妊娠を希望しているのになかなか妊娠できないと、不安や焦りが出てきます。
その気持ちを軽くするために、不妊検査を受けるというのも1つの手段です。
不妊検査を受けるなら、その前に内容や費用などの特徴を知っておき、疑問や不安を軽くしておきましょう。
不妊検査は早めに検討しましょう。
不妊症の目安は、健康な夫婦が妊娠を希望して避妊をしていないのに、結婚後2年以上妊娠しないことです。
不妊に悩んでいる方は、不妊検査を受けてみませんか?検査の内容を知ることで、不安が少し軽くなります。
生理不順がある人でも、排卵があれば妊娠できます。
しかしその一方で、生理不順が起こっていることが原因で妊娠しにくくさせている可能性も考えられるのです。
生理不順と不妊との関連性の例には以下のようなことがあります。
● 生理周期が短い:卵が発育する前に生理が起こって無排卵の状態になることがある。
● 生理周期が長い:脳の下垂体や視床下部の機能低下が原因で、卵胞の成長が遅く、無排卵の状態を引き起こすことがある。
● 生理不順で排卵日が特定できない:排卵日が特定しにくくなると、タイミング法を試すのが難しくなる。
妊娠しにくい女性で生理不順であることが原因ではないかと思っているなら、排卵があるかどうかを調べてみましょう。
生理があっても、無排卵月経であれば妊娠できません。
排卵日を知る方法は、基礎体温計を測る方法、オリモノの状態で調べる方法、排卵検査薬で調べる方法などがあります。
ただし、自分で調べるよりも病院でチェックしてもらった方が一番早くて確実です。
子宮や卵巣の手術経験がある人で妊娠を希望するなら、不妊検査を受けたほうがいいでしょう。
その理由は、手術によって損傷を受けた組織や、表面が接触したまま組織の再形成が行われ、癒着が起こる可能性があるからです。
癒着は不妊の原因の1つになります。
卵管が腹膜にくっついたり、卵管がふさがり卵が通過できない状態になることが不妊の原因となるのです。
ただし、手術がいけないということではありません。
子宮内膜症などを起こしている場合は、それが卵管卵巣や子宮などと癒着を起こして、精子や卵の通過を妨げて不妊の原因になることがあります。
生理不順や月経痛など、気になる症状があれば早めに病院に行き受診をしましょう。
近年は晩婚化が影響して、卵子の老化が原因で不妊になるケースが増えています。
女性は、35歳頃から卵巣機能の低下が強くなっていくといわれているので、35歳以上の女性は不妊期間が短くても不妊検査を受けたほうがいいです。
特に40歳を超えると急速に妊娠する能力が失われていくともいわれています。
妊娠して元気な赤ちゃんを生むことができる女性の最高年齢の平均は42歳。
35歳以上から不妊検査を積極的に受けたほうがいいのですが、特に40歳以上であれば、すぐにでも不妊検査及び治療をしたほうがいいでしょう。
妊娠を希望している健康な男女が、避妊をしないで性交をしているのにもかかわらず、一定期間(約1年ほどが一般的)妊娠しない場合は、不妊検査を受けることをおすすめします。
不妊検査を受けることで、妊娠できない原因を知り、場合によっては不妊治療を受けるというステップに進むことになるからです。
不妊の原因は女性だけとは限らず、男性に原因がある可能性もあります。
男性と女性のどちらに不妊の原因があるのかはわからないので、夫婦ともに不妊検査を受けましょう。
不妊検査で初めに行うことは「問診」です。
不妊の原因を探るために、医師からさまざまなことを質問されます。
問診の次に行うのは「内診(触診)」です。
窒や子宮や卵巣の状態を診察して異常がないかを確認します。
問診と内診が終わったら「基本検査」を行い、検査で異常が疑われる場合は、さらに「精密検査」を行うというのが不妊検査の流れです。
基本検査や精密検査では、主に以下のような内容を行います。
● 基本検査:超音波検査、ホルモン検査、子宮卵管造影検査、卵管通気検査・通水検査、フーナーテストなど。
●精密検査:子宮鏡検査、腹腔鏡検査、子宮内膜組織検査、抗精子抗体検査など。
不妊検査で一番初めに行うのが「問診」です。
生理の状態(生理不順になっていないか、出血の量や月経痛など)について、過去の妊娠について、出産経験について、生活習慣について、過去にかかった病気についてなど、様々な質問を受けます。
問診は、医師の質問に従って今までの自分のことを話すだけです。医師は問診の内容から、不妊の原因を特定するヒントを探ります。
