不妊治療もステップアップしていくと、体外受精や顕微授精を検討することになります。
特に顕微授精は、費用も高く女性への負担も大きいので心配になる人も多いかもしれません。
治療方法や、着床率を上げる方法を知ることで、少しでも不安を減らしましょう。
体外受精と顕微授精を混同する人も多いのですが、この2つには大きな違いがあります。
それは受精の方法です。
体外受精は、専用の培養液の中で精子と卵子を一緒にし、自然に近い形で授精を行います。
それに対して顕微授精では、人の手によって精子を卵子の中に送り込むのです。
そのために体外受精と比べて精子の数も多くは必要ありません。
顕微授精の場合は、精子の力が弱くて通常では受精できない場合でも、受精が可能です。
そのため受精率とそれに伴う着床率が高くなります。
この記事では、顕微授精の着床率を上げるためにどんな治療法が行われているのか、また着床まで至らない場合にはどのようなことが原因となることが多いのか、そして治療している本人ができる生活習慣の見直しについてまとめていきます。
現在では、顕微授精の着床率を上げる治療法もどんどん進んでいます。
どのような治療法があるのかみていきましょう。
採卵をしたあとに状態の良い受精卵がいくつもできれば、それを凍結しておくことができます。
採卵月に移植も可能なのですが、採卵誘発剤などの影響で女性の体が移植に適さない状態であることも多いので、受精卵を凍結してしまうのです。
特に子宮内膜が薄すぎたり、卵巣が腫れていたりする場合には着床しない可能性があがるので、その周期での移植を避ける傾向があります。
その場合は女性の体の状態に合わせて、1カ月以上子宮を休め、胚移植に最適な状態を作りなおします。
冷凍胚移植は着床率は上がりますが、凍結に耐えうる受精卵でなければ胚が変性してしまう場合がありますので、医師の判断を仰ぎましょう。
受精卵は5~6日目に胚盤胞になります。
そして子宮内膜に着床する前に外側の透明帯とよばれる薄い膜を破らなければなりません。
たいていの場合は自ら突き破ることができるのですが、体外受精や顕微授精を行った場合、体外にて精子と卵子の受精が行われているため、透明帯が変質してなかなか自力で破れないことがあります。
そのため人が、透明帯を薄くしたりレーザで切れ目を入れたりして透明帯を破ることを手助けします。
それがアシステッドハッチングと呼ばれる処理で、ホルモン調整下での胚移植時に行われます。
この処理をすることで、自力でのハッチングが難しかった受精卵の着床率を上げることが可能となりました。
初期胚の質は、見た目でグレードに分けられます。
染色体異常までは見た目ではわからないのですが、細胞の割球が整っていて、フラグメンテーションとよばれる細胞の破片が少ないほうがグレードが高く着床しやすいとされています。
また胚盤胞移植の場合には異なるグレードの判断基準があります。
胚盤胞の胚盤胞腔の広がりとハッチングによる6段階評価です。
またそれに加えて内細胞塊と栄養外胚葉の評価もあります。
グレード6とは、胚が透明帯から完全に抜け出し、ハッチングが完了している状態を指します。
グレードの良い受精卵を凍結して、女性の体調が整った状態で移植することで、着床率を上げることができます。
顕微授精を行った場合、受精卵を着床させるためには子宮の環境を整えなければなりません。
特に子宮内膜の厚さは重要で、着床に必要な8mmを維持する必要があります。
薄い場合には着床が難しくなるため、子宮内膜の厚さを厚くしたり、基礎体温をあげたりする働きのある黄体ホルモンを補充するのです。
不妊治療にはさまざまな薬物を使用しますが、卵巣刺激の際にゴナドトロピン製剤を使用していると、黄体ホルモンの増加が抑えられてしまいます。
胚移植後、足りない黄体ホルモンを補充するために注射をしなければならないのはそのためです。
着床後も黄体ホルモンの補充が続けられることがありますが、必要な処置になりますので医師がやめる判断をするまでは頑張って続けましょう。
顕微授精は体外受精よりも着床率が高いといわれますが、それでもうまくいかない場合があります。
それはどのようなケースかみていきましょう。
顕微授精の場合、受精時に精子を卵子の中に送り込むために微細な針を刺さなければなりません。
その際に卵子が傷ついて変性してしまう可能性があります。
稀なケースではありますが、人の手によって行われるものなので失敗もあることを覚えておきましょう。
