これから妊娠したいと考えている場合、受精するまでにかかる時間や、受精しやすいタイミングを知りたいという方も多いのではないでしょうか。今回は、受精しやすいタイミングとその理由、受精までにかかる時間、体外受精についてチェックしていきます。
妊活中の方なら、受精するまでにかかる時間や受精しやすいタイミングを知っておきたいですね。精子と卵子が出会うと妊娠しますが、避妊せずに性行為を行ったからといって、すぐに精子と卵子が受精するわけではありません。
本記事では、受精から着床までの道のりや受精しやすいタイミング、卵子が受精可能な時間、なかなか妊娠できない人の不妊治療の選択肢などを詳しく解説していきます。
まずは、受精から着床までの道のりを確認していきましょう。
卵子と精子が受精する場所は、卵管の先端部分のあたりです。子宮内から卵管までは約17cmあり、精子は秒速35~50μm(マイクロメートル)で泳ぎます。
射精後、15分ほどで卵管にたどり着きますが、卵管から卵管まで行くのには時間がかかり、合わせて1時間~1時間半ほどかけて、卵管膨大部へたどり着きます。
男性が1回の射精で出す精子の数は、2億~4億個とされています。しかし、これらすべての精子が、卵管にたどりつけるわけではありません。
膣内は、子宮内に細菌やウイルスが侵入するのを防ぐために、酸性に保たれています。精子は酸性に弱いため、子宮内に入れる精子の数は1~2万個です。さらに、子宮内で白血球に攻撃され、たくさんの精子が消えてしまいます。したがって、卵管にたどりつけるのは、1000個以下にまで減ります。
卵管膨大部までたどり着く精子は、60~200個ほどにまで減ります。受精するために、精子は卵子を取り囲み、頭部から酵素を放出して、卵子を包む透明体を溶かして中に入り込もうとします。
1匹の精子が卵子に入り込むと、透明体が性質を変え、ほかの精子が入り込めないようになります。すると、ほかの精子はどこにも入る場所がないので、消えてしまいます。こうして、数億個あった精子のうちの幸運な1個だけが生き残り、卵子と受精できます。
受精した卵子のことを受精卵といいます。受精卵は細胞分裂をし続け、受精から2日目に4分割、3日目に8分割、さらに分割しながら、受精から3日かけて子宮内へ運ばれます。
受精後3~7日の間、受精卵は子宮の内側に浮かんでいます。そして受精後7日目に、ようやく繊毛(せんもう)という根を張って着床が完了して、妊娠が成立します。着床すると、お母さんの血管から、胎児の発育に必要な栄養や酵素を受け取るようになります。
ここでは、受精しやすいタイミングを見ていきましょう。排卵日に性交をすることが、一番妊娠しやすいと思われがちですが、実は受精に適したタイミングは、排卵日の2日前~前日といわれています。このタイミングで性交を行うと、排卵日の4倍妊娠率が上がり、最も受精しやすいとされています。
なぜ排卵日の前日と2日前がいいのかというと、排卵直後の卵子が一番いい状態だからです。また、精子は射精されてからすぐには受精能力はなく、射精から5時間~36時間後に受精可能になります。
そのため、妊娠を考えているなら排卵日だけではなく、排卵日前後に数回のタイミングをとることで、妊娠の確率をより高めます。この方法をタイミング法といいます。
精子は射精してから84時間以上過ぎると、受精能力を失ってしまうといわれています。また、卵子の寿命はそれよりも短く、排卵から約16~24時間とされています。さらに、受精可能な時間はそのうちの約12時間と考えられています。そのため、排卵前から精子が卵子を待つ時間を作ることで、受精の確率が高くなります。
排卵日は予測できても、排卵時間までは予測することは難しいです。したがって、排卵日当日のみの性交では、なかなか受精することはできないので、排卵日前から性交するのがいいといえるでしょう。
こちらでは、妊娠が成立しにくい場合の不妊治療への選択肢について見ていきます。
なかなか妊娠しないという方は、「フーナーテスト」を受けてみることもよいでしょう。フーナーテストとは、不妊治療の初期段階で行われる検査の一つで、性交後、子宮頸管粘液(子宮の入り口にある液)を採取し、どのくらい元気な精子がいるかを顕微鏡で見て調べます。
この検査の注意点としては、性交してから12時間以内に、検査を受けなければならないということです。性交後1日以上経つと、精子が死滅したり外に流れ出たりして、精子の採取が難しくなります。また、この検査を受けるのは、排卵直前が最適です。
フーナーテストの結果が良くなかった場合や、タイミング法(およそ6周期までが目安)で妊娠しなかった場合には、次のステップとして「人工授精」の検討が勧められることが多いでしょう。人工授精とは、細い管を使って子宮の奥へ、事前に採取した精子を注入する方法で、受精・着床したあとは、自然妊娠と変わりません。
この人工授精は、1回で妊娠する場合もありますが、数回行う人もいます。しかし、5~6回目以降は人工授精での妊娠は厳しいとされ、次の不妊治療へのステップを検討する必要が出てきます。
「体外受精」は、タイミング法や人工授精では妊娠しなかった場合などに行われる、最終ステップの不妊治療です。どのように行うかというと、まず卵子を採卵してから1~3時間後に、シャーレの中で精子を振りかけて受精を行います。翌日には受精卵となり、2日後に受精卵を子宮へ戻す胚移植が行われます。早ければ、2週間後に妊娠を確認することができます。
しかし、体外受精は女性の体に大きな負担がかかります。十分に発育させた卵を数多く採取するために、「排卵誘発剤」を使い、何度も注射を行います。また、排卵時期を調整するために、スプレーキュアという点鼻薬を使います。
これにより、女性ホルモンのバランスが崩れ、卵巣過剰刺激症候群という症状がでる可能性もあり、精神的にも肉体的にもつらいと感じることもあります。
夫婦が性交を行ってから、子宮の中ではさまざまな奇跡が起こっています。たくさんの精子や卵子の中から選ばれた、わずか1個ずつが受精卵となり、赤ちゃんに成長します。
受精しやすいタイミングを把握することは、妊娠の確率を高めるためにとても大切なことです。また、なかなか妊娠できなくても、不妊治療で赤ちゃんを授かった人も大勢います。したがって、前向きに妊活に励みましょう。