ホルモン値を調べる採血検査により、治療に欠かせない血中のホルモンの量や、不妊の原因になる甲状腺に疾患やクラミジア感染の有無がわかります。
これらの異常が発見された場合はその治療が優先されるので、始めに調べることが一般的です。
血中のホルモンの量は月経の周期によって変わるので、低温黄、排卵期、高温期の各期に採血検査をします。
月経が規則的であれば、月経2~5日のときにも採血検査をして、卵巣刺激ホルモンや黄体化ホルモンなどの基礎値を検査します。
不妊症では卵管に原因があることが多いので、子宮卵管造影検査を行います。
卵管は卵子と精子が出会う場所なので、閉塞していると受精できません。
今までにクラミジアにかかったことがある方、腹膜炎を起こした方、手術を受けた方、子宮内膜症がある方などは卵管が原因の不妊になる可能性があるので、子宮卵管造影検査は大切な検査です。
まずは、子宮口から細い管であるカテーテルを入れて固定し、造影剤を注入します。
X線撮影をして卵管の状態をチェックするためです。
油性の造影剤を用いた場合は、ほとんど痛みがないというメリットがありますが、検査の翌日も1枚X線撮影をしなければいけません。
水性の造影剤を用いた場合は、痛みが強いなどのデメリットがありますが、検査は1日で終わります。
子宮卵管造影検査は絶対的なものではなく、正診率は80%くらいです。
フーナーテストとは、「性交後試験」ともいわれているもので、膣内に射精された精子の子宮頚管粘液を使って活動状態を調べるという検査です。
精子の状態を調べるのが目的なので、前日の晩に性交渉をして、翌日の午前に診察をします。
基本検査で異常がなかった精子であっても、フーナーテストでは悪い結果が出ることがあるので、意義のある検査です。
検査は子宮頚管粘液を取るだけなので痛みはありません。
取った粘液を顕微鏡で観察して精子の状態を判定します。
卵管の通りを見るために、卵管通気検査を行うこともあります。
炭酸ガスを使用し、卵管の通りに異常がないかを調べる検査です。
造影剤を使用した検査よりも短時間で終了します。
子宮口から炭酸ガスを一定の圧力で子宮・卵管に送り、圧力の変化をグラフにすることで、閉塞や癒着や変形などの異常がないかを調べることが可能。
また、気体が卵管を通過する検査なので、異物の詰まりや癒着が原因で卵管が狭くなっていた部分があれば、通りがよくなるというメリットがあります。
子宮や卵巣の状態を確認するため、モニターを使用して超音波検査を行います。
この検査をすることで、子宮の形態の確認、子宮筋腫の有無、子宮腺筋症の有無、卵巣嚢腫の有無、卵胞の発育、子宮内膜の厚さなどの診断が可能です。
超音波で見ることで、卵胞の成熟度、排卵しそうな卵胞、排卵せずに残っている卵胞などの状況がよくわかります。
ただし、排卵した卵子が卵管に取り込まれたかまでは確認できず、卵の質もわかりません。
それらを調べるには別の検査が必要です。
子宮粘膜下筋腫やポリープなどがないかを調べるために行うのが、内視鏡を使用した子宮鏡検査です。
細い子宮鏡を使用し、子宮内の状態や卵管の入り口の状態を観察します。
まずは子宮内を観察し、受精卵の着床の妨げになるようなポリープなどの病変がないかを確認。
その後、左右の卵管を観察し、卵管の入り口が狭くなって通りが悪くなっていないか(卵管狭窄)、または通りが閉じていないか(卵管閉塞)を確認します。
子宮内に筋腫やポリープなどがあった場合は、手術を行うと判断されることになるでしょう。
フーナーテストを何度受けても不良だという結果が出た場合、女性側が抗精子抗体を持っている可能性があるので、抗体の有無を調べる抗精子抗体検査を受けましょう。
抗精子抗体検査は時期を選ばないので、いつでも検査可能。原因不明の不妊の女性のうち、約13%が精子を不動化させる抗体を持っているといわれています。
抗精子抗体の検査結果が陽性であっても、抗体価が低い場合は人工授精で妊娠できる可能性があるので、医師と相談し人工授精などの治療に進むことが可能です。
抗体価が高い場合は、体外受精でなければ妊娠することが難しいとされています。
胚盤胞を移植しても、着床がうまくいかずに悩んでいる(反復着床不全)という方は、移植する日の子宮内膜が着床できる状態かを遺伝子レベルで調べることが出来る子宮内膜組織検査を受けましょう。
