2018.08.09

子宮内膜増殖症の治療で妊娠力を上げる。症状や治療法などを解説

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女性の間で増えている子宮内膜増殖症。婦人科系の疾患のなかでもとくに重症化しやすく、注意が必要です。不妊につながらないために、初期症状のうちにきちんと治療することが大切です。子宮内膜増殖症の症状や原因、治療法について詳しくお伝えします。

子宮内膜増殖症の症状や原因、治療法などを詳しく解説

重症化すると不妊に至る可能性がある子宮内膜増殖症。日本でもここ数年とくに増えており、患者数の推移が欧米諸国並みに高まっています。

子宮内膜増殖症の原因には女性ホルモンが深く関わっていると考えられており、子宮体がんの前駆症状であるともいわれています。子宮内膜増殖症を重症化させないための対処法について、医学的なデータをまじえつつご紹介していきます。

子宮内膜増殖症について

子宮がんや子宮頸がんなどと違い、ポピュラーな病気として知られている子宮内膜増殖症。早期発見が早期治療につながることはいうまでもありませんが、初期症状を見逃さず、重症化しないうちに対処するにはどのようなことに注意すればよいのでしょうか。

子宮内膜が異常に厚くなってしまう

子宮内膜増殖症は、細胞への影響がどの程度進んでいるかによっていくつかのパターンに分類されます。まず、細胞そのものの変型が見られるかどうか、ということがひとつのポイントとなり、医学的には「異型あり、異型なし」という分類になります。子宮内膜増殖症の医学的な分類は以下の通りです。

  • 単純型子宮内膜増殖症
  • 複雑型子宮内膜増殖症
  • 単純型子宮内膜異型増殖症
  • 複雑型子宮内膜異型増殖症

一般的に、細胞の異型が見られ、なおかつ複雑型であるほど重症度が高く、治療が難しくなるといわれています。もちろん、複雑型であっても初期症状のうちにきちんと治療すれば完治の確率が高まるため、少しでも異常を感じた段階ですみやかに専門の医療機関を受診しましょう。

細胞の崩れ方でいくつかの種類に分けられる

子宮内膜増殖症の分類には大きく、単純型と複雑型に分けられます。さらに細かい分類として異型なし(細胞への影響が見られない)、異型あり(細胞への影響が見られる)という区分があり、異型ありのなかでも細胞の破壊が進んでいるほど治療プロセスが複雑化し、完治させることが難しくなっていきます。

子宮内膜増殖症の診断にあたっては腹部超音波検査や組織診断、子宮内膜全面検査などが行われます。

異型ありの子宮内膜増殖症

子宮内の細胞が不均一になり、大きさや結びつきが不ぞろいになっている状態を「子宮内膜異型増殖症」と呼び、異型なしの子宮内膜増殖症とは明確に区別されます。

異型ありの子宮内膜増殖症は異型が見られないパターンよりもがんに至るリスクが高く、子宮体がんの前駆症状として早期治療の重要性が叫ばれています。

異型なしの子宮内膜増殖症

子宮内の細胞が均一で、損傷の範囲がそれほど広がっていない状態は異型なしと分類され、異型ありのパターンとは別のアプローチが講じられます。がんに至るリスクで見ると、異型なしのパターンでは異型ありにくらべてがん化するリスクが低く、およそ6割が自然消滅的に治癒していく傾向があります。

そのため、異型が見られない子宮内膜増殖症では自然治癒を期待して経過観察がつづけられる場合がありますが、異型なしのパターンであっても1%から3%の確率でがん化することが知られており、どちらのパターンでもこまめな通院がポイントとなります。

異型ありのものは3割以上が子宮体がんに進行

細胞が不均一な「子宮内膜異型増殖症」ではそのうちのおよそ3割以上が子宮体がんへ移行するといわれており、異型なしのパターンと比べて早期治療がとくに重要であるとされています。

