女性ホルモンをコントロールするピルは目的に応じてさまざまな種類があります。その中でも生理周期の改善、体外受精の手助けとして処方されるのが「プラノバール」。子宮内膜症の治療にも期待されているこのピルは、どういったものなのでしょうか。
おもに婦人科で処方されることがあるプラノバールは、服用するタイミングによりさまざまな効果が期待できるホルモン剤です。
体内のホルモンバランスを調整し、女性機能のひとつである排卵、つまり生理のタイミングをコントロールすることができるため、現在の体内環境を一度リセットして子宮を整え、不妊治療における体外受精の採卵までに卵子の成長をうながしてその質を高めたり、その汎用性の高さから月経過多や月経困難症、月経周期の異常、子宮内膜症や卵巣機能不全といった、女性特有の病気に対する治療薬としても処方されています。
ピルは女性ホルモン剤のひとつです。エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)のふたつを混合した総称で、低用量、中用量、高用量の3種類に分かれています。プラノバールは中用量ピルに分類されます。
生理は、体内のエストロゲンとプロゲステロンの濃度が低下した際に起こります。プラノバールを服用するとその濃度を高いまま保つため、妊娠したと脳が勘違いし、子宮に送っていた排卵の指令を止めます。そして服用をやめると、脳からの指令が再開され、次第に体内濃度を低下させて生理を起こします。結果、意図的に生理周期をコントロールできるといえます。
楽しい旅行やデートの計画を立てるときに「生理が重なるかも?」と心配になった経験がある人は多いかもしれません。早めたいときや遅らせたいとき、婦人科で相談すれば日取りに合わせた正しい飲み方を指導してくれます。
ピルは、ニキビや吹き出物の改善、PMS(月経前症候群)PMDD(月経前不快気分障害)の軽減や不妊治療薬としても期待されており、多くの女性が目的に合わせたピルを活用して生活を送っています。
基礎知識を学んだところで、プラノバールを服用することにより期待される効果について触れていきたいと思います。外に出て活発に働く現代女性にとって、悩みの種となる女性ホルモンのバランスの乱れに対し、ピルは身近な心強い味方であることを知っておきましょう。
生理の周期は一般的に25日~38日間と言われていますが、心身のストレスなどで周期がズレてしまうことがあります。生理不順や無月経を改善したい場合、一定期間の服用後にホルモン濃度の低下で強制的に生理を起こし、正しい周期に整えていくことができます。個人差はありますが、服用を止めてから2日~5日後に生理が始まることが多いようです。
出血に伴う生理痛がひどいと、普段の生活に支障をきたし、なかには寝込んでしまう人もいます。月経困難症と診断された場合、服用によって排卵を止め、卵巣の活動を抑えることで出血を少なくし、痛みを緩和することが期待できます。長く服用することで、鎮痛剤を飲まずに済む程度の痛みになるまでの改善も見込めます。
生理周期をコントロールし把握することで、結果的に避妊に関する意識と効果を得ることができますが、避妊に万が一失敗してしまった場合にもプラノバールが使われます(72時間以内)。
血中ホルモンを一気に上昇・下降させて子宮内膜を剥がし、着床を防ぐこの緊急避妊法(ヤッペ法)は身体に相当の負担がかかるため、ピルとコンドームの併用による避妊をきちんとすることが何よりも大切です。
規則的に生理がきていても、低温期と高温期に差がない場合や、高温期があまりに短すぎると、排卵が起きていない可能性があります。排卵がなければ自然妊娠は出来ません。黄体を「妊娠黄体」にするためには、高温期を保ち、プロゲステロンの分泌を増やす必要があります。
妊娠を具体的に考え始めたら、3クールほどの基礎体温を測り、自身の低温期と高温期の把握をしておきましょう。
ふたつの主要ホルモンの分泌低下による卵巣機能不全の不妊治療にもプラノバールが使われます。排卵後に服用し、不足しているホルモンを人工的に補うことで、高温期の維持により卵子の質を高めてくれます。
そのほかにも子宮内膜の厚みを増したり、柔らかくする効果が期待でき、受精卵の着床がしやすくなる状態を作り出します。子宮を整えることは、体外受精時においても妊娠しやすい体づくりにつながります。
子宮内膜症・子宮腺筋症は、骨盤内の子宮以外の場所に子宮内膜ができてしまう良性の病気です。必ずしも不妊につながるわけではありませんが、内膜が排出されず体内に残ってしまうことで、卵子が動けず卵管がつまりやすくなり、受精や着床の妨げを起こします。
プラノバールに含まれるプロゲステロンは基礎体温を上げ、症状の予防や進行を抑える働きをしてくれます。服用を続けながら、約半年ごとの婦人科検診は忘れずに受けてください。
中用量ピルは女性ホルモンが多い分、副作用が低用量ピルに比べて強く出てしまう可能性があります。服用前に、それぞれの注意点をしっかり押さえておきましょう。万が一飲み忘れてしまったときは気づいた時点で服用しましょう。ただし中用量ピルの場合は、まとめて2回分を1度に服用しないように注意してください。副作用のリスクがさらに高まってしまいます。
プラノバールに限らず、ピルの服用初期に不正出血が起きてしまうというケースは多くみられます。あまりに長く続く場合は、そのピルが体質に合っていない可能性があります。服用初期はピルに対し不安を強く感じる人もいるでしょう。気になることはメモをとり、ひとりで抱え込まずに医師へ相談してください。
吐き気や嘔吐、食欲不振などの消化器系の症状に加え、身体が妊娠初期と似た状態になっていることから、頭痛やめまい、微熱や乳房の張り、倦怠感や強い眠気など、服用により一時的な過剰反応が起こり副作用が出る場合があります。これらはピルに身体が慣れてくると次第に収まりますが、長く続く場合は早めの受診を徹底してください。
中用量ピルの服用中の飲酒は出来る限り控えてください。アルコールとの併用は禁止されていませんが、嘔吐などで効果が薄れてしまう可能性があります。そして35歳以上での喫煙についても、心臓を含む循環器系の副作用が起こりやすくなるため、禁煙、または本数を減らすなどの意識が必要です。
血管がつまってしまう血栓症は、長時間同じ体勢をとっていたり、水分が不足することで発症のリスクが高まります。仕事の合間に軽くストレッチを行ったり、こまめに水分を補給することが大切になります。普段から運動が不足しがちな場合は、休日に適度な運動をする時間を作りましょう。
なお服用中に手足の痛みや痺れ、胸の痛み、急激な視力の低下や激しい頭痛が起きた場合、血栓症が発症しているサインの可能性がありますので要注意です。
どんな医薬品も、医師から指導処方されたものであれば、自己判断で服用を止めてしまうのはNGです。ピルは特にホルモンに作用するものですから、異常があればすぐに相談することを心がけてください。パートナーとの話し合いも非常に大切なことです。
計画的な妊活は自らのライフスタイルに合わせ、ピルを上手に活用して、生理周期と子宮の環境をぜひ整えてあげてくださいね。