子宮ガンや乳ガンなどは、女性特有の病気として有名ですが、「子宮肉腫」という病気は聞きなれない病名ではないでしょうか。子宮肉腫は病症例が少なく、情報量も少ないのです。診断が難しいといわれる子宮肉腫は、どのような病気なのでしょう。
子宮肉腫とは、主に子宮の筋肉にできる「悪性腫瘍」です。婦人科系のガンの中では、発症例があまりなく、子宮体ガンと診断される人が年間約10,000人であるのに対して、子宮肉腫と診断される人は年間約800人といわれています。そのため認知度が低いので、実際に診断されたり疑いがあったりする場合、とても不安になってしまいますね。
命にかかわるといわれる子宮肉腫。早期発見早期治療をするためにも、子宮肉腫の症状の特徴や発見するための検査、治療方法などを知っておきましょう。
子宮肉腫の症状には、どのようなものがあるのでしょう。また、発症率や治療後の再発率は、どうなっているのでしょうか。
子宮肉腫は子宮体部に発生する悪性腫瘍で、その発生頻度は子宮体部に発生する悪性腫瘍全体の8%程度と低く、希少性が高いといわれています。そのため病症例が少なく、臨床試験などの研究が難しいため、十分な治療方法が確立されているとはいえません。
また、40代~60代の女性に発生しやすいといわれているため、加齢によってリスクが高まるとみられています。そういったことから、エストロゲンが原因の一つではないかといわれていますが、今の医学では、なにが原因かというはっきりした答えは出ていません。
子宮肉腫は初期症状がほとんどないため、発見が遅れることが多い病気です。進行すると、徐々に症状が現れはじめ、不正出血や下腹部痛、下腹部の圧迫感や違和感などが、最も多くみられる症状だといわれています。
これらの症状は、婦人科系の病気のほとんどのものに該当するため、生理痛や月経前症候群(PMS)と勘違いしてしまい、見過ごされてしまうことが多くあります。不正出血や下腹部痛などは、婦人科系の病気を知らせるサインです。こういった症状がみられた場合は、婦人科で受診するようにしましょう。
子宮肉腫は、一般的に「予後が悪い」と考えられています。つまり「再発率が高く」「生存率が低い」ということです。また、子宮筋腫の症状ととても似ているため、専門的な検査でも見分けることは難しいとされています。
そのため、良性腫瘍である子宮筋腫の可能性が高くても、悪性腫瘍や子宮肉腫の疑いが少しでもある場合は、早い段階での治療なら生存率が高くなるため、手術をすすめられることが多いようです。治療しても再発率が高い理由は、婦人科系のほかのガンと比較して、効果的な治療方法がはっきりしていないためです。
初期段階で子宮肉腫を見つけることができると、症状が進んでいる状態よりは生存率がぐっと上がります。よって、まずは自身の身体の変化を見落とすことなく、早い段階で婦人科で受診するようにしましょう。
子宮肉腫には3種類あり、それぞれの特徴があります。ここでは、発症しやすい患者の年齢や治療方法、生存率など、タイプによる違いをみていきましょう。
子宮ガン肉腫はミューラ管混合肉腫とも呼ばれ、3種類のガンの中では、もっとも子宮体ガンに性質が似ているといわれています。発症の割合は、子宮肉腫の約半数を占めており、子宮の内側にポリープのような突起がみられることが多いようです。
転移しやすい部位は、骨盤リンパ節、傍大動脈リンパ節で、発症は60歳以上の女性に多いことが特徴です。子宮体ガンに性質が似ていることから、治療は子宮体ガンと同じ方法で行われます。再発部位については、骨盤外での再発がみられることが多いようです。
子宮平滑筋肉腫は、良性である子宮筋腫の症状と似ているため、良性、悪性の判断が難しく、悪性度不明な平滑筋腫瘍として、手術をすすめられることが多いようです。発症の割合は、3~5割を占めており、発症は50歳前後の女性に多くみられることが特徴です。
転移しやすい部位は肺であり、リンパ節への転移はあまりみられないことが多いです。なお、子宮平滑筋肉腫は、抗がん剤や放射線治療では治療が困難だといわれているため、ガンの増殖をくいとめることができず、子宮ガン肉腫より再発率が高いとされています。
子宮内膜間質肉腫は、平滑筋肉腫と同じで、良性の子宮筋腫と見分けがつきにくいといわれています。発症の割合は、1~2割を占めており、発症は60歳前後の女性に多くみられることが特徴です。
子宮内膜間質肉腫は、低悪性度子宮内膜間質肉腫と、未分化子宮内膜間質肉腫の二つに分けられます。低悪性度子宮内膜間質肉腫は、三つの子宮肉腫の種類の中でも、予後の度合いがよいとされています。また、3種類のタイプの中で、唯一ホルモン療法が有効とされています。
子宮肉腫は、子宮筋腫と共通の症状があり、専門的な検査をしても見極めが難しいといわれています。見分け方の違いには、どのようなものがあるのでしょうか。