子宮内膜異型増殖症から子宮体がんに移行すると細胞の損傷が進んでいるために完治が難しくなり、不妊につながるリスクが高まります。

子宮内膜増殖症の初期症状としては不正出血がわかりやすく、月経でもないのに陰部から原因不明の出血が見られ、長期間にわたってつづく場合には決して軽視せず、早いタイミングで病院に行くようにしましょう。

異型のないものは60%が自然治癒できる

異型が見られないパターンでは、およそ6割が治療を必要とせず、一定期間で自然治癒するとされています。そのため、子宮内膜増殖症の治療においては初期診断が重要となり、異型が見られるのか見られないのかを正確に見分けることが治療プロセスのポイント。

異型なしと異型ありでは初期症状に大きな違いはありませんので、ここ最近原因不明の出血が増えた、下腹部のあたりが妙に痛む、などの異常が見られた場合には我慢できる範囲であってもすぐに専門医の診断を受け、正しく対処していきましょう。

月経不順や無月経または40代50代の方に起こりやすい

子宮内膜増殖症の大きな原因は、女性ホルモンの乱れ。とくにエストロゲンの過剰分泌によって発症リスクが急激に高まるとされています。

年代別に見てみると、月経不順が起きやすい40代や月経が終わりに近づく50代の女性に多く、ホルモン療法を長期間にわたってつづけている場合には発症の確率がさらに高まるというデータがあります。

子宮内膜増殖症の症状

早期発見、早期治療のためにはまず、子宮内膜増殖症のおもな症状と特徴について理解することが大切。ここでは特に注意したい初期症状についてお伝えいたします。

不正出血がある

子宮内膜増殖症では子宮内膜が異常に分厚くなり、そのために周囲の組織を傷つけ、原因不明の不正出血を引き起こします。

閉経前の女性ではただたんに月経による出血が増えたと錯覚しがちですが、放置していると重症化しがんに至る可能性が高まるため、たとえ閉経前であっても普段の出血量について把握し、正常な生理周期を記録しておくことで異常を早い段階で感知することができ、早期治療にもつながります。

また、閉経後の大量出血はほとんどの場合何らかの婦人科系疾患の兆候と考えられますので、閉経しているにもかかわらず不正出血が続く場合にはすぐに婦人科を受診するようにしましょう。

月経量が増える

子宮内膜増殖症のわかりやすいサインとして、「月経時の出血量が急激に増える」ということが挙げられます。

子宮内膜増殖症では子宮内膜が急激に分厚くなり、余分な内膜がはがれ落ちやすくなるためで、月経の異常から病気に気づき、早期治療に結びついたというケースも決して少なくありません。

貧血がひどい

子宮内膜増殖症によって出血量が増えると、必然的に体内の鉄分が不足し、慢性的な貧血状態に陥ります。この場合、貧血を解消したとしても根本的な原因を取り除いたことにはなりませんので、出血量が極端に多い場合には安易に自己流で対処せず、出血の背景にはなにがあるのかをきちんと突き止めたうえで対応しましょう。

子宮内膜増殖症となる原因

子宮内膜増殖症は決して原因不明の病気ではありません。子宮内膜増殖症に至る原因をきちんと知っておくことで早期発見につながり、重症化させないための医学的な対処法について把握することができます。

ホルモン補充によるもの

更年期障害などの治療としてホルモン補充療法を継続している女性は、子宮内膜増殖症の発症リスクが高まるといわれています。ホルモン補充療法によって女性ホルモンのバランスがくずれるとエストロゲンの過剰分泌につながり、子宮内膜の増殖にブレーキが利かなくなることも。

これがいわゆる子宮内膜増殖症であり、ホルモン補充療法を続けている女性はとくに月経周期や出血量をこまめにチェックする必要があります。

黄体機能不全によるもの

女性の月経周期をコントロールするうえで重要な役割を担う黄体ホルモン。この黄体ホルモンが正常にはたらかなくなり、黄体機能不全とよばれる状態になると、女性ホルモンのバランスが大幅に乱れ、子宮内膜増殖症を発症しやすくなります。

