射精回数は、年齢とともに少なくなる傾向にあります。近年の研究データでは、射精回数によって40代以降の前立腺がんが少なくなるという発表もあります。早期発見すれば、治療は可能です。前立腺がんのがん検診を受診して、がん予防と早期発見しましょう。
前立腺がんは、年齢で発症する男性特有の病気といわれていましたが、年齢がそもそもの原因でなく、年齢とともに射精回数が減ってくることが、前立腺がんと関係があると近年いわれています。そんなこともあり、射精回数が減ってくる年代の方は、前立腺がんを意識し始めることがあるかもしれませんね。
今回は、射精回数の減少が立腺がんとどのような関係があるのかをみていきましょう。
がんと呼ばれる病気の多くは、喫煙や飲酒、肥満や生活習慣病が原因だといわれていますが、前立腺がんの場合は、こういった要因は希薄だといわれています。前立腺がんは、射精と多くかかわる臓器なので、射精が関係するのではないかと、近年考えられています。
アメリカハーバード大学の研究によると、1カ月に21回以上射精した場合、前立腺がん発がんリスクが、約2割低くなるという研究結果を発表しています。同大学の研究チームが、1992年から約3万人の男性の射精回数と、前立腺がんのと関連を調べたところ、40代男性の場合、1カ月21回以上射精した場合、約22%もがんの危険性が低くなることが発表されています。
1カ月21回以上の射精とは、1週間に5回以上の射精ということになります。そこまで、体力がある40代、50代がどれだけ居るのかという関係性も考えると、深い話になります。
アメリカの研究者グループは、40代で直近1年間に限り、月平均21回射精していた人は、月平均4~7回の射精だった人に比べ、前立腺がんになる割合が少なく、6~7割に留まっていたとのことです。
若いころに多く射精するしないにかかわらず、40代以降の射精回数が、前立腺がんになる可能性を左右することが、このデータから理解できます。
射精の回数と、前立腺がんになるリスクの関係は、大いに期待できる内容です。しかし、現在はまだ観察測定という段階で、射精と前立腺がんの関連付ける因果関係は、証明されるものがないので注意が必要です。
ただし、こういったデータが存在する以上、射精と前立腺がんの間には、何らかの関係はあると思われるので、40代以降で射精回数が少ないと思われる方は、試してみる価値はありそうです。1カ月に21回以上として、週に5回の射精とまではいかないとしても、それに近い回数の射精をしてみる試みもよさそうです。
一般的ながんと呼ばれる病気に関して、厚生労働省では「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のため指針」で、検診方法を定めていますが、前立腺がんについては現在定められていません。義務付けられていない検診ですが、思い当たる体の変化や気になる症状がある場合は、早めに検診を受けて、早期発見・早期治療することが肝心です。
市町村区の単位では、男性向けの前立腺がん検診は、通常より安価で受けられる制度を取り入れている場合もあるので、お住まいの管轄の市町村区役場に、問い合わせてみることもよいでしょう。
前立腺がんとは、男性のみが持っている前立腺と呼ばれる臓器になります。前立腺がんになると、どういった症状があるのか、自分に似た症状はないのか、夫にそのような症状はないのか?不安になる前に、前立腺がんの症状を詳しく調べてみましょう。
近年前立腺がんは、増加傾向にあるといわれています。年配層の増加によるという考えもありますが、男性が発症するがんの中では、発症率の多い男性特有のがんです。
前立腺の働きには、まだ発見されていないことも多いです。主に前立腺液の分泌であり、前立腺液は精子と合わさり精液となります。そして、精子を酸性の女性の膣液から守ったり、精子が膣内で卵子のいる場所までたどり着くために、栄養を与えたりする役割を持っているといわれています。
前立腺の場所は膀胱の真下にあり、尿道を包むように位置しています。前立腺の一部は直腸と接しているので、直腸の壁越しに触れます。大きさ的には、栗の実程度で形も栗のような形状です。膀胱を取り囲むように前立腺の内線があり、内線を覆うように、外線と呼ばれる組織に分かれています。
前立腺肥大といわれる、前立腺が腫れる病気の場合には、膀胱の真下に位置するために、膀胱や尿道を圧迫します。そのため、頻尿になったり尿が出にくくなったり、残尿感があったりなどの症状になる場合があります。
前立腺がんは、前立腺の細胞が正常な細胞増殖機能を失い、無秩序に増殖してしまうことで発症します。比較的ゆっくりと進行していくので、早期に発見すれば治療することが可能な病気です。
前立腺がんのがん細胞の進行が進むと、前立腺付近のリンパや骨、肺や肝臓などに転移する場合もあり、進行する前の段階での早期発見が、治療のカギとなります。
前立腺がんの多くは、がん特有の自覚症状がなく、がんが進行していくことで尿が出にくい、排尿の回数が多い、排尿時に痛みがある、尿や精液に血が混じるなどの症状がみられます。さらに進むと骨などに侵攻し、臀部や腰の骨などに転移して、転移後は骨痛などの症状が現れる場合があります。
自覚症状がない分、早期に発見するためには、前立腺がん検診を受けるなどの方法で、見つけることをおすすめします。
発生の要因は、近年では前立腺がんの家族歴による場合もあるといわれています。欧米では、遺伝性の前立腺がんが5%~10%と報告されています。例えば、父や兄弟に、前立腺がん患者が一人居る場合、リスクが2倍になり、2人いる場合は5倍のリスクがあるとされる研究も行われています。
また、加齢が原因となる男性ホルモンのバランスの変化も、前立腺がんが発症する要因の一つだといわれています。60歳以上の男性に特に発症例が多く、年齢の増加とともに、発生数も増加しているといわれています。
30代、40代と働き盛りの年代は、仕事の疲れやストレスで、射精する回数が20代のころに比べて、少なくなっている人がほとんどです。前立腺がんが発症しやすい40~60代に向けて、30~40代から射精回数に気をつけてみることは、前立腺がんの予防にもつながる場合もあります。
自分の1カ月の射精回数は何回くらいなのか、調べている人は少ないでしょう。これを機会に、果たして何回くらいあるのか、意識してみるとよいですね。