着床した際にあるといわれる着床出血。実際にどのくらいの量の出血が、何日続くものなのでしょうか。突然の体調の変化に慌てないように、そもそもなぜ出血があるのかメカニズムを知るとともに、同時期に起こりやすい症状についても知っておきましょう。
妊活中に突然出血があると慌ててしまいますが、事前に情報を仕入れておけば、いざ起こったときに落ち着いて対処できます。また、異常があったときにもすぐに気づけるので、着床出血だけでなく妊娠の初期症状全般について理解しておきましょう。
着床出血はどのようにして起こるのか、どのくらいの確率で起こるのか。基本的な知識です。
卵管でできた受精卵は、細胞分裂を繰り返しながら子宮へ向かい、子宮に到達する頃には「胚盤胞(はいばんほう)」という状態になります。胚盤胞が子宮内膜に根を張ることを「着床」と呼び、この着床をもって妊娠の成立となります。
着床の際に、子宮内膜を傷つけてしまうことで出血が起こるため、「着床出血」と呼ばれます。
着床出血が起こる確率は、妊婦全体の約2%ほどとされ、すべての人に必ず起こるわけではありません。また出血があっても、それが着床によるものだと思わずに、妊娠が判明してから気付くケースも多いようです。出血のあった日を覚えていて、妊娠後にあれはそうだったんだと思い返すパターンです。
妊娠していれば、基礎体温が高温のまま維持され、月経なら低温期に入ります。基礎体温の記録を続けていれば、ある程度出血の原因を想定できます。
出血はいつ頃に、何日くらい続くのでしょうか。
着床出血があるのは、「排卵日の1週間後」または「生理予定日の1週間前」がだいたいの目安です。とくに、生理予定日の2~3日前に起こりやすいとされます。そのため、生理周期が一定でない人は、生理が始まったと思ってしまうことも多々あります。
ただし個人差があり、生理予定日後に着床出血する場合もあるので、生理が少し遅れただけなのか、見分けがつかずに困惑することも多いです。生理予定日が過ぎているなら、妊娠検査薬を使って、着床出血かどうかを調べられますが、確実な出血原因を知りたければ、婦人科で受診しましょう。
出血の期間は個人差がありますが、1~3日が一般的です。ただ、長い人は1週間続くこともあり、頻度も1回だけという人から、何度も出血がある人など、ばらつきがあります。こうした差異は、体質やホルモンバランスの乱れが原因といわれていて、1週間以内の出血なら、気にすることはないとされます。
ただし、出血が1週間以上続くなら、原因を特定するためにも、婦人科で受診するよう推奨されています。
実際に、どのくらいの出血量があるのでしょう。注意が必要な症状もあるので要チェックです。
標準的な出血量は少量ですが、これも個人差があり、生理並みの出血量がある人もいます。おりものシートも要らないような量から、生理ナプキンが終日必要な量など、かなりの開きがあります。
色は鮮血・ピンク色・茶色など、おりものに血液が少量混じったような状態であることがほとんどです。ただし、色もさまざま違い、やはり経血と見分けがつかない場合も。
においは生理と違ってほとんどなく、一番分かりやすいポイントです。着床出血は、着床の際の傷が原因なので、出血してそんなに時間が経っていない、ほぼ無臭のサラサラした血液が出てきます。一方、経血は子宮内膜が剥がれ落ちてきたものなので、生成されてから時間が経った粘度のある血液が出て、特有のにおいがするのです。
少量であるはずの着床出血の時期に、大量の出血があった場合、流産の危険性があります。流産の75%が、妊娠16週以前に起こり、とくに8週目までの可能性が高いとされます。出血のほかに、下腹部の張りや痛みが、異常を知らせるサインといわれています。
さらに基礎体温の低下、激しい腹痛や下腹部痛、つわりがなくなるなどの症状があった場合は、流産や子宮外妊娠の可能性が高まるため、要注意です。至急、婦人科で受診してください。
妊娠超初期といわれる時期に見られる症状。身体の変化のサインを見逃さないようにしたいものです。
着床が完了すると、体内のホルモンバランスが大きく変化します。子宮が大きくなっていくのに合わせて、骨盤も広がる必要があり、出産時に骨盤をさらに広げるためにも、骨の間接を緩める準備が始まります。ここで重要な役割をするのが、胎盤などから分泌される「リラキシン」というホルモン。
リラキシンの働きで骨盤が緩んでいくと、周辺の筋肉が骨の代わりに身体を支えようとして緊張し、硬くなって、腰痛が起こります。骨盤周りが重く鈍く痛む感じです。ひどいとぎっくり腰になってしまうケースもみられます。もともと筋力の弱い人はなおさら、今まで腰痛になったことがない人にも、症状が出ることがあります。
お腹の内側から、細い針でチクチク刺しているような痛みがあることも。原因は、着床時の痛み「着床痛」、ホルモンバランスの変化、胎芽や子宮の成長など、さまざまあるといわれています。痛みの強弱は個人差が大きく、少しの不快感で済む人から、立っていられないほどの痛みを感じる人まで。
また、生理のときのように、ギューッとなるような下腹部痛があったり、下痢を伴うこともあります。普段、生理が始まると便通がよくなる人なら、生理が来ると思ってしまうかもしれません。ほかには、足の付け根がつる感じや、恥骨や股関節の違和感などを経験した人が多いようです。
着床(妊娠)することで、基礎体温の高温期が続き、熱っぽさや倦怠感が出ることがあります。さらに血液が下半身に集まるため、水分が不足して喉が渇きやすくて咳が出たり、ホルモンバランスの変化によってアレルギー反応が出て、鼻水やくしゃみといった風邪のような症状が見られることも。
また、ホルモンの影響で、吐き気があったり食べ物の好みが変化したりすることもあります。これはつわりの症状ですが、やはり風邪のせいで胃腸が弱り、消化が鈍って食欲がないのかもと、思ってしまいがちです。
風邪と勘違いして、風邪薬や解熱剤を飲んでしまう人もいるため、妊活中は体調の変化にとくに注意するようにしましょう。つらいなら我慢せず、通常の内科よりも婦人科で受診し、妊娠の可能性を伝えたうえで診察してもらいましょう。そうすることで、妊娠に配慮した薬を処方してもらえます。
妊娠中のストレスはなるべく避けたいもの。また、この症状は何だろうと、考え込むこともあまりよくありません。標準的な着床出血の状態と注意点を知っておけば、必要以上の不安や焦りを感じることも軽減します。
正しい知識は受診の目安にもなります。不安になったら病院に相談しようと、冷静に構えておきましょう。