体外受精の中の顕微授精は、最終的な方法として考えられているものです。そのため医療的な技術が必要です。また費用の面でも慎重に考えていきたい方法。男性、女性それぞれに問題があっても、顕微授精は条件を満たしていれば治療は可能といわれています。
顕微授精は、不妊治療の最終ステップといわれています。タイミング法、人工受精、体外受精と進めていって、効果が出なかった場合に行われる方法です。顕微授精は、取り出した卵子の中に直接精子を注入させて、受精した卵子を子宮にもどす方法で、医療的にもとても高度な技術が必要です。そのため費用の面でも今までの治療よりも高額になります。
また不妊治療は基本は健康保険の適用外で、自己負担ですが、顕微授精は、「特定不妊治療」に該当しており、各自治体(確認要)で助成金が出るようになってきています。いろいろな条件(年齢、所得ほか)ありますので、確認してみましょう。また2016年以降民間の生命保険会社でも、不妊治療適用のものを扱い始めていますので、確認してみてもいいでしょう。
顕微授精は、「卵細胞質内精子注入法」とも呼ばれていて、顕微鏡をみながら、卵子に直接精子を注入する方法です。この方法は体外受精でも妊娠できなかった場合や、女性不妊、男性不妊でも、受精の可能性がとても高くなりました。ステップ法でいくと最後の方法ですが、男性の不妊が重度であったり、女性の年齢などを理由に、医師との相談で先に行う場合もあります。
不妊治療での最終段階で行う方法です。体外受精は卵子と精子を体外に取り出して受精させる方法なので、自然に任せての受精ということもあり、うまくいかないことも。顕微授精では、精子をひとつ人間が選び人間の手で受精させる方法なので、可能性が高くなります。
ただしこの場合も全て受精するわけではありません。また人間が顕微鏡で、形態や運動能力などをみて選びますが、精子に問題があった場合、それをも引き継いでしまうというリスクもあります。
顕微授精の場合精子がひとつあれば、受精の可能性があります。精子の数は自然妊娠の場合はある程度の数が必要となります。ただし精子の数の検査などは、とても不正確で不安定なものです。
顕微授精では、ひとつ精子があれば、卵子に注入することができますので、男性不妊にも有効な方法だといえるでしょう。ただし精子の質に問題がある場合もありますので、全てが受精するわけではありません。
精子の数が5万~10万個/mlと少ない場合(重症乏精子症)、あるいは射精精液の中に精子が確認できない、「無精子症」である場合(精巣内や精巣上体に精子確認あり)には、顕微授精以外の方法では、受精不可能なため始めから顕微授精を行います。ただし基準の数や条件などは異なりますので、担当の医師とよく相談して進めていくことが必要です。
精子の形状に異常がみられたり(奇形、先体)、精子の動きがよくない(50%)場合も顕微授精を実施します。また女性の年齢などで卵子の受精能力が低かった場合でも適用対象となります。
精子の状態の基準や、女性の受精障害の基準も病院により異なります。また過去の治療歴などにより対象の基準が異なることがありますので、担当医と相談して顕微授精に進むべきかを決定していきましょう。
顕微授精の治療方法は、体外受精の方法の流れと基本的には同じです。卵子と精子を採取して、顕微鏡で確認しながら卵子に精子を注入し受精の確認ができたら、子宮のなかへ受精卵を移植し着床の確認と妊娠の判定となります。質のよい卵子を採卵できるように、準備段階でホルモン剤の投与を行ったり、排卵誘発剤を投与する場合があります。
卵子が成熟したタイミングで採卵をします。排卵してからでは難しいため、排卵直前のタイミングで、膣から超音波で卵胞を確認しながら、細い針を刺して吸引して採卵するのが一般的です。その際の苦痛を軽減させるために麻酔が用いられることもあります。
またそのタイミングにあわせて、精子を採取します。院内で採取、自宅から持参も可能です。また男性不妊の場合もこのタイミングで、直接陰嚢から精子を吸入する処置がおこなわれます。どの方法で行うかは事前に相談しておきましょう。
採卵した卵子を固定した状態で顕微鏡で卵子の様子を確認しながら精子を入れたガラス針で注入していきます。今までは卵子に穴を開けての注入方法が多く、卵子へのダメージが心配されていました。
