子宮外妊娠という言葉を聞いたことがあるでしょうか。文字だけ見ると、いったいどのような状態なの?と不思議に思う方も多いと思います。女性であれば、決して無縁とはいえないこの妊娠について、治療方法や注意点をまじえて解説していきます。
妊娠したことを喜んだのもつかの間で、子宮外妊娠と診断されたり、または疑いがあるといわれたりすることもあります。その場合、どのような治療が必要になるのか、不安に感じる人も多いことでしょう。
この記事では、子宮外妊娠をした際にはどのような治療が行われるのか、またその治療の注意点について取り上げます。まずは正しい知識を得て、医師と相談しながら治療を受けましょう。
受精卵の状態や患者の症状によって、治療方法は大きく分けて3つあります。受精卵がまだ小さめであったり、症状が比較的軽かったりした場合には、待機療法や薬物療法での治療が行われます。しかし、受精卵がある程度育ってしまっていたり、薬物で抑えこむことが難しいと診断されたりした場合、外科的手術となるケースもあります。
受精卵が育っておらず、破裂するまでに至らない大きさであれば、そのまま自然流産となることがあります。流産と聞くと、悲しくなってしまいますが、子宮外妊娠をしてしまった際には、自然流産はもっとも望ましいとされる状態です。
卵管を傷つけることなく、薬を服用する必要もないため、母体への負担が限りなく少ない状態で、初期段階に解決をはかることができるからです。待機療法については、妊娠すると尿中に排出される、血液中のhCG(ヒト絨毛性腺刺激ホルモン)の値が低いかどうかで、経過観察を経て判断を行います。
不正出血などの症状もなくhCGの値が低い場合は、薬物療法で対応します。ここでは、卵管の細胞増殖を抑えるために、葉酸拮抗薬のMTX(メトトレキサート)が使用されます。その場合、卵管を傷つけないメリットのかわりに、抗がん剤として使われていることへの不安や、副作用へのリスクが懸念されます。
主な副作用としては食欲不振、吐き気、皮膚のかゆみ、じんましんなどがあり、とくに重大な副作用として、意識の混濁や、アナフィラキシーショックを引き起こす可能性があります。
MTXを使用した薬物療法以外に、プロスタグランジン(陣痛促進・誘発剤)を使用した薬物療法も、子宮外妊娠の治療においてはメジャーです。PG療法と呼ばれ、子宮と血管を収縮させることで卵管を虚血させ、卵管の患部内での黄体を退行させます。人工的に陣痛を誘発し、受精卵を排出させます。
しかし、喘息や緑内障などの持病がある場合は、プロスタグランジンを使用できないので、事前に必ず申告することを忘れないようにしましょう。
子宮外妊娠が再発した場合や、受精卵の大きさが5cmを超える場合、卵管が破裂などで大きな損傷を受けている場合、今後妊娠を希望していない場合などは、卵管切除術の処置をとることがあります。
超音波、またはレーザーを使用し、損傷している卵管の部分的切除を行い、卵管の修復が行えるように可能性を最大限に残しますが、結果的に修復しないこともあり得ます。
受精卵が小さく、出血も見られない場合は、卵管圧手術といった卵管の温存手術を行うことが可能です。腹部に、5~10mm程度の小さな穴を数カ所開けて、そこから腹腔鏡と呼ばれる細長いカメラで、体内を観察しながら、卵管内の受精卵を搾りだします。この方法であれば、術後でも正常に卵巣が機能する可能性を、高く保てます。
もうひとつの温存手術として、卵管圧手術では取り除けない大きさに成長してしまい、出血がみられない場合は、同じく腹腔鏡を使った「卵管線状切開術」の処置をとります。腹部に小さな穴を開けて卵管を切開し、受精卵の癒着を取り除いたあとで、卵管を縫い合わせます。ただし、どちらも手術後に卵管閉塞を発生する確率が高いため、薬物療法を行ったり、注意深く経過観察を行ったりすることが必要です。
子宮外妊娠の治療を受ける際には、いくつか知っておきたい注意点があります。ここでは、その注意点をみていきましょう。
卵管は伸びることができないため、いちばん恐れるべきことは、腹腔内で受精卵が破裂して大量出血をおこしてしまい、命に関わる状態に陥ってしまうことです。子宮外妊娠は、正常妊娠と同じようにつわりも起こります。
そのため、気を失ったり、大量に不正出血したりなどがなければ、一見すればこれも妊娠の症状だろうと、勘違いしてしまう可能性がないとは言い切れません。卵管の破裂を防ぐためにも、早期治療がカギとなります。妊婦検診のときに、日常生活のなかで異常を感じていたら、忘れずに医師に伝えてください。
待機療法や薬物療法などで、完治した場合の影響は少ないといわれています。また、温存手術であっても、その後、卵管閉塞を起こしてしまったり、子宮内膜症を同時に患っていたりすると、受精卵をスムーズに子宮へと運ぶことができず、次の自然妊娠が難しくなる可能性があります。
そのため、子宮卵管造影検査を行い、卵管の状態が現在、どのようになっているかを確認することが大切です。
もしも、診断のうえで切除手術を受けていても、卵巣はニつあります。卵管を切除してしまった側では、受精を行えませんが、もう一つの卵巣での自然妊娠は、十分に可能です。
現在では、体外受精などの高度な医療発達、それを支える医薬品も開発されていますし、卵管を切除してしまったからといって、妊娠を諦めずともよいのです。
過去に子宮外妊娠治療の経験があると、子宮外妊娠を再発してしまう可能性は、約10~15%といわれています。完全に予防する方法は、いまのところ見つかっていません。ただし、100%は無理でもリスクを減らすことはできます。
卵管障害を起こさずに、次の受精卵が無事に子宮に届くように、子宮卵管造影検査や腹腔鏡で経過を観察したり、性感染症(骨盤内炎症)の検査を行ったりして、体の状態を知り、性生活を調整することも大切になってきます。
自分は検診でひっかかったこともないので、大丈夫だと過信している人ほど病院への足が遠いものです。いざ違和感を感じてもすぐに受診につながらず、時間が経ってから症状が判明するといったケースは少なくありません。
妊娠を考えているのであれば、普段の日常生活には気にかける必要があります。不足しがちな栄養素を補ったり、運動をとりいれたり、帰宅後はなるべくリラックスして、ストレスフリーな生活を送ることも大切です。
もしも自分では対処しきれない体の異常を感じたら、できるかぎり早く婦人科などで受診することを心がけるようにしましょう。家族や友人から何か聞かれたり、言われたこともスルーせずに、「他者から見た自分」から、いまの状態を把握できるようになると、今後のライフワークにも役立つことでしょう。