2018.08.09

子宮内膜炎の症状とは。正しい予防と医療機関へ早期受診のタイミング

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子宮内膜炎の原因はいろいろあります。それにより症状もいくつかに分類されます。どのようなことが原因で、どのような症状がおきるのかを知っておくことが必要です。また専門医を受診するタイミングや検査の内容、治療法なども知っておくことが大切です。

子宮内膜炎の症状や治療とはどのようなものか

子宮内膜炎は、子宮の内膜が細菌によって炎症をおこす病気です。症状は下腹部痛や不正出血、おりものの異常、発熱などがありますが、初期の段階では気づかずに放置してしまうことが多く、炎症が広がる場合があります。初期であれば、抗生物質による治療になりますが、膿などがたまってしまった場合には、排膿(手術)することもあります。

子宮内膜炎とは

子宮内膜炎は、子宮の内側にある子宮内膜という粘膜が炎症をおこす病気です。本来は、月経時にはがれて排出され、新しい子宮内膜が作られる仕組みになっています。しかし、定期的に月経がきていな場合などに、ブドウ球菌、大腸菌、連鎖球菌などの常在菌や、淋菌、クラミジア、原虫、ウィルスなどのいろいろな細菌が入り炎症を引き起こしてしまう病気です。

子宮内膜炎の症状は大きく3つに分けられる

感染する状況によって、子宮内膜炎の症状は異なります。「急性子宮内膜炎」「慢性子宮内膜炎」「老人性子宮内膜炎」に大きく3つに分けられます。症状は軽いものが多く気づきにくい人が多いですが、「下腹部痛」「性交痛」「不正出血」「排尿痛」「発熱」などが続く場合は注意が必要です。

自然治癒することもある急性内膜炎

子宮内膜の表面でおこる一時的な炎症です。月経時に子宮内膜がはがれおちるため、自然に治癒することも多くあります。

生理不順の場合は、炎症がその間に広がり卵管、卵巣、腹膜まで広がることがあります。下腹部痛や不正出血、おりものの異常、発熱が続いている場合には受診が必要です。

不妊にもつながる慢性子宮内膜炎

子宮内膜の深くで炎症をおこしていて、月経時に子宮内膜が体外に排出されないため、慢性的に炎症がおこってしまうのが「慢性子宮内膜炎」です。

急性の子宮内膜炎と異なるのは、痛みや違和感のような症状がでにくいことです。症状としては、「月経時の経血の減少」「無月経」などです。自覚症状がないため気づきにくいですが放置していると不妊の原因にもなるため早めの受診が必要になります。

加齢が原因の老人性子宮内膜炎

加齢により減少する女性ホルモンの影響でおりものなどの分泌が少なくなり、子宮や膣内の自浄作用が低下して、感染リスクが高まります。それにより膿状のおりものがでたり、下腹部痛など症状があらわれるのが、老人性子宮内膜炎です。

また閉経後には子宮内膜が外に排出されることがなくなるため、子宮内膜は再生されず、感染のリスクはさらに高くなります。また膿のようなおりもので子宮口や子宮頚管が狭くなり膿がたまり、痙攣や、激しい下腹部痛が起こることもあります。また違う病気が、隠れている場合もあるため、続く場合は早めに受診する必要があります。

子宮内膜炎の原因

子宮内膜炎の要因は「細菌感染」で、連鎖球菌、大腸菌、ブドウ球菌、淋菌、クラミジアなどです。またいろいろな状況で細菌に感染します。通常の生活を送っている場合には細菌が子宮のなかに入ることはほとんどありませんが、症状や違和感が続く場合には、早めの受診が必要です。

出産や流産による細菌感染

出産や流産をした場合、月経による子宮内膜が定期的に生まれかわっていないため、子宮口が開いていることもあり膣内からの細菌感染がおこりやすい状態になっています。

また出産後は抵抗力も弱まっているため、感染する確率も高いといわれます。出産時や、流産時の処置のさいに子宮のなかを傷つけてしまいそこから感染することもあります。

性行為による細菌染

性行為を通じて淋病やクラミジアなどの性感染症にかかり、その病原体により子宮内膜まで炎症が広がり子宮内膜症になることがあります。

これは、陰部に細菌が増えると免疫力が低下して子宮の入口の菌(正常な菌)が死滅し、細菌が内膜に侵入しやすくなる状態になることが原因です。排尿時の痛みや陰部の違和感、おりものの異常が気になる場合は、重症化する前に、早めに受診しましょう。