近年では卵子への影響を軽減させるため、微小なパルスをかけて卵細胞膜に穴を開けてそこから精子を注入される「ピエゾICSI」というシステムを導入して卵子にできるだけストレスをかけないような方法も取られるようになっています。
受精卵が確認できましたら、子宮に移植できる状態になるまでは、培養液の中で過ごします(体外受精と同じです)。受精卵は、培養液の中で、分割を繰り返していきます。分割が始まった受精卵を「胚」と呼びます。受精して2日後~3日後には「初期胚」となり、5日後~6日後には「胚盤胞」の状態になります。
胚の成長のスピードや形状から、グレードをつけます(ランク分け)。グレードが高い胚(受精卵)ほど、着床率が高くなるといわれています。そのため優先的にグレードの高い胚を移植していきます。
培養は専門の培養士が行います。またグレードを見分けるのも、培養士が行うところが多いので、培養士の技量、経験も重要なポイントです。
一般的に受精後5日~6日の「胚盤胞」の状態が着床前の状態です。この状態で子宮内に移植するほうが、着床率が高くなるといわれています。
ただし胚の状態や子宮内の状態をみて総合的な判断をして最終的には決定されます。受精卵を培養した際にグレードの高い胚が複数できた場合は、胚を凍結させておくことも可能です。
子宮に受精卵を移植する際は、膣からの超音波で、確認しながらカテーテルを挿入して行います。タイミングとしては、採卵した同じ周期、妊娠のしやすいタイミングを見計らって別のタイミングで行うという2通りです。
胚の移植は多胎妊娠を避けるために、1個が原則です。移植の際には、着床率を高めるために、同時にホルモン剤で、ホルモンを補充しながら行う場合があります。
また移植後は、2時間~3時間の安静が必要となりそのまま帰宅ができることが可能ですが、状態や病院によってスケジュールが異なりますので確認しておくとよいでしょう。
移植後の着床の日数の目安は、受精卵がどの状態で移植されたかで異なります。「初期胚」の場合ですと、着床までに3日~5日、「胚盤胞」の場合は1日~2日程度といわれています。胚盤胞で移植した場合は着床は自然に行われるので、着床率を高めるために子宮内膜を厚くするなどの薬を投与されることがあります。また着床の確認ができても、この時点で妊娠の確認はまだわからない状態です。
胚移植後、約2週間後に妊娠の判定が可能になります。判定のために、血液検査と尿検査を行います。妊娠すると、胎盤の組織からhCGホルモンが分泌され、尿に排出されます。それにより妊娠の判定が可能になります。
またこの時期に、吐き気や、においに敏感になる場合もあります。この妊娠初期の状態の症状は、必ず出るわけではないので、かならず医師の診断を受けることが必要です。
顕微授精の着床の確率は年齢によってかなりの差があります。受精率は、体外受精に比べとても高い確率で成功していますが、着床となりますと、年齢が上がるにつれて、とても低くなるのが現状です。30代で35%以上の妊娠率のところ、40代になると20%まで低下してしまいます。
顕微授精での受精率50%~70%台と、ほかの方法に比べて受精率が高いといわれています。移植後、着床すると妊娠になりますが、着床となると、確率は下がってしまうのが現状です。その要因は主に女性の年齢だといわれています。
25歳~33歳の女性の場合では40%ですが、それ以降年齢が上がるにつれて確率が下がります。受精率の高い顕微授精でも、着床、妊娠までの成功率は低くなります。これは加齢により着床する子宮の状態も悪くなっていくことが原因です。不妊治療は、早期に始めることが重要です。
精子の力、運動率、数の多さなどが必要とされる体外受精に比べて、精子がひとつ以上あれば、受精は人の手を借りて行うため、顕微授精はより受精の確率は高くなります。受精の際のグレードがより高くなることもあります。
ただし着床の確率は、年齢が大きく左右されるのが現状です。年齢が上がれば上がるほど確率は低くなります。着床の確率、それ以降の妊娠、出産までの確率も年齢が上がるほど低くなります。できるだけ早いうちに治療を始めることが大切です。
