昨今、子どもを授からないカップルが増えてきました。
昔に比べて晩婚化してきていることも理由として挙げられますが、他にもさまざまな原因があります。
女性だけではなく、男性側の不妊の原因を知り、自分たち夫婦に合った対策を考えましょう。
子どもを欲しいと願ってもなかなか授からない。
そうすると、なにが原因なのかいろいろと悩んでしまうこともあるでしょう。
悩みが深いとそれがストレスとなって、よけいに状況を悪化させてしまうこともあります。
不妊には「原因はこれ」というような1つの答えはありません。
原因はカップルによってさまざまであり、個人差も大きいものなのです。
まずはどのような原因が考えられるのか、みていきましょう。
「お腹が痛い」「頭が痛い」「咳が出る」のように、一般の病気には何かしら症状があります。
しかし不妊の場合には何かしらの症状があって「私って不妊かも?」と疑うことは少ないのです。
痛みもなければ、不快感があることも少なく、普通に生活ができてしまいます。
では不妊症とはなにかというと、妊娠適齢期において子どもがほしいと望み、避妊などを行わず通常の性生活をしているのに子どもが授からない状態を、総じて不妊症と呼んでいるのです。
クリニックで検査をし、原因を追及することができる場合もあれば、原因がわからない場合もあります。
不妊症とひとくくりにしていますが、原因は人それぞれに異なるのです。
「結婚してから何年くらい子どもができないと、不妊が疑われるの?」と思う人は多くいます。
クリニックを訪れる人の多くが「結婚して○年経つけれど子どもができません。
不妊症でしょうか」と尋ねますが、残念ながら検査をして調べなくても不妊症です。
一般に妊娠可能年齢の人が、避妊をしないで通常の性生活をおくっていれば、1年以内に9割くらいは妊娠をします。
そのため、不妊症かそうでないかの境となる目安は約1年といわれています。
子宮頸管とは、子宮と膣を結ぶ場所のことです。
排卵日近くになると頸管は粘液で満たされ、そのことにより精子が子宮膣にまで進むことができます。
この粘液に、分泌量が少ない、濁りがある、粘りが強いなどの問題がある場合は、精子がなかなか子宮膣にまで進むことができず、不妊の原因となるのです。
この問題点は、頸管粘液検査などで調べればわかります。
頸管の炎症が問題ならば抗生物質の投与で、粘液に問題がある場合にはホルモン剤で治療します。
子宮は受精卵が着床する、卵のベッドのような場所です。
そこに先天的な奇形があったり、病気などで問題が発生すれば、不妊や流産の原因となってしまいます。
子宮因子としては、子宮筋腫や子宮内膜症が主な病気として上げられます。
初期では症状があらわれないことが多いため、気づかないことも多いようです。
子宮筋腫の場合、筋腫が10cm以上になると不妊になりやすいので筋腫摘出などの治療が必要。
治療が困難な場合には、体外受精や顕微授精へステップアップする選択もあります。
卵管は卵子と精子が出会う場所です。
そのため、卵管が癒着や炎症により詰まっていれば当然受精することはありません。
クラミジアや腹膜炎、子宮内膜炎の既往歴がある場合には、卵管が詰まりやすくなるので注意が必要です。
卵管因子の原因は子宮卵管造影法により調べることができますが、正診率は8割ほどといわれています。
そのため他の検査でも異常がないのに妊娠しない場合は、卵管の癒着が疑われます。
癒着した卵管を治療する方法としては、通水治療や手術による癒着剥離術や卵管形成術があります。
それでも妊娠しなければ、体外受精や顕微授精にステップアップとなります。
不妊の原因の1つに精子を攻撃してしまう免疫因子があります。
聞き慣れないですが坑精子抗体という免疫の異常がある場合、体内に入った精子を異物として認識し攻撃してしまうのです。
そのため精子は卵子と出会うことができず妊娠できません。
仮に卵子まで到達できても、抗精子抗体により受精できません。
この免疫機能の異常は、なぜそのようなことが起こるのかまだ原因が解明されていません。
そのため不妊治療は多くの場合、体外受精や顕微授精となります。
また抗精子抗体は、女性だけではなく男性にも起こりえます。
排卵に障害がある排卵因子の不妊があります。
女性は卵巣に一生分の卵子を蓄えています。
そして毎月1つの卵子が成熟し、卵巣から飛び出します。
この排卵により卵子は精子と出会い受精するのです。
そのため排卵が行われなければ受精することもありません。
排卵障害が起こる原因にはホルモンバランスの崩れがあります。
ホルモンを分泌するのに大きな役割を担っている視床下部、下垂体、卵巣のどこかがうまく働かなければ障害が起きてしまうのです。