子宮がんによる感染

子宮頸がんや、子宮体がんなど、子宮にできる悪性腫瘍によって、子宮頚管が閉じてしまうと、子宮からの分泌物がたまることで細菌感染がおこり、子宮内膜炎になってしまう場合があります。

また老人性子宮内膜炎の場合に、子宮腔に膿がたまる子宮溜膿腫という子宮がんと似た症状の場合があるため、感染による炎症か、子宮がんによるものか確認することが必要です、

結核菌による感染

子宮内膜炎での細菌感染経路は、大部分が膣を経由して子宮に入る、上行性感染です。

結核菌は、卵管を通じて子宮内に入り込んだり、血液やリンパの流れにのり、腹腔内から卵管を経由する下行性感染です。結核は現在ではまれですが、最近結核の感染者が増加傾向にあるといわれているため、注意が必要です。

子宮内膜症との違い

子宮内膜炎と子宮内膜症は全く違うものです。子宮内膜症は子宮内にしか存在しない内膜が子宮以外のところ(卵管、卵巣ほか)にできてしまうことです。子宮内膜炎は、子宮内膜が細菌によっておこる細菌感染です。

また子宮内膜症の原因は女性ホルモンのエストロゲンの分泌との関連性があるとされています。対象年齢も30代~40代が多いといわれています。

子宮内膜炎は妊娠、出産時などの抵抗力の弱くなっているときに細菌などで感染しやすい病気です。また対象年齢もさまざで10代~閉経後までです。自覚症状が少ないのも特徴です。

子宮内膜炎の診断方法

子宮内膜炎が疑われる場合、受診する可能性があります。下腹部の痛みや発熱がある場合は、別の病気もあわせて検討していく必要があります。子宮内膜炎の診断をするために、内診や血液検査、尿検査、細菌検査のほかにさらに画像診断をする場合があります。

内診による診断

医師による問診のあとにおこなわれるのが、内診です。子宮のあたりを押して圧迫して痛みの有無や、痛みの位置を調べます。炎症をおこしていると、その部分が痛みます。

炎症が卵巣や卵管、骨盤内に広がっていると、押したときに痛みがあります。押す位置によりおおよその炎症位置が確認できます。ただし、正しく診断するためにさらにほかの検査をする必要があります。

血液検査による診断

診断を確定するために血液検査をおこないます。血液を採取して白血球(WBC)の数と赤血球沈降速度(ERS)、クラミジアの抗体など血液中の成分検査をおこない、全身の炎症の程度を調べていきます。

血液中の抗体の有無や抗体価なども調べる場合があります。また原因菌を特定するための重要な検査のひとつでもあります。

細菌検査による診断

診断を確定するためのもうひとつの検査が細菌検査です。子宮頸部や膣内のおりものを採取して、培養してさらに詳しく病原菌、原虫の有無や種類を確認するための検査です。サンプルを採る場合に、尿検査をあわせておこなうこともあります。

ここまでで確定した原因菌で今後の治療法も決まっていきます。(抗生物質の投与、外用薬)

子宮内膜炎の治療法

検査の結果、病原菌が特定されれば、それにあわせた治療法をおこなっていきます。主に病原菌にあった抗生物質の投与や炎症、痛みの状況で消炎剤や鎮痛剤などの処方になります。また膿がたまっている場合にはドレナージという処置をおこうこともあります。症状が悪化した場合には、入院での治療を余儀なくされることもあるため早めに治療を始めていきましょう。

抗生物質による治療

子宮内膜炎のもっとも一般的な処置の方法です。原因となる病原菌や原虫のはたらきを抑えたり、増殖を防ぐために合った抗生物質を使用します。このときにあわせて消炎剤や解熱剤を使用することもあります