体外受精や顕微授精では、医師だけではなく胚培養士と培養室の力量も非常に成功率に関わってきます。
何度か同じようなことが原因で失敗を重ねている場合には、セカンドオピニオンや転院を考える必要もあるかもしれません。
胚移植がうまくいかない理由の1つに、受精卵そのものの染色体異常が挙げられます。
細胞が8分割を超えない場合は染色体異常が原因の可能性が高いといわれています。
たとえグレードが高いとされる受精卵でも、グレードはあくまで目視によるものなので染色体の異常まではわかりません。
そのため染色体異常に関してはグレードは関係ないといえるでしょう。
また顕微授精の場合は染色体異常の確率が高いともいわれますが、医学的な根拠はそれほどあるわけではありません。
ただし、顕微授精までステップアップしてくるまでに女性の年齢が進んでいることが多く、高齢のために胚の染色体異常の発生率が高まっていることは確かです。
卵子の老化が進んでいたり、精子の運動率が悪いなどで質があまりよくない場合にはそれが着床率の低下につながります。
特に卵子の老化は非常に大きな問題です。
外見はいくら若作りすることができても、体の中の老化までは抑えることができません。
女性は生まれたときに一生分の卵子を持って生まれてきます。
そして質の良い卵子から、生理とともに体外へ排出していくのです。
高齢になればなるほど、染色体異常の多い卵子や老化の進んだ卵子が残されます。
そのため、不妊治療は少しでも早い段階で始めることが重要なのです。
卵子の質の改善は、生活習慣の見直しや摂取する栄養によって多少改善はされます。
健康的な生活習慣を維持して少しでも良い卵子が取れるように努力しましょう。
顕微授精の着床率を高めるために、普段からできることもあります。
生活習慣を整えることで成功率を高めましょう。
よい卵子を採卵するには、妊娠を助ける栄養素をしっかりと摂取しましょう。
現代の女性はやせすぎで栄養が足りていない人が多いのです。
まずは1日にどのような栄養をどのくらい摂取しなければならないのか知るところから始めてください。
よい卵子を作るために特に必要だとされるのが、タンパク質、鉄、亜鉛、ビタミンB群、ビタミンA、ビタミンC、カルシウムなどです。バランスよく取るように心掛けましょう。
また「赤ちゃんのビタミン」ともいわれる、重要な栄養素が「葉酸」です。
厚生労働省も摂取を奨励しているビタミンで、妊娠中だけではなく妊娠前からの摂取が望ましいとされています。
いずれにしろ、1日に必要とされている栄養素をすべて料理から賄うのはなかなか難しいものがあります。
足りない分はサプリメントなどで補うことも考えてみましょう。
妊娠にとってストレスは大敵です。
心と体は密接につながっていますので、心配事がある場合には体にさまざまな不調が現れてしまいます。
特に不妊治療中には悩みがつきません。夫との不妊治療に対する温度差があるなどの夫への不満、仕事と不妊治療の両立、いつまで治療が続くのかわからない不安。
もしも解決できることがあるのなら、自分自身で問題解決できるよう動きましょう。
もしも難しい場合には、少しでもストレスを減らすために、アロマを使ってリラックスをしたり、半身浴をしてみたり、軽い運動で気分転換を図ったりと工夫をする必要があるかもしれません。
信頼できる人に悩みを打ち明けるのも1つの方法です。
睡眠は心と体のバランスを整えるために必要な休息です。
質のよい睡眠により、女性ホルモンなどのバランスを整えることができます。
特にゴールデンタイムといわれる夜の22時から午前2時の間に十分な睡眠をとることで、成長ホルモンがでます。
細胞の成長を助けたり、傷ついた細胞の修復をはかってくれる成長ホルモンは、妊娠にとっても大切なホルモンです。
仕事をしている場合は、その時間に眠るのが難しい人もいるでしょう。
その場合には、時間ではなく質のよい睡眠をとることに重点をおいてください。
寝る直前にパソコンやテレビなどの光を浴びず、照明を暗めにするなどして、眠る前に環境を整えてみると寝つきがよくなります。
不妊治療において、病院任せの治療ではなく自分主体で生活環境を見直したりすることは非常に大切です。
顕微授精の場合も、着床率をあげるためにできることが数多くあります。
治療の内容を理解するだけではなく、体に悪いことを避け、健康的な生活習慣を身につけましょう。
自分自身を大切にすることが、不妊治療の成功につながっているのです。