生理の日ではないのに血の塊が出てきた、などのことがあれば誰でも不安に感じてしまいます。「ひょっとして着床出血?だとしたら妊娠?」と疑問に感じる人のために、着床出血やそのほかの生理以外で起きる可能性がある出血、その原因についてみていきます。
生理の予定日前なのに、突然生理の時のような出血や血の塊が出て来た場合、妊娠を希望している人の中には「ひょっとしてこれが着床出血?」と気になる人も多いようです。しかし着床出血なのか、それとも別の理由による出血なのか、見分けることは不可能です。
また中には別の病気が潜んでいることもあります。着床出血の一般的な仕組みや特徴、血の塊が出るケース、別の理由について、症状も踏まえて詳しくみていきます。
一般的に着床出血は、次の2つの理由から起こると言われています。
精子と卵子が卵管内で出会い、無事受精すると受精卵ができます。これがゆっくりと1週間かけて子宮内に入り、お母さんと赤ちゃんを繋ぎ栄養や酸素を送りあう用意をするために、受精卵は絨毛という根のようなものを子宮内膜へ伸ばし、やがて定着します。
この時に出血が起こり、それが漏れて着床出血が起きると言われています。受精卵は非常に小さいため、おりもの程度の少量の出血であることがほとんどで、また誰にでも起きるわけではありません。
もう1つ考えられるのが、黄体ホルモンの影響です。妊娠時から分泌量が増え、妊娠を維持する役目を持ちます。黄体ホルモンはhCG(絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンの量で変動し、hCGが少なかった場合には一定量を保てません。すると、生理に似た出血が短期間起こるケースがあるようです。
生理とは違い、2~3日程度で終了してしまい、出血量も少なく「おりものに血が混じっているような気がする」程度であることが多いようです。妊娠以降「あれが着床出血だったんだ」と気が付く人も多いほどです。
「じゃあ血の塊が出るときは病気?」と気になる人もいるかもしれません。着床出血以外にも、妊娠初期に起きやすい疾患が原因となっているケースがあります。
着床後、妊娠が続けられるように女性の体は変化していきます。ところが、稀に着床しないことを前提とした生理の用意が体の中で進んでいたために、一部の子宮内膜が剥がれやすい状態になることがあります。
通常は着床したら子宮内膜は剥がれないため、中には痛みを感じる人もいるようです。個人差が大きいため、起こるかどうかは人によります。
通常は受精卵は子宮内に着床し、胎盤は子宮の上の方に形成されます。しかし中には子宮の入り口近くに着床してしまうことがあり、これを「前置胎盤」と言います。全分娩の0.3~0.6%ほどと非常に少ない確率であり、稀に子宮の出口を覆い隠すこともあります。妊娠28週以降は日常生活で出血することもあり、前置胎盤と分かった場合には、安静にしてお腹が張らないようにするのが基本です。
また出産時は、子宮の出口が覆われた状況だと赤ちゃんが通れないため、帝王切開となるケースがほとんどです。ハイリスク妊娠として、病院に入院することもあります。妊娠初期の段階では診断されず、妊娠31週末までに診断されます。
「絨毛膜下血腫」は、胎児や羊水全体を包み込んでいる絨毛膜という膜の外側に血液が溜まっている状態です。妊娠の経過とともに絨毛が根をはっていき、この過程で血管が壊されるため出血が起こり、これが流れださず塊となって、体内に残ることで血腫が生じます。妊娠初期によく見られます。
切迫流産の症状の1つとされますが、現在は超音波断層法で赤ちゃんの心拍動が確認できれば、流産の確率は限りなく少ないと言われています。妊娠の経過とともに自然と消え、一方で胎盤が完成するまでの間はたびたび出血が起こることがあります。そのため、出血しないよう基本的に安静に過ごすことが求められます。
一番最初に痛みを感じる人もいる、と述べましたが、もし下腹部痛が長く続いたり、出血が続く場合には注意が必要です。女性ホルモンの乱れや血液疾患、子宮内の炎症、子宮内の血管が損傷している、子宮外妊娠などの原因が考えられます。
着床出血が起こる生理予定日1週間前から1週間後の間、少量の薄赤茶色の出血ではなく鮮血だったり、大量に出血するという場合には、流産の危険性もあります。妊娠の可能性が少しでもあるのなら、早めに病院へ受診しましょう。
着床出血や妊娠初期ではない場合、どのような理由が考えられるのかを確認してみましょう。
化学流産とは、着床の途中で妊娠が成立できなかった場合に起こります。正しくは生化学流産といい、流産と名前に含まれるものの、胎嚢が完成していないため正確には妊娠していないと判断され、流産にはカウントされません。妊娠が成立していないので、生理と同じように子宮内膜が剥がれて起こる出血です。
強い腹痛を伴う場合に考えられるのが、子宮の内部という正常な妊娠が期待できる範囲の外、たとえば卵管や卵巣などに着床してしまう子宮外妊娠です。赤ちゃんがきちんと育てる環境ではないため、妊娠継続が不可能なばかりか、卵管などで妊娠が進むと卵管が破綻、死に至るような出血が起きてお母さんの体が危険にさらされることもあります。強い腹痛や大量出血が見られる場合は、早めに病院へ受診してみましょう。
子宮頚管は子宮と膣を繋ぐ通り道で、定期的に子宮頸がんの検診を受けている人も多いかもしれません。ここにもともとあったポリープが炎症を起こし、出血するケースがあります。ポリープ自体は非常に柔らかいものの痛みはなく、万が一出血しても見逃してしまうことがあるため、できていることに気づかない人も多いようです。
細菌が感染すると、びらんや膣炎が生じることがあります。びらんは子宮の入り口が炎症がおこるかどうかの1歩手前であり、内服治療や殺菌することで治せます。膣炎も同様ですが、どちらも炎症が激しくなると出血してしまうことがあります。
妊娠の可能性がある時期に出血すると、ついつい慌ててしまいがちです。まずは落ち着いて自分の状況を確認しましょう。実はただの生理だったりと、緊急性が低いものも多いためです。普段の生理より出血が多いかどうか、いつ頃始まったのか、あるいは気が付いたのか、どのくらい出血が続いているのかを確認しましょう。
そして産婦人科に連絡を入れて、受診が必要かどうか判断を仰ぎます。緊急性やその後の対応について、教えてもらえます。焦って向かうとより出血してしまう場合もあるため、まずは落ち着いて対応しましょう。