急性の子宮内膜炎の場合は数日~1週間程度の治療で治ることがあります。慢性の子宮内膜炎の場合は長期的な治療や検査が必要となります。

抗生物質は服用や、注射、点滴とそのときの状況により治療方法がかわります。受診した際によく相談をしておきましょう。

膿をだす治療

子宮のなかに膿がたまってしまった場合は、たまった膿を体外に排出するためにドレナージとよばれる処置をおこないます。ドレーンという細いチューブで体内の膿を排出させます。

流産後や分娩後だった場合には子宮の内部に残った残留物をあわせて排出させる必要があります。またこの処置と同時に子宮収縮剤と抗生物質を投与していきます。

入院や手術による治療

子宮内膜炎の症状が悪化すると、入院での処置をおこなうことになります。入院しながら抗生物質を点滴での投与になったり、手術が必要になることもあります。

流産後や出産後などに感染症を発症して、発熱したりする場合も早急の入院での処置となります。子宮内膜炎を悪化させてしまうと、場合によっては摘出(卵巣や卵管)手術になることがあります。

無理をせずに、早めの治療を心がけていきましょう。

子宮内膜炎と妊娠

子宮内膜炎は、突発的におこる「急性子宮内膜炎」なら、次の月経時には自然に治ってしまうこともあります。一方、「慢性子宮内膜炎」の場合は毎月、あるいは次回の月経時には、はがれない深いところに原因菌等が侵入していることが多く、その結果月経不順などの排卵障害をひきおこすことがあり、不妊の原因になってしまいます。

また「急性子宮内膜炎」でも、悪化した場合には卵管炎や、骨盤腹膜炎などを併発することがあります。これにより不妊の原因になることもあります。

子宮内膜炎は妊娠できなくなる病気ではありません。違和感を感じたら早めの受診、早めの治療をすることを心がけて努めていきましょう。

子宮内膜炎を予防する

子宮内膜炎を予防するために心がけておくことは、「細菌感染の防止」です。いつも身の周りを清潔にしておくことが必要です。月経時に生理用品を長時間使用することや、性行為での避妊具の使用は避妊目的だけでなく感染予防にもなります。また普段から下着などの素材も通気性のいいものを選ぶことなどが必要です。

局部を清潔に保つ

月経時のナプキンやタンポンの長時間使用は、細菌が繁殖しやすくなってしまう原因のひとつになります。デリケートゾーンは常に清潔にしておくことが大切です。そのためにも生理用品はこまめに、交換して清潔を保つことです。

ただし膣内の洗いすぎはおりものを流しすぎてしまうため注意が必要です。おりものは、体内に細菌が侵入しないことを防ぐ自浄作用があるといわれています。洗いすぎるとその効果が低下してしまうため1日に何度も洗わないようにしましょう。

性行為ではコンドームを使用

性行為の前後では体を清潔に保つためにシャワーを浴びるなどしてきれいにしておきましょう。また避妊具は、避妊のためだけではなく、雑菌の繁殖や性感染症の予防のためにも必ず使用しましょう。

性行為によって、淋菌や、クラミジアなどの性感染症の感染は、子宮内膜炎の発症の大きなリスクが伴います。細菌を体内にいれることを防ぐために、パートナーと清潔を心がけましょう。

通気性のいい服装を

ほかの体の部分と同じように、膣や頚管にも常在細菌がいます。子宮内膜炎をおこす菌を体内に入れないためにも、通気性のいい、綿の素材のものを身につけましょう。綿素材は、細菌を繁殖させにくい素材といわれています。また敏感肌にも安心な素材です。

下半身のおしゃれには綿素材をできるだけ使用して、通気性をよくして雑菌を寄せつけないように気をつけておきましょう。

子宮内膜炎は早期治療が大切

子宮内膜炎は、初期の段階や慢性化していると、気づきにくい場合がありますが、早期に受診すれば、抗生物質の服用で治る病気です。悪化すると入院や手術、不妊の原因にもなってしまうため、おりものや月経に変化があった場合には、早めの受診がなにより一番大切です。また細菌感染から発症する病気です。日頃から身の回りを清潔に保つことを心がけていきましょう。

妊活部編集スタッフ
この記事のライター 妊活部編集スタッフ

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