この検査は排卵後に行います。
反復着床不全の場合、子宮内膜は着床可能な状態だと思っていても、遺伝子レベルでは準備が整っていないということがあるのです。
胚盤胞と子宮内膜の両方のタイミングが合わないと着床できません。
子宮内膜組織検査をすることで、最適な排卵法移植日を決定することができます。
男性の不妊検査で最も基本的なのは、精子の動きなどを見る精液検査。
精液量、精子の濃度や数、運動率、運動の質、精子の形態、感染の有無などを調べる検査です。
その後、必要があれば泌尿器科で精密検査を受けることになります。 精液は病院(クリニック)で採るのが望ましいのです。
しかし病院によっては、自宅で採取した精液を検査することも可能。
自宅で採取した精液を20度~30度で保持して2時間以内に病院に持っていくなどの条件を満たせば検査できる可能性があります。
精液の採取方法については、通っている病院でご相談ください。
精液検査で無精子症と診断された男性は、精巣の機能を調べるために精巣生検(精巣組織検査)を行います。
男性不妊症の約2割の方が、精液中に精子がない無精子症です。
さらに、無精子症は約2割の方が精子の通り道に障害がある閉塞性無精子症、約8割の方が精巣そのものにダメージがある非閉塞性無精子症というように分類されます。
また、精巣生検で精子をつくる細胞がないと判断されたとしても、顕微鏡下精巣精子採取術により、40%~50%くらいの確率で精巣から精子を回収できる可能性があるので、男性不妊外来で顕微授精の相談をしてみましょう。
精子をつくる機能を調べるため、採血してホルモン検査を行います。
卵胞刺激ホルモン、黄体化ホルモン、乳汁分泌ホルモン、男性ホルモンなどの精子形成に必要なホルモンの数値を調べる検査です。
男性不妊の原因の約90%が造精機能障害だといわれています。
精子をつくる機能に問題があると、精子を上手くつくれません。
精巣やホルモン分泌などの異常が原因で障害を引き起こし、男性不妊になっている可能性があるので、ホルモン検査はそれを調べるのに重要な検査です。
検査で血液や精液を扱うため、感染症を起こしていないかを調べます。
B型肝炎、C型肝炎、エイズ(HIV抗体)、梅毒などのウイルスに感染していないか、検査のための感染症管理を行うのです。
B型肝炎やC型肝炎などのウイルスは、主に血液を介して感染します。
感染していても症状があらわれにくいので、感染していても気づいていない可能性があるからです。
気づかないまま病状が進行していることがあるので、検査をして感染が発見された場合は、早めに治療をする必要があります。
男性が行う検査の1つに、ウイルス検査のHTLVがあります。
HTLVとは白血病の原因になるヒト成人T細胞白血病ウイルスの略。
血液中の白血球の1つであるTリンパ球に感染することで、白血病を起こすとされているウイルスです。
このウイルスの感染力は低いといわれていますが、母子感染、性交渉による感染、血液感染などの感染経路が認められているので、感染していないかを検査する必要があります。
HTLVは感染していても自覚症状はありません。
しかし、B型肝炎やC型肝炎に匹敵するほどの感染者数がいるので、感染している人の数は決して少なくはないのです。
男性不妊の原因を探るために、採血をして染色体検査をしましょう。
この染色体検査は健康保険適用です。男性不妊症のうち、約7%の方が染色体検査で異常が見つかります。
精路が閉塞されていない重度の乏精子症の方や無精子症の方など、精子の数が少ない方ほど異常が見つかることが多いです。
無精子症の男性に染色体異常が見つかる確率は10~15%。
乏精子症の男性の場合は5%、健康な男性の場合は1%以下という確率になっています。
不妊検査は健康保険が適用されるものもありますが、ほとんどが適用外です。
そのため自己負担が多くなります。
ただし、検査にかかる費用の一部を助成してくれることがあるので、助成制度については住んでいる住所を管轄する自治体に確認してみましょう。
例えば東京都では、不妊検査、薬物療法、人工授精などの一般不妊治療にかかる費用の一部を助成してくれる制度を設けています。
ただし、定められている条件を満たしていないと助成を受けることができないので注意しましょう。
不妊検査は保険適用外で自己負担になるものがほとんどですが、中には保険が適用されるものもあります。
