基礎体温をつけることで月経周期だけでなく、体の不調の原因や不妊の原因と考えられるものなどが見えてきます。その中でも、黄体機能の異常を把握することが可能です。今回は、黄体機能不全時の基礎体温のグラフなどについて、くわしく解説します。
なかなか子どもを授かれないとお悩みの人は、基礎体温を付けると乱れがあり、不妊症を疑うこともあるでしょう。不妊や体の不調にはさまざまな原因がありますが、基礎体温のグラフを継続的につけることで、その理由が見えてくることがあります。また、もし産婦人科などにかかった際に、基礎体温表を持参すると、スムーズに診察が進むというメリットも。
基礎体温の基本を再度確認し、また黄体機能不全の疑いがある場合には、基礎体温はどのような変化をするのかを知って、これからの妊活にぜひ役立ててください。
妊活中の人には必要不可欠な基礎体温の計測。正しく測ってグラフに付けられているでしょうか。ここでは、基礎体温の測り方やグラフの効果的に使い方をチェックしましょう。
基礎体温とは、体が安静の状態にあるとき、つまり生命維持に必要な最小限のエネルギーしか消費していないときに、計る体温のことです。基礎体温は、女性ホルモンの分泌量によって周期的に変化します。
そのため、産婦人科などでも、妊活のため、または避妊や体の不調の原因を調べるためなど、さまざまな用途で用いられています。
基礎体温の測り方は、朝起きてすぐにあまり動かない寝たままの状態で、婦人体温計を舌の下中心部に入れて計ります。基礎体温は、高温期と低温期の差が、0.3~0.5℃ほどと細かい変化になります。
したがって、普通の体温計ではなく、小数点以下第二位まで細かく計測できる「婦人体温計」を使いましょう。計測するときは、脇の下よりもより正確に計測ができる舌で行います。
注意点としては、毎朝できるだけ同じ時間に計測すること。これは、時間によっても体内のホルモンバランスなどが変化するため、時間がバラバラになってしまうと正確な数値が計測できないのです。また、あまり動かない状態での計測を心がけましょう。
基礎体温を継続的に計りグラフ化することで、体温が高めの「高温期」と、体温が低めの「低温期」の期間や温度差などを把握できます。それによって、生理予定日や排卵日などの妊娠しやすい時期など、自分の月経周期を知ることができます。また、グラフの特徴をつかむことで、不妊などのさまざまな原因を見つけられます。
基礎体温は、微妙なホルモンバランスによって左右されるほど繊細なものなので、睡眠不足やアルコール摂取などによっても、正確な数値が測れない場合もあります。そのため、普段とは違うことに心当たりのあった場合は、メモとしてグラフと一緒に書き込んでおくことで、あとで見返したときに参考になります。
最近では、基礎体温を管理できるアプリなども多く開発されているので、自分に合ったベストな記録方法を見つけて、気軽に継続できるようにしましょう。
不妊症の原因の一つの黄体機能不全は、基礎体温からその可能性は見えてくるのか?以降で確認していきましょう。
女性ホルモンには、卵胞ホルモンと呼ばれる「エストロゲン」と、黄体ホルモンと呼ばれる「プロゲステロン」の2種類のホルモンがあります。排卵が起こったあと、次の生理までに分泌されるのが黄体ホルモンで、脳の体温中枢に働きかけるため、この時期は体温が高温相をあらわす「高温期」となります。
また、妊娠した場合に、体温がずっと高温期を示すのは、黄体ホルモンによるものであるといわれています。
基礎体温のグラフから、さまざまな隠れている病気が見つかる場合がありますが、黄体機能不全もその一つです。黄体機能不全とは、黄体ホルモンの分泌が不足したり、黄体の機能が低下したりする疾患です。
黄体機能不全の疑いがあるときのグラフの特徴には、以下のものが挙げられます。
・通常2週間ほど続く高温期が、10日以内と短い期間で終わってしまう
・排卵期を過ぎても、高温期に入るのに3日以上と時間がかかる
・高温期に体温がガタガタと安定しない
高温期が短くなる原因として、体や子宮の冷えることで、卵胞の成長や排卵が遅れて、黄体ホルモンの分泌が悪くなっていると考えられており、排卵が起こっていない場合もあるようです。また、高温期に入るのに時間がかかったり、高温期の体温が安定しないのは、体の冷えや血行不良、生殖機能の低下や栄養の偏りが原因といわれています。
正常な基礎体温のグラフは、以下のような条件を満たしています。
・低温期と高温期の2層に分かれており、その差は0.3~0.5℃ある
・高温期の期間が12~14日ほど続く
・低温期から高温期への移行が1~2日程度
低温期内や高温期内での温度の変動は、0.1~0.2℃ほどといわれています。しかし、低温期と高温期の差が0.3℃以内の場合は、黄体機能不全が疑われます。この場合の原因も、体の冷えや生殖機能の低下といわれており、黄体ホルモンの分泌が悪くなっていると考えられます。
いずれの場合も、体や子宮の冷えが大きく関わっていることが多く、やはり冷えは女性にとって大敵であるといえます。
黄体機能不全は不妊の原因になるといわれているのには、どのような理由があるのでしょう?
