよい卵子を入手できることがあげられます。妊娠する可能性を高めるためには、排卵されていることと、良質な卵子が必要になってくるので、排卵誘発剤を使用することが、妊娠率アップにつながるというわけです。
排卵誘発剤にはたくさんの種類があり、得られる効果などが異なります。主に、卵子の元となる卵胞を育てる効果がある薬と、排卵を促す効果を持つ薬があります。
卵巣の状態によって、使用される薬の種類や量、使用期間などが異なるため、医師としっかりと相談しながら進めていくことが必要です。
卵胞が十分に育たない方には、排卵誘発剤を用いて、卵巣をしっかりと育てるために使用することが多いです。その場合、卵胞を育てる「卵胞刺激ホルモン」(FSH) や「黄体形成ホルモン」(LH)の分泌を増やす薬と、薬そのものがホルモンと同じように作用するものがあります。
うまく排卵ができない方には、排卵誘発剤で卵胞を育て、排卵を促すことで妊娠率を高める場合もあります。排卵は、黄体形成ホルモンの大量分泌(LHサージ)によって引き起こされるので、脳に作用してホルモンの大量分泌を引き起こす薬があります。
ほかにも、薬自体がホルモンと同じように、卵巣に働きかけて排卵を引き起こす薬もあります。
排卵誘発剤には、さまざまな種類の薬があります。それぞれに、得られる効果が異なるため、処方された際には、しっかりと確認しておくことが大切です。強い効果に期待ができる薬には、副作用の強いものもあるため、安心して取り組むためにも、説明をしっかりと聞くようにしましょう。
排卵誘発剤には、注射(ゴナドトロピン製剤、hCG製剤)と内服薬(クロミフェン、シクロフェニルなど)、点鼻薬(スプレキュア、ナサニール)があります。
注射薬は一番効き目が強く、副作用が出やすいという特徴があり、内服薬と点鼻薬は、注射と比べて効果は薄いですが、副作用が少ないという特徴があります。
内服薬、点鼻薬で用いられる薬は、脳に働きかけてホルモンの分泌を促し、卵巣に間接的に作用する一方で、注射薬はホルモンの代わりに、直接卵巣に働きかけるという違いがあります。
複数の排卵誘発剤を、組み合わせて使用することもあるため、効果と副作用などのリスクを、しっかりと確認しておくようにしましょう。
排卵誘発剤の種類は、排卵障害のある部位と症状の重さに合わせて選ばれます。内服薬では効果が認められなかった場合や、生殖補助医療のために多くの卵子を採取したい場合は注射薬を使用するなど、より効果の高いものへ、ステップアップすることもあります。
注射タイプの排卵誘発剤は、高い効果を得られる一方、内服薬などよりも副作用が強い特徴があります。医師から使用をすすめられた場合には、しっかりと相談し、納得してから使い始めるようにすると安心です。
注射では、「ゴナドトロピン製剤」と「hCG製剤」が使われることが多いです。ゴナドトロピン製剤は、卵巣に直接作用するタイプの注射なので、卵胞の成長の促成への効果が期待できます。
しかし、一度に複数の排卵が起こることも多く、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群を引き起こす可能性もあります。一方でhCG製剤は、排卵を起こすために使われます。
ゴナドトロピン製剤は、ホルモンの代わりとして卵胞を育ててくれる効果があります。
ゴナドトロピン製剤には、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)が両方含まれるhMG製剤、hMG製剤から黄体形成ホルモンを取り除いた精製FSH製剤、遺伝子組み換え型FSH製剤の三種類があり、症状によって選ばれます。
hCG製剤は、ホルモンの代わりに強力に排卵を促す効果があります。通常は、排卵予定日の2日前に使用し、使用後約36~38時間後に排卵されます。
費用が安いうえに、確実性が高い特徴がありますが、刺激が強い薬です。そのため、卵巣過剰刺激症候群を引き起こすケースもあるので、使用には十分な注意が必要です。
一般的には、月経中に卵胞を成長させる効果のある注射を行い、その後、卵胞が成熟した段階で、排卵を促す効果の注射を行う流れになります。ただし、薬剤の量や頻度には個人差があるので、医師の指示に従うようにしましょう。
病院や症状によって違いがありますが、およそ月経開始後3日後から11日後までの間、毎日注射を打つ必要があります。
卵胞の成長具合を確認しながら、薬の量を増減して調整します。毎日病院へ通うことが難しい場合には、遺伝子組み換え型FSHによる自己注射もできるので、医師に相談してみるとよいでしょう。
超音波検診で、卵胞の大きさから排卵日を予測し、それに合わせてhCGを1回注射します。およそ月経開始後12日~13日頃に行うのが一般的です。
また、ゴナドトロピン製剤と組み合わせて、卵胞を成熟させてから使用するというケースもあります。
注射タイプの排卵誘発剤は、高い効果を得られる一方で、副作用などのリスクも強く出る傾向があります。効果とリスクをしっかりと理解し、納得して使用するようにしましょう。
注射薬は、強い排卵誘発効果があるため、一度に複数の卵子が排卵されることがあります。そのため、双子、三つ子などが生まれる確率が、20%程度見られる場合も。
多胎妊娠は、母体への大きな負担だけでなく、早産や低体重など、胎児へのリスクも考えられます。自然妊娠で多胎になる可能性が、1%といわれていることと比較しても、高い確率であることが分かります。
hMG製剤を注射したあとに、hCG製剤を注射すると起こりやすいといわれており、薬の刺激が強すぎることで、卵巣が大きく腫れてしまう症状が出てきます。ほとんどは自然に治るものですが、お腹に水がたまって脱水症状を起こしてしまったり、血液が濃縮されることで脳梗塞を引き起こしたりなど、重症化する場合も。
したがって、薬を使用したあとに、お腹がはる、腹痛、吐き気、急に体重が増えるなどの症状が出た場合は、病院に相談するようにしましょう。
主に、排卵障害などで自然妊娠が難しい場合に、使用されることが多い排卵誘発剤。正常な排卵周期をもっている方でも使用は可能ですが、高い効果ばかりに注目して、安易に決断することは危険です。
妊活をしている女性にとって、妊娠率を高めてくれる排卵誘発剤はとても魅力的ですが、医師としっかり相談したうえで、効果とリスクについて納得して使用するようにしましょう。
また、使用する際には、医師の指示通りに行うことも重要。不安な点や分からない点は、納得いくまで医師と話し合い、安心して取り組めるようにすることが大切です。