排卵障害の場合、月経不順により問題に気がつくことが多いため、もしも気になるようでしたら放置をしないで早めに排卵障害の検査を受けるとよいでしょう。
不妊治療は、排卵誘発剤などの薬物治療がメインです。
乏精子症とは、精子の濃度が低かったり、精子の絶対数が少ない症状をいいます。
通常は多くの精子の中から優れたものだけが膣に到達することができますが、精子の数が少ないために膣まで達することができず、不妊の原因となります。
重度の症状の場合には顕微授精を行います。
軽度から中度の症状でホルモン分泌の異常が原因の場合には、ホルモン療法によって症状を改善します。
その場合には、状況により人工授精が可能です。
動いている精子が少なかったり、高速で直進する精子の力が少ない症状を精子無力症といいます。
精子は卵子までたどり着くために高い運動率が必要とされますので、精子無力症は妊娠がむずかしくなります。
精子無力症は先天的な原因が多いのですが、おたふくや前立腺炎などの病気により後天的になるケースもあります。
運動率を確実に上げるような治療法はありませんが、軽度の場合には、漢方薬やオリジナルサプリメントを試みる場合が。
中・重度の場合には、人工授精や顕微授精を行います。
精子が全く無い無精子症には、閉塞性無精子症と非閉塞性無精子症の2種類があります。
閉塞性無精子症(OA)の割合は、無精子症の中でも15~20%といわれています。
精巣内では精子が作られているのに、精管が閉じられているために精子が精液中に出てこられないのです。
精路再建手術で閉じられた精管を治療することで、自然妊娠できる可能性もあります。
非閉塞性無精子症は精管に閉塞がないのに、射出時に精子が全く出ていない状態で、無精子症野中の80~85%にのぼります。
原因はいくつかあり、それに応じた治療を進めるのですが、薬による治療や、精巣内精子採取法で精子も後期精子細胞も見つからなかったり、あっても受精しなかった場合には夫の遺伝子を持つ子どもを持つことは難しくなります。
精索静脈瘤があると、精巣の温度が上がってしまいます。
そのことにより、精子形成に発育不全や、精子の数の減少、DNA損傷による精子の質の低下などの影響が起こることが。
精子の状態を悪化させる精索静脈瘤や精巣静脈瘤が、乏精子症や精子無力症、奇形精子症などの原因として考えられるケースでは、手術により静脈瘤を治療したりします。
性生活において、勃起したりそれを維持することができず満足な性行が行えないことを勃起不全(ED)といいます。
ストレスやトラウマなど精神的なものが勃起不全につながることもあれば、加齢などにより血流が悪くなることで生じることもあります。
バイアグラなどの治療薬を使用したり、人工授精で妊娠を目指します。
現代人に多くなってきているのが、セックスレスの状態による不妊です。
日本性科学会ではセックスレスを「病気など特別な事情がないのに、1カ月以上性交渉がないカップル」と定義しています。
セックスレスになる理由はさまざまです。
愛情があってもお互いの生活スタイルの違いから2人の時間を持つことが難しいことが理由だったり、夫婦のどちらかが性生活に興味を失ってしまっていることも。
2人のコミュニケーションを取る時間を増やすことなどで、距離を縮めていきましょう。
不妊とストレスは直結しているといわれていますが、それは夫婦間の間にある心理的なものだけではなく、仕事や夫婦とは関係のない人間関係なども含みます。
また、不妊治療をしていること自体がストレスとなっており、不妊治療に悪影響を与えていることも。
その場合には夫婦間で話し合いを持ったり、不妊治療自体を一時休んでみたりしてみてもよいかもしれません。
クリニックを訪れ、夫婦でさまざまな検査をしてみても、なんの原因も見つからないこともあります。
しかしそれは初期のスクリーニングによって判明しないだけであることが大半です。
実際には本当に原因不明の不妊は、全体の1.7%程度だといわれています。
また原因不明といわれているものの多くが、加齢によるものです。
卵子は年齢と共に数を減らし、老化します。
そして老化した卵子は受精障害や、着床障害をおこす可能性が高く、また着床ししても流産の危険性が高いのです。
不妊治療は、1人では行えません。
かつては不妊の原因は女性にあると思われていましたが、実際には不妊の原因は女性も男性も半々くらいの確率なのです。
1年以上通常の性生活を営んでも子どもができない場合は、夫婦でよく話し合ったうえでクリニックを受診して原因を探ってみましょう。
加齢により、妊娠できる確率は急速に下がっていきます。
子どもをほしいと思ったときが、妊活を始めるときです。