子宮筋腫は子宮筋に発生する良性腫瘍で、女性全体で10~30%に発症する婦人科系の病気で、ありふれた類に入ります。子宮筋腫は命の危険が少ないため、治療をしなくてもよいケースがあるほどです。逆に、子宮肉腫は、子宮筋に発生するという部分では子宮筋腫と同じですが、子宮筋腫の良性腫瘍とは違い、悪性腫瘍で生命を脅かす危険性が高いケースがほとんどです。
そのほかに、子宮筋腫と子宮肉腫の違うところは、血中のLDHが、子宮筋腫は通常と変わらないのに対して、子宮肉腫は正常値より高くなること。また、増殖の速さは、子宮筋腫はゆっくりなのに対して、子宮肉腫はスピードがあるというところでしょう。
子宮筋腫の場合、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が多い30代に発症が多く、閉経後は小さくなっていくケースが多いのですが、子宮肉腫の場合は、閉経後も腫瘍が大きくなっていくケースがほとんどです。
そのため、閉経後に腫瘍が大きくなる場合は、子宮肉腫であると判断する可能性が高くなるでしょう。
子宮筋腫と子宮肉腫の症状の共通項は、下腹部痛や不正出血等ですが、子宮筋腫の症状はそのほかに、重い生理痛や生理時の出血の異常、ひどい貧血などがあり、症状としては子宮筋腫より強く出る場合もあるようです。
しかし、人によっては、子宮筋腫も子宮肉腫も全く症状がない場合もあるため、確実に見分けがつくというわけではありません。
子宮肉腫の診断はどのような検査でわかるのでしょうか。ここでは一般的に行われる子宮肉腫の検査方法である4種類をみていきましょう。
【参照リンク:http://cancerinfo.tri-kobe.org/pdq/summary/japanese.jsp?Pdq_ID=CDR0000257805】
指を膣内に挿入し、子宮や卵巣の大きさ、形や位置などを調べます。子宮が肥大していたり、奇形になっていたりするなどの異常がみられた場合は、次の段階である精密検査をすることになります。
子宮頚部と膣の表面から、優しく細胞をこすりとって顕微鏡で観察し、異常や悪性腫瘍でないかなどを調べます。これにより、子宮肉腫の可能性が高いと判断された場合、組織を採取する検査をすることになります。
超音波による検査は、超音波振動子を膣内に挿入し、エコーを生じさせることによって、身体組織の画像を抽出する方法です。それにより、良性腫瘍なのか悪性腫瘍なのかを特定したり、どこかに転移していないか、子宮肉腫の場所をみるなど、画像をチェックすることで確認ができます。
子宮頚部を拡張させて、スプーン状の器具を膣に挿入し、異常な組織をかき出します。それを顕微鏡で観察し、疾患の兆候を調べます。基本的に、麻酔は使わない場合が多いようですが、我慢ができないような痛みや出血がある場合は、麻酔を使うこともあるようです。
子宮肉腫の治療方法は、どんな方法があるのについて解説します。
子宮肉腫の治療は、子宮の全摘出や卵巣・卵管の切除、リンパ節をとり除くなどの手術が、治療の中心になることが多いようです。これらは、おおがかりな外科手術になるため、排尿や排便が困難になったり、更年期障害に似た症状が出たりすることがあります。
放射線治療には2種類の方法があり、身体の外からX線を照射する「外照射」と、身体の中にプラスティック製のチューブを挿入して、そこからX線を照射する「近接照射」があります。
どちらも悪性の細胞を傷つけて、小さくすることを目的とする治療です。痛み自体はないようですが、食欲がなくなったり、吐き気がしたり、嘔吐が続いたりなどの副作用が起こることが多いといわれています。
抗がん剤治療は、内服や注射により悪性の細胞を破壊したり、増殖を防いだりする効果があります。手術や放射線治療とあわせて行うことが多いのですが、正常な細胞まで影響が出やすくなります。
白血球や血小板の減少のため、免疫力がいちじるしく落ち込み、髪の毛や眉毛、まつげなどが脱毛したり、吐き気などの副作用が起きたりするといわれています。
子宮内膜間質肉腫の場合、3種類ある子宮肉腫の中で唯一、女性ホルモンの「プロゲステロン」を投与するホルモン治療が、有効であると考えられています。
ホルモン療法は、手術したあとで再発した場合や、進行症例に対して用いられることがあります。
子宮肉腫の症状は、はっきりと特徴があるわけでもなく、見過ごされることが多いといわれます。見過ごさないポイントとしては、不正出血や下腹痛などの自身の身体のサインに気づくことが重要でしょう。
子宮肉腫は、命の危険がある悪性腫瘍です。認知度もなくインターネットでも情報が少ないため、ほとんどの人がどんな病気なのかわからずに、子宮肉腫の発見が遅れることもあります。早期に発見をして、タイプに合った治療をいち早くすることで生存率も高まります。
「自分は大丈夫」「不正出血くらいだし」などと思わず、普段と少しでも違うことがあったら、婦人科で受診しましょう。また、定期的な婦人科検診を行うことで、早期発見をすることもできます。年に一回、誕生日や何かの記念日などの忘れない日に、検診日とするのもよいかもしれませんね。