妊活中に毎朝測る基礎体温。高温期がしっかりある理想的なグラフにならないと、少し焦ります。体温が上がらない原因はさまざまで、改善方法には普段の生活の中で取り組めるものがいくつかあります。体温が低いことが妊娠に与える影響も知っておきましょう。
基礎体温の記録を付けていて、ネットや書籍にあるようなキレイなグラフにならないと、すごく不安になることがあります。最初は測り方を間違えたかな、記録ミスかな、といろいろな可能性を考えてしまいますが、これが数カ月も続くとやはり基礎体温がおかしいのだと気づきます。
基礎体温は排卵や月経の周期で変化していくものですが、低温期と高温期の差がほとんどなく、基礎体温が低いままだと、妊娠にはどんな影響があるのでしょうか。ここでは、本来の高温期に基礎体温が上がらない場合に考えられる原因と、基礎体温を上げるために日常生活で気を付けたいことをチェック。基礎体温の基本的な知識も併せて知っておきましょう。
高温期の基礎体温が低いと絶対に妊娠できない、ということはありません。ただ、基礎体温が高温にならない原因のひとつとして血行不良があり、血行が悪いと排卵がうまくいかない、着床しづらい、妊娠しても継続が困難などの弊害が出る可能性があります。
ホルモン分泌の不調により高温期が低いケースだと、卵巣機能や排卵に影響が出る場合もあり、やはり妊娠しづらい環境といえます。基礎体温の高温期が低い状態は、妊活中の女性にとっては放置できない不調といえるでしょう。
まずは知っておきたい、基礎体温の基本的な知識です。
基礎体温とは、安静時=活動していないときの体温を指します。少しでも活動すれば体温はわずかに上がるため、目覚めてすぐに布団の中で測ることになります。
この基礎体温が、女性は生理周期に影響されて変化します。女性の体内では、エストロゲンとプロゲステンという2種類のホルモンが交互に増減しながら分泌されていて、基礎体温の上下に深く関わっています。
月経が終わるころに徐々に分泌量が増え始め、排卵期が近づくと急激に増え、排卵日が最も多くなります。その後、次の月経に向けて緩やかに減少していきます。主に卵巣から分泌され、子宮内膜を厚くしたり乳腺を発達させたりして、妊娠の準備をするホルモンです。
卵子を排出したあとの卵胞が放出するホルモンで、排卵日以降、徐々に分泌量が増えていきます。基礎体温を上げる働きがあるため排卵後は高温期に入ります。子宮内膜をさらに分厚くして維持するなど、妊娠を継続させる働きを持ちます。妊娠せず排卵後約14日が経過すると分泌量が減少して、子宮内膜が剥がれ落ち月経が起こります。
月経が始まると、どちらのホルモンも分泌量が少ない状態になり、低温期に入ります。
排卵日を境に、基礎体温がくっきりと2層に分かれるのが理想的な状態とされています。生理周期が標準的な28日である場合、高温期と低温期が約14日間ずつ続きます。
正常な高温期は、10日以上続き、低温期との体温差が0.3℃以上あり、低温期からの移行期間が3日以内であることが条件といわれています。グラフが2層に分かれず平坦、高温期が短い、高低の境目がはっきりしないといった状態は、正常な基礎体温ではないといえます。
考えられる原因はいくつかあります。当てはまりそうな項目を探してみましょう。
基礎体温は、冬の寒さなど気候に影響を受けることもあります。当然ですが身体が冷えてしまっていると基礎体温も低いままで、高温期でも数値が低く出てしまいます。
朝晩がとくに冷えた日や寝冷えしてしまった翌朝、冬の間だけなど、気温が低いときだけ高温期が低い場合は、意識して身体を温めるようにしてみましょう。すぐにできるのは、肌着を温かいものに替える、毛布を一枚増やす、涼しい季節に窓を開けっぱなしで寝ない、といった対策です。
高温期の体温と低温期の体温にあまり差がない場合は、排卵が起こっていない可能性があります。排卵がないまま子宮内膜が剥がれ落ちて起こる月経を「無排卵月経」と呼びます。
基礎体温を上げるプロゲステンは、卵子を包む卵胞が、排卵後に卵巣内で「黄体(おうたい)」に変化することで大量に放出されます。排卵がないと黄体ができず、プロゲステンの大量分泌が起こらないのです。無排卵月経は正常な月経と見分けがつかないため、基礎体温の低い状態が続くなら、一度婦人科を受診しましょう。
