2017.07.03

顕微授精(ICSI)って、リスクはあるの?

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顕微授精を受けるかどうかを検討する際に、費用や成功率よりも気になるのは、母体や胎児へのリスクではないでしょうか。

障害を持って生まれてくるリスクはどのくらいなのか?
母体への悪影響はないのか?

高額な費用も悩みのタネですが、何よりも、健康で元気な赤ちゃんを授かることこそ、顕微授精を受ける最大の目的です。
そのためにも、顕微授精によるリスクについて、理解しておくことが重要です。

◆顕微授精の医学的見解

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医学的見解による「顕微授精によるリスク」は、明確にされていません。
障害児が生まれる確率は、自然妊娠とほぼ変わらないというのが、不妊治療にかかわる医療従事者の一致した見解です。

オーストラリアのある研究グループが「顕微授精で赤ちゃんに染色体異常が発生するリスクが上昇する」という報告もありますが、科学的な根拠はまだ確定していません。
顕微授精に関わらず、不妊治療で利用される排卵誘発剤などの影響、また精子を卵子に注入する際に、卵子に人工的な力をかけることもあり、いくつかの懸念はあります。

◆顕微授精のダウン症発症のリスク

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顕微授精は、「ダウン症の赤ちゃんが生まれる確率が高い」という説が、意外に多く流れています。
しかし、医学的に証明されているわけではありません。
顕微授精を受けるのは30代後半から40代にかけての女性が多いためです。

ダウン症の子どもが生まれる可能性は、20代に比べて30~34歳では約2倍、35~39歳は約7倍、40~44歳は約24倍、45歳以上になると約84倍になるといわれています。
ダウン症発症と関係があるのは、妊娠する年齢が大きく左右しているようです。

◆顕微授精による双子の可能性

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顕微授精や体外受精では、多胎妊娠になる確率が約15〜20%あります。
そのため、多胎による母体へのリスクが高まると、これまでは指摘されてきました。
その理由は、妊娠の可能性を上げるため、複数の受精卵を膣内に戻していたからです。

卵子に直接精子を注入するために、「一卵性双胎」になることや、複数の受精卵が着床することで「二卵性双胎」や、3つ子以上の多胎妊娠の可能性も高くなります。
多胎妊娠の場合、自然妊娠と変わりはありませんが、早産のリスクが伴います。
多胎妊娠のリスクを軽減するため、日本産科婦人科学会は、原則、受精卵を子宮内に戻すのは1個と決定。
そのため現在は、多胎妊娠のリスクは4.9〜5.9%に軽減されています。

◆卵巣誘発剤による卵巣過剰刺激症候群のリスク

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排卵誘発剤を使用することで、卵巣が膨れ上がる卵巣過剰刺激症候群を発症することもあります。
卵巣過剰刺激症候群とは、主に排卵誘発剤によって過剰に刺激を受けた卵巣が腫れ上がり、腹水や胸水が溜まり、お腹の張りや腹痛、腰痛、体重増加、吐き気、下痢など様々な自覚症状が見られます。
重症化すると腹水や胸水がたまり、呼吸困難に陥る場合もありますが、医療技術も進歩しており、回避策や重症化を防ぐ対策がとられているため、利用にあたっては、医師とよく相談しましょう。

◆染色体異常による奇形児が生まれる可能性は?

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顕微授精では、精子1個を人工的に選び出して受精させるため、染色体異常の可能性のある精子を選んでしまうリスクがあります。

また、不妊治療を受ける女性の年齢は、30代や40代の方が多く、女性の年齢が高くなるにつれて卵子の老化が進み、胎児に染色体の異常が発生する確率も高くなります。
男性側に不妊の原因がある場合は、体外受精によって生まれてきた男児に、その男性不妊が遺伝してしまうというリスクも否定できません。

これは、体外受精の技術が発達したがゆえのリスクで、不妊治療が行われる以前は、染色体異常のある精子が受精することが無かったため、男性不妊が遺伝することはありませんでした。

◆顕微授精のリスクを軽減するには?

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顕微授精による母体、胎児へのリスクが、医学的に証明されているわけではありませんが、少しでも安心するために、妊娠できる確率を高めるために卵子と精子の質を高めることを意識しましょう。

顕微授精は、精子と卵子を1つずつ選んで受精させますが、選ばれた卵子と精子が良質であるほうが妊娠する確率は高まり、障害をもった子どもが生まれるリスクも低くなります。
そのためには、どの卵子や精子が選ばれても大丈夫なように、普段から規則正しく健康的な生活習慣を心がける必要があります。

顕微授精は、病院によって受精率や着床率、妊娠率が異なります。
成功率が高ければリスクが低くなるというわけではありませんが、成功率の高さは技術レベルの高さも表していますので、安心して治療を受けるためにも、技術力の高い医療機関を選びましょう。

まとめ

顕微授精でも自然妊娠でも、母体や胎児へのリスクは、それほど変わりません。
顕微授精への不安から過度なストレスを感じることこそ、卵子や精子の質を低下させる可能性があります。
それではかえってリスクを高めてしまうことになってしまいます。

顕微授精への不安を抱えてあれこれ悩むよりも、どんな治療法なのか、リスクはあるのかをきちんと理解すれば、無用なストレスを感じることは少なくなります。

「顕微授精のリスクは自然妊娠と変わらない」という、前向きな気持ちで治療に臨んでください。

妊活部編集スタッフ
この記事のライター 妊活部編集スタッフ

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