また、病院によっても設定金額が異なるので、具体的に費用がいくらかかるということはいえません。
問診や超音波検査など、初診時に一般的な基本検査を受けた場合は、約1万円程度の費用がかかるという例が多いです。
2回目以降の検査は、それぞれに検査内容が異なるので、費用に幅がでます。
基本検査で異常が見られた場合、次は精密検査をすることになります。
精密検査をするとなると、一気に費用が高くなるのです。
女性の場合は、腹腔鏡検査、子宮内膜組織検査、抗精子抗体検査など。
男性の場合は、ホルモン検査、精巣生検、染色体検査などがあります。これらの精密検査の中には、数十万円と高額な費用を要することがあるので、精密検査が必要になった場合は経済的な負担は大きいです。
不妊検査をするということは、体にも心にも負担があります。
また、不妊検査で異常が見られて不妊治療をするとなると、病院に通う期間も長くなるので、それらの負担を軽減させるためにも、通いやすい病院を見つけましょう。
ベストは、距離が短く雰囲気が良い病院。不妊検査による体と心の負担を減らすためにも、距離が短く雰囲気が良い病院だと感じることがポイント。
ストレスなく通える病院を見つけましょう。
不妊検査はさまざまな病院で行っています。
総合病院のように大きな病院の他、個人で行っているようなクリニックでも診察可能です。
検査内容や治療内容、不妊治療にかかる費用はそれぞれ異なります。また、待ち時間も病院やクリニックによってさまざま。
不妊検査及び治療のために病院・クリニックへ通うのであれば、ストレスを感じない病院・クリニックを受診しましょう。
良い病院に巡り合うためには、事前の下調べが重要なポイント。
病院のホームページやインターネット上の口コミや評判をチェックし、病院の特徴を知るところから始めましょう。
病院の評判についても知っておくと安心です。
良い評判ばかりだと安心して診察してもらうことができます。
逆に、悪い評判が多い病院は、行かないほうが無難。他に良い病院がないか、評判をチェックしておきましょう。
不妊検査を行うためには、きちんとスケジュール管理をする必要があります。
検査内容にもよりますが、初期検査は生理周期に合わせて行うので、検査する時期が限られているのです。
まずは予約をして初診を受け、検査をするタイミング(月経期、排卵前、排卵期、排卵後)を聞きましょう。
それに合わせて仕事を抑える必要性も出てきます。
検査をスムーズに行うためにも、スケジュールは余裕を持って立てましょう。
基本検査で異常が認められなかった場合、精密検査をする流れになります。
しかし、精密検査は1つ1つの検査に高額な費用がかかるため、どこまで検査をするのか、検査の範囲について夫婦でよく話し合いましょう。
また、不妊の原因は女性だけにあるとは限りません。
男性不妊の可能性もあるので、夫婦で不妊検査を受けたほうが良いです。
精密検査の範囲、男性不妊の検査を受けるかどうかなど、よく話し合って夫婦で共に不妊に向き合いましょう。
生理周期ごとに検査内容は違うので、初診のタイミングはそれぞれ。
不妊の原因も個人差があるので、どの検査を優先したいかによって初診のタイミングを自分で見計らうのが理想的です。
月経期、排卵前、排卵期、排卵後のそれぞれの時期に不妊検査を行います。
そのため、初診の時期はいつでもよいです。ただし、病院によっては初診は月経期以外のときにしてほしいといわれることもあります。
そのため、病院に問い合わせてから初診を受けるようにしましょう。
検査結果で異常がないと判断されても、焦りすぎず、不安にならないようにしましょう。
妊娠を望んでいるのになかなかうまくいかず、不妊検査でも異常がないと判断されると、行き詰ったような気持になってしまうものです。
焦りすぎてストレスを溜めてしまうと、夫婦仲が悪化するなどの悪影響を及ぼします。
そうならないためにも、検査結果がはっきりしなくても、焦らず落ちついた気持ちを保ちましょう。
不妊検査にはさまざまな種類があります。
基本検査から精密検査へと進んでいくケースもあり、それによりかかる費用の幅も広くなります。
金銭的な負担など、不妊検査に対する不安を軽くするためには、不妊検査の幅を事前に制限しておくのも1つの手段。
検査に制限を設けるためには、不妊検査の内容や費用などについて知っておくことが大切です。
不妊検査について理解し、不安を少しずつ減らしていきましょう。