グラフの上下が激しく、低温も高温もないような結果になる場合は、基礎体温の測り方が間違っている可能性も。計測を忘れて一度起きあがってから測ったり、体温計が舌の裏にしっかり入っていなかったり、いろいろなパターンがあります。
まずは体温計の説明書などで正しい計測方法を確認することから始め、どうしてもやりにくさを感じたなら、自分の使いやすい体温計に替えることを検討してみるのもよいでしょう。
日本人の体温は36℃台後半~37℃台前半が標準といわれていて、平熱が36℃台前半以下だと「低体温」となります。低体温の主な原因はストレス、運動不足、食生活の乱れなどが指摘されていますが、どれも血行不良につながる可能性のある問題です。
血行が悪いと体温は下がり気味になります。血行の悪さから排卵や着床に障害が出て妊娠しづらい状況になる場合もあるため、妊活中はとくに、低体温を放置しないようにしましょう。
黄体から放出されるプロゲステンは「黄体ホルモン」とも呼ばれ、黄体ホルモンの分泌が上手くいかない状態を「黄体機能不全」といいます。高温期が低い・短いことや、生理期間が短い・経血が少ない・周期が乱れるなどの月経不順が自覚症状として現れます。また子宮内膜を維持することが難しくなるため、不正出血の原因にもなります。
黄体機能不全になる主な原因には、不妊治療による排卵誘発剤の使用や、特定のホルモンが異常に分泌される病気「高プロラクチン血症」などがあります。黄体ホルモンの分泌が不足していると不妊につながることが知られています。気になるなら早めに婦人科を受診し、適切な検査を受けましょう。
日頃から自分でできることを挙げています。
ホルモンバランスの乱れは冷えからくる場合も多いです。手先が常に冷たいというような明らかな冷え性でなくても、妊活中は温活に取り組みましょう。冷房除けに一枚羽織る、夏でも靴下を履くといった外側からのケアだけでなく、内側からも身体を温めるのが大切です。
飲み物は常温か温かいものを心がけ、食事には身体を温めてくれる食材を意識して取り入れます。具体的な食材には、野菜だとショウガ・ニンジン・カボチャ・ニンニク・ネギなど、肉と魚では鶏肉・サケ・サバなどがあります。豆類も温活に役立ちます。調味料には味噌やコショウ、シナモンがおすすめ。
運動不足で血流が滞ると体温が下がり気味になり、「妊孕力(にんようりょく)=妊娠する力」も低下してしまいます。激しすぎるスポーツは妊娠率が下がるという見方もありますが、適度に身体を動かすことは、妊活にとって有益です。
おすすめはウォーキングやサイクリング、ヨガなどの有酸素運動。時間をかけてゆっくりと身体を動かすことで、血行がよくなり、体温も上がる効果があります。筋力を上げることも血行促進につながるため、適度な運動を習慣にしましょう。
単純なことですが、質のよい十分な睡眠をとることも、基礎体温を上げるためには大切なケアです。睡眠不足はそれだけでホルモン分泌を司る自律神経を乱す原因となりますが、そもそも基礎体温=安静時の体温は、最低でも3時間以上は眠らないと正確な測定ができないといわれています。夜に4~5時間ほどしか眠れていないなら、毎日同じ条件で体温を測れていない可能性があります。
暴飲暴食、喫煙も血行不良の原因となり、体温が低くなることにつながります。すると当然、妊娠にも影響するということになります。この機会に、普段の生活習慣を振り返ってみましょう。
女性にとって、基礎体温は健康のバロメーター。基礎体温のことを知れば、自分の身体のことも分かってきます。ただ測って記録するだけでなく、体温の上下は何を意味するのかをきちんと理解しておくと、自覚のない不調にも早めに気づくことができます。
高温期が低い原因を探り、まずは自分でできる改善策を実践していきましょう。そうして3~4周期記録を続けてみて、それでも高温期の体温が上がらない場合は、一度婦人科の受診をおすすめします。基礎体温のグラフを持参し、妊活についての悩みや不安を相談してみてください。
自分の身体のリズムや問題点をしっかり把握できれば、妊活にもより前向きに、効率的に取り組むことができるでしょう。