多嚢胞性卵巣症候群によるもの

卵胞の発育に時間がかかり、卵子を体内でつくりにくくなる多嚢胞性卵胞症候群(PCOS)。ホルモンバランスの乱れが背景にあるとされており、無月経や稀発月経(月経の頻度が少なくなる)、無排卵周期症などの疾患につながるリスクが高く、放置すると不妊に結びつく可能性もあります。

生理不順やホルモンバランスの乱れによるもの

女性ホルモンは非常にセンシティブにコントロールされており、ちょっとしたストレスによってもバランスが大きく乱れています。

また、慢性的なストレスは生理不順や女性ホルモン以外のホルモンバランス異常につながりやすいため、普段から過労や不眠で悩んでいる女性はまずストレスを軽減することからはじめる必要があります。

子宮内膜増殖症の検査

子宮内膜増殖症の検査は痛みもほとんどなく、簡単な検査で診断を確定することができます。子宮内膜増殖症の検査方法についてくわしく掘り下げていきます。

超音波による経腟検査

初期段階の子宮内膜増殖症を診断するのに行われるのが腹部超音波検査。子宮内膜の厚さを調べるための検査で、閉経前の女性でおよそ5㎜以上、閉経後の女性でおよそ20㎜以上という数字が診断のひとつの目安となり。ただ、厚さがこれより下まわる場合でもがん化する可能性があるため、注意が必要です。

細胞診と組織診の検査

腹部超音波検査によって子宮内膜の厚さが基準値以上であると見なされた場合、細胞診断および組織診断が行われ、より精度の高い確定診断に移ることになります。腹部超音波検査の段階で子宮内膜増殖症であることはほぼ判明しており、細胞診断および組織診断によって異型が見られるかそうでないかをより詳しく見分けることになります。

子宮内膜の全面掻把

細胞診、組織診断によって子宮内膜増殖症の疑いが高まり、なおかつより重篤な疾患の可能性が指摘される場合、子宮内膜を採取してさらに精密な検査を行う必要があります。全面掻把にあたっては全身麻酔がかけられるため痛みはほとんどなく、施術後の苦痛も最小限におさえられるので安心です。

子宮内膜増殖症の治療法

腹部超音波検査や細胞診断、組織診断などによって子宮内膜増殖症だと診断された場合、どのような治療プロセスが選択肢として考えられるのでしょうか。

異型なしは基本的に経過観察

子宮内の細胞の変形が見られる異型子宮内膜症と異なり、細胞がくずれていないタイプの子宮内膜増殖症の場合、その多くが自然治癒に向かうと考えられており、基本的には経過観察によって様子を見ることになります。

もちろん、経過観察のなかで病気の進行が見られた場合はただちに積極的治療を行い、手術や薬物療法などによって病変を取りのぞくアプローチがとられます。

内服で月経を起こさせて内膜を剥がす

子宮内膜増殖症のメインの治療となるのが内服療法。薬の種類はクリニックによっても異なりますが、代表的なものとしてプラノバール、ルテジオン、デュファストンなどが挙げられます。

内服療法ではこれらの薬を1日1錠から3錠、21日間にわたって毎日服用。これをひとつのクールとし、1クールごとに数日間の休薬期間を置き、同じパターンで3クール繰り返します。休薬開始2~3日後には生理と同じ出血があります。

副作用として嘔吐、吐き気、食欲不振などが見られますが、薬と合わせて吐き気止めなどを処方してもらえるので苦痛を感じることはほとんどありません。3クールつづけても症状が改善されない場合はより精密ながん検診が行われる場合があり、治療後は再発防止のための低用量ピルが処方されます。

ホルモン剤による治療

異型が見られない子宮内膜増殖症の場合、その多くが自然治癒するために病院でも経過観察がメインの対処法になります。

一定期間経過観察しても病変が縮小しない場合はホルモン剤の投与が行われ、MPA製剤を一定の期間服用することでエストロゲンのはたらきを抑制し、体内のホルモンバランスを正常に近づける治療が試みられます。