顕微授精での着床を成功させるためには、移植する受精卵がグレードのより高いものかどうか、また移植するタイミングにあわせて、ホルモン剤などで子宮の状態を着床しやすい状況に整えることができるかがとても重要になっていきます。
培養してしている際に、受精卵のよりグレードの高いものを選ぶことが大切です。これは培養士や担当医の技量や経験に関係していきます。
受精卵のグレードは、受精後発育していく胚の細胞分裂していく際の細胞の大きさの均一、発育のスピードなど、いろいろな基準から優秀なものを選びます。正常な胚にはひとつの細胞にひとつの核があることを確認することも必要になります。
黄体ホルモンの分泌が不足していたり、バランスが乱れている場合、子宮内膜の状態が悪くなり、着床の成立がうまくいかなくなります。
子宮内膜は着床時には、厚みがしっかりと厚く、表面が柔らかな状態になっています。黄体ホルモンの分泌量は、子宮内膜の着床状態に大きく影響します。
体外受精や顕微授精の場合に、黄体ホルモンの分泌が不足していることも多いので移植にあわせて、注射、膣座薬、飲み薬などで黄体ホルモンの投与をする必要があります。
子宮の筋肉が緊張していると、子宮本来の機能が正常に働かず、堅い状態になり着床が難しくなります。子宮はとてもデリケートな部分で、ホルモンや自律神経により、調節されています。移植の際の「不安」「あせり」「緊張」などから堅く収縮してしまうこともあります。
また冷えなどが原因で筋肉が堅くなってしまうと、血流が悪くなり子宮の状態も柔らかなベッドの状態を維持できなくなるので、極度な薄着等も気をつけましょう。
移植後の過ごし方は、まず着床させるためにも、生活習慣の見直しが大切です。移植当日だけは、安静を保ちその後はバランスのよい食事や睡眠不足をしないように、規則正しい生活を送るようにしましょう。またできるだけストレスをためないように、リラックスして過ごすことも大切です。
移植から24時間以内の入浴は、雑菌に感染する可能性があるため控えましょう。シャワーの使用は当日でも、可能です。また水泳やタンポンなどの使用も膣に傷がついている可能性と雑菌感染の可能性がありますので控えましょう。移植前の注意事項は確認しておくことが大切です。
規則正しい生活習慣は、自律神経の乱れを整えます。自律神経が整っているとホルモンのバランスもよくなります。質のよい睡眠を取れるように、移植後適度な運動を取り入れることは可能です。
長時間、体に負担がかかるほどのジョギングやテニス、エアロビクスなどの激しい運動や、重い荷物の持ち上げなどの行為は避けましょう。また体を冷やすことも血流が悪くなりますので気をつけましょう。ストレスをためない健康的な生活を送ることが大切です。
子宮を収縮させる行為は控えましょう。医師によっては、次の検診まで控えるようにいわれることもありますので、担当の医師の指示に従いましょう。
また胚移植後、妊娠初期の性交渉は、着床、妊娠に影響がある場合があるので、男性は避妊具(コンドーム)を必ず使用することが必要です。
胚移植後の喫煙は、「子宮外妊娠」や妊娠後の早産、流産のリスクが高くなるといわれています。喫煙は着床率が下がるといわれていますので、控えることが大切です。
また飲酒は胎児の発育の遅れなどがでる「胎児性アルコール症候群」を引き起こす可能性があります。また母体では、ホルモンのバランスに影響があるといわれていますので、胚移植後から控えたほうがよいでしょう。
1日3食きちんとバランスのよい食事をとるように心がけましょう。ビタミンEは黄体ホルモンの生成に大切です。意識して摂取しましょう。またほかのビタミンやミネラルなどバランスよく、主食、主菜、副菜などに取り入れるようにしましょう。
とくに葉酸は、細胞の増殖や臓器の形成にはとても大切な働きをします。食事の中に積極的に取り入れていきましょう。栄養のバランスが大切なので、偏らないように注意して食事から、着床率を上げていきましょう。
女性の年齢があがっていくにつれて妊娠の確率が下がってくるのは、事実ではありますが、絶対的な数字ではありません。卵子の質や子宮の状態は、老化していきます。妊娠を希望するのであれば、信頼のできるクリニックを見つけて、自分たちにあった治療方法を、夫婦で協力してチャレンジしていくことが大切です。