妊娠にかかわる黄体ホルモンを分泌する黄体が上手く機能しない状態を、黄体機能不全といいます。
黄体機能不全は不妊や不育症につながりますが、正しく治療すれば妊娠も可能です。
基礎体温グラフの乱れで分かりますので、特徴と症状を知っておきましょう。
妊娠を希望しタイミングをとるものの、なかなか上手くいかない時には、黄体機能不全の可能性があります。
あまり聞きなれない病状かもしれませんが、基礎体温のグラフで簡単にセルフチェックすることができますので、グラフの特徴を知り、早期発見につなげましょう。
黄体機能不全とは、ホルモン分泌のバランスが乱れる症状ですので気づきにくいものです。
ですが、生理不順などの症状を理解しておくと、すぐに治療を受けたり生活習慣を見直したりと改善策を取ることができますので、原因と合わせて知っておきましょう。
まず、黄体とはいったい何なのでしょうか。
妊娠を希望する人はよく耳にしますが、あまりなじみがありませよね。
黄体とは、排卵後、卵子を包んでいる卵胞が変化したものです。
黄体の働きかけによって黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌され、子宮内膜が厚くなるなど受精、着床に向けての準備が始まるのです。
しかし、何らかの理由によりこの黄体が上手く機能しない状態になることを黄体機能不全といいます。
黄体ホルモンや子宮内膜の形成、維持が上手くいかないことにより、妊娠がしにくくなる原因につながります。
少し心配になってしまうかもしれませんが、この黄体機能不全は医療機関で正しく治療を受ければ妊娠することも可能ですので、安心してくださいね。
黄体機能不全の症状にはいくつか自覚できるものがあります。
まずは生理サイクルを確認しましょう。
黄体機能不全により黄体ホルモンが出る黄体期が短くなるので、生理サイクルも短くなってしまいます。
通常28日~30日のサイクルですが24日のサイクルになると黄体機能不全の疑いが出てきます。
また、黄体ホルモンの減少により、本来はある程度厚くなるまで維持される子宮内膜が、すぐにはがれてしまうので不正出血(機能性出血)が起きやすくなります。
生理と間違えてしまいそうなのですが、出血量が違ったり、生理の時期以外に出血したりする場合は不正出血の可能性が高いです。
黄体機能不全とは、その名の通り黄体ホルモンを分泌する黄体が正常に機能しなくなる病状のことです。
では、どうしてそのような状態が引き起こされてしまうのでしょうか。
ホルモン分泌は非常に繊細なバランスで成り立っています。
脳下垂体から分泌されている卵胞形成ホルモンなどが低下すると、黄体が正常に働かなくなり卵胞の成熟が進みにくいなどの症状が引き起こされます。
また、子宮内膜自体が反応しにくい性質の場合もあります。
なかなか厚みを増さないために、着床がうまくいかない状態になってしまうのです。
病気原因では、甲状腺機能の低下などによるプロラクチンの過剰分泌で、排卵などの生理サイクルに影響を及ぼし、黄体機能不全につながっていることも考えられます。
この状態を高プロラクチン血症といい、無月経や妊娠していないのに母乳が出るなどの自覚症状があります。
黄体機能不全の一番の自覚症状は基礎体温の乱れです。
排卵や生理サイクルも関わる基礎体温。まずは毎朝測って記録してみましょう。
基礎体温は大きく低温期と高温期に分かれます。
排卵後に体温を高く維持し、子宮内膜を厚くする黄体ホルモンが出るので高温期が約10日間続きます。
しかし、黄体機能不全ではこの黄体ホルモンの分泌が低下するために、高温期を維持できません。
ですので、すぐに低温期に移り全体として生理サイクルが短くなるのです。
無排卵月経や、着床しにくいケースもありますので、グラフをつけてみて高温期が10日未満など気になる場合は、医療機関へ相談しましょう。
このケースは、黄体機能不全により高温期を維持するだけのエネルギーや血中の栄養が不足している可能性があります。
自律神経の乱れやストレスも影響していることもあります。
一日程度だと正常範囲内ですが、二日以上上がり下がりするなど、高温期にグラフがガタガタする場合は、要注意です。
疲れがたまっている方や貧血になりやすい方によくみられるタイプです。
通常、低温期から高温期への移り変わりは一日で起こります。
しかし、体の冷えなどの原因により、一度に高温期へ移るエネルギーが無いと、ゆっくりと移行します。
低温期の終わりかけている頃に、すでに排卵している可能性もあり、排卵のタイミングが分かりにくい状態です。
低温期と高温期が0.3度~0.4度の差がついた頃が排卵の一つの目安ですが、黄体機能不全で、黄体ホルモンの分泌が低下すると、高温期に体温を上げることが難しくなります。
二つの期間の体温差が0.3度未満の場合は、グラフより黄体機能不全であることが予想されます。
不妊や不育症につながる黄体機能不全ですが、正しい治療をうければ、妊娠、出産も可能です。
治療というと不安に感じるかもしれませんが、どのような方法があるのか事前に知っておけば安心ですね。
生理後、ある期間に排卵誘発剤を利用して排卵を促す方法です。
内服液と注射型があります。
排卵を促し、予想することでタイミングを取ります。
この方法は、不妊治療の最初の治療法としてよく用いられていますが、排卵誘発剤の影響により、多胎妊娠の確率が高くなります。
心配な方は、事前に医師に話を伺うなどしておきましょう。
分泌が低下している黄体ホルモンなどを内服薬や注射によって補う治療法です。
これによってホルモンバランスを整え、子宮内膜を着床しやすい環境にするなど妊娠しやす体へ導いてあげます。
一般的に生理周期を整える治療にも用いられる「プロゲストン」という呼ばれる薬でホルモンを補充していきます。
医療機関での治療の他にも、自分でできる予防法、改善法はあります。
黄体機能不全の対策だけではなく、どれも体にいい事ばかりですので、ぜひ取り入れてみてください。
体の冷え、特に下半身の冷えは子宮や卵巣の血液循環を悪化させ、機能の低下を引き起こしてしまうので厳禁です。
ショウガなど体の中から温めてくれる食材を積極的に取り入れるようにしましょう。
また、湯船にしっかりとつかり、体を温めることはストレス解消にもつながり黄体機能の改善にもおすすめです。
血液循環を良くするためにもストレッチなど簡単な体操を毎日取り入れるのも効果的です。
黄体機能不全の改善だけでなく、妊活の第一歩として生活習慣を見直してみましょう。
食事のバランス、リズムや睡眠時間の確保など、普段の生活リズムから整えていくと体調もよくなっていきます。
妊活では飲酒や夜更かしは大敵です。
また、ストレスはホルモンバランスに影響しますので、運動を取り入れるなど上手く発散していきましょう。
黄体機能不全とは、あまり自覚症状もなく見逃しやすい病状ですが、妊娠に深くかかわっています。
なかなか妊娠しないなど心当たりがあれば、基礎体温をまずチェックしてみましょう。
黄体機能不全と診断されると不安になってしまいますが、医師のもとで正しい治療や改善法を行えば、妊娠できる確率も上がります。
基礎体温のグラフが不安定などの症状があれば、早めに医療機関で検査や診察を受けましょう。
また、自分でも予防や改善することが可能ですので、気になる方はぜひ試してみてください。
食事や睡眠などの生活習慣は、妊活だけでなく体調全てに関わることですので、合わせて一度しっかり見直してみましょう。