黄体ホルモンは、20代~30代で分泌量のピークに達し、それ以降は減少していくといわれています。黄体ホルモンには、妊娠を助けたり、受精卵を着床しやすい状態にしたりする働きがあるので、排卵日前後は妊娠しやすいといわれています。
黄体ホルモンの分泌は多すぎても少なすぎても、それぞれに問題があります。このホルモンが多く分泌されている時期は、人によっては腹痛や腰痛など、体の不調なども出る場合もあり、それらの症状が重くなると月経前症候群(PMS)と呼ばれます。
一方で不足すると、卵胞が未熟で排卵障害が起こったり、子宮内膜が厚くならないので、受精卵が着床しにくかったり、多嚢胞性卵巣症候群のリスクが高まるといわれています。
ホルモンの分泌量がピークになる20代~30代は、女性にとってもさまざまなライフイベントなども重なります。多忙による睡眠不足や、ストレスによるホルモン分泌量の低下、ダイエットなどによる栄養の偏りなどで、ホルモンバランスが崩れやすくなるといわれています。
また、「隠れ冷え性」も増えています。朝起きぬけに、脇に手を挟んでみてください。とても温かいと感じるはずですが、下腹部や腰回りはいかがですか?脇よりも冷たいと感じる方が多いと思いますが、実はこれは、体が冷えている証拠。その場合、就寝時にもレッグウォーマーで足首を温めたり、腹巻などで腰回りが冷えないような対策を取ったりしたほうがよいかもしれません。
このような外的要因のみならず、卵巣の障害やホルモンの作用不足などの内的要因など、さまざまな原因が重なり合っています。
黄体機能不全が疑われる場合は、基礎体温以外にも症状が出ていることもあります。生理の時期ではないのに出血してしまう、不正出血がある「機能性出血」もその一つで、卵胞ホルモンと黄体ホルモンのバランスが崩れることにより起こります。
また、妊娠を望んでいるにもかかわらず、1年以上妊娠できない場合は不妊症とみられ、黄体機能不全が原因となっている場合もあります。妊娠はできるものの、妊娠成立後に胎児の成長が止まってしまうなど、流産を繰り返してしまうことを「不育症」や「習慣性流産」と呼びます。
妊娠初期の流産の6割は、染色体異常によるものといわれていますが、2回以上繰り返す場合は、不育症の疑いが考えられます。黄体機能不全の場合は、子宮内膜が厚くなりにくく着床しにくいため、これらの原因となっていることもあります。
基礎体温表などから黄体機能不全が疑われる場合、どのように対処すべきかを見ていきましょう。
黄体機能不全の疑いがあるときは、婦人科や産婦人科で詳しい検査を受けましょう。検査は高温期に受けますが、基礎体温からも高温期がはっきりとわからない場合は、前回の生理から20日前後のタイミングで受診してみましょう。黄体機能不全だけを調べられる病院もあるようですが、ほとんどの場合、不妊症の検査の項目の一つとして調べているようです。
一般的な検査としては、問診、血液検査と内診になります。黄体機能不全は、血液検査でわかるものになりますが、そのほかの不妊症検査としては、子宮卵管造影検査や感染症検査、超音波検査などがあり、病院によってその項目はさまざまです。
検査費用も病院やクリニックによってばらつきがありますが、保険適用外の項目などもあるため、20,000~30,000円ほどかかる場合が多いようです。
黄体機能不全の治療は、卵胞の成長を助けきちんと排卵をさせる、または、足りない黄体ホルモンを補充するという、大きく分けて2種類のものがあります。卵胞の成長を助ける場合は、内服薬の排卵誘発剤やホルモン製剤の注射などで、排卵までをサポートします。一方、足りない黄体ホルモンを補充する場合も、体内で黄体ホルモンの働きをする内服薬や膣剤、貼り薬などが処方されます。
また、漢方や鍼灸などでも改善が見込めるので、まずは気軽に専門家に相談しながら、自分に一番合った治療法で取り組んでいけるとよいですね。
クリニックや服薬による治療法と並行して、日常生活のなかでも、自分で気を付けることで取り組める改善方法があります。
・ストレスをためない
・規則正しい生活で十分な睡眠を確保する
・湯船につかったり、冷たい食べ物や飲み物は極力避け、体が冷えることを防ぐ
・過度なダイエットは控え、栄養バランスの摂れた食生活を心がける
基本的なことですが、少しライフスタイルを見直すだけでも、体調や体質の改善は見込めるので、薬の効果も出やすくなったり、よい結果を得ることを期待できます。
黄体機能不全や不妊の原因となるものを見つけるには、まずは基礎体温を付けることが近道です。基礎体温を付けて自分の体と向き合うことで、さまざまなトラブルの原因も見えてくるので、ぜひアプリなども活用しながら、継続的に付けていってくださいね。