ただ、MPAには血栓症を起きやすくするという副作用があるため、過去に脳梗塞や心筋梗塞、エコノミー症候群などを発症した人には適用することができません。

異型ありで子宮体がんになっていればがん治療

子宮内膜異型増殖症と診断され、なおかつ子宮体がんへの移行が見られる場合にはがん治療に進みます。初期段階であれば腹腔鏡下手術によって完治させることが可能で、保険も適用されるため、身体的にも経済的にも最小限の負担でがんを取りのぞくことができます。

異型ありでがんでなければ基本的には子宮全摘出

子宮内膜異型増殖症で子宮体がんへの移行がまだ見られない場合、閉経後の女性であれば子宮の全摘出が選択される場合があります。子宮を切除することで病気の原因となるエストロゲンが抑制されるため、再発防止という観点から考えると有力な選択肢ではありますが、閉経前の女性にとって子宮全摘出は妊娠と出産をあきらめることと同じであり、相当な覚悟が必要です。

閉経前で妊娠を望んでいる女性に対しては子宮全摘手術に代わり、高濃度ホルモンの投与療法が選択される場合があるため、治療前に担当医と時間をかけて話し合いましょう。

子宮内膜増殖症と妊娠への影響

子宮内膜増殖症になると、女性としては子どもを産めるかどうかが心配になりますが、現代医学ではその問いかけにどのように答えているのでしょうか。

不妊や着床障害になる恐れ

妊娠とはつまり、受精卵が子宮内膜に潜り込み、着床して胎児として成長する現象です。子宮内膜増殖症は子宮内膜が必要以上に分厚くなり、炎症を起こす病気ですから、受精卵が着床しにくくなり、結果として不妊につながることがあります。

妊娠した場合も問題はない

よく誤解されることですが、子宮内膜増殖症になったとしても子宮体がんへの移行が見られるなどして子宮そのものを摘出しない限り、正常に出産することは可能で、胎児に影響が出ることもありません。

実際にかかった方や克服した方のブログを紹介

子宮内膜増殖症を実際に経験し、治療によって乗り超えた女性の体験談をご紹介します。現在進行形で治療に臨んでいる女性も、婦人科系の病気が心配になってきた女性もぜひ参考になさってください。

異型子宮内膜増殖症から子宮体がんになったBearさん

子宮内膜異型増殖症と診断され、子宮の単純摘出という治療法を選択されたBearさん。子宮摘出前は「女性ではなくなるかもしれない」という不安があったようですが、実際に子宮を摘出してしまうと女性特有のイライラ感もなくなり、気分的にも楽に過ごせるようになったと書かれています。

子宮内膜異型増殖症の特徴や治療プロセスがユーモラスな文章で綴られていますので、治療の道しるべとして読んでいくと貴重な情報源になります。

異型なしと診断され妊活に励んでいらっしゃる花さん

単純子宮内膜増殖症と診断され、現在はご夫婦そろって妊活に励んでいらっしゃる花さん。異型ありと診断されなかったのはひとつの幸運と言えますが、確定診断の前には誤診も経験されており、これから安全に治療を進めるためのメッセージが込められています。

複雑型子宮内膜増殖症から出産されたとりこさん 

不妊治療を長期間にわたり継続し、その過程で子宮内膜増殖症を発症したとりこさん。一時は悪化しかけましたが、迅速なホルモン治療に踏み切ったおかげで子宮全摘術に至らずに克服することができたようです。

少しでも思い当たる点や不安に思うことがあれば気軽に婦人科に相談

子宮内膜増殖症に気づくきっかけとして、突然の月経不順や不正出血が圧倒的であるといわれています。子宮内膜増殖症は放置すると不妊につながりかねない恐ろしい病気ですし、子宮内膜増殖症以外にも出血の原因はいくつか考えられるため、少しでもおかしいと感じたらただちに婦人科を受診し、専門医に相談しましょう。

妊活部編集スタッフ
この記事のライター 妊活